ナイロン、フロロカーボン、エステル、PE……。アジングだけでもこれだけのラインの選択肢があるなか王道のジグ単の釣りはどのようにラインをチョイスすればいいのだろうか。
ナイロン、フロロカーボン、エステル、PE……。アジングだけでもこれだけのラインの選択肢があるなか王道のジグ単の釣りはどのようにラインをチョイスすればいいのだろうか。
文◎林悠一(サンスイ渋谷店Part1) 写真◎編集部
アジとメバルのジグ単の釣りの違い
アジングは足場のよい手軽に楽しめる釣りだ。アジングといってもリグはさまざまで、ワームを使ったものだけでも、ラインの先にジグヘッドを単体で結ぶオーソドックスな「ジグヘッドリグ=ジグ単」、「キャロライナリグ」、「スプリットショットリグ」、「ダウンショットリグ」などがある。
その中でも今回掘り下げたいのはジグ単について書いていきたいと思うが、その前に、ライトゲームのジグ単の釣りといえばアジング以前から人気が高いのがメバリングである。どちらも奥が深く楽しい釣りで、同じタックルでも充分楽しめるのだが、捕食の仕方やそれに合わせたタックルの使い分けでさらに面白さが増す。
メバルとアジの決定的な違いは、メバルは根魚なのに対してアジは回遊型の青物であること。この違いが捕食の仕方に違いが生まれる。
メバルは日中、地形変化や海藻、テトラポッドや堤防周り等のストラクチャーに着き、夜になるとその障害物の付近で浮いてきてサスペンドしていることが多く、捕食対象の動物性プランクトンや小魚等が近くを流れてくるとそこから飛び出して吸い込み戻ろうとしたり、追跡してついばんだりする。
対して回遊性のアジは潮の流れに乗って流れてくるアミ等の動物性プランクトン等と同じタナで捕食する。捕食対象が漂っているタナが表層であればライズも確認できるし、中層やボトム付近のパターンもあり、流れてきたエサに対して吸い込み型の捕食がメインになる。
釣り方はいくつかあるが、基本的にアジは浮遊させながら漂わすように落とす縦の釣りといえるのに対して、メバルは巻きの横の釣りになる。
これらの要素が如実に反映されているのがロッドやラインと言え、メバルは食いついて即反転や後ろから追従してのついばみバイトが多いため、メバルロッドはややティップが軟らかく、ナイロンやフロロカーボンといった伸びのあるラインを選択すると、アタリを弾くことが少なくなり釣果を伸ばすことができる。
対してアジの捕食方法は吸い込みの要素が強く、異物と感じて吐き出すまでのスピードが早いため、口に入ったら即座にアワセを入れる必要があることから、アジングロッドは感度が最優先されたティップが硬いものが多く、ラインも感度が非常に重要になることからより伸びの少ないエステルが多用される。
ジグ単で使用するラインについて
アジングのジグ単でよく使われるラインの種類としては、エステル、フロロカーボン、PEの3種類がある。
まずはこれらのラインを使うにあたってライン自体の比重と伸び率を考える必要がある。
比重とは水の密度を約1.0と考えて比較した際の密度の比であり、エステルは約1.4、フロロカーボンは約1.7、PEは約0.9である。エステルラインとフロロカーボンは水よりもかなり重いことから水なじみがよく風の影響も少なくなるラインといえる。
対してPEは水よりも軽いため水面に浮き、空中では風の影響を受けやすいラインといえる。
今度は伸び率を比較すると、エステルは約20%、フロロカーボンは約24%、PEは約5% になる。伸び率だけで見ればPE ラインが明らかに伸びが少なく感度がいいのだが、軽量ジグヘッドを扱うアジングにおいてはどうしても風によるイトフケや水面に浮いてしまうことが感度のロスにつながってしまうことから、実はジグ単ではあまり使われない。
しかし、ラインテンションが張りやすい重さがあるキャロライナリグやプラグ系では飛距離も稼げることからPEが活躍する。実際、私もキャロでは重宝しているが、ジグ単の釣りにPEラインを使う場面はほぼない。
よって私の中でジグ単の釣りでメインになるのはエステルとフロロカーボンの二択になる。
エステルとフロロカーボンのメリット・デメリットを考える
まず、風の影響を比較すると、どちらも比重が大きく風に強いものの、風がかなり強くなると明らかにフロロカーボンラインのほうがイトフケは少なくて水なじみもいいので伸び率が低いはずのエステルラインよりも感度が高く感じる。
ただ、フロロカーボンラインは摩擦係数が他のラインに比べ高く、ライン放出時のスプールエッジやロッドのガイドを通る時の摩擦でかなりルアーが失速する。軽いジグ単ならなおさらだ。
そのため飛距離はエステルラインには及ばない。これはガイド径がかなり小さいマイクロガイドのロッドほど顕著に現われる
その反面、エステルラインは飛距離は伸びるが、ライン自体の劣化は早く、ナイロンほどではないが確実に吸水劣化をする。限界伸度に達するのも早いので、アジングで使用する0.2号〜0.3号といったエステルラインは傷も付きやすく限界伸度に達するまで早いので突然「プツン」と切れてしまうことがあるので他のラインよりもメンテナンスに気を付ける必要がある。
また、エステルラインはクリアの物もあれば、夜に見やすい色がついた物もある。色がついたエステルラインの中にはエステル素材の中に染料を混ぜている物があり、見やすいが通常のエステルラインよりも伸びが多く、粘りがあるため突然切れることは少なくなるが、若干感度が悪くなる気がしている。これは見やすさを重視するか感度を重視するかの違いなので単純にどちらがいいとは言えないが、そもそもが伸びが少ない感度のよさからアジングファンに支持されたラインであることを考えると、色の違いによる感度の差を比較してみるのもいいだろう。ただし最近では染料を混ぜずにライン表面に着色することで伸びを抑えた商品も登場しているのでエステルラインの進化は進んでいる。
風に合わせてラインも変える
ほどほどの風であればエステルラインはジグ単において万能で使いやすいラインといえるが、いつも微風というわけではないし、これからの季節は強風時に軽いジグ単を投じてラインが吹き上がってしまう状況もしばしばある。
そんなときにエステルの色の有無、さらにフロロカーボンまで選択肢に入れると、驚くほど感度に違いが出るため、状況に合わせたライン選びが重要になる。
今回の取材も11月上旬に千葉県の勝浦周辺の港をランガンした。シケの影響かどのポイントも濁りが入り風も強かったので苦戦したが、風の弱いタイミングで透明のエステルライン、風が強いタイミングでフロロカーボンラインと使い分けて良型のアジも含めキャッチすることができた。
なお、エステルラインの色による強度や感度の違いをはっきり体感したのは、実はアジングではなくエリアトラウトであった。ご存じのようにエリアではカラー付きラインは圧倒的に不利とされ、最近多用されるエステルでもクリアが主流なのだが、明らかに海で使っていた色付きよりも高感度であると感じたことが始まりである。
なお、ここで言う感度とは伸び率だけではなく、風が吹いても直線になりやすいことも含めての感度であり、まさにその特性はアジのジグ単の釣りで求められる性質だと思う。
「アジかなと思ったら違う。サッパかなと思ったけどそうじゃない……」と林さんを困惑させたのは最近関東で増えているカタボシイワシと思われる
メッキが釣れることもある
PE ラインを使ったキャロで沖を探るとイシモチがヒットした。多彩なゲストが釣れる
※このページは『つり人2024年1月号』を再編集したものです。