都内の河川でもバチ抜け情報がちらほらと聞こえ始めたタイミング。では自分はどこで取材をしようかと考えたとき、ある意味で河川よりつぶしが利くフィールドが干潟であった。
ある意味で河川よりつぶしが利くフィールドが干潟であった。
文◎林悠一(サンスイ渋谷店Part1)
写真◎編集部
バチ抜けは河川や運河だけじゃない
今回は1月下旬に東京湾へ干潟のウエーディングゲームへ釣行。ちょうど湾奥の河川でも春の風物詩である「バチ抜け」がポツポツと確認され始めたタイミングであったが、それはまだ一部だけのことで、多くの河川では冬の様相を呈していた。
そんなバチ抜けは、河川や運河で起きることは一般的に知られているが、干潟でもバチ抜けパターンは存在する。特に2月下旬くらいからは河川同様に安定して抜けるようになり、干潟でもバチ抜けパターンが成立しやすくなる。
ただし、干潟のどこでもバチが抜けるというわけではなく、むしろ限定的で、流れが緩い漁港内の柔らかい砂泥地帯でバチは抜けやすい。その漁港から下げ潮の流れに乗って干潟へ流出するのが主なパターンで、発生場所は限定的でもバチそのものは流れに乗って広範囲に漂う。
干潟には船道となるミオ筋やスリットによって、一定ではない複雑な流れが生まれる。
秋の干潟ウエーディングゲームでも流れを読むことが重要になるが、春もバチがどのように流れてきて、どの辺りに溜まるかを把握しておくことが重要だ。
港内から発生して干潟全体に拡散
流れに対してアップクロスにキャストして、流れにルアーを乗せてドリフトさせたら回収という釣りだ。つまり、河川でのバチパターンの釣りと変わらない。
ただしウエーディングゲームの魅力は機動性にある。これも河川でウエーディングする際と同じだが、干潟ならよりベストな角度から理想の軌道に近いコースを流すことができる。バチがよく抜ける状況に当たれば自分の周囲すべてがライズだらけになることだってあるほどだ。
バチが抜けるタイミングは河川と同じで、満潮からの下げ始めが夕方に被るタイミングがよく、大潮後半から中潮2日までが最もチャンスである。
タイミングが命の釣り方なので、潮回りやタイドグラフを確認して効率よくバチが抜け、シーバスがライズするような時間帯を濃密に釣りたい。
ルアーセレクトも通常の河川のバチパターンと同じでよく、浮いて引き波を立てるタイプ、横風の影響を受けにくい水面下に沈むタイプの2種類は準備したい。
また、干潟の釣りは一旦ウエーディングしてしまえば基本的に戻ることはない釣りなので、準備は万端にしておきたい。つまり、期待したバチが抜けなかったときのためのルアーとしてフローティングミノーやシンキングペンシルなどがあるとベイトフィッシュパターンに対応できる。
また、バチもベイトフィッシュも少ない状況でも意外と干潟でも効果的なのがアミパターン。水中をライトで照らしてアミが多いようであれば、ライズはなくてもシーバスがアミを食っている可能性もある。バチと違って上げ潮でも問題なく釣れる。流れのヨレなどアミ密度が高くなるところはねらいめだ。特に1~3月はシーバスもバチ以上にアミを偏食するようになる。
1 ~ 3 月はバチ以上に食われているイメージのアミ。河川では流れの緩い上げ潮で釣りやすいが、干潟は河川よりも流れが緩いのでどちらでも食われやすく釣りやすい
ルアーは巻いて操作するのではなく、流れの先でアミの流下を待ち構えているシーバスの口もとまで送り込むことが大切。クリア系ボディーにラメが散りばめられたプラグはアミの集合体を模すことができるという意見は否定しないが、ソリッドカラーでも釣れるため、むしろ重要なのはカラーよりもレンジを合わせることだ。
ゲームベストには最低でもこの3つのパターンに対応できるルアーケースを持っていくといいだろう。
アミパターン用のルアー
上からソバット80、ピースS(ともにアイマ)、マリブ78(マングローブスタジオ)、トラビス7(メガバス)
ベイトフィッシュパターン用のルアー
上からエクスセンスクー100F ジェットブースト(シマノ)、サルディナ127F(マングローブスタジオ)、マッチベイト(スカジットデザイン)
浮いて引き波を立てるタイプのバチパターン用のルアー
上からコモモSF-110、コモモ130 スリムトマホーク(ともにアイマ)、エリア10(ガイア)
水面下に沈むタイプのバチパターン用のルアー
左列上からベイルーフマニック110(DUO)、フィール120SC(パズデザイン)、スタッガリングスイマー(シマノ)。右列上からアルデンテ95S(アイマ)、ヤルキバ(邪道)にょろにょろ85、にょろにょろ125(ジャクソン)
水面より一段下を探れるタイプのバチパターン用のルアー
左列上からコモモ110S カウンター(アイマ)、オネスティ125F(エバーグリーン)。右列はともにサスケSS95(アイマ)
バチ、アミ、小魚の三段構えで
当日も仕事の関係で夕方の満潮には間に合わなかったものの、22時の時点で下げ2~3分とまだまだ期待できそうな潮回りだったが、期待に反してバチの姿は見えず、シーバスのライズなども確認できなかった。
周辺の河川ではアミが多く出ていることも聞いていたのでアミに期待したが、こちらもまるで確認できなかった。
正直、期待の2トップのベイトが不在という状況に頭を抱えたが、それでもベイトフィッシュに期待できるのが干潟のいいところだ。
ただし、バチやアミと違ってこの時期のベイトフィッシュは岸寄りの浅場まで来ることは少ないのでミオ筋やブレイクラインなど沖の水深のある側がメインになる。
この時期の干潟は透明度が非常に高いため、足もとをライトで照らすとエイホールやアカエイそのものを何度か確認した。
よくアカエイは水温が低い時期は遭遇しないと言われるが、そんなことは絶対にない。今回もわずか3時間ほどの間に6尾は目視で確認した。しかも厄介なことに水温が低いからかアカエイは海底でじっとしており、ブーツのつま先が近づいても微動だにしないものも多かった。また、小型ほど尾を立てて威嚇してくるのでエイガードやストックなどで安全対策はしっかりとしたい。
当日は下げ潮の間はまったく気配がなかったが、干潮潮止まりから1時間経ち上げ潮が利いてくると沖から水温の高い潮の流れが接岸してきた。
そのタイミングで潮目が発生。潮目が射程圏内に入ると同時に2連発した。ただし、どんどんと潮位が上がってくるのでタイムアップ寸前だったが、元気なファイトを堪能して帰ることができた。
カゲロウMD98F に替えると立て続けに2 尾目。しかし潮位が高くなりタイムアップ
【この日のタックル】
ロッド● Flows810(リップルフィッシャー)
リール●エクスセンスC3000MHG(シマノ)
ライン●アバニシーバスPE マックスパワーX8 の0.8 号(バリバス)
リーダー●シーバスショックリーダーVEP-F ナイロン16 ポンド(バリバス)
※このページは『つり人2024年4月号』を再編集したものです。