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編集部2023年10月27日

クチブトメジナとオナガメジナの見分け方│生態等についても解説

メジナ 魚種別釣りガイド

「クチブトメジナは根を釣れ、オナガメジナは潮を釣れ」とは、ウキフカセファンにはお馴染みの格言である。そもそもなぜこのように性質が異なるのか? 生態の基本を、根っからの釣り人でもある生物学者の海野徹也さんが教えてくれた。

おすすめ時期:12~1月

海野徹也(広島大学大学院・生物圏科学研究科准教授) 解説

海野徹也
1963 年広島県呉市生まれ。釣り好きの生物学者として知られ、主著に『クロダイの生物学とチヌの釣魚学』、『メジナ釣る?科学する?』『アオリイカの秘密にせまる』、『アユの科学と釣り』がある

「クチブトメジナは根を釣れ、オナガメジナは潮を釣れ」とは、ウキフカセファンにはお馴染みの格言である。そもそもなぜこのように性質が異なるのか? 生態の基本を、根っからの釣り人でもある生物学者の海野徹也さんが教えてくれた。

この記事は『つり人』2016年2月号に掲載したものを再編集しています。

メジナの種分化


 世界中のメジナの仲間(メジナ属)は15種に達す。オーストラリアに6種、南米に4種、カリフォルニアと北アフリカにそれぞれ1種、そして日本にはメジナ、クロメジナ、オキナメジナの3種が生息している。この3種は日本列島が大陸の一部だった1200万年前までは共通の祖先だった。その後、大陸と日本列島が陸橋で陸続きだった600.700万年くらい前に、それぞれの種として分かれたことがDNA分析で分かっている。この時、東シナ海のものがメジナ、太平洋岸のものがクロメジナ、南シナ海のものがオキナメジナに分化したと考えられている。

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分布と適水温


 3種は海水温の違う海域で分化したが、その中で最も低水温の東シナ海で分化したのがメジナである。このためメジナはある程度の低温耐性があるようだ。そうした背景が現在の3種の分布の違いに関わっている。太平洋側の北限は3種とも房総半島までだが、日本海側ではオキナメジナとクロメジナが対馬海峡付近までなのに対して、メジナは新潟県まで分布している。今後、海水温が上昇すれば3種の分布域が広がる可能性もありうる。

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 メジナの産卵期は海域で違うようだ。和歌山県田辺では1.2月、長崎県佐世保では5月前後、瀬戸内海では3月下旬.6月頃、伊豆では春先と考えられている。多くの魚類の産卵水温は、それぞれの種が最も得意な水温帯で行なわれる。クロメジナおよびメジナが活発に捕食する適水温も冬から春先までの水温だろう。

 余談だが、魚類の活動は水温の影響を強く受け、慣れない低水温にさらされると極端に基礎代謝が低下する。例として、クロメジナは水温が15℃ から10℃に低下すると心拍数は毎分39回から30回に減るが、メジナはあまり変わらないようだ。なので、メジナは水温10℃くらいまでは耐えられるといわれる。 メジナの仲間に共通する特徴は歯で、先端が鍬く わのように三つ叉に分かれた三さ んせんとうし尖頭歯を持っている。この歯は海藻を刈り取りながら食べるのに適している。釣りのターゲットになるメジナとクロメジナの外見の違いは鰓蓋の縁の色にある。専門的に鰓蓋の黒い部位を鰓膜と呼ぶ。

 ところで、釣り人はメジナを「クチブト」、クロメジナを「オナガ」と呼んでいるように、違う視点で違いをとらえているようだ。クチブトメジナという愛称は「口太」に由来し、口が大きく分厚いという意味だ。メジナの仲間は岩盤に付着した海藻を食べるが、オナガメジナは海藻を「ツンツン」とつみ取るように食べるのに対して、クチブトメジナはオナガメジナより分厚くて大きな口を持っていて、口を岩に押し当て食べる。

クチブトメジナ学


 釣り人の格言に「クチブトメジナは根を釣れ」というのがある。体型からすると、クチブトメジナはあまり回遊しない居着きタイプだ。また、主食である海藻の成育が早い場所がエサ場になっていて、近くに身を潜める根があるようなところが好ポイントである。クチブトメジナの遊泳は、直進性より、どちらかといえば小回りがきくタイプ。このため根周りでハリ掛かりしても、自在に突進方向を変えて根の中に逃げ込める。

112-114mejinagaku_cs6 (4) クチブトメジナの魚体はぼってりとしている。体型から見ても回遊性が強いとはいえず、海藻の多い根周りなどに居着いている

112-114mejinagaku_cs6 (5) クチブトメジナは歯が3 列に並んでいる。オナガメジナの歯がニッパーだとすれば、クチブトメジナはペンチである

オナガメジナ学


 釣り人の愛称である「オナガは尾ビレが長いという意味の「尾長」に由来する。尾ビレは長く、切れ込みが深いのが特徴だ。オナガメジナの尾ビレはマグロやカツオに代表されるようにグライダーの翼のような形をしている。こうした尾ビレの形状は広範囲を移動するのに適しているのだ。オナガは潮に乗って移動回遊する傾向があり、回遊を待ち伏せし、やや沖の潮を探るのがセオリーだ。クチブトメジナは根周りの辛抱の釣り、オナガメジナはダイナミックな待ちの釣りというわけだ。

 オナガメジナの尾ビレは突発遊泳にも威力を発揮する。ゆえに引きが強いということになる。またオナガメジナにハリを飲まれると、ハリスが切られる確率が高くなる。その理由は、強い引きと歯並びにある。クチブトメジナは歯が3列に並んでいるが、オナガメジナは1列で、ハリスと歯の接点が歯先の一点に集中する。クチブトメジナはペンチ、オナガメジナはニッパーのような歯並びをしていると考えてほしい。

112-114mejinagaku_cs6 (2) オナガメジナはエラ蓋の縁が黒く、尾ビレがマグロやカツオと同じくグライダーの翼のような形をしている。潮に乗って広範囲を回遊する


112-114mejinagaku_cs6 (3) オナガメジナの歯は1列である。ハリを飲まれると切られるのはハリスと歯の接点が歯先の一点に集中するからだ

メジナは賢いのか?


 メジナやクロメジナが寄せエサに集まって、自然界では通常、食べないオキアミに食いつくのは、彼らが好奇心旺盛で、食べ物の匂いや味を感じる発達した嗅覚や味覚を持っているから。しかし、寄せエサに群がっても一筋縄ではいかないのがメジナ釣り。仕掛けや釣りバリを見破ったりするのは、視力が関係していると思われる。メジナやクロメジナも視力は0・13くらいで、青色や赤色を見分ける色覚を持っている。また、研究者の間では、メジナは好奇心旺盛で、学習能力に優れている賢い魚といわれる。ウキフカセ釣りの好敵手として釣り人を魅了するのもうなずける。

60cm オーバーのオナガメジナは何年生きているのか?
112-114mejinagaku_cs6 (7) クチブトメジナ、オナガメジナとも生後1 年で10 ~ 15cm、3 年で20 ~ 25cm、7 年で30 ~ 35cm、10 年で38 ~ 40cm と成長するともいわれる。では60cm を超えるメジナは何年生きているのか? 写真は男女群島で釣れた60cm のオナガメジナの鱗である。推定年齢は右が19 歳で、左が17 歳

112-114mejinagaku_cs6 (6) この写真はメジナの網膜。視力は0.13 くらいで、青色や赤色を見分ける色覚を持っている


参考図書ならびに図写真等の出典
海野徹也共編著「メジナ釣る?科学する?」恒星社厚生閣(2011)

2016/12/9

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