友釣り競技界のレジェンド伊藤正弘さん(72)はここ数年アユイング(アユルアー)にのめり込んでいる。半世紀以上の経験値に裏打ちされたフックの選び方とは。

解説◎伊藤正弘 写真と文◎月刊つり人編集部
1954年生まれ、岐阜県在住。友釣りの全国競技会ではジムニーカップ優勝4回、ダイワ鮎マスターズ優勝2回、シマノジャパンカップ3位、中日スポーツ杯優勝など。友釣りにおけるソリッドティップのメリットを提唱し数々のトーナメントで結果を残した「ソリッド釣法」の先駆者
友釣りと同じことと違うこと
友釣り競技の世界で華々しい成績を残し、現在はダイワ鮎マスターズの競技委員長を務めながら現役でトーナメントにも精力的に出場している伊藤正弘さんは、友釣り界のレジェンドアングラーだ。
小社が主催し、70歳以上のレジェンドアングラー、現役トーナメンター、予選を勝ち上がった各地の実力者が火花を散らした「鮎釣りドリームマッチ2025」で2位入賞。衰え知らずの技術と闘争心を見せつけてくれた。
そんな伊藤さんは4年前からアユイングに熱中している。
アユイングの魅力はどんどん移動して探れること
「アユ釣りのイベントがあったときに、ダイワのスタッフ4人でアユイングをしたんです。そのとき私だけボウズ。悔しくて、のめり込みました。アユイングのいいところはどんどん移動して探っていけるところ。友釣りだとオトリに気を使って気軽に移動できないですけど、ルアーなら関係ありません」
ドリームマッチでもポイント移動でチャンスを増やした場面があった伊藤さんは、普段の友釣りでも意識的に移動を行ないその日の状況を広く把握することに努めている。一度の釣行でより多くの学びを得たいという向上心だ。
伊藤さんは友釣りファンのなかでもハリ交換の頻度が多いことでも知られる。半日ほどの釣行でも手のひらの上に使用済みのハリが山になることもざらだ。
そこで友釣りの長い蓄積のうえにアユイングをやり込む伊藤さんに、ハリについての考えを聞いてみたい。
イカリの本数は流れの強さで3本と4本を使い分ける
ハリの話を切り出すと、伊藤さんはまず友釣りとアユイングで共通する点としてイカリの本数の考え方から整理した。
「基本的には瀬では4本イカリ、チャラ瀬やトロなど流れの緩いところには3本イカリですね」
なぜ本数を変えるのか。その理由はシンプルで、水流とハリの重さの関係だ。
「瀬のように流れが速いところでは、ハリに重さがあっても流れになびいてくれるから、根掛かりはそれほど気にしなくていい。掛ける効率を上げるために4本です。チャラ瀬や浅いところでは流れが緩いから、ハリが重いと垂れ下がってしまう。根掛かりを避けるために3本です」
根掛かり回避を意図するなら、ハリを小さいサイズにしたり、ハリ先の向きがより内側を向いているハリに替えるという手段もあるが、伊藤さんはハリのサイズも形状も変えず、なるべくシンプルに3本、4本の違いだけでローテーションしているという。そこで迷うくらいなら思考リソースをポイント選びなどに割いたほうがいいということだろう。
アユイングは友釣りよりハリ先が傷みにくい
また、アユイングのほうが友釣りよりハリ先が傷みにくいことに気づいたという。
「それは体感としてはっきりあります。友釣りではオトリが底を這うじゃないですか。浮くことはあまりない。だから石に擦れることが多い。ルアーは浮いている時間が長いですし、石に当たる時も前傾姿勢でリップが先に当たります。操作も石に当てっぱなしではないですから、ハリが擦れる頻度は格段に少ないんです」
ちなみに、チラシ系のハリは使わない。イカリで掛かるパターンを探るのにこだわったほうが、状況をつかみやすいと考えているためだ。
号数は7.5号や8号。大きいハリはバレにくい
アユイングを始めた当初、伊藤さんは小さいハリから大きいハリまでいろいろ試しながら使っていた。だが、昨シーズン後半からは、7.5号や8号といった大きいハリを中心に使うようになった。
「すっぽ抜けが少ない。バレが少ない。小さいハリはやっぱりバレます。食い込みが浅いし、線形が細いから身切れしやすい。それにルアーだから遠くにキャストした先で掛かることもある。遠くから巻いてくる間にバレるんですよ。細いハリだととくにそうなりやすいですね。大きいハリを使うようになって、明らかにバレにくいなと感じてきました」
大バリに替えてもルアーのアクションは変わらない
友釣りであれば話は別だ。小さいオトリに大きいハリを付ければ、ハリの重さがオトリへの負担になる。だからこそ伊藤さんは友釣りではオトリのサイズに合わせてこまめにハリのサイズを変えたり、ハリスを出す長さを変えたりするため、よりハリの交換頻度が高いのだ。
「ハリを大きくするとルアーのアクションに影響するのではないかとも気になっていましたが、6.5号から7.5号に変えてもお尻の振り方はほぼ一緒。厳密には違いが出るかもしれませんが、アユの反応を見る限りそこで釣果に差がつくことはないでしょう」
一般的なルアーと違ってハリスを介してフックを接続するからアクションを妨げにくいのだ。
上:アユイングミノー94SF マットナチュラルアユ。下:同クリアギラギラアユ
軽いルアーでも大バリでしっかり掛かる理由
友釣りの場合、ハリ先が野アユの魚体に触れてからオトリと野アユで引き合いになることでハリが刺さり込む。だからオトリの重さもフッキングのメカニズムの一要素だと言える。オトリよりはるかに軽いルアーに大きい=軸の太いハリを使うとフッキングが甘くなりバラシが増えるのではと思うかもしれない。しかしルアーは常に進行方向にテンションがかかっているのだから心配には及ばないという。
