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つり人編集部2026年9月15日

アユが追うルアーの条件とは?パイオニアが8年かけて出した答え

アユルアーの探求者・飯田重祐さんがエスケードを世に出したのは2018年。当時、ルアーでアユを釣るアングラーはほとんどいなかった。「まだ誰もやったことのない釣りに対して、新しい解釈を提案する喜びがありました」そう語る飯田さんの探求の軌跡と、アユルアーの魅力とは─。

著者:つり人編集部

解説◎飯田重祐 写真と文◎つり人編集部

神奈川県厚木市在住。釣具メーカー「パームス」の代表。日本の渓流ミノーイングの礎を築き上げた第一人者として知られる。アユルアーの可能性にもいち早く着目したパイオニア。著書に「鮎をルアーで釣る。トラウティストが切り拓く新世界

アユが追うルアーを作る──エスケード誕生の軌跡

いま全国の河川で人気が拡大しているアユルアー。近年は各地の漁協が次々にアユルアーの使用を認可し、専用ルアーが毎年のように生み出されている。その草分けといえるミノー「エスケード」を開発し、精力的に全国のアユ河川を釣り歩いているのが飯田重祐さんだ。

トラウトルアーの名手であり「トゥイッチングミノー」をいち早く手掛けたカリスマルアービルダーが、アユルアーに目覚めたのは2018年。神奈川県の相模川でアユルアーの使用が認可されたことがきっかけとなった。

「パームスのアユルアー第一弾となったエスケードは、誰もが気軽に、簡単にアユが釣れるルアーを目指しました。だから川底までしっかりとルアーが届くようなMD(ミディアムディープ/フローティング)に設定しています。アユは石にナワバリを張ります。石にぶつけても壊れにくい頑丈な基盤リップを採用していて、潜り過ぎると思えばリップをカットして使うこともできる。自由にアレンジして欲しいミノーになっています。」

飯田さんが手がけたアユルアーの第一弾「エスケード80MDF」。この釣りの草分け的なミノーである
飯田さんが手がけたアユルアーの第一弾「エスケード80MDF」。この釣りの草分け的なミノーである

アユルアーの基本はダウンの近距離戦

神奈川県の相模川といえば、今や多くのアユルアーファンでにぎわう川だが、飯田さんがエスケードを開発していたころはルアーでアユを釣るアングラーは皆無だったという。どういうアクションでアユが追うのかを徹底的に観察し、釣り込んで生まれたのがエスケードである。

基本の釣り方は下流を向いてダウンで釣る。それも大半は立ち位置から10m以内の近距離を探る。アユの付いた石にルアーを留めておきたいからだ。アップやクロスで探ったのではルアーが速く通過しすぎて、アユも追い切れない。

「ルアーは深場よりも浅場のほうが釣りやすいですね。膝くらいからくるぶしくらいの水深で、サイトフィッシングができると面白い」

そう語る飯田さんと昨夏は静岡県・狩野川、新潟県・魚野川、栃木県・箒川、岩手県・気仙川を巡り、釣りを見せていただいた。その印象は〝じっくり丁寧〟である。テンポよく次々にポイントを撃っていく渓流ルアーとは探るスピードが全く違う。特にアユが見えている場面では、ルアーのコースを何度も変えて執拗にその魚をねらう。

「追いのよいアユだけ釣っていくよりも、見えているアユがなぜ追わないのか、を追求したい。だから僕の釣りは粘っこいんです」

ルアーがナワバリにどのように侵入すれば追い気のスイッチが入るのか。また、どのようなルアーの動きであれば体当たりをかますのか。それこそがアユをルアーで釣ることの醍醐味だという。

ダウンで近距離を釣るのがアユルアーの基本だ
ダウンで近距離を釣るのがアユルアーの基本だ

スライドさせるバイブレーションでアユを誘う発想

飯田さんはエスケードの誕生を機に、斬新なルアーを次々に発表していく。昨夏の取材中に最も使用頻度が高かったのが「エスケードバイブ」である。

バス用でもシーバス用でも、バイブレーションといえば背中に水を受けて前傾姿勢でよく潜り、細かいピッチで泳ぐのが一般的なアクションだ。底層を探りやすいのも特徴のひとつといえる。ところがエスケードバイブは、ロッドを左右に倒してヒラを打たせ、スライドさせるルアーなのだ。

石を食むようなスライドアクションの秘密

「ルアーで底を小突いて使う意識はありません。石の少し上層をスライドさせて、漂わせるように使うんです」

一見すると姿勢を崩してしまったかのようにも見えるバイブレーションのヒラ打ち。しかしその動きはまるで石を食むアユそのものだ。ずばりナワバリ本能を刺激するアクションである。

「エスケードバイブの利点はルアーが暴れ過ぎないことです。リップ付きミノーでは荒瀬などの流心を探ると引き抵抗が強くなってアクションも破綻しやすい。バイブレーションはそうならない。流れと水深に合ったウエイトを使えば、川底付近をしっかりと探りやすくなるんです」

エスケードバイブのラインナップ。4タイプのウエイトバリエーションがあり、その重さの違いで釣れるアユは変わってくる
エスケードバイブのラインナップ。4タイプのウエイトバリエーションがあり、その重さの違いで釣れるアユは変わってくる

