エビを水槽にいれる1週間前に水を作り、水槽に入れておくのがベスト。水質・水温が落ち着くうえにバクテリアが増え水のろ過がうまくいくからだ。ヒーターを使用する場合はこの時点からスイッチを入れておく。
水の管理はテナガエビ飼育の最重要項目!
写真・文◎編集部
釣っても食べても◎なテナガエビは、生活のパートナーとしても最高だ。水槽越しだからこそ気付けるテナガエビの性質や行動もたくさんある(釣りに活かせる!)。ただし、魚と比べて水質の変化に弱いので長く飼うにはコツが必要だ。水の作り方から水温管理、エサやりなどの要点をまとめた。
この記事は月刊『つり人』2020年8月号に掲載したものを再編集しています
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前編:目次
後編:目次
今回テナガエビの飼い方を教わった「吉田観賞魚」
http://yoshida-fish-farms.com/
住所:東京都八王子市松木15-3
tel042-676-7111
営業時間:10:00~19:00
(火曜日は17時まで)
東京都八王子市にある観賞魚販売店で2021年に100周年を迎える老舗。テナガエビはもちろん、釣りの対象魚でもある日本の淡水魚のラインナップも豊富。釣り好きならワクワクすること間違いなし! 水槽やろ過器などの飼育機材のラインナップもかなり充実している。
教えてくれたのはエビ担当スタッフの山本雄央さん。ルアーフィッシングを愛する釣り好きでもある。いつか店内にテナガエビ釣り堀を設置するのが夢!
水の管理はテナガエビ飼育の最重要項目!
エビの元気度は水の管理で決まるといっても過言ではない。ここについては山本さんにとくに細かく解説してもらった。
●水位
水槽の高さの70~90%でOK。水位が低いと水質・水温が不安定になりがちで、逆に高すぎるとエビの脱走が発生しやすい。ろ過器によっては水位の指定がある場合もあるので合わせよう。山本さんのオススメはろ過器が作動する最低水位。ろ過器から排出される水が強く水面を叩くので酸素が溶け込みやすいからだ。
●水の作り方
エビを水槽にいれる1週間前に水を作り、水槽に入れておくのがベスト。水質・水温が落ち着くうえにバクテリアが増え水のろ過がうまくいくからだ。ヒーターを使用する場合はこの時点からスイッチを入れておく。
釣ってきたエビの場合、元いた川の水を入れる人もいるが、山本さんはオススメしない。「川の水はリスクもあります。寄生虫やエビにとっての病原菌も入ってきている可能性があるからです」。
水の作り方は簡単。水道水をバケツなどにくみ、そこにカルキ抜きを適量入れるだけだ。これで塩素をなくすことができる。かつては天日にさらす方法が一般的だったが、それでは塩素が残ることがあると山本さん。
左がカルキ抜き剤のテトラ「コントラコロライン」(オープン価格)。右はバクテリア剤の環境リバイブ研究所「クロマ100」。光合成細菌を水に入れることで動物性プランクトンの発生を促してくれる
作った水をキレイに保ちつつ水に酸素を溶け込ませてくれるろ過器は必須アイテム。写真はGEX「スリムフィルター」(Mは2700円+税、Lは3500円+税)。下部のポンプで水を吸い、上部のスペース(ろ過用スポンジを入れて使用する)で汚れをとって排出する仕組みだ。水槽の大きさに応じてサイズを選ぼう
エアポンプやエアストーンを入れると溶存酸素量がさらに増加する。できれば入れよう
●水換えの頻度と作法
水換えは超重要。できれば2週間に1度、最低でも月に1度は水を換えよう。すべての水を換えると急に水質が変わってしまいエビが死ぬ原因になるので、換える量は1/3~1/2にとどめる。水の抜き方は写真のとおり。入れる水は前日に作っておき、水槽の隣に置いておく。水槽に入れる際はいったん手のひらなどで水を受けて勢いを弱めつつ流し込むのがベター。直接入れてしまうと砂の汚れが舞って濁ってしまうことがある。
山本さんが水換えの際に使っていた便利アイテム・水作「プロホースエクストラ」(Mサイズは1600円+税、Lは2000円+税)
底砂を吸って、吐いて……を繰り返しているうちに、砂の間に詰まった汚れをとりつつ水も吸える優れモノなのだ。「ちょうど砂がキレイになったかな~というタイミングで水が半分抜けます」と山本さん。ヒラテテナガエビも興味津々で抱きついてきた!
写真のようにバケツに水を入れていく
水温は18~26℃の範囲内でできるだけ一定に!
テナガエビの適水温は18~26℃。水温計を入れて常に把握しておくようにしよう。この範囲内であれば何℃でもOKだが、重要なのは「一定」であること。
30℃を超えるとエビがかなり弱りやすくなるので水槽用のファンを取り付けたり、ペットボトルを凍らせたものを投入したりする。ただし、一気に水温を下げすぎるのもNG。エビは急な変化を嫌うので、徐々に下げることを心がけよう。逆に冬は基本的にヒーターを入れて安定を図る。「人間にとっての1℃がエビにとっての5℃です」と山本さん。
左はエヴァリス「プリセットオートAR100」。センサー内蔵で水温26℃(±1.5℃)を自動的に保ってくれる。右はGEX「NEWセーフカバーヒートナビ160」(5700円+税)。水温15~35℃の範囲内で任意の水温を選択できるヒーターだ
テトラ「クールファンCF-60NEW」(4818円+税)。クリップで水槽にセットすることができ、送風によりマイナス3℃の冷却効果がある
エサは1日1回。トラブル時は回数を減らす
エサやりは1日1回でOK。ザリガニや肉食魚用の粒タイプで沈下性のエサをあげてみて、無事に食べればそのままあげ続けよう。テナガエビ1尾に対し3~5粒で問題ない。あげすぎると水質悪化の原因になるので要注意だ。もし粒タイプのものを食べなければ冷凍アカムシがオススメ。匂いが強いのでほとんどの場合食べてくれる。釣り人の場合、生きたアカムシをあげるのも手だろう。
何らかのトラブルで水温が30℃を超えてしまったり、逆に下がりすぎたりしたときはエサやりを減らす。「エビはエサを消化するのにかなりのエネルギーを使います。だからエビが弱っていたり、水温が適温からはみ出したときはエサやりの頻度を大幅に落とします。3日に1回くらいにして回復を待ちます」。
保存が簡単で扱いやすい粒タイプのエサ。左がコメット「ザリガニ・カニの主食」(40g入りで520円+税)。右がキョーリン「ひかりクレストキャット」(75g入りで1260円+税)。いずれも沈下性でエビに適している
粒タイプを食べなければ冷凍アカムシを試してみよう。写真はキョーリン「クリーン赤虫」(100gで770円+税)。冷凍庫に入れる必要があり家族が嫌がることが懸念される
後編「水の管理はテナガエビ飼育の最重要項目!」へ続く……
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