<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=170559842213036&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">
つり人編集部2026年10月9日

堤防は「巨大な魚礁」で魚だらけ。なのに、なぜ釣れないのか?

堤防には、魚がいる。それも半端ない数だ。アジやイワシの群れ、クロダイ、メジナ、シーバス、アオリイカ。まるで魚礁のように魚が集まっている。

ところが、初心者が堤防へ行くと、釣れない。

コロナ禍で、三密を避けられるレジャーとして釣りが注目された。多くの初心者が、堤防へ押し寄せた。そして、その多くが、あまり釣れなかった。「堤防釣りは釣れない」という認識が広まってしまった。

著者:つり人オンライン編集部

写真と文◎山根和明(株式会社つり人社代表)

つり人社代表取締役社長、日本釣振興会理事。大学時代から「月刊つり人」編集部に携わり、2006年編集長、2015年より現職。30年以上にわたり釣りメディアの企画・編集に携わる。著書に『カッパのいない川で子どもは育つか』(2026年)。個人note「それ、ヤマネに聞いてみよう。」では、釣りや自然、編集、仕事など、読者から寄せられた質問に答えている。

目次

    海の中の堤防は、巨大な魚礁だ

    そもそも堤防は、波を止め、船を守るために造られた構造物である。ところが海の中から見れば、これが実によくできた魚の棲家になっている。

    現在の防波堤の主流は「混成堤」と呼ばれる構造である。海底に石(捨て石)を積んで基礎をつくり、その上にコンクリートの箱(ケーソン)を据える。外洋側を、消波ブロックで覆った堤防も多い。

    石と石の間、ブロックとブロックの間には、無数の隙間ができる。そこが、魚の棲家になる。

    農林水産省は、人工魚礁の機能として、隠れ場、えさ場、産卵場を挙げている。堤防は、その全てを満たしていると言っていいだろう。

    壁の表面には、藻類やフジツボ、貝類が付く。隙間には、ゴカイやエビ、カニがすみつく。それを食べに、クロダイやカサゴなどの根魚が来る。壁の際ぎりぎりに仕掛けを落とす「ヘチ釣り」が成り立つのは、そのためだ。波の穏やかな港内に木の枝などで作ったアオリイカの産卵床を沈める例もある。

    堤防には、天然の岩礁にはないものが、もう一つある。釣り人が撒くコマセだ。堤防は、魚礁であり、養殖場のような存在でもある。

    港の堤防
    港を守る堤防。水面から上に見えているのは、構造物のごく一部にすぎない

    コマセを撒いたら、タカベが来た。その後ろにいたのは

    堤防に回遊魚が来ている時は、それをねらって大型のフィッシュイーターもいると思って間違いない。ルアーで釣れたカマスを泳がせて、堤防からブリを釣ったこともある。

    こんなこともあった。春、アオリイカをねらって、伊豆地方の堤防へ行った。

    日中のエギングは、アタリなし。

    夕マヅメに、メジナをねらおうとコマセを撒いていると、タカベの群れが寄ってきた。

    タカベを泳がせると、着水と同時にウキが沈んだ

    ひょっとして、この群れにアオリイカが付いてきているかもしれない。そう思って、タカベを釣り、泳がせ用の仕掛けにセットした。サオは磯ザオの2号。ウキは大型の電気ウキだ。

    仕掛けを投入すると、着水と同時に、ウキが沈んでしまった。オモリが重すぎたのかと思い、仕掛けを回収すると、グングンと引き込まれる。なんと、アオリイカがヒットしていたのだ。

    2号の磯ザオを手元から曲げたそのイカは、2kgを超える大型だった。大きなカラストンビ(口ばし)で齧られて、タカベの頭は落ちそうになっていた。

    すぐに次のタカベを釣ろうとしたが、アオリイカを警戒しているのか、なかなか釣れない。仕方なく、頭が落ちかけたタカベをセットして仕掛けを入れると、今度はウキが倒れた。アオリイカが、食い上げたのである。そのイカも、2kgを超えていた。

