<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=170559842213036&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">
つり人編集部2026年11月6日

なぜ釣りは「鮒に始まり鮒に終わる」のか?ウキの動きで水中を推理する面白さ

私の釣りは、7歳の夏、福岡県柳川市の堀割りで始まった。

私は第二次ベビーブーマー世代で、神奈川県川崎市で生まれ育った。幼少期、すでに川崎は急速に都市化、工業化が進んでいて、田園風景は限られた場所にしかなかった。多摩川が近くに流れていたが、当時の多摩川は死の川と呼ばれ、水質汚濁が最悪の状態だった。

しかし、母の実家が柳川にあり、春休みや夏休みの大半は柳川で過ごした。柳川は市内に堀割りが葉脈のように張り巡らされた水の都で、見渡す限りの田園風景が広がっていた。

著者:つり人オンライン編集部

写真と文◎山根和明(株式会社つり人社代表)

つり人社代表取締役社長、日本釣振興会理事。大学時代から「月刊つり人」編集部に携わり、2006年編集長、2015年より現職。30年以上にわたり釣りメディアの企画・編集に携わる。著書に『カッパのいない川で子どもは育つか』(2026年)。個人note「それ、ヤマネに聞いてみよう。」では、釣りや自然、編集、仕事など、読者から寄せられた質問に答えている。

目次

    7歳で釣った最初の1尾は、ライギョのポカン釣り

    実家の周囲もぐるりと堀割りに囲まれていた。その堀割りをのぞくと、フナやコイ、オイカワ、ライギョなどがたくさんいた。

    7歳の時、祖父が初めて釣りザオを持たせてくれた。釣りザオと言っても、庭の林に生えていた布袋竹を祖父が刈り、陰干ししただけの竹ザオである。長さは1.5mくらいだったろうか。それにナイロンイトを結び、その先にハリをセット。ハリはキスバリや丸セイゴのような軸の長いタイプだった。

    エサは田んぼの土手を飛び跳ねているカエル。5cmほどのカエルを捕まえて、お尻の辺りにハリをチョン掛けにする。

    「よし、あそこに浮いているライギョの鼻っ面にカエルを落としてごらん」と祖父が指差す方を見ても、ライギョがどこにいるのかわからない。何のことはない。私が木の棒だと思っていたのが、ライギョだったのだ。その端っこにカエルを落とすと、バシャンと水面が爆ぜて、ライギョがカエルに飛びついた。30cmにも満たなかったかもしれないが、それが私が初めて釣った魚だった。

    その1尾で、私は釣りの魅力に取り憑かれた。朝は薄暗いうちから釣りに行き、日が昇り朝食の準備ができたあたりで家に帰り、食後はまた釣りに行き、昼食を食べに家に帰り、食後はまた釣りに行き、夕方まで没頭した。そんな毎日を送っていた。

    柳が枝を垂らす福岡県柳川市の堀割り
    福岡県柳川市の堀割り。筆者の釣りは、こうした水辺で始まった

    「フナに始まる」のは、フナが最も身近な魚だったから

    ところで、釣りには昔からこんな格言がある。「釣りはフナに始まりフナに終わる」。昭和の釣り入門書には、たいていこの格言が書かれていた。令和の釣り人にはピンと来ないかもしれない。なぜならフナが身近な魚ではなくなってしまったからだ。最大の要因は都市化だ。

    文部省唱歌の「春の小川」の一節を思い出してほしい。「春の小川はさらさらいくよ、海老やめだかや小鮒の群れに」。これはどこか遠い地方の風景を思い出してしまうが、渋谷区代々木を流れていた河骨川がモデルと言われている。ほんの100年前まで、あの渋谷ですらこんな田園風景が広がっていたのだ。

    家々の近くには田畑が広がり、用水路やため池があった。そこは子どもたちにとって格好の遊び場だった。つまり、最も身近なターゲットがフナだったのだ。私にとっての柳川の堀割りが、かつては日本中のあちこちにあった。

    それだけではない。「釣りの六物」という言葉を聞いたことがないだろうか。六物とはすなわち、サオ、イト、ハリ、ウキ、オモリ、エサであり、これが釣りの基本形だった。今でもフナ釣りの基本仕掛けである。身近なフィールドで、かつ基本的な釣り方で楽しめる釣り。それがフナ釣りだったのだ。

    柳並木の間をまっすぐ延びる柳川の堀割り
    こうした身近な水辺が、かつては日本中のあちこちにあった

    なぜ、フナ釣りで終わるのか

    では、終わるとはどういうことか。フナ釣りで釣りの楽しさを知った人が成長し、行動範囲が広がると、海や渓流の魚も射程圏内に入ってくる。そして磯釣りや投げ釣り、あるいは渓流釣りやアユ釣りに興じるようになる。

