もともと渓流からルアー釣りを始めたのだが、ことアユに関しては盲点だった。これまでの釣り人生でまるで接点がなく、知識も経験もゼロ。これがよかったのか、昨年チャレンジしたところ、あれよあれよとこの面白さの虜になってしまった
もともと渓流からルアー釣りを始めたのだが、ことアユに関しては盲点だった。これまでの釣り人生でまるで接点がなく、知識も経験もゼロ。これがよかったのか、昨年チャレンジしたところ、あれよあれよとこの面白さの虜になってしまった
文◎林悠一(サンスイ渋谷店Part1) 写真◎編集部
経験も知識もゼロからのスタート
ここ2、3年程で爆発的な人気を集めているアユのルアー釣り。私も昨シーズンからその面白さに魅了されてしまった一人で、昨シーズンの夏はアユルアーにすべてを捧げて利根川に通い続けた。おそらくこれからアユルアーをやってみたいと思っているルアーマンの多くも友釣りの経験がない方が多いと思うが、私自身もアユ釣りの経験はなく知識ゼロからのスタートだった。調べては実際に釣り場で試してを繰り返し、最高釣果は50尾を超えるようになった。
アユルアーの魅力は手軽さにある。友釣りのような専門タックルを揃えなくてもアバウトで始められる。そして従来のルアーフィッシングともエサ釣とも違う、独特の魅力が詰まっている。
わずか1年であるが、やり込むにつれてアユにも喧嘩っ早い個体や、あまり戦闘的でない個体もいることがわかり、観察しているだけでも楽しかった。
興味深いのは、アユ釣りではあまり朝マヅメというのは存在せず、多くのルアーマンが敬遠しがちな昼から活性を上げることが多かったこと。さらに快晴ならなおよく、ドピーカンの真っ昼間というルアーマンは特に避けるタイミングがよいのも新鮮だった。
アユ釣りにおいてポイントの見極めがかなりの重要度を占める。私も最初にルアー釣りを始めたのは渓流ルアーからで、やってみるとヤマメやイワナが釣れるポイントにやや似てはいるものの、そこにアカの要素が加わってくる。ただ、始めてばかりでいきなり釣れる石の見極めはなかなか難しく、川によっても違うことから疑心暗鬼になってしまうだろう。私もここで書いているのは通った群馬漁協管轄の利根川の友釣り専用区で感じたことである。
では、どこにアユがいるかを簡単に見極められるのが「跳ね」だ。それは渓流魚のライズにも似ているが、ライズよりも魚体を大きく水面から出して跳ねている。「跳ね」自体はナワバリを持ちアカを食んでいるアユにも見られるため、捕食行動ではないように感じられる。
「跳ね」でアユの位置は見当が付く
ルアーマンの性質上、どんどんポイントを変えていきたいところではあるが、アユルアーの場合はその見切りの早さが仇となることが多々ある。
アユルアーに行ってもなかなか釣果が伸びない方が多いようだが、その共通点にポイントの見切りが早過ぎると感じる。
喧嘩っ早い個体は流し始めてすぐにルアーにアタックしてくるが、友釣りと違いアユルアーは所詮偽物。用心深かったり、あまり攻撃的ではない個体には長くルアーを見せて害敵と思わせる必要がある。特に「跳ね」が頻繁に起きている場所はじっくりとルアーを流したい。私は一ヵ所で10分以上ルアーを見せ続けることもある。
食わせの釣りならスレてしまうが、アユルアー釣りでは長く見せることでルアーを気にもしなかった個体が徐々に苛立ち始め、いきなりルアーにアタックしてくることがよくある。
もちろん、活性が高い状態であればコンスタントにポイントを変えていくのも重要だが、なかなかそういった状況にはなりにくいので、流してすぐにポイントを見切るのではなく、根気よくルアーをアユに見せ続けることも釣果を伸ばす近道だ。
ルアーの泳ぎを制御する大切さ
アユルアーは対岸へ少しキャストして川を横切らせて巻いてくる場合と、自分がポイントの上流に立ち下流にルアーを流し込んでピンポイントにルアーを泳がせ続ける二通りの釣り方がある。群れアユを釣る場合は川を横切らせる釣りが有効で、ナワバリ意識が強いアユを釣る場合はピンポイントに留めてルアーを泳がせ続けることが有効で自分もこの釣り方が好きだ。
ロングキャストが必要なく短距離でイトを送り込んだり巻いたりを繰り返す釣りなのでスピニングタックルのメリットはあまり感じない。私はライトソルト用で8ft2inのベイトロッドを使っている。