    タカベの頭は、完全になくなっていた。それでも、すぐに3杯目がヒットした。「堤防恐るべし」。そう思った釣行だった。

    堤防には、日頃から、釣り人のエサで魚が寄ってくる。その魚をねらう大物、つまりフィッシュイーターも、堤防を常に意識している。私は、そう考えている。

    堤防で釣れた大型のアオリイカ
    堤防釣りのエキスパート、菊間将人さん。堤防からアオリイカの3kgオーバーも多数手にしている

    なぜ、魚がいるのに釣れないのか

    堤防の魚は、釣り人にねらわれ続けている。

    人気の堤防なら、休日だけでなく、平日も朝から晩まで、誰かが仕掛けを入れている。魚は、釣られた経験を学習する。

    だからメジナやクロダイなど、その堤防に長い間居着いている魚は、スレている。メジナやクロダイの良型魚は、初心者にはおいそれと釣れない。

    釣り人でにぎわう堤防
    休日の人気堤防は、家族連れや初心者でにぎわう。魚にとっては、一日中仕掛けが降ってくる場所でもある

    回遊魚は、四六時中いるわけではない

    初心者でも釣りやすいのは、イワシやアジなどの回遊魚だ。群れで入ってくれば、サビキ仕掛けを落とすだけで釣れる。初心者の大半が、回遊魚ねらいのサビキ釣りから始めるのは、そのためだ。

    ところが、回遊魚は、四六時中、堤防の周りにいるわけではない。季節や時間帯によって、回遊してくる。回遊魚がいなければ、サビキ釣りは途端に難しくなる。

    初心者が堤防で釣れなかった理由の一つは、ここにある。魚はいても、その時、サビキで釣れる魚がいなかったのだ。

    日本釣振興会の初心者向けサイト「釣りあそびジャーナル」は、弊社が制作している。このサイトでは、サビキ釣りでも、エサのアミをハリに付ける「トリックサビキ」を使うことが多い。

    トリックサビキなら、回遊魚がいなくても、ネンブツダイや小メジナ、スズメダイなどが釣れやすい。

    スレた良型メジナは、小メジナの群れに突っ込んでくる

    では、スレた良型のメジナやクロダイは、どうすれば釣れるのか。

    釣り人は、さまざまな工夫をする。ハリスを細くする(1号前後)。ハリを小さくする(グレ3号など)。ウキの浮力を抑える。浮力が残っていると、魚は違和感を覚えて、エサを吐き出してしまうからだ。堤防では、そんなアタリが多発する。だから面白い。以前この連載で書いた、ウキを沈めて釣る人たちの話も、その延長線上にある。

    ただ、仕掛けを細くするだけでは、釣れないこともある。

    40cmオーバーを2ケタ釣る人に教わった

    伊豆半島の東岸には、実績の高い堤防釣り場が点在している。しかし、コロナ禍でゴミを放置する初心者が増えたために、釣り禁止になってしまった堤防が少なくない。まだ禁止される前のこと。メジナの実績が高い堤防によく通った。毎年40cmオーバーのメジナを2ケタ釣る人がいた。その人に、釣り方を教えてもらった。

    堤防のようなスレた釣り場では、良型メジナは沈み根の近くに潜んでいることが多く、深ダナねらいが基本とされていた。しかし、四六時中釣り人が絶えないその釣り場では釣り人が撒くコマセを求めて、小メジナやフグ、ネンブツダイなどのエサ取りがたくさん棲みついている。付けエサがタナに着く前に、エサ取りに取られてしまう。

    コマセを手前だけに打ってエサ取りを集め、仕掛けを沖に遠投しても、仕掛けの着水音でエサ取りに察知されてしまう。

    ウキ下は30cm、ほぼ水面直下

    そのエキスパートの仕掛けを見せてもらうと、なんとウキ下は30cmほどである。ほぼ、水面直下だ。しかも、沖の仕掛け投入点にも、コマセをダイレクトに入れている。コマセ落下点では、小メジナが乱舞しているのが遠目にも見える。そのエキスパートは、その小メジナが乱舞している中から、40cmオーバーを釣り上げるのだ。

