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編集部2023年3月31日

【イベント】体験して理解する!海と魚の安全性 復興庁主催「豊かな常磐の海でメバルを釣って食べよう!inいわき」

月刊つり人ブログ

常磐ものと呼ばれる豊かな福島県沖で水揚げされた魚は市場で高い評価を受けてきた。しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、福島県産の魚は未だに危険という風評が消費者の間で流布している。このイメージを払拭すべく、放射性物質の測定や試食を体験することで福島県産の魚の安全性を親子で学べるイベントが開催された。

レポート◎編集部

 常磐ものと呼ばれる豊かな福島県沖で水揚げされた魚は市場で高い評価を受けてきた。
 しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、福島県産の魚は未だに危険という風評が消費者の間で流布している。
 2023年3月18日、このイメージを払拭すべく、復興庁主催の親子体験型イベント「豊かな常磐の海でメバルを釣って食べよう!inいわき」が開催された。
 常磐ものとして名高いメバルを自分の手で釣って食べてもらうことで、福島県産の海産物に対する風評被害の払拭と観光誘致を図るイベントだ。
 このイベントの模様を、メバル釣りの解説とともにレポートする。

驚くほど魚影豊富ないわき沖のメバル釣り

 福島県の南部に位置するいわき市の沖合は、栄養分が多く含まれた親潮と暖かい黒潮がぶつかり潮目となる、豊かな漁場だ。ここで水揚げされた魚は築地市場で「常磐もの」と呼ばれ高い評価を受けていた。この辺りではヒラメやカレイ類、アイナメ、マダラ、タイ類、スズキ、メバル類などさまざまな魚種に対して釣り漁や遊漁を実施している。釣りで獲られた魚は傷みが少なく、鮮度が高いということがメリットで、より高値で取引されやすい。

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イベントではMCを務めた4代目アングラーズアイドルの晴山由梨さんが、下見釣りの際にいわき沖で釣ったメバル。右がシロメバル(クロメバル)で左がウスメバル(アカメバル)

 とりわけ、いわき沖を含む常磐エリアのメバルは、他の地域ではなかなかお目に掛かれないような良型が数も多くねらえることから釣り人に親しまれている。釣れるメバルは2種類いて、より人気が高いのは釣り人が「クロメバル」と呼ぶシロメバルだ。そのほかに「アカメバル」と呼ぶウスメバルも釣れる。ウスメバルは深海釣りの対象魚であり、より深い場所に生息する傾向があるが、いわき沖でメバル釣りのポイントとなる水深40ⅿほどまでの根や漁礁の周りには両者が混生している。そのため、仕掛けや釣り方は同じまま、ある場所ではシロメバルが釣れ、別の場所ではウスメバルが釣れるといった状況になる。 

 特にシロメバル(クロメバル)については、関東など他の地域では、船からであっても30cmを超すような大きさはなかなか釣れない。ところがいわき沖では、その良型が一度に3尾、4尾、あるいは5尾と釣れることが珍しくなく、しかも常磐もののひとつを占める味の良さなのだ。

 

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いわき沖の釣り場のようす。港から出て30分ほど走った沖合のポイントで釣りをする。水深は深い場所で40mほど

 いわき沖のメバル釣りでは、ハリに羽根やフラッシャーが付いた3mもあるサビキ仕掛けを用いる。「常磐メバル五目」「東北メバル仕掛け」といった名前のご当地仕掛けが各種販売されており、その日の潮色や魚の活性によって、エサなしのほうがよく釣れる場合と、逆にエサ(オキアミやイカタンなど)を付けたほうがよく釣れる場合の両方がある。釣り方はシンプルで、仕掛けを海底まで下ろし、リールを巻いて余分なイトのたるみを取ったら、あとはオモリを底から50cmほど離すイメージでサオを水平に構えるのが基本になる。

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メバル釣り用のサビキ仕掛け。メーカーからさまざまなご当地仕掛けが発売されている

 オモリは50号が標準。そのまま船の揺れに応じて、オモリが底を定期的にトーン、トーンと叩き、サオ先が一定のリズムで曲がる、伸びるを繰り返す状態を保つ。船釣りの基本的な操作の1つだが、船の揺れがそのまま誘いになっているので、仕掛けは動かしすぎないほうがよい。それだけではアタリが出ない場合は、たまに仕掛けを大きく持ち上げて、ゆっくり下ろすフォールの動きを入れると、さらにメバルの食い付きをうながすこともある。状況に応じてそのような工夫も織り交ぜるとより釣果が上がる。

 メバルの群れに仕掛けが入り、ハリに食いつくと、ググンと明確なアタリが手に伝わる。そしてここからが、メバルの魚影が豊富ないわき沖の釣りの真骨頂。最初のアタリが来ても、慌てて仕掛けを上げない。すると1尾のメバルがハリに掛かり、海中で暴れることで、その動きに刺激された周りのメバルが、さらに他のハリに食い付いてくる。サオを支える手に伝わる重さが、明らかに増したら巻き上げ開始の合図。心地よい重量感を味わいながらリールを巻くと、やがて丸々と太ったメバルが列を成して海面に上がってくる。 

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コツが掴めてきたら一度に4、5尾が釣れることも珍しくない。こうなると重量感もたっぷりで非常に面白い

  なお、サオは船のエサ釣り用のものが幅広く使えるが、最近の主流である1.8ⅿ前後の取り回しのよいライトゲームロッドを使用する場合は、仕掛け全長をサオの長さに合わせて少し詰めておくよい。具体的には全長が3ⅿでハリが6本の仕掛けなら、下から2本分をカットし、ハリが4本の状態で全長がサオの1.5倍くらいまでになるよう調整しておくと釣りやすい。仕掛けをカットした場合は、カットした先にオモリを接続するスナップスイベルを付け直し、そこにオモリをセットして使う。

 

釣りイトの結びに熱中!