「大バリで10cm前後の小型も普通に掛かってきますから。バラシを減らせる分だけ有利なんです」と伊藤さん。
形状はシワリ系でワイドゲイプの「キープ」ほぼ一択
号数と本数の次が、形状の選択だ。現在の伊藤さんのアユイングにおけるメインハリはダイワの友釣り用ラインナップのうち「キープ」と「パワーミニマム」の2種類。なかでも常用するのはほぼキープに絞られているという。友釣り用のハリの種類は、ハリ先がカーブしているシワリ系と、ハリ先が真っ直ぐなストレートに分けられる。一般にシワリはハリ先が魚体に触れた後の貫通力に優れ、またバレにくい形状でもある。根掛かり率が低いというメリットもある。一方のストレートは掛かりの早さ(初期掛かり)を重視した形状だ。
友釣りでは石に根掛かりしやすい瀬を釣るときはシワリ系、チャラ瀬やトロ場の泳がせなどでは早掛けで回転率を上げるのをねらってストレートを使う、というのが使い分けの一例だ。
キープとスピードの違い、アユイングにワイドゲイプが合う理由
キープとパワーミニマムは、ともにシワリ系だが、同系統のハリと比べてハリ先がやや外側を向いていて、フトコロが深い(ワイドゲイプ)のが特徴。一方、ダイワのラインナップにおけるストレートは「スピード」「エアスピード」などが挙げられる。「スピード」はハリ先をやや内側に向けて貫通力を上げているので、キープと比べるとフトコロが狭いという。
「使ってみるとキープのほうが根掛かりしにくいし、バレにくい。スピードはストレートだからスコーンと入るような気がするんですが、内向きだからガッツリ掛かりにくいということは感じました」
友釣りは野アユが掛かった場所の近くから抜き上げてタモで空中キャッチするのでスピードのメリットを活かせるが、ルアーでは前述のとおりキャッチまでリーリングを要するから、ワイドゲイプのシワリがマッチするということだ。
パワーミニマムはキープとほぼ同じ線形で作られているが、フトコロはやや狭い。現時点ではキープが主力で、パワーミニマムは状況によって試す程度だという。
ハリスは約8cm、目いっぱい長く出す
ルアーの場合、ハリスの長さもハリス止メからハリの後端まで約8cmと決めている。パックで市販されているハリス付き完成バリなら「目いっぱい出す」長さだ。
「長いほうがハリが触れる確率が高くなる。ウォブリングで尻尾を振るタイプのルアーだとハリも左右に振れますよね。ハリスを長くしてその可動域を広くすればその分野アユに触れる確率が高くなると考えています」
オトリのサイズによってハリスの長さも頻繁に調整する友釣りとはこれも対照的である。ハリスはダイワのダブルテーパーナイロンを使い、7号には1号、7.5号と8号には1.2号のハリスを合わせる。伊藤さんは友釣りでもルアーでもハリスにナイロンしか使っていない。フロロハリスとナイロンハリスではそのイト質の違いから垂れ方などに差が出るが、慣れているナイロンの使用感に統一したいからだ。
感度を追求したタックルバランスがこのハリ合わせを求めた
最後に伊藤さんのタックルについても聞いた。アユイングに限らずすべての釣りがそうだが、ハリ合わせはタックルバランスによっても最適解が異なるものだ。
伊藤さんがタックルに求めるものは感度だ。
ルアーと石との接触、藻などによってルアーのアクションに異常がないか、ハリが野アユに当たった、など手もとに伝わってくる必要な情報をなるべくクリアに把握したい。そのためM~MHの硬めのロッドが気に入っているという。
「アユイング専用ロッドももう6本自腹で買って揃えたんです。そのなかにLパワーのものもありますが、感度がぼやけてしまい私には合わなかったですね。でも硬めのロッドだとクッション性が少ないですからバラシが増えます。そこを補うために大バリを使うようになったという面もあります。
ラインはPE0.8号、リーダーはフロロの0.8号を1mです。リーダーの長さによっても感度が全然違いますね。短いほうが感度がいいのでこの長さにしています」
ロッド:ネオステージAY 100MB-S
リール:タトゥーラBF TW 8.1R
ライン:PE0.8号
リーダー:フロロカーボン0.8号
(Photo by Masahiro Ito)
メインラインに目印を2つ、ルアーマンにない自由な発想
また、伊藤さんはルアーマンにない自由な発想で、メインラインに目印を2つ付けている。ひとつはルアーの位置確認用で水深によるがリーダーとの結び目から1mくらい、もうひとつはランディング時の抜き上げの目安となるようルアーからサオの長さ分離れたところへセットする。
「アユイングは初年度に1尾しか釣れなかったところから始まって、今年はすでに140尾釣っています。まだまだ未知の世界ですが、だから楽しい。渓流ルアーや友釣りでキャリアを積んだ人ほど、アユイングに入ってきたら面白いと思いますよ」
50年以上かけて積み上げてきた友釣りの感覚が、アユイングという新しいフィールドで新たな意味を持ち始めている。
※このページは『つり人 2026年8月号』に掲載した記事を再編集したものです。



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