東京湾の新たなスピードスターとして登場したサワラの人気は衰えを知らず、ここ小峯丸でも週末ともなれば3隻出しという過熱ぶりだ。そんなライバルよりも先に本命を手にするなら、欠かせないアイテムがある。
東京湾の新たなスピードスターとして登場したサワラの人気は衰えを知らず、ここ小峯丸でも週末ともなれば3隻出しという過熱ぶりだ。そんなライバルよりも先に本命を手にするなら、欠かせないアイテムがある。
写真と文◎編集部
釣り人が自身で築き上げたスタイル
「東京湾でサワラが釣れるようになって10年目くらいですかね。それ以前はほぼ目にすることのなかった魚が、東日本大震災後からは毎年のように姿を現わすようになって、シーバスやタチウオをねらっていると頻繁にハネが見られるようになって、たまに混じって釣れるようになってきました。しかも年を追うごとにサイズがよくなり、数も増えて、エリアも湾の奥深くまで入るようになってきたことから、ここ5年ほどは専門にねらい始めて秋から冬の定番ターゲットになっています」
とは、シーバスのルアー船の老舗として知られる千葉県寒川港『小峯丸』で現在、サワラ船の舵を握る小峯翔太船長だ
最初は少人数の仕立がメインだったため、使用するルアーはペンシルやミノーやシンペンなどの表層系が中心でバイトやチェイスが丸見えの釣りだったという。そのうちに、ファイトの激しさ、スピーディーな疾走感、食味のよさからサワラ人気が高まり、一度やってハマった人がリピーターになると大人数を乗せられる乗合船にシフト。基本的に片舷に並んでキャストする釣りを始めたところ、初期とは違う釣り方が定着してきた。
その釣りとは浮力のあるプラグではなく、素早く底まで落とせるメタル系のルアーを使い、ボトムから表層までの全層をとにかくスピーディーに巻き続ける釣りである。
「毎日のように多くの釣り客が乗って横並びでいろいろな釣り方やルアーを試した結果、圧倒的にこれが釣れる。表層系が釣れなくなったわけではないけれど、魚が表層に出る前に底付近や中層で違うルアーが目に入るのでそっちを食ってしまうということだと思います」
と小峯船長。こうして瞬く間にメタル系ルアーのボトムからの速巻きが東京湾のサワラ釣りの定番スタイルになった。
「これも自然に広がったんですが、お客さんがいろいろなルアーを試してくれるわけですが、均すとある特定ルアーの実績がズバ抜けて高かったんです。自分が釣れないときに、釣れた人のルアーを見て、次はこれを買って試そうという自然な流れだったと思います。それが、うちでもオリカラを出しているメタルマジックTGです」
みんなが使うからよく釣れるのか、よく釣れるからみんなが使うのかというコロンブスの卵的な発想を思い浮かべてしまうほどの使用率で、この日乗り合わせた12人のお客さんのファーストキャスト時のメタルマジックTG率は8割を超えていた。
小峯丸監修の小峯ブルピンゼブラ。夜光ボディーにブルーとピンクのゼブラ配色。このほかにも東京湾や三重、山口、広島などの遊漁船監修カラーもある
メタルマジックTGの発売元であるアクアウェーブの開発責任者である廣常治樹さんも言う。
「全国的にサワラ人気が高まっていますが、特別に盛り上がっているのが東京湾で、昨年も品薄店が続出しました。最初は素材的に値段も張りますからどのくらい生産していいものか分からなかったですが、ここ東京湾ではいくら製造しても追いつかないほどの売れ行きでした」
と、喜びと驚きを隠せないようす。
この日、右舷中央にはメタルマジックTG の発売元であるアクアウェーブの開発責任者である廣常治樹さんの姿も。自身も全国のフィールドでサワラのブレードゲームを楽しんでいる。なお、右舷からは背後の安全確認をすればオーバーヘッドキャストもできる
前半戦の釣り場はスカイツリーやディズニー施設が目の前の湾奥エリア。後半は中ノ瀬から盤洲沖を回った
ADVERTISEMENT
サワラしか食えない速さで巻く
3kg近い大型のサワラに対してもこのフッキング。リーダーに歯が触れない状態でファイトができているので切られにくい
ブレードジグというジャンルは昔からあるなかで、なぜこれほどまでにメタルマジックTG の人気が高いのだろうか。小峯船長に聞いた。
「全体的にシルエットが小さめなので口を使いやすく、小さいのにタングステン製のためよく飛ぶし沈みが速いから、ヨーイドンで釣り始めたときに着底からの巻き始めが一番早く、他のルアーに釣り勝つことが多いですよね。しかもいくら速く巻いてもどんなスピードのリトリーブに対してもバランスを崩さない」
スピードに関しては速ければ速いほど釣れるのだろうか。
「速くないと釣れないかというとそんなこともないけれど、どんな速さのリトリーブスピードでも食いつけるのはサワラです。サワラ船ってタチウオやシーバスなど意外とたくさんの種類の魚がヒットするけれど、サワラしか追いつけないスピードが確かにあって、サワラをよく釣る人は巻きスピードが速く、逆にタチウオをよく釣る人は巻きスピードが遅く、そんな方はサワラが釣れるのはフォールだけという傾向はあります」
確かに当日もタチウオやトラフグやマダイなどのヒットもあり船中の釣果は賑やかだったが、こうした本命以外の魚はフォール中または着底からの巻き始めのヒットが多く、やはりトップスピードの本気の巻きでのヒットではないことが大半だった。
65cmの立派なマダイがあがった
トラフグが釣れることも
最後にファイトのコツを教わった。
「リールはハンドル1回転で100㎝以上巻き取れる4000~5000番のエクストラハイギアがおすすめ。ドラグはちょっと強めに設定しておくとフッキングが決まりやすいです。タラシは短いほうが勢いよくロッドを振れるから飛びます。着水後はフリーフォールではなく軽くサミングすると余計なスラックを出さずに着底させられます。そこからはひたすら速巻き。ロッドアクション不要。前兆などはないのでいつ来るかは予測不能。ただし、半分くらいまで巻いたらストップ入れて、そこからの巻き始めにドンっと食ってくることもあるので、ひたすらの速巻きに飽きてきたら試してみるのはアリ」
キャストは同船では片舷に9人くらい並ぶスタイルのためオーバーヘッドキャストをOKにしているが、それ以上乗る場合は船室の裏側に入ってのアンダーキャストのみというルール。「他船も含めて基本はアンダーキャストなんで7フィート程度の長さのロッドが扱いやすい。それより長いと構えたときにティップが海面に着いてしまいます」と船長。
さて、すっかり東京湾の秋冬の風物詩と化したサワラのルアー船。当日の表層水温は20℃だったが13℃くらいに下がるまでは出船しているという。
ロッドはベイブレイズ(TENRYU)が人気。廣常さんも遠投パワフルモデルのBBZ732SMMHと、喫水線の低い船からのアンダーハンドがしやすいBBZ6112S-MMH の2 本を愛用。グリップエンドをしっかり脇に挟んでティップをブレさせずに高速リトリーブを行なっていた
※このページは『つり人2024年1月号』を再編集したものです。