 3月18日のイベント当日は残念ながら朝から荒れ模様。風が強く冷たい雨が降りしきるため、出船は見合わせることとなったが、12組34名の家族が朝10時に会場となるいわき市久之浜公民館へ集合。屋内で「仕掛けの作り方教室」「放射性物質の測定会」「江戸前寿司教室・実食会」が実施された。

 4代目アングラーズアイドルの晴山由梨さんのMCで開会式を実施した後、「仕掛けの作り方教室」が開催された。サンラインフィールドテスターの柏倉悠太さんがこの日使う予定だったタックルや仕掛けを説明。

 仕掛けを短くする時にも役立つユニノットなどを練習した。釣り自体が初めてという参加者も多い中、講師や晴山さんが各テーブルを回ってサポート。初めはロープを使って結びの形を覚え、慣れてきたら実際の釣りイトを使って結んでみた。

 参加者たちは初めて見る仕掛けに皆興味津々で、真剣に話を聞いていた。

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仕掛けの作り方教室では講師陣の他にも晴山由梨さんも参加者をサポート

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ロープを使って分かりやすく釣りイトの結び方を説明

メバルの放射性物質量測定を実施し、安全性を確認

 昼食後は、いわき沖で獲れた魚に放射性物質がどれだけ含まれているかを実際に測定する「放射性物質の測定会」を実施。用意されたメバルやマダイ、タチウオなどは、実際に参加者が釣りを体験する予定だった海域で釣られたものだ。アクアマリンふくしまの獣医師である富原聖一さんが福島で釣れる魚や海の特徴を楽しく解説し、子どもたちを惹きつけていた。今回測定したのはメバル。富原さんが手早く捌いて検査に必要な分量である500gの魚肉を用意して「自家消費用作物の放射能簡易検査所」へ持ち込む。いわき市民が利用できるこの検査所には放射性物質の量を測定できる機器があり、そこで測定するとすぐに結果が分かるのだ。

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アクアマリンふくしまの獣医師、富原聖一さんが捌きながら話してくれる解説に皆興味津々

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検査所と参加者のいる部屋を中継し、リアルタイムで測定のようすを確認した

 検査所と参加者のいる公民館2階を中継で繋ぎ、リアルタイムで測定のようすを見学。測定の間、いわき市職員の作田大地さんと放射線測定装置メーカーの永野将史さんから、この機器の測定方法や福島県が実施している公的検査、漁協が行う自主検査について説明を受ける。結果を確認したところ、「不検出」。国が定める基準値は100ベクレル/kgとなっており、今回の結果は大きく下回っていた。「私たちが調査したなかで言うと、震災の後4年目くらいまでは基準値以上の魚が2、3回出ていましたが、今獲れる魚は稀に検出されても高くて3ベクレルです」と富原さん。

 さらに筑波大学教授の五十嵐泰正先生による「福島の海についての講座」では、基準値の意味、福島県産の魚の現状や、その安全性を広く伝える工夫などを説明してもらい、大人たちはもちろん、子どもたちまで真剣に聞き入っていた。五十嵐先生は「今回知って驚いたことや納得したことは、ぜひ周りの人たちにも伝えてほしい」と言い、講座後の質問にも丁寧に答えていた。

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筑波大学の五十嵐泰正先生による講座を参加者は真剣に聞いていた

江戸前寿司の握り方を教わり試食!

 講座の後は、江戸前寿司を自分で握って食べる「江戸前寿司教室・実食会」が続く。講師は東京の田町で1856年から続くおかめ鮨の5代目、長谷文彦さん。寿司教室で使われたネタは、いわき沖で釣られたメバルを長谷さんがあらかじめ捌いて昆布締めにした柵だ。各テーブルに用意された調理セットを使って各自でネタを切っていく。ネタの切り方、寿司の握り方をレクチャーしつつ、高級店の握り方や酢飯の分量などクイズや小噺もあり、子どもも大人も終始笑い声が絶えなかった。

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おかめ鮨の長谷文彦さんが各テーブルを回ってレクチャーしてくれた

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教わったとおりに握れば、初めてでもこのクオリティー!

 ネタの切り出し、シャリ作りのどちらも初心者には難しい作業で、長谷さんは各テーブルを回りながら参加者たちに握り方を教えていた。シャリを握る際に大切なのは手の温度で、寿司職人は25℃まで手を冷やすことでお米が手に付くことを防いでいると長谷さんは言う。参加者たちは用意された氷水で手を冷やして、慣れない作業に苦戦しつつも親子で寿司教室を楽しんでいた。

 完成したらいよいよ試食。自分で握った寿司と長谷さんがメバルで作ってくれた澄まし汁の美味しさに、参加者たちからは驚きの声が漏れていた。前日に釣られた新鮮なメバルをお土産に持ち帰り、「今日学んだことを活かし、頑張って捌いてみます」と意気込む親子もいた。

 

参加者の声

「(お寿司の握り方を)教えてもらって自分で挑戦して握るのが楽しかった」茨城県・小学三年生

「子供が興味を持てるように工夫して皆さんお話ししてくださったのかなと感じて、子供も飽きずに最後までちゃんと聞いていたし、意外と忘れずに覚えているんじゃないかと思います」同・お父さん

  

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お土産に配られた立派なメバルに子どもたちもご満悦

 

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