JB屈指の魚探使いである武田に、各メーカーの魚探の強みと運用システム、そして注目を集めるライブスコープの活用法を聞いた。
ガーミン(ライブスコープ)、ハミンバード、ローランスの使い分け
Basser編集部=写真と文
今年のJB TOP50遠賀川戦では準優勝。第3戦を終えた時点で年間ランキング8位と躍動する武田栄喜。JB屈指の魚探使いである武田に、各メーカーの魚探の強みと運用システム、そして注目を集めるライブスコープの活用法を聞いた。目次
バスボートには12inクラスのモニターが7台!
年々急速な進化を続ける、魚探をはじめとしたボート関連のエレクトロニクス。その分野において、最先端を行く男がいる。JB TOP50で活躍する武田栄喜だ。
今年の7月2日から3日間行なわれたJB TOP50遠賀川戦。その会場で見た武田のボートには、12inクラスの大画面魚探モニターがフロントに4台、コックピットに3台搭載されていた。そしてライブスコープの振動子は2台、それに加えハミンバードの360スキャンの振動子、エレキはウルトレックスと、まさに「全部載せ」状態。
ちなみにこの試合、武田はライブスコープと360スキャンを併用した高精度なストラクチャーフィッシングで2日目に単日2位。最終日は優勝した沢村幸弘を抑えてトップウエイトをたたき出し、準優勝を決めた。
遠賀川を勝った沢村幸弘や、初戦の七色貯水池を勝った三原直之にしても、ライブスコープは非搭載。だが、近い未来、魚探をいかに使いこなすかがトーナメントの成績に直結する時代が必ず来ると武田は言う。ここではそんな武田の魚探理論に迫る。
最新の魚探をボートに7台搭載しトーナメントを戦う武田。そのすべてが各魚探メーカーと機種ごとの特性を把握した、理にかなったセッティングになっている
TOP50昇格と同時に高性能魚探に目覚める
武田が最新のエレクトロニクスを追い始めたのは6年前。ちょうどTOP50への昇格を果たした年だった。
それまで国内メーカーの魚探を使っていた武田は、当時最新のローランス魚探を試し、その性能の高さに愕然とする。と同時に、あらゆる魚探を使いこなせれば、トーナメントにおける大きな武器になるに違いないと確信した。
武田「最新の魚探を武器にトーナメントを戦っていますが、7台ものモニターをボートに積むのは試合のためでもあるし、バスプロとして、魚探のことだけは誰にも負けたくないというアイデンティティーの主張でもあります。
だから、SNSでも魚探の運用方法などを発信し続けていますし、ある程度『武田栄喜=魚探』というイメージが付いてきたかなとも思います。
ですが、トーナメントをやっている限り、僕は絶対に結果を出さなくちゃいけない。そうでないと、『宝の持ち腐れ』『道具に頼っても勝てないやつ』となってしまいますから。
だから、去年(2018年)の桧原湖戦で早野君がライブスコープを駆使して4位入賞したときは本当に悔しかった(武田は7位)。本来、あの表彰台に立ってライブスコープの有効性を語るのは僕じゃなきゃダメだったんです。
とにかく今は、結果を残したい。とくに桧原湖、霞ヶ浦、遠賀川のような魚探がキーになるようなフィールドでは、絶対に存在感を出していかないといけない。
それだけに、今年の遠賀戦は勝ちたかった……。やはり沢村さんは強すぎました。しかもあの釣り(岩にネコリグを引っ掛けて水中チョウチン)をライブスコープなしでやってたんですよね? ありえないっス。ほかの選手じゃ絶対できないですよ。そんな精度出せない。今回、沢村さんがライブスコープを使わなかったのは『まだ完全に使いこなせていないから』という部分もあったんじゃないかと思います。それに引っ張られ、振り回されるくらいならあえて使わずにおこうと。それでもあれだけ釣って勝っちゃうんだから、ライブスコープを使いこなしたらとんでもないことになりますよ……」
今年の遠賀川戦ではライブスコープと360スキャンの併用で水中の岩を狙撃。2位入賞を果たす
ガーミン、ローランス、ハミンバード。各メーカーの強みを理解する
武田はガーミン、ローランス、ハミンバードと海外3メーカーの魚探をフル導入している。それぞれのメーカーの強みと、それをどのように活用しているかは以下のとおり。
●ガーミン
