肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。
『ウルトラライトハイキング』/土屋智哉 著
North Angler’s編集部/真野秋綱
肘掛け椅子にゆったり座って、釣りにまつわる読書をしたり、釣り場や魚たちに思いをはせたり、お気に入りの道具を眺めたり……。雨の日など釣りに行けないときのそんな過ごし方を英国では「アームチェアフィッシング」と言うそうです。このコラムでは、つり人社の社員が「アームチェアフィッシング」の時間にオススメしたい愛読書を紹介します。◎今回の紹介者
North Angler’s編集部/真野秋綱
1975年11月9日生まれ。愛知県出身。学生時代は水生昆虫タガメの調査に没頭。その後編集プロダクション勤務を経て、つり人社に入社。つり人、FlyFisher、渓流、鱒の森などを担当して、この春からNorth Angler’s編集部へ。北の大地で釣り三昧の日々を楽しもうと計画中。
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ウルトラライト(UL)の立役者
西荻窪駅南口を出て右に進むと、『戎』というよく知られた居酒屋があります。細い路地の両側に『戎』の看板がいくつかあり、どこまでがその店なのかよく分からない焼き鳥の名店です。
煙で燻されながらその路地をさらに進むと、雑居ビルの1階に『ちろり』という小さな居酒屋があります。店主が父の知り合いだったため、過去に何度か足を運んだことがありました。ちなみに店主は渓流釣りが好きで、登山や釣りをするお客さんも多かったようです。
もうだいぶ前ですが、そこで呑んでいた時のこと。たまたま隣にいた人と、たしか店内に飾られた畦地梅太郎の版画から山の話になりました。すると店主が「この人、最近本を出したんだよ」と教えられ、それがちょうど私が読んでいた本だったのでびっくり。その本が、今回紹介する『ウルトラライトハイキング』です。
今でこそ、ウルトラライト(UL)はアウトドアの世界では広く知られていますが、その立役者のひとりが著者の土屋智哉さん。当時『ウルトラライトハイキング』は、書店でも平積みになっていました。
ウルトラライトハイキングとは、簡単にいえば荷物をめちゃくちゃ軽くしたハイキングのこと。アメリカにはジョン・ミューア・トレイルなどのロングトレイル(自然遊歩道)がいくつかあります。ジョン・ミューア・トレイルは340km。1ヵ月くらいかけて歩くルートだそうで、さらに長いルートもいくつかあります。
そんな長い道を、重い荷物を背負って歩くのは、想像するだけでイヤになります。荷物が軽ければ、周囲の生きものとか、風景とかを楽しむ余裕もできます。
土屋さんが表紙になった『渓流2011夏』
そこまで長い旅でなくても、荷物が軽くて困ることはありません。たとえば源流釣行のように、自分で荷物を背負って川をさかのぼり、イワナを釣るような時には、少しでも荷物を軽くしたいもの。そのため『渓流』でもULの特集を組み、土屋さんにも取材をお願いしました。
たたむと手のひらに乗るうえに、しかもタープと蚊帳が付いていて雨も虫も防げるハンモック。アルファ米と粉末調味料、フリーズドライの食材を組み合わせたオリジナルの食事。それを作る湯を沸かすアルコールストーブ。安心して川水が飲める浄水器……。これらのULグッズが、これまた軽いザックに入り、それで快適に野営できるというのは、源流釣りの愛好家にとってはありがたいことです。
上流に人家などがない源流では、そのまま川水を飲むことも多いけれど、ここまで軽量コンパクトな浄水器があれば持参して損はない
この道具を軽量化する流れはますます加速し、今ではULのバックパックやストーブ、シェルターを作るガレージメーカーが多数生まれています。おかげさまで、私の道具もだいぶ軽量化が進みました。もっとも軽くなったら酒を増やしてしまうので、結局軽量化は難しいのが現実。あとは業務用としてはすでに実用化されている、粉末酒が導入できれば……。
『ウルトラライトハイキング』
単行本:160ページ
出版社:山と溪谷社
発売日:2011/2/12