タックルボックスに当たり前のように入っているルアーたち。その一つ一つには、アングラーの「もっと釣りたい」という情熱をカタチに変えた、数々の画期的な発明が詰め込まれている。重心移動システムから最新素材まで、ルアーの歴史を変えたイノベーションの物語を紐解いていこう。
タックルボックスに当たり前のように入っているルアーたち。その一つ一つには、アングラーの「もっと釣りたい」という情熱をカタチに変えた、数々の画期的な発明が詰め込まれている。重心移動システムから最新素材まで、ルアーの歴史を変えたイノベーションを紐解いていこう。
写真と文◎Basser編集部
アウトメタル:ウエイトを内蔵しないという発明
T.D.プロズバイブレーションやTNシリーズに採用された「アウトメタル」。低重心化による飛行姿勢とスイム姿勢の安定が効能。またリフト&フォール時に倒れ込みにくいなどメリットは非常に多い。我々アングラーがいちばん実感しやすい特長は根掛かりの少なさだろう。TNシリーズでボトムをトレースしたことがない人はぜひ一度試してみてほしい。そのストレスのなさに驚くはずである。このアウトメタルをさらに極端にしたTNトリゴンの姿を見たときはさらなる可能性を感じた次第。
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重心移動:ハードルアーの射程延長
ルアーの飛距離アップにもっとも貢献したアイデアは「重心移動」だろう。タックルハウスのK-TENシリーズではじめて採用された世界的発明だ。キャスト時はウエイトが後方にあるため後方重心で飛距離を稼ぎやすく、スイム開始からウエイトが前方に移動しスイムバランスを保つという仕組み。その後、各社から独自の重心移動システムの数々が登場している。

タングステン:硬く重いレアメタル
鉛の1.7倍の比重をもつタングステンのデビューはルアー作りを変えた。ウエイトを小さくできることや硬さによる感度の高さ、環境負荷の低さなど、そのメリットは極めて多かった。ワームフィッシングを快適にしただけでなく、プラグ作りにおいてもウエイトスペースを小さくできることは画期的だった。鉛がタングステンに移行したように、別の素材に移り変わる日もくるのだろうか……。

塩入りソフトベイト:放置でも食わせる魔力
ワームに最初に塩を入れようと思った人に会いたい。記者はずっとそう思っている。ソルトインの代表格は問答無用でゲーリーヤマモトだろう。「塩入り」というたったこれだけのことによるメリットはすさまじいものがあった。高比重化により投げやすく、沈みやすい。これまでできなかった釣りが可能になったのだ。「淡水魚は塩を摂取したいのでゲーリーワームは吐かれにくい」という意見も聞く。「塩入りのワームを揉みまくって塩を出したものが最高」など、諸説飛び交うのも名品の証明だろう。

エラストマー:令和のメインストリーム
近年のゲームチェンジャーといえばエラストマーだろう。語源は「弾力のある(elastic)」「高分子」(polymer)。「弾力ゴム」といわれることもあり、元の形に戻ろうとする力が働きやすい素材である。従来のワームの素材と比べると浮力が強く、なおかつ硬いことが多い。水面での使い勝手のよさや、強浮力がゆえの水中での動き、硬さによる水押しの強さによりこれまで押せなかったバスのスイッチに手が届くようになった。流行のもとになったのはティムコの野良シリーズだろう。近年ではライブサイトとの組み合わせによる剛毛系エラストマーが威力を発揮している。

ハニカム構造:自然界の英知
ハチの巣に見られるハニカム構造。それをルアーのボディーに採用したO.S.Pのハニカム構造はバルサとプラスチックの隙間を埋める画期的な発明だった。ボディー内の空間スペースを大きくとろうとすると必然的にボディーを薄くしたい。
しかし、薄くすると弱くなる……。そのジレンマを解消したのがハニカム構造なのだ。この構造によりボディーの肉厚の当社比40%ダウンに成功している。F1マシンや新幹線、航空機などで採用された構造を応用したアイデアだ。

※このページは『Basser 2025年8月号』を再編集したものです。