おもにライブスコープ(詳細は後述)で使用。また、ボートの航跡周辺の等深線図を自動でマップ上に描き出す「クイックドロー」も活用。フロントに2台、コックピットに1台の計3台使用している。ちなみに、ライブスコープの振動子はふたつ装備し、2台のモニターでライブスコープを見る。ウルトレックスに装着した振動子は、スポットロックをかけた際にアングラーの意図しない方向にくるくる回ってしまうため、前方を映し続ける固定のライブスコープが必要なのだ。来期はこの固定している振動子を手動のリモコン操作で任意の向きにコントロールできるシステムを導入予定。
使用機種:GPSMAP 1222xsv、GPSMAP8412、GPSMAP7412xsv
ガーミンの「クイックドロー」を活用した等深線入りのマップ。水中の地形把握の精度とスピードを圧倒的に向上させる
●ローランス
GPS魚探やスポットのマーキング用として使用。
武田「ローランスの強みは、マーキングのしやすさやGPSマップの精度の高さ。また、ボートの真下を鮮明な画像で見られる『ダウンスキャン』の性能が最も優れています」
ローランスはフロント、コックピットにそれぞれ1台ずつの計2台。
使用機種:HDS-12Carbon×2
ローランス魚探の画面例。GPSマップの精度とマーキングの操作性、ダウンスキャンの鮮明さが特徴
●ハミンバード
「メガイメージ」シリーズは、各魚探メーカーの中でもサイドスキャンの画像がもっとも鮮明に写る。また、ボートの周囲のストラクチャーを映し出す「360スキャン」も唯一無二の機能。フロント、コックピットに1台ずつ、計2台使用。
武田「メガイメージの鮮明さはハミンバードならではです。たとえば、桧原湖の早稲沢のような広大なフラットを一回流すだけで、左右100mの水中を把握でき、どこでフィーディングが行なわれているかまでわかります」
使用機種:ソリックス12CHIRP MEGA SI+GPS G2×2
こちらはハミンバードの「オートチャートライブ」。ガーミンの「クイックドロー」と同様の機能
ハミンバード魚探の強みである鮮明なサイドイメージ。プラクティスなどでボートを流しながら沈み物を探すほか、広大なフラット上でバスやベイトの群れを探すのにも必須の機能
360スキャンの映像。ライブスコープが水中を横の視点で映し出すのに対し、こちらは俯瞰で見たようにボートの周囲360度を照らし出す。ライブスコープとの併用で、水中の立体的な把握が可能になる。自身のボートに予備の振動子を積むほど、武田にとってはなくてはならない機能
このように、各社の魚探の強みとなる機能をそれぞれ使うことで、トータルの性能を最大化しているのだ。
武田「魚探の良し悪しを把握し、使いこなし、釣果につなげるレベルになるまでには、時間がかかります。年間300日釣りをしている僕でさえそうですから、週末しか釣りができないアングラーの方などは、『明らかに以前より釣果が増えた』っていうレベルまで魚探の性能を引き出すのは、かなり難しいと思います。こんなこと言ったら怒られるかもですけど」
ライブスコープの衝撃
近年の魚探システムで革新的だったものはいくつかあるが、その筆頭がライブスコープだろう。これまで魚探が映し出していたものが「画像」であるのに対し(しかもボートが通り過ぎたあとのもの)、ライブスコープはボートの真下~前方を「映像」で映し出す。まるでカメラで見るかのごとく、水中を丸裸にできるのだ。
武田「ライブスコープの登場は衝撃的でした。魚探画面の映り方に関して、これまではかなりアングラーの経験地で補うことが求められました。たとえば、『2D魚探で斜めに走っている線はおそらくバス』なんて具合ですね。でも、ライブスコープなら魚の数や動き、ルアーへの反応、そして自分が落としたルアーの動きでさえ把握できてしまうので、これまで頭の中にイメージで描いていたものの答え合わせができてしまうんです。これによって、水中の把握が正確かつ格段に早くできるようになりました。
さきほど、『一般の人が、釣果を変えるレベルで魚探を使いこなすのは難しい』といいましたが、ライブスコープがあれば、これまで経験地を積みながら脳内でイメージとして補っていた過程の大部分を飛び越えることができてしまうんです。
