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新刊『和竿大全』の歩き方

江戸和竿三部作から10年。著者・葛島一美さんが分け入った4つ目の竹林

つり人編集部=写真と文
江戸和竿の世界に分け入る格好の入門書、あるいはバイブルとして高い評価を得ている葛島一美さんの江戸和竿三部作。『平成の竹竿職人』(平成14年)、『釣り具CLASSICO モノ語り』(平成17年)、『続・平成の竹竿職人 焼き印の顔』(平成19年)の刊行から10年の時を経て、待望の4作目となる新刊がこの春リリースされる。これまでとも違う新たな切り口でまとめられたという一冊。その見どころをお伝えする。

2017年5月上旬発売予定
『和竿大全』(つり人社/葛島一美著)02 B5 変型判 定価:本体3,000 円+税
並製カラー192 ページ


今に受け継がれる江戸和竿の名品・珍品を多彩な魚種ごとに網羅。淡水はタナゴ、フナ、アユ、清流、渓流、テナガエビ、ワカサギなど、海はハゼ、カワハギ、クロダイ、シロギス、マダイ、イシダイなどを収録。さらに往年の江戸前三大釣り(アオギス、ボラ、カイズ)の竿までカバーする。各竿の「定法」とされるパターンの解説もていねいにされており、江戸和竿の魅力や基本を知る入門書としても好適。
※お求めはお近くの書店または釣り具店まで。
●問合先 つり人社営業部(℡03・3294・0781)

01-1-katsushima 著者の葛島さんは昭和30年東京都台東区東上野の生まれ。幼年時代から釣り好きの父や叔父と釣れだって各地に出掛け、今も海川を問わず四季折々の江戸前の釣りを愛好する。江戸和竿関連の著作のほか、タナゴ・フナ釣りの解説でもお馴染み

――三部作の最後から10年を経ての新刊。これまでの既刊本と今回の新作の大きな違いはどこにありますか?

葛島 これまでの三部作は、基本的には江戸和竿の親方ごとに作品を集めて、その世界を紹介するというスタイルをとってきました。特に『平成の竹竿職人』と『続・平成の竹竿職人 焼き印の顔』がそうですね。一方、今回は江戸前の釣りの対象になってきた魚そのものにまず着目し、これまであまりカバーできていなかったジャンルの釣り竿も含めて、現存している江戸和竿を一堂に集めました。ここが最大の特徴ですね。具体的にはフナ、タナゴ、ハゼ、さらにクロダイ(カイズ)、マダイ、スズキ、マゴチ、イシダイ、テナガエビ、ワカサギ、アユ、ヤマベ……など、実にさまざまな江戸和竿を、その釣りの特徴とあわせて整理・解説しています。

『平成の竹竿職人』(在庫切れ) 03-1 B5 変型判
定価:本体2,500 円+税
江戸和竿を筆頭に、川口、鳩ヶ谷など関東を代表する39人の和竿師とその作品を収録


『釣り具CLASSICO モノ語り』 03-2 B5 変型判
定価:本体2,500 円+税
箱ビク、ウキ、合切箱等、和のぬくもりが伝わってくる懐かしい道具たちを収録


『続・平成の竹竿職人 焼き印の顔』 03-3 B5 変型判
定価:本体2,500 円+税 
和竿師の誇りであるとともに保証の印である焼き印からその作品や系譜を読み解く


01-2-katsushima 葛島さんは戸和竿関連の著作のほか、タナゴ・フナ釣りの解説でもお馴染み

――その構想はいつからお持ちだったのでしょう?

葛島 今回の企画自体は、三部作を上梓し終えた直後から、自分の中で温めてはあったんです。ご存じのとおり、江戸和竿の世界は現役の親方たちがどんどん年を重ねていて、一方で後継者の数は圧倒的に少ないという状態がもう何年も続いています。現役の親方たちの足跡を伝えることも大切な使命でしたが、同時に現存する江戸和竿そのものも、どんどん人目に触れる機会が減っている。それらを記録に残すべきではないか?という思いを強く持っていました。

 そこで、「毎月1本、親方やコレクターの手もとに眠っている江戸和竿を片っ端から訪ね歩いて、雑誌で紹介してはどうだろう?」と思ったのです。 

 とはいえ、言うは易しで、いざ実行しようとなるとなかなか大変な作業です。単行本に出来るかもすぐには決まらず、しばらくは手をつけられずにいました。

――本作はそうした思いにようやく着手できたものだと?