流れが強ければミノータイプはリップが水を噛み沈むが、水を噛まなくなれば泳がなくなり浮上してしまう。また、水を噛み過ぎると左右に振れて動いてしまう。
こうした上下左右の動きをコントロールして、よい場所で留めて泳がせ続けられることがアユルアーで一番重要だと感じる。
泳ぎの上下の動きは流れが弱くなると起こりやすくなることが多いので、専用のシンカーをルアーのフロントフックアイに装着することで上下の動きを安定させることができる。
泳ぎの左右の動きは自身のサオ先を左右に動かすことで制御できる。このときにルアーが見えていないとコントロールすることができないので、偏光サングラスは必須。さらに背中がチャートやオレンジ等見やすいカラーのルアーを選んでおくとベストだ。背中が見えにくいカラーのルアーでも、別売りのマーカーシール等をルアーの頭や背中に貼れば見やすくなる。
涼しさ優先より安全優先で
夏の高水温期は磯やサーフといった海よりも清流に立ち込むアユ釣りのほうが涼しい。特にアユルアーではゲータースタイルでウェーディングシューズを履くことが一般的なためより涼しげだが、私はタイツに中割れタイプの鮎タビスタイルをオススメする。
アユルアー釣りの特性上、川に入って釣りすることがほとんどのため、中割れタイプであれば通常のタビのように親指とその他の指が分かれているので水流を受けてもしっかりと踏ん張ることができ、転倒のリスクを避けやすい。シューズに比べて水抜けもよいため抵抗が掛かりにくく水中を歩く際にも快適だ。
タイツは膝から脛にかけてパッドが入って足を保護してくれるものが望ましい。軽装備で手軽に始められるが、足もとは安全のためにもしっかりと装備しておきたい。
利根川とは違う酒匂川の魅力
今回は利根川が豪雨による増水だったことから神奈川県小田原市を流れる酒匂川へ向かった。完全に初場所で、こちらも前日まで降った雨で増水と濁りが少し入った状況ながら、地元アングラーによれば釣りにはなる水位とのこと。
報徳橋下流左岸の漁協の上流から釣りを開始。メインの流れは増水で深く流れも速いため、流れの緩い浅瀬に入った。通い慣れた利根川と違いポイントの目安になる大きな石はなく、小さめな石が一帯に敷き詰められている。
流心は増水の影響かアユの気配はなかったが、残りアカがある岸際の水深30㎝ほどのチャラ瀬で広範囲にアユの跳ねが見られた。
こうなると普段のピンポイントの釣りは厳しいので少しキャストしてルアーをドリフトさせながら広範囲にやる気のあるアユを探すと頻繁にアユがルアーにじゃれついてくるようすを肉眼で確認。
ハリは3本イカリからスタートした が、チラシに交換することで掛かりがよくなった。
朝のうちは曇っていたが、正午を過 ぎる頃には晴天になり、陽射しが強くなったタイミングで跳ねも一層激しくなり、追いも強くなったタイミングでプチ入れ掛かり。
10㎝の小型から17㎝クラスまでサイズにバラつきはあったが、雷雨の予報のため午後早めに納竿しても20尾近く釣ることができた。
初めての河川であったが、天然遡上が非常に多いようで、釣り場へのアクセスも良好。今後も通うこと間違いなしである。
ロッド: ブルーカレントⅢ 82/B(ヤマガブランクス)
リール: アルデバランBFS XG(シマノ)
ライン:スーパートラウト アドバンス ベイトフィネス PE X4 0.5号(バリバス)
リーダー:トラウト ショックリーダー 4Lb(バリバス)
好んで使っているアユルアー。上から
DUO /流鮎110F
ima / homare MD110F
パームス/エスケード100MDF
アユルアーは上から見て目立つ色であることが条件。目立たないようならマーカーシール等をルアーの頭や背中に貼れば見やすくなる
どの釣りでも偏光グラスは必需品だが、石、ルアー、アカ、アユ、水深など、いろいろな情報を視覚から得るこの釣りでは特に欠かせない
オーナー/ライトスタイルガードタイツを愛用。3㎜厚のネオプレーン素材が膝から脛をしっかり守ってくれるので膝をつく場面や転倒した際にも安心して釣りをすることができる。中割れタイプのオーナー/鮎トップタビ3 は踏ん張りが利き、フェルトピンで滑りにくい
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。