「ザリガニを食べているバスを釣りたい」──フリッパーにとって、それはひとつの大切な様式である。7ft6inのフリッピンスティック1本を手に、馬路久史が茨城県・小貝川へ向かった。ジグ&チャンクで理想を追った一日が、どんな答えにたどり着いたのか。
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解説◎馬路久史 文◎Basser編集部 取材協力◎内海昭、宮本光之
1973年生まれ。愛知県出身・山梨県在住。学生の頃読んだ『Basser』に影響され、フルタイムプロを志して大学を中退。河口湖を拠点にトーナメント漬けの20代を過ごす。2004年、ケイテックに入社。故・林圭一さんとともにスイングインパクトシリーズを開発。2016年に2代目社長に就任。現在は霞ヶ浦のW.B.S.プロトーナメントに参戦。ジグ&テキサスを中心としたオールドスクールなカバーフィッシングを愛する。
生きものあふれる小貝川のバスフィッシング
馬路がウッドカバーを撃っていると黒いものが降ってきた。ノコギリクワガタだ。それも2匹。隣のブッシュではアオダイショウが鳥の卵を探している。クモの巣の数も半端ではない。あちこちの水面でブルーギルが波紋を作って遊んでいる。
ここは茨城県・小貝川。利根川の支流であり、かつては暴れ川として人を悩ませた。洪水時に水面下に入る前提で設計されている沈下橋(潜水橋)が現存するのはその名残り。手すりがないため流されてきたものが引っ掛からないのだ。NHK連続テレビ小説『風、薫る』に登場する小目沼橋は小貝川に架かっている。
大水によって形成された三日月湖や細長い逆ワンドも多い。そういった場所はショアラインが手つかずのままになっている割合が高く、水生植物や虫、爬虫類、そしてバスアングラーを喜ばせている。
ザリガニ食いのバスをジグで釣りたい
馬路が小貝川を釣るのはほぼ初めて。前日の下見も含め、馬路には明確なテーマ……というか強い願望があった。それは「ザリガニを食べているバスを釣りたい」。フリッパーにとってザリガニを捕食するバスを手にするのはひとつの大切な様式である。しかし、馬路のホームである霞ヶ浦ではザリガニの気配を感じることが年々減っている。
馬路「私にとってザリガニは特別な存在なんです。子どものころザリガニ釣りをよくしたんですが、釣りバリがないのに上がってくるところに異様な興奮がありました。バスフィッシングとの関係も深くて、ザリガニから生まれたルアーも多いですよね。ワームはミミズでミノーは小魚、ポークはザリガニというイメージがあります。小貝川はもともとザリガニが多いと聞きますし、アシもガマもウッドカバーも豊富で期待できそうです!」
水位:平水(1週間前の台風による増水が落ち着いてきた状況)
水温:24.5℃
ワンドのシャローカバーをジグ&チャンクで撃つ
馬路はこの思いを起点にルアーやエリアを選んだ。出船後にまず向かったのはワンド。ザリガニは流れが緩い泥底を好むからだ。それに本流よりもシャローカバーが密集している。手にしたフリッピンスティックにはジグ&チャンク(キャスティングジグ3/8oz+フレックスチャンクL)がセットされていた。
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馬路「正直、今日がプライベートならずっとワンドだけやりますね。だってジグで釣りたいから。ザリガニが豊富ならジグ&チャンクがハマるはずです。ジグはノーシンカーやテキサスよりも強烈なアタリが出ることが多い。コツコツコツ……じゃなくて、ギュギュギュー!と持って行くやつです。アレがたまらないんですよ」
一方で不安がなかったわけではない。実は前日の下見ではジグにはワンバイトもなかった。バックスライド系のほうが手堅いかもしれない……という思いが芽生えていたのは事実。しかし、だからといってジグをあきらめられるほど馬路の願望は弱くなかった。
台風後のミスバイトが思い出させたW.B.S.第3戦
日の出とともに出船した馬路はワンド内のガマやブッシュを撃っていく。すると5時20分、さっそく最初のバイトが出た。ブッシュの脇にジグを落とすとティップが入ったのだ。しかし、フッキングは不発。30分後にはもう一発明確なバイトを得たがまたしても掛からない。
馬路「先週の台風の雨で水温が下がったのがきいちゃってるのかもしれないですね。口の中に収まりやすいノーシンカーやテキサスのほうがいいかもしれない」
これと酷似した状況を馬路は6月上旬に体験していた。6月6〜7日に霞ヶ浦で開催されたW.B.S.第3戦である。同じように台風通過後の試合で、馬路は度重なるミスバイトに泣かされていた。結果は1335g差の2位。優勝した蛯原英夫は微細な違和感でもアワセを入れるという手法で同じ状態の魚を獲っていた。
馬路「悔しかったですね。ほんとに。同じシャローマンとして蛯原さんを尊敬した試合でもありました。その蛯原さんが釣りの腕を磨いたのが小貝川ですよね。今回、ここに来たのはそういう理由もありました」