葛島 そうですね。本全体では、今も人気があり重要も比較的多くある「真鮒竿」と「たなご竿」の章に一番のボリュームを割いていますが、ほかにも先ほど述べた魚種ごとの江戸和竿、さらには往年の「江戸前三大釣り竿」まで幅広く網羅しています。これだけの種類の江戸和竿を、フルカラーの写真で総覧できる機会は他にないと自負しています。

04江戸和竿三名家(東作、竿忠、竿治)の歴代作品から現代の秀品まで網羅

06江戸和竿の基本的な素材、組み方、塗りなども分かりやすく説明している

――江戸前三大釣り竿とはどんなものですか?

葛島 かつての東京湾で和竿を使って行なわれていた、代表的な釣りもの3つの竿です。初夏から夏にかけて浅い干潟で行なわれていた「江戸前のアオギスの脚立釣り」、秋の彼岸から師走まで海苔シビ(ひび)の周りで行なわれた「海苔シビのボラ釣り」、盛夏に品川沖の導流杭周りで小エビに集まる小型のクロダイをフカセ釣りでねらった「道流杭のカイズ釣り」の3つですね。これらはいずれも今となっては幻といえる釣りで、東京湾の環境悪化や埋め立てが進むにつれて消えてしまいました。実際、年輩の親方でもそのようすを知っているのは、かろうじてアオギス釣りくらいで、そのほかについてはどんな釣りだったのか、もはや昔の釣り本などから読み解くしかないものです。

05今では幻となった往年の江戸前三大釣り竿も解説

――それらの竿も掲載されているのですね?

葛島 はい。本書の冒頭でも書いていますが、それには『釣技百科』(松崎明治著/1942年)という戦前の名著との出会いも大いに役立ちました。その本の記述と実際に今残っている江戸和竿の実物、さらには竿忠や竿富といった親方たちへのインタビューなどを総合していく中で、私自身、ようやくこれらの江戸和竿の世界がどんなものだったのか、全体像が見えて来るという得難い経験をしました。そうした楽しみもともに追体験してもらえるのが本書になっています。

――たしかに本書全体をとおして、ただコレクションを眺めるのではなく、江戸和竿によって楽しまれてきた、数々の釣りそのものの特徴がよく分かりますね。

葛島 今回、多くの協力者の方から江戸和竿をお借りし、それらを片っ端から撮影していきました。いずれも資料的な価値だけでも大変貴重なものばかり。借り受けて、保管して、撮影して返却と、いつも全く気が抜けずに緊張しっぱなしでした(笑)。とはいえ、江戸和竿は今も現役で道具として使えるものであり、背景にある釣りの解説と合わせて読んでもらうことで、実用品としての竹竿の魅力も改めて感じてもらえると思います。私自身、マブナ釣り、タナゴ釣り、ハゼ釣り、清流釣りでは今も江戸和竿を愛用しています。

――なるほど。ほかにはどんな読み方ができますか?

葛島 同じジャンルの竿を一堂に集めたことで、近年人気のタナゴ竿にしても、たとえば口塗りに施される何パターンもの装飾塗り、さらには筋引きの本数や幅の違いによる意匠の差異を簡単に見比べることができます。シンプルなもの、艶やかなもの、それぞれの作り手がどんな美意識を持って作った竿なのか、他との比較でより際だって見えてくるでしょう。各ジャンルの「江戸和竿の見本帳」としても使っていただけますね。

 いずれにしても、ここに掲載した江戸和竿は、現存するものの中でも貴重な逸品、珍品、幻の竿の数々です。これだけの質と量を一度に体験できる機会は他になかなかないと思いますので、まずは理屈抜きに、じっくりと読み味わっていただければうれしいですね。

07 すげ口に施される変わり塗りの見本帳も収録






2017/5/2

最新号 2017年9月号

特集は「いつものせせらぎのその上流へ! ステップアップ源流釣り入門」。巻頭の舞台は東京近郊だが、車止から2時間ほどで本格的な源流が味わえる秩父源流・赤沢谷。焚き火を囲みながら仲間とすごす時間は格別。一度味わえば源流の虜になること間違いなしだ。そのほか、野営術、ロープワーク、ビギナーにも優しいおすすめ源流など、源流入門者をトータルでサポート。今年の夏は身近にある非日常の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか? 第2特集は「夏の自由研究もお任せ! 親子で楽しむ魚釣り&虫取り超入門」。ザリガニ釣り、オイカワのピストン釣り、カジカ釣り、昆虫採集、ハチの子取りを解説。ほかにも旬の釣りをたっぷり紹介!
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