    日本は世界屈指の釣りの先進国だ。それは地理的要因が大きいと私は思っている。海流が交差する島国で、列島の中央部には3000m級の山々が連なり、そこから3万本以上の川が海に注ぐ。しかも、基本的に海岸線や川や湖沼は国民の共有財産だ。イワナ、ヤマメ、オイカワ、コイ、フナ、ハゼ、アジ、シロギス、クロダイ、スズキ、ヒラメなど、四季に応じて様々なターゲットをねらえる。年齢やその時の経済状態、健康状態に応じた釣りを、まさに老若男女が楽しめるのだ。

    そんな中で、なぜ釣りはフナに終わるのか。それはやはり、年老いて遠出ができなくなっても、身近なフィールドで楽しめるからだ。しかし、それだけではない。一言でいうと、フナ釣りには釣りのエッセンスが凝縮されているからだ。

    ウキの動きから、見えない水中を推理する

    ライギョ釣りは、いわゆるサイトフィッシングだった。しばらくすると、祖父は今度はフナ釣りを教えてくれた。トウガラシウキをセットしたウキ釣り仕掛けである。エサは裏の畑で掘ったミミズか、祖母が小麦粉と卵で作ってくれた練りエサ。

    ここからは違う。見えない魚を相手にする釣りだ。ウキの動きで水中の魚の状態を想像し、アワセのタイミングを測る。ウキが小さく上下動を繰り返すが消し込まないときは、「エサが大きすぎるのかもしれない」と考え、練りエサを小さく付けてみる。ウキがピョン、ピョンと大きく上下動を繰り返すときは、「魚が戯れているのかもしれない」と考え、打ち込む場所を変える。

    ウキの色々な動きから水中の状態を想像し、釣り方をアジャストしていく。これがハマりにハマり、ますます釣りにのめり込んだ。しかも、フナは真昼間はアタリが遠くなる。だから、朝と夕方はフナ釣り、真昼間はライギョ釣りという感じで、釣り三昧の日々を送っていた。

    見えない水中を推理する。推理に合わせて仕掛けを変える。そして、1尾、1尾と駆け引きする。その後、私は色々な釣りをすることになるが、釣りの面白さの根っこは、7歳のころのフナ釣りと変わらない。今でもフナのウキ釣りには、釣りのエッセンスが凝縮されていると思う。

    竹ザオと釣れたフナを手にする釣り人
    竹ザオで釣れたフナ。水中の様子はウキの動きから想像するしかない

    釣れれば何でもいいなら、それは釣りではなく漁である

    司馬遼太郎は『アメリカ素描』で、文明は普遍的で合理的なもの、文化は不合理なものだと書いている。なるほど、電気や自動車は普遍的なものであるし、茶道や盆栽などは不合理である。

    釣りもしかりだ。例えば、フナを釣るなら、竹や木の棒をサオにしても釣れるだろう。にもかかわらず、今のフナ釣りファンの中には、和竿師が丹精を込めて作った数十万円もする和竿を用いて釣る人もいる。釣れれば何でもいいというものは、もはや釣りではなく漁である。釣りはあくまでも遊漁である。新鮮な魚を食べたければデパ地下の鮮魚コーナーに行けばいい。

    1尾、1尾との駆け引きを楽しむ。そのために、自分の納得する道具を用いる。「釣りはフナに始まりフナに終わる」。私は最後は、とっておきの和竿でフナ釣りをするに違いない。

    砂利の上に置いたフナと和竿

    次回|釣り人はなぜ迷信を信じるのか?

    釣行の前にゲンを担いだり、釣れた日と同じことを繰り返したり。釣り人には不思議な習慣があります。釣り人はなぜ迷信を信じるのか。その理由を考えます。

    毎週金曜更新| 「釣りの疑問に全部答える」

    筆者の個人note 「それ、ヤマネに聞いてみよう。」では、読者のみなさんの質問に答えています。
    釣り・魚・自然のことも、それ以外のことも。質問はこちらから >

    【発売2日目でAmazonカテゴリランキング1位を獲得!】カッパのいない川で子どもは育つか

    ✍️ 著者:山根和明 📅 発売年月:2026年5月

    子どもの自殺者数が過去最多を更新し、不登校は35万人を超えた。 豊かで安全なはずの日本で、なぜ子どもたちはこれほど追い詰められているのか。 自然体験が、待つ力、やり抜く力、折れない心を育てる。 創刊80年の釣り専門誌『つり人』編集長を10年務め、親子向け魚釣りイベントにも多く携わる筆者が、記者として、父として、水辺と子どもに30年かかわり続けてたどり着いた育て方のヒントとは。 巻末には、政治の側から子育て支援と水辺の環境問題に取り組む、元滋賀県知事で参議院議員の嘉田由紀子さんとの対談も掲載。

    つり人オンラインを検索で優先表示

    Googleの検索結果とおすすめ記事欄に、つり人オンラインの記事が表示されやすくなります

    Googleで優先するソースとして追加

    釣りの疑問に全部答える

    月刊つり人 最新号

    つり人 2020年5月号

    列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

    記事検索

    月刊つり人 最新号

    つり人 2020年5月号

    列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

    ×
    拡大画像