でも、ライブスコープを導入したらなんでもかんでもわかるわけではないです。それこそ、魚種の判断までは難しい。よく『映った魚がバスかどうかわかりますか?』と聞かれますが、かなりの経験地を積んでもそれは難しいです。
ここで大切なのは、『ルアーを追わない、興味を示さない魚は、いないものとする』ことです。それがたとえバスであっても、ルアーに反応しないのであればいないのと同じ。次の魚を探しにいきます。それがバスかどうかなんてどうでもいいのです。
また、自分のルアーに反応した(=バス)けど食わない。そんなときも深追いは絶対禁物です。ライブスコープを導入して使いこなすまでは、このあたりでハマってしまう人が多い。見えるからこそ無駄に粘って、逆に釣果を下げてしまう。サイトフィシングに慣れていない人が、食わない見えバスにハマってしまうのと同じですね
ライブスコープをより使いこなし、自分のものとする練習方法をふたつ紹介します。
ひとつはクリアレイクでライブスコープを使うこと。たとえば、目に見えている岩などがライブスコープではどのように映るのか確認して、映像と現実のギャップを脳内で埋めていきます。
もうひとつは、あるベイトの群れが映し出された場所で釣ったバスの胃袋から内容物を取り出し確認することです。『あ、こういうふうに映ってたのはモロコの群れなんだ。足が速いアユじゃないなら、このスポットは明日も釣れるな』なんて感じに、映り方によるベイトの判定もできるようになります」
ボートの真下~前方を、画像ではなくリアルタイムの映像として映し出すライブスコープ
これからはより必須ツールに
日々進化を続ける魚探の世界。その激しい新陳代謝のなかで、われわれ一般アングラーはどのように魚探と関わっていけばいいのだろうか。
武田「まず、今後日本のフィールドはますますタフ化、ハイプレシャー化していくでしょう。そうなると、とくに試合では、高性能の魚探はもはや必須のものとなるはずです。なぜなら、今までは『ここに落とせば食う』だったものが『ここのここにこの角度で落とさないと食わない』というように、釣るための条件がどんどん狭くなっていくからです。つまり、アプローチに精度が求められるということですね。
毎年のように新しいモデルが発表され、しかも価格が安くはないので、現状で最新のものを揃えるのは難しいかもしれませんが、これからは価格競争が起きて、より安価で最新機能を持った魚探を手に入れることができるようになると思います。
といっても、水中カメラといっていいライブスコープが存在する時点で、もうこれ以上の革新的なデバイスはなかなか出てこないのでは? とも思います。せいぜい今ある機能のアップデートバージョンが出てくるくらいでしょう。
僕個人の話をすると、現状ではTOP50で最も魚探を使いこなしているのは自分であるという自負があります。そこに関して『この選手は怖いな』というのは感じたことがありません。ですが、その差はこれからどんどん埋まってくるはずなので、日々魚探と向き合って、その性能を100%引き出せるよう精進していくのみです。
直近の試合では、最終戦の桧原湖戦がとくに楽しみ。魚探を駆使して必ず優勝争いに絡んで見せます。期待していてください」
「これからは、トーナメントにおける魚探の重要性がさらに増してくるはずです」と断言する武田。今後どんなゲームを見せてくれるかが楽しみだ
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今号の特集は「濁り」。バスの活性を著しく上げ、時に下げることもあるこの現象を掘り下げます。
過去に濁りに見舞われた取材でのケーススタディーに始まり、水温や流入量による濁りの立体的な捉え方、良い濁りと悪い濁りの違い、濁り始めから濁りが抜けるタイミングまでの釣りの切り替え方、ルアーローテーションの具体例、科学的見地から考える濁りへの対処など、注目トピックが満載です。
モデルとなるフィールドは八郎潟、桧原湖、霞ヶ浦、利根川、亀山湖、津久井湖、琵琶湖、七色貯水池、そしてアメリカなど多岐にわたります。
また、JBTOP50レポートでは最年長優勝記録を「59」に更新した沢村幸弘さんの強さの理由を詳報。試合後の追加取材では、フィジカルを維持するための日々のトレーニングや、メンタル強化に繋がるゴルフへの取り組み、ボートデバイス(魚探)の選定理由などを明かしてくれています。
2019/08/14