肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。
『日曜日の狩猟採集生活』/つり人社渓流編集部 編
North Angler’s編集部/真野秋綱
肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。◎今回の紹介者
North Angler’s編集部/真野秋綱
1975年11月9日生まれ。愛知県出身。学生時代は水生昆虫タガメの調査に没頭。その後編集プロダクション勤務を経て、つり人社に入社。つり人、FlyFisher、渓流、鱒の森などを担当して、この春からNorth Angler’s編集部へ。北の大地で釣り三昧の日々を楽しもうと計画中。
今度の週末、生きものを捕まえて食べてみない?
お金がなかった学生時代。所属は農学部だったので、実習で作った米が大量にありました。近所の農家の手伝いをして野菜ももらっていたので、あとは肉や魚のタンパク質さえ確保できれば、食費はほとんどゼロ。というわけで、たまにアマゴやナマズを釣って食べていました。時には農家のオジサンが「こないだそこでシカはねちゃったからよ、さばいたんだわ。肉、食べるべ?」と言って持ってきたり……。
自分で釣ったり、捕まえたりしたものを食べるというのは、妙な充足感があります。もしかしたら狩猟本能のせいなのかもしれません。
捕まえる過程の試行錯誤。首尾よく捕まえた時の達成感。命を奪う逡巡。そして味わう時の感謝と感動……。最近狩猟が注目されているのも、そのあたりの楽しさが再発見されているせいかもしれません。
今回紹介する『日曜日の狩猟採集生活』は、銃やワナを使った猟は登場しません。基本的には子どもと一緒に楽しめる、プチ狩猟採集体験のあれこれが詰め込んである本です。ハチの子やイナゴなどの捕まえ方とか、山菜、キノコ採集、潮干狩り、素潜りでの魚採り、そして釣り……などなど。
考えてみると釣りは、そのすべての過程が最も手軽に味わえる遊びのひとつ。老若男女が、命を捕まえて、食べることができる趣味です。SDGsというと少し大げさなようですが、その根っこの部分を理解するのにも役立つのではと思います。
本書の中から一部を紹介すると、お酒好きの人なら一度やってほしいのが「ハチの子採り」。クロスズメバチの幼虫を捕まえるのですが、その方法が変わっています。
まずクロスズメバチがいる里山で、木の枝にレバーや鶏肉を付けておきます。運よくハチが集まってきたら、そのハチに目印を付けて追いかけ、土中にある巣の場所を突き止めるわけです。
目印は白い綿やポリ袋の切れ端。小さな肉にその目印を付けて、ハチに抱かせます。それを見失わないように追うわけですが、なにしろハチは空中を飛ぶわけで、人間は森だの崖だのを越えていかなくてはなりません。いい大人が野山を走り回るわけで、かなりの労力が必要になるのは間違いありません。最終的に巣穴を見つけ、煙幕(長野県などでは専用の煙幕が売られています)でハチを眠らせ、巣を掘り出せたら成功です。
ハチの子というと、ちょっと敬遠してしまうかもしれませんが、調理して口に入れれば驚くはず。個人的には、日本酒の友としてはトップレベルの魔味だと思います。もちろん、ハチの子ごはんなどにしても美味しくいただけます。
これから生きものが活発に活動を始める季節。世の中は新型コロナの影響で、外出がはばかられる状況ですが、人の少ない野山で遊ぶのは、いい気分転換になるはず。本書の中から気になるプチ狩猟採集遊びを見つけて、トライしてみてはかがでしょうか。
『日曜日の狩猟採集生活』
単行本:191ページ
出版社:つり人社
発売日:2017/7/6