5月27日(土)、群馬県邑楽町の中野沼で「外来魚駆除大作戦」という名前の釣り大会が開催された。当日はタウン誌などの告知を見て集まった親子連れら155名が参加し、オオクチバスをはじめとする外来魚を釣りあげた。「駆除」と名付けられてはいるが、キャッチされたバスは殺処分されなかった。
殺処分からゾーニングへ。
サイト・ビー=写真と文
外来魚問題に新たな道筋
5月27日(土)、群馬県邑楽町の中野沼で「外来魚駆除大作戦」という名前の釣り大会が開催された。当日はタウン誌などの告知を見て集まった親子連れら155名が参加し、オオクチバスをはじめとする外来魚を釣りあげた。「駆除」と名付けられてはいるが、キャッチされたバスは殺処分されなかった。

2005年に、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されて以降、釣ったバスをほかの水域に放流することはもちろん、生かしたまま持ち運んだり、飼育したりすることが禁止されている。しかし、この釣り大会を主催する邑楽町の教育委員会が、環境省からオオクチバスとブルーギルの飼養等許可を取得。これによって運搬と展示用の飼育が可能になった。また、この許可を受けたもの同士であれば、受け渡しも法律上問題なく行なえる。実際に、今回捕獲された外来魚の一部は群馬県内の管理釣り場に引き取られた。
天然記念物指定の中野沼での取り組み
ここで、今年で5回目となる「外来魚駆除大作戦」が始まった経緯を説明したい。中野沼は、東沼と西沼が水路で繋がっており、農業用のため池として利用されている。ここにはマミズクラゲ、ナミウズムシ、ムネカクトビケラなど希少な生き物が生息していることから、1999年に邑楽町の天然記念物として指定され、西沼での釣りが禁止された。
これをきっかけに「釣りを禁止にするだけでなく積極的に生態系を保全するための取り組みも行なうべきでは?」という意見が行政に寄せられるようになった。そこで近隣の学校への告知やタウン誌で参加者を募り、外来魚の駆除を目的とした釣り大会として始まったのが「外来魚駆除大作戦」なのである。
子どもたちをはじめとする参加者からはおおむね好評だったものの、当初は殺処分を余儀なくされていたため、保護者たちから次のような意見が寄せられるようになった。
「たくさん釣れて子どもたちも喜んでいるが、釣った魚を殺してしまうのはかわいそうだ。なんとかならないか」
主催者である教育委員会はこの意見を真摯に受け止め、殺さずに済む方法を模索した。その結果が環境省からの飼養等許可の取得なのである。






子どもたちに「殺処分」を押しつけないために
今回の開催にこぎつけるまでにアングラーの立場から大きく貢献した人物がいる。日本釣振興会群馬県支部長であり、太田市で釣具店「オジーズ」を営む柏瀬巌さんだ。教育委員会が飼養等許可を得るにあたり、相談役として助言をしていた。実は柏瀬さんがこの大会に関わるようになったのは、まだ殺処分による駆除が行なわれていた4年前から。この大会で子どもたちへ外来魚と環境について教える講師役を買って出たのがきっかけだった。柏瀬さんはこう話す。
「外来魚を悪者と決めつけて駆除をするのは簡単なことですが、それを何の疑いもなく子どもたちが受け入れているのに違和感を覚えました。大人がいろいろな意見を踏まえて駆除を決めるのは仕方ない面もありますが、子どもたちに参加してもらうのであれば、自分で外来魚や環境問題について考えられるよう、正しい知識を身につけてもらいたいと思い、毎年講師役を務めています。そんななかで出てきた『殺したくない』という意見を聞いて教育委員会の皆さんが動いてくれたことに感動しています」

飼養等許可を得るのは決して簡単なことではなかったという。それに加えて捕獲したバスを殺処分しないことについて厳しい意見が寄せられるのではないかという懸念もスタッフの間で持ちあがった。それでも決行したのはなぜなのか。教育委員会の網倉雄二郎さんに聞いた。
「私どもは中野沼の生態系保全のためにこの活動をしているわけですが、駆除の対象となっている魚の命を救えるのであればそのほうがいいですし、その魚を飼育展示して子どもたちや町の皆さんに知識を深めてもらえればなおいいですよね。在来種にとっても外来種にとっても人間にとってもいいことしかないんです。教育の観点から見ても、今後も同じ形でやっていけたらいいと思っています」




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2017/06/26