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ノーシンカーリグへの譲歩とファーストフィッシュ
さて、結果的に馬路はワンドを一周したタイミングで譲歩した。グライドカマロン3.5inのノーシンカーリグをメインに撃ち直すことにしたのだ。6月以降のマッディーシャローではバックスライドが定石になっているが、その理由のひとつはエビ食いのバスの目線が上を向くからである。
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そして7時30分、30cmクラスをキャッチ。ブッシュのアウトサイドを群れで回遊していた魚が目に入り、近くにノーシンカーリグを入れると追ってくれた。しかし馬路の顔は浮かない。安心感はあるが満足感はない。そんなファーストフィッシュだった。
このあとテキサスリグも交えてワンドをさらにもう一周するが追加ならず。出口のアシで小さなミスバイトがあっただけだった。8時10分にワンドを出た馬路は本流側のアシを探ったあと下流に向かい、アシ島などをテキサス&ノーシンカーリグでチェック。正午まで各所を転々としたが1バイトも得ることはできなかった。
午後はカバーから50cm離して撃つ
結果的に午前中の3バイトはすべて最初のワンドに集中していた。12時46分、馬路がワンドに戻ったのは自然な成り行きだった。まずは外側のアシをソルティ・コアチューブ4.25inのノーシンカーリグでチェック。
馬路「ここまでは徹底的にカバーの中を撃ちました。午後は外側に浮いた魚も視野に入れてやっていこうと思います」
午前中は倒れたアシの隙間やブッシュのインサイドなどにリグを送り込んでいた馬路だったが、後半戦はカバーから50cmほど離したところに着水させることが増えた。ワンド内に進入し、2周、3周と徹底的に撃っていく。しかし、16時まで時間をかけて小型と思われるアタリが2度あったのみ。馬路は明らかに困惑の表情を浮かべていた。
そして16時。ワンド内を休める意味で外側のアシに戻った馬路はクレイジーフラッパー4.4inの10gテキサスリグを結んだ。かなりボリューミーであり、ツメの水掻きと相まってアピール力は相当に強い。
馬路「これだけカバーを撃って釣れないということはバスが外側を泳ぎ回っている可能性もありますよね。そういう魚も寄せるパワーがあるソフトベイトにしました。これを食える魚だけねらっていきます」
セクシーインパクト4.8inへのローテーションと小魚の存在
だが、馬路は10分もしないうちにソフトベイトをセクシーインパクト4.8inに変えた。
馬路「バタバタよりもスーッのほうがいいかな、と……」
歯切れは悪かった。確信を伴うチェンジではない。むしろ、バイトの遠さからくる迷いが招いた変更と解釈することもできた。セクシーインパクト4.8inは今年多くのバスを釣らせてくれている。そんな記憶に頼りたい気持ちもあったのかもしれない。
時を同じくして、水面で跳ねる細長い小魚が目に入ってきた。ザリガニのことが強く頭にあった午前中はあまり目に入っていなかったが、バスはこういった小魚を偏食している可能性もある。
43cm1350gのマッチョなバスをキャッチ
16時18分、アシのストレッチにあるブッシュを撃つとここまでの小さなバイトとは格が違う感触が手もとに伝わってきた。気付けば身体が勝手にアワセを入れていたという。決して短くないファイトだったが、馬路は終始無言のままハンドランディングを決めた。手にしたのはなかなかお目にかかれないマッチョなビッグフィッシュ。43cmだがウエイトは1350gもあった。
馬路「よかった……。アドレナリンが吹き出ました。思えば、今年は急に冷えたり、濁ったりした状況でことごとくセクシーインパクト4.8inに助けられたんですよね。10gテキサスリグと合わせるとフォールスピードがかなり速くなるのでそれがいいのかもしれません」
ザリ食いのバスをジグで釣りたい。そんな理想を胸に出船した一日だったが、答えをくれたのは真逆の方向だった。思いがけない魚との出会いもまたバスフィッシングの魅力である。
MAJI’S TACKLE
ロッド:ケイテックカスタムロッドKTC767-SPG(ケイテック)
リール:メタニウムシャローエディションXG(シマノ)
ライン:オルトロスFC24Lb(Xブレイド)
最近の馬路はフリップする際のラインをかなり太めにしている。たとえばこの日テキサスリグに合わせたのはフロロカーボン24Lb。「ラインにハリが出るのでカバーからリグを回収するときにクルクルしにくいんです。16Lbで撃つよりもリズムが出ますね」
※このページは『Basser 2026年9月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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