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池田清彦先生に聞く外来種問題の現在 :前編

短期集中連載 池の水ぜんぶ全部“は”抜くな! :第1回 

つり人編集部=レポート
ikenomizu_01一口に池といってもさまざまで、そこに棲む生きものの種類も異なる

人間の都合で持ってきた生きものを、同じく人間の都合で、今度は駆除する……。
外来種というのは、本当に駆除すべきワルモノなのか?
池の水が抜かれた後、酸欠で口をパクパクさせる魚たちは、私たちに何かを訴えているように思えてならない。外来種問題を考える短期連載、初回は生物学者である池田清彦先生に話を聞いた。


この記事は、つり人2019年4月号でも読むことができます


外来種のイメージ


「あ、出ました! これは外来種の○○ですね。在来種を食べてしまうこともある獰猛な種です……」

 このところテレビを見ていると、やたらと「外来種」という言葉が聞こえてくるようになった。かつて水生昆虫好きで池や沼でガサガサを楽しんでいた記者も、『池の水ぜんぶ抜く!』を見ては「ああ、こんな大がかりなことができたら、きっといろいろな生きものが採れるんだろうな……」とワクワクしてしまう。

 しかし、近年の外来種問題については、どうも違和感がぬぐえない。子どものころにスルメイカで釣っていたアメリカザリガニや、水草の陰に潜んでいるのをドキドキしながら眺めたライギョ。さらにはそのへんにいるコイやニジマス。彼らがひとくくりに外来種と言われ、日本にいてはいけないもの、即刻退去すべし!というニュアンスで語られるのは、どうも納得できないのだ。

 もちろん在来種を食べる、交雑する、爆発的に増えるなど、生態系に影響を及ぼす種もいるだろう。人間に害を及ぼす、たとえばヒアリなんかも問題だ。しかしだからといって、池の水を全部抜いて、外来種をすべて駆除するというのはどうなのか? そもそも、人の手ですべて駆除することなどできるのか? いろいろと考えてしまうのである。

 特に気になるのは、子どもが目にすることも多いテレビ番組で、外来種だから駆除=殺していいという理論が、正義のように語られる部分。生きものの命を、そんな風に区別してしまっていいものなのかどうか……。

 頭のなかのモヤモヤが消えない記者は某日、とある生物学者の家を訪ねた。

考えるきっかけになる一冊


 呼び鈴を鳴らすと笑顔で玄関に出てきてくれたのは、池田清彦先生。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授、東京都立大学理学博士などの肩書を持つ生物学者。著書は多く、小社からも『底抜けブラックバス大騒動』が出ていて、外来種問題には詳しい。

ikenomizu_A 池田清彦(いけだ・きよひこ)
1947 年、東京生まれ。生物学者。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。専門の生物学分野のみならず、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書が多数ある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍している。


 さっそくですが……と来意を告げると、池田先生はまず『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』(フレッド・ピアス著 草思社刊)を紹介してくれた。本書では、外来種による影響の実例を数多く紹介している。これを読むと、外来種だからといって無暗に排除するのは、かえって私たちにとってマイナスになるケースがあるように思える。たとえば無人島において、外来種の侵入により植物の種類が増えた例や、ミミズなど人間にとって有益な外来種もいることなど、単純に外来種=悪とはいえないことが分かる。詳しい内容については、実際に読んでいただきたいが、現在の日本における外来種問題を、ちょっと違う視点から眺めるきっかけになるはずだ。

ikenomizu_02 ニジマスは、管理釣り場などで子どもたちの遊び相手になる魚。食用としても人気がある。もちろん釣り人にとってなじみの深い魚だ。1877年に北米から移入されたといわれる

有益か、有害か?


 池田先生に最初に聞きたかったのは、外来種と在来種の線引きについて。

 たとえばコイは外来種という話もあるが、一部地域には在来の種もいるとされる。その区別は、当然ながら難しい。そして外来種のコイも、日本に入ってきたのは正確な年代が不明なほど大昔のことで、こういった種についても外来種とするのは無理があるように思える。

「たとえば明治になって国内に入ってきたコスモスは、外来種だから駆除せよ、という扱われ方はしていません。一方で同じころに入ってきたオオキンケイギクは、現在野外での栽培が禁止されています」

 外見はよく似た植物だが、秋桜とも書かれるコスモスは、さだまさしの名曲にも歌われるほどで、よく知られた植物だ。だがオオキンケイギクは、初めてその名を聞く人が多いのでは。入ってきた時期も近いのに、一方だけの栽培が禁止されているというのは、たしかに不思議である。あくまで記者の印象だが、有名どころはそっとしておいて、マイナーな種は厳しく取り締まる……というような差別が感じられてならない。

ikenomizu_03 コイを外来種と呼ぶのには、抵抗がある人が多いのでは。国内にもともといた種もいるといわれ、その区別は難しい。移入された時期もはっきりとは分かっていないようだ

「畑の作物には外来種が多いのですが、それはもちろん駆除せよ、とはなりませんね。人間にとって有益だからです。有益な種なのか、あるいはなんらかの害があるのかによって、駆除するかどうかが決まるのなら、ある意味で分かりやすいといえます。しかし現状では、その区別はどこか恣意的に思えます」

 人間にとって有益かどうかで区別するなら、たしかに話は単純だ。だがその視点で考えると、必ずしも外来種が悪で、在来種が善というわけではない。「生態系に影響を与えるという点では、在来種でも問題がある種がいます。たとえばニホンジカは、今とても大きな問題だといえます」

 ニホンオオカミが絶滅したとされ、猟師も少なくなった今、シカは増え続けている。その被害は深刻で、下草が減り、森が乾燥し、そのため昆虫類も減るという。1つの池で外来種駆除にやっきになるより、シカの生息数をコントロールすることのほうが喫緊の課題だと池田先生は言う。

 人間にとって有益か有害かで考えるなら、外来種か在来種かという区別は、それほど意味のあることではない。どちらにも有益な種もいれば、有害な種もいるからだ。人間、あるいは生態系に悪影響を与えていない種を、単に海外から来たというだけで悪い生きものだと決めつけるのは問題ではないだろうか。

……後編に続く

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2019/3/15

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