ハゼのルアー釣りといえばハゼクランクが人気だが、いま新しい風が吹こうとしている。それはルアー釣りとチョイ投げの融合スタイル。優れたゲーム性を備えつつ、小物釣りの趣きも損なわない魅力的なNEW メソッドの誕生だ。
メタルバイブのテールからハリスを出し、自動ハリス止めの先にエサバリという独特なレイアウトだが、これが実によく釣れる
好奇心旺盛なハゼはメタルバイブに興味津々
琵琶湖をホームにするバスプロとして、多彩なルアーフィッシングに精通する実戦派アングラーとしても知られる藤木淳さん。立ち上げたフラッシュユニオンは、独創的なルアーを次々とリリースしている新進気鋭のメーカーである。今秋にはハゼ釣りシーズンの本格化に合わせて、SWブランドのシーレボからライトゲームとチョイ投げを融合させた『フルメタフュージョン』が登場する。
これはメタルバイブ「フルメタルソニック」のボディを使ったチョイ投げリグ。ルアー用のフックを取っ払い、テールフックアイにハリスを介してエサバリを結んだもの。エサバリに小さくカットしたイソメや、マルキユーの「パワーイソメ」をセットして使うと面白いようにハゼが釣れる。
使い方は実に簡単。軽くキャストして底まで沈めたら、小さく刻むようなリフト&フォールで手前に誘うのみ。本体のメタルプレートが極めて薄いのでレスポンスがよく、軽くリフトするだけで穂先に小刻みな振動が伝わってくるほど激しくバイブレーションする。この波動とメタルのフラッシングが好奇心旺盛なハゼをグイグイ引き寄せるという。
「堤防でお馴染みの魚がいろいろ釣れますよ。とりわけハゼとキスには絶大な威力を発揮します」と、フルメタフュージョンを考案したフィールドスタッフの山口一真さんが、7月中旬に愛知県の三河湾に繰り出して、その実力を披露した。
朝イチはハゼを釣ろうと、まずは一色漁港に流れ込む一色排水路にエントリー。「ここでハゼクランクに興じていた時に、ふとメタルバイブでも釣れるのでは? と思い立ち、ボックスに入れていたフルメタルソニックをキャストしたのがきっかけです。後方から無数のハゼが追いかけてきたので、フックを外してイト付きの袖バリに交換したらビックリするほど釣れました」と、当時と同じようにウルトラライトのバスタックルにフルメタフュージョンをセット。エサバリに小さくカットしたイソメを付けて軽くキャストした。
果たして着底してロッドを起こしたところですぐにハゼがヒット。そのまま入れ食いモードに突入して次から次へとハゼが釣れた。「お手軽で簡単なチョイ投げリグではあるんですが、普通のチョイ投げに比べてアタリが圧倒的に多いんですよ」と、忙しそうに打ち返しながら笑みがこぼれる山口さん だった。
エサの活きとニオイが決め手になるチョイ投げに対して、フルメタフュージョンはバイブレーションの波動とフラッシングでアピールして広範囲から魚を寄せてエサを食わせる。ハリに付いているエサが小さくても関係ない。かえって小さくエサ付けできるので、フッキング率が非常に高いのだ。また、激しいバイブレーションが常に仕掛けに伝わるので、パワーイソメを使ってもよく釣れる。この日も途中からパワーミニイソメに切り替えたが、イソメと遜色なくヒットした。これならタックルボックスにパワーイソメとフルメタフュージョンを入れておけば、他の釣りで苦戦を強いられても、いつでもチョイ投げに転進して手堅くお土産を確保できるというわけだ。これは魅力的である
リフト&フォールにシロギスも好反応
ものの1時間で30尾ほどのハゼをキャッチした山口さんは「ハゼ相手ならリールザオじゃなくてもいいんですよ」と渓流ザオに持ち替えた。ミチイトの先にフルメタフュージョンを結んで、ミャク釣りのように軽く下から振り込んだ。そして、底取りしたところでサオ先で横に探ると、すぐにハゼが食ってきた。これまたスピニングタックル同様に入れ食いとなった。まさにルアー効果である。
自動ハリス止メからハリまでの長さは20cmを基本とし、アタリの出方に応じて調整していく。食い気のある日は短く、活性の低いときは長めにする。また、メタル本体の背中にラインをセットする穴が3つ開いており、それぞれ付ける位置に応じてアクションが変化する。後ろの穴にセットしてリトリーブすると、本体が立ち気味になって泳ぎがスローになり、同時にアクションは大きくなる。前方の穴では本体の角度が浅くなるので引き抵抗が軽くなってアクションが小さくなる。センターは中間だ。センターを基本として海中をイメージしながら使い分けることで、より釣りに深みが出る。ちなみに水深のある場所では、後方の穴にセットすると底取りが容易になるので釣りやすいそうだ。
早々にバッカンがハゼで埋まったのでシロギス釣りに転進。寺部漁港に移動して南防波堤先端の沖向きに釣り座を構えた。先ほどまでのロケーションと異なり今度は水深があるので、本体の後ろの穴にスナップを付け替えてからキャストした。
リフト&フォールで誘いを入れながら手前に誘ってくると、すぐに激しく穂先が震えた。シロギス特有のアタリである。水面を割ったのは20cmほどの良型だ。しかも立て続けに釣れたのである。周りの投げ釣りファンが沈黙しているなかでの連発劇はインパクト充分だった。
「フルメタフュージョンはキスにも効果てきめんです。南知多町の篠島に釣行したときは、周囲で投げ釣りしている人よりも数で圧倒しました。しかも28.5cmという大ギスまで手にすることができました。これは私の自己記録です」と、出来過ぎの展開に思わず破顔。
山口さんは最初にリフト&フォールで活性の高い魚を拾って、底から浮かさないようにストップ&ゴーに切り替えて釣果を追加。太陽が高く昇って厳しい陽射しが照りつけてきたところで「もう充分楽しめました」とロッドオフ。
フルメタフュージョンは、ファミリーやカップルでの釣行プランにぜひとも取り入れたい。エサ釣りといえばそうだがルアー釣りの要素も色濃く感じられるので、ルアー釣りに興味のある子どもたちも大いに喜んでくれそうだ。アクションを変えると反応も変化するので夢中になるに違いない。
ハゼやシロギスのほかにもカワハギやセイゴなどターゲットはバリエーションに富んでいる。この日もセイゴやチャリコ、ベラなどが釣れて五目釣りとなった。また、太仕掛けにしてクロダイをねらうのもよし、カマスやサバが回遊すればエサバリを外してダブルフックをセットしてもよい。フロントフックアイにブレードを追加するなどのチューニングも面白く、アイデアしだいで遊び方は多彩である。
※このページは『つり人2023年10月号』を再編集したものです。