    理由を聞くと、こう教えてくれた。

    「あれだけ小メジナがいると、良型メジナのいるタナまでコマセは落ちていきません。すると、良型メジナは痺れを切らします。コマセの着水音に素早く反応し、そのポイントに一目散にダッシュします。でも、良型魚は表層が危険なことを知っているので、小メジナのように定位しません。オキアミを口にしてダッシュで潜ります。その動きが速すぎて、我々には見えません。我々の目にはいつも小メジナしか入って来ません。しかし、コマセ着水直後には、良型魚がその煙幕に突っ込んでくるのです。泳ぐスピードは小メジナより良型メジナのほうが速いですよね」

    そのエキスパートは、そのため、片手でサオを持ち、片手でコマセヒシャクを持ち、同時に振り下ろす。すると、仕掛けとコマセが同時に沖のポイントに着水する。そしてすぐ、良型メジナがヒットするのだ。

    ヒットしてからのやり取りも、磯より堤防の方が難しい。磯より仕掛け全体が細いことに加え、堤防の周りには基礎が沈んでいる。基礎の角は鋭角だ。ここにハリスが触れようものなら一瞬で切られる。そして、何度か釣られそうになったことがある良型魚は、そこに突っ込めば逃げ切れることを知っている。だから、ほとんどと言っていいほど、基礎のあるところに突っ込もうとする。手前まで来たら、イトを出さないやり取りをせねばならない。

    私もその釣り方を習得して、堤防から40cmオーバーのメジナを何尾も釣ることができた。

    堤防で釣れた良型のメジナ
    堤防で釣れた良型のメジナ。釣り人の多い堤防の良型ほどスレていて、一筋縄ではいかない

    堤防の実力を知りたければ、腕を鍛えてから

    堤防は初心者の釣り場と思われがちだ。もちろん、初心者も楽しめる。でも、堤防の実力を知りたければ、それなりに腕を鍛えてから行ってほしい。そうすれば、周囲があっと驚くような釣果をあげられるはずだ。

    次回|なぜ釣り禁止の堤防ほど事故が起きるのか? 開放された堤防との違い

    釣り禁止の場所が増える昨今。それでも、禁止されたはずの堤防で事故が起きています。
    なぜ開放した堤防では起きにくいのか。釣り人のモラルとあわせて考えます。

    毎週金曜更新| 「釣りの疑問に全部答える」

    筆者の個人note 「それ、ヤマネに聞いてみよう。」では、読者のみなさんの質問に答えています。
    釣り・魚・自然のことも、それ以外のことも。質問はこちらから >

    【発売2日目でAmazonカテゴリランキング1位を獲得!】カッパのいない川で子どもは育つか

    ✍️ 著者:山根和明 📅 発売年月:2026年5月

    子どもの自殺者数が過去最多を更新し、不登校は35万人を超えた。 豊かで安全なはずの日本で、なぜ子どもたちはこれほど追い詰められているのか。 自然体験が、待つ力、やり抜く力、折れない心を育てる。 創刊80年の釣り専門誌『つり人』編集長を10年務め、親子向け魚釣りイベントにも多く携わる筆者が、記者として、父として、水辺と子どもに30年かかわり続けてたどり着いた育て方のヒントとは。 巻末には、政治の側から子育て支援と水辺の環境問題に取り組む、元滋賀県知事で参議院議員の嘉田由紀子さんとの対談も掲載。

    つり人オンラインを検索で優先表示

    Googleの検索結果とおすすめ記事欄に、つり人オンラインの記事が表示されやすくなります

    Googleで優先するソースとして追加

    釣りの疑問に全部答える

    月刊つり人 最新号

    つり人 2020年5月号

    列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

    記事検索

    月刊つり人 最新号

    つり人 2020年5月号

    列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

    ×
    拡大画像