ウエイトの微妙な違いがアユの反応を変える

エスケードバイブは100mmのモデルでタイプ1(11g)、タイプ1.5(15g)、タイプ2(18g)、タイプ3(25g)と細かいウエイトバリエーションが設定されている。飯田さんは3gという微妙な重さの違いでアユの反応が大きく異なることを実感しているのである。

中でも今年新たに加わった15gは「絶妙なウエイト」と言う。

「昨年までさまざまな川を釣り歩いてきた中で、私が切り札的に使っていたのがエスケードバイブのタイプ1に3g程度のウエイトを貼ったものでした。このウエイトチューンにすると不思議と釣れる気しかしない。それくらい実績の高いウエイトです」

このルアーは底に入り過ぎず、上ずり過ぎないセッティングがキモである。また140mmサイズは25gと45gがあって、盛夏以降にアユの型がよくなると反応が増えるのだ。ルアーのサイズ感もアユを追わせる要因のひとつであることは間違いないようだ。

もうひとつ、エスケードバイブには「シャローチューン エスケードバイブ フローティング」というモデルがある。その名のとおりシャロー(浅場)に特化したフローティングモデルで、水噛みをよくさせるべく小さなリップが付いている。くるぶしくらいの水深のチャラ瀬でも食んでいるかのようなスライドを見せるバイブレーションで、「トップウオータールアーのように水面で掛かるのが楽しい」と飯田さんは言う。

エスケードバイブにヒットした栃木県・箒川のアユ
エスケードバイブにヒットした栃木県・箒川のアユ

緩い流れを釣るためのエスケードナップ

今夏発売となった「エスケードナップ」も面白い。ルアーが苦手とする緩い流れを攻略するために設計された形状である。

横向き形状がもたらすボトムステイの効果

「決して奇を衒ったものではありません。横向きの形状は元々トラウトルアーから派生しています。渓流ミノーイングではフローティングタイプが有効な場面があり、浮き上がりの速いルアーよりも、ゆっくりと浮上したほうが釣れることがある。そこでルアーを横向き(浮き上がる面を広く)にして浮上時の抵抗を大きくする。これをアユルアーで応用してみたのです。横向きの形状だと、いったんボトムタッチしたルアーが浮き上がりにくい。そうすれば緩い流れでもしっかりボトムや石にタップしてステイさせることができます」

また弓形に湾曲させたのは、石の形状に沿って絡むような泳ぎにしたかったからだという。細かいボトムタップを繰り返すだけで、水底に粘りながらワイドに動くアクションを見せる。

「アユルアーの楽しみのひとつは多彩なルアーの使い分けだと思います。いろいろな流れに付いたナワバリアユを効率よく釣るには、アングラーのスキル以上に状況に合ったルアーを使うこと。その大切さを理解すれば、釣果はアップしていくはずです。僕はルアープロダクトを生業としていますが、まだ誰もアユルアーをやったことがない時代、右も左もわからない中で新しい解釈を提案する喜びがありました。そしてまだこの釣りには、ルアー作りの余白が充分に残されている気がします」

今夏リリースされるエスケードナップは緩い流れを釣るのにも適している
今夏リリースされるエスケードナップは緩い流れを釣るのにも適している

トラウティストが切り拓いたアユルアーの新世界

こう語る飯田さんの単行本が『鮎をルアーで釣る。』という本である。その中で飯田さんはアユルアーの魅力をこう書いている。

「ルアーによるアユ釣りは、人工物で本能を刺激する。色、形状、波動、レンジ、トレースコースといった要素をアングラー自身が設計し、組み立てていく。流れの強弱や水深、石の配置を読みながら、どのルアーを選び、どの角度で通すのかを考える過程には、より戦略的なゲーム性がある。

また、ルアーは〝再現性〟と〝試行錯誤〟の幅が広い。同じポイントでもカラーを変える、ウエイトを変える、アクションを変えることで反応が劇的に変わる。その変化を分析し、仮説と検証を繰り返すことが釣果に直結する。タックルバランスやルアーを通す精度も、釣果を得るための重要な要素だ。

友釣りが「循環」と「共生」の釣りであるなら、ルアーは「創造」と「戦略」の釣りだ。自然の摂理を借りるか、人工の工夫で切り拓くか。その違いこそが、ルアーならではのゲーム性なのだ。」

アユをルアーで釣ったことがないビギナーも、多少やり込んでいる中級者も、アユルアーという釣りを、より深く楽しむためのヒントがいくつも散りばめられた本である。

アユの引きを味わう飯田さん。どうすれば追うのかを分析し仮説と検証を繰り返すことが面白いと話す
アユの引きを味わう飯田さん。どうすれば追うのかを分析し仮説と検証を繰り返すことが面白いと話す

鮎をルアーで釣る。トラウティストが切り拓く新世界

✍️ 著者:飯田重祐 📅 発売年月:2026年

トラウトルアー界ではカリスマビルダーとして知られ、卓越したアキュラシーキャストで多くのアングラーを魅了してきた名手が、いま最も情熱を注ぐのがアユルアーの世界です。本書ではアユルアーのパイオニアである著者が全国の河川を釣り歩いてきた実践知と、ビルダーならではの独自理論を余すことなく公開。アユを釣るためのルアー選びから操作法、ポイント攻略までを体系的に解説します。

※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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