編集部2019年5月21日

書籍『池の水ぜんぶ“は”抜くな!』出版によせて

月刊つり人ブログ

『池の水ぜんぶ“は”抜くな!』の編集作業で池田清彦先生に話を聞いていると、「へぇ〜」と思うことばかりでした。

外来種問題をさまざまな角度から掘り下げる1冊

つり人編集部=文


『池の水ぜんぶ“は”抜くな!』の編集作業で池田清彦先生に話を聞いていると、「へぇ〜」と思うことばかりでした。

たとえば、在来種だと思われていたクサガメが、最近の遺伝子調査で朝鮮半島から来たことがわかったこと。あるいはコスモスとオオキンケイギクはどちらも外来種なのに、マイナーな後者のみ野外での栽培が禁止されていて規制が厳しいこと。ハクビシンは特定外来生物には指定されていないことなどなど……。

また遺伝子汚染について教えていただいた時には、外来種問題の複雑さがよくわかりました。

遺伝子汚染には、たとえば外来種のタイワンザルと在来種のニホンザルが交雑してしまう例があります。純粋なニホンザルの遺伝子を守るために、交雑個体は駆除されています。

最近の外来種問題についての対応を見ていると、「池から外来種をぜんぶ駆除しましょう」など、極端な方向に走っているように思えます。もちろん駆除が必要なケースはありますが、大して影響のない種まで殺してしまうのはどうなのか……。

そして、そもそも駆除ができるのかという問題もあります。莫大な費用をかけて駆除しても、少し残っていれば、再び増えてしまうケースが多いと聞きます。

今は21世紀、日本では令和元年を迎えました。これだけ科学も技術も進歩しているのですから、「外来種=悪」だけではなく、「この種は大して影響がないので何もしなくていいです」、「こちらは人間にも直接被害があるので駆除しましょう」、「この池では外来種も共存可能です」など、もう少し細やかな対応はできないものでしょうか。

人が勝手に運んできて、勝手に殺してしまう外来種を見ていると、やりきれないモヤモヤが残ります。本書が、この問題を再考するきっかけになればと思います。

◆本書の内容の一部をつり人オンラインでも読むことができます
・第1回「池田清彦先生に聞く外来種問題の現在
・第2回「我々は「手つかずの自然」を取り戻せるのか?
・第3回「自然に人の手を加えることの是非 「手助け」でもダメなのか?

目次

011
第1章 外来種と在来種の境界線
いつ入ってきたら外来種なの?
在来種から格下げされたカメ?
人の手が運んだ生きもの
国内で運んでも外来種?
クマゼミは人が運んだのか?
外来種問題を整理する

027
第2章 なぜ外来種はワルモノにされるのか?
タイワンリスの悪行
駆除するかどうかは、どう決まる?
人が利用している外来種
琵琶湖の在来種を減らしたのは?
小さな島では外来種が脅威になる
ニッチについて
交雑種は殺すべきなのか

ike_01
045
第3章 外来種を駆除して何を守るのか?
人が手を加える前に戻したい
作られた里山生態系
トキを巡る複雑な事情
生物をコントロールできるのか
「手つかずの自然」
ビクトリア湖のシクリッド
里山も「手つかず」に戻すべき?
水田は「自然」とは呼べないから……


069
第4章 人が手を加えるのはそこまで悪なのか
生きものを手助けする
堰堤の上に魚を移動させるのは?
絶滅しそうでも「手は出さない」のが正しいのか
人と自然の関わり方

ike_05
080
Column 1 令和元年に思う「梅」のこと

081
第5章 必要なのはケース・バイ・ケースの対応
危険な外来種
「外来種=悪」は単純すぎる
何を目指すべきなのか?
子どもたちには正確な知識を

089
第6章 群馬県邑楽町に見る外来魚駆除の現実
中野沼の例
外来魚だけど……かわいそう
殺さなくてすむ方法
水をぜんぶ抜いたら……?
生きものと触れ合う機会
転換期
目的は何なのかを明確に

106
Column 2 外来種に依存する在来種

107
第7章 池田清彦が語る外来種問題の現在
竹ヤリで戦うようなもの
外来種の定義は恣意的
生態系は変わっていくもの
いてもどうってことのない外来種
外来種によるコントロール
役に立つならいてもOK?
遺伝子が混じり合うのは悪なのか
クワガタの交雑
環境収容力
どのくらい採ってもよいのか
すべての命は大切
移入先で見つかったクニマスの例
命の選別は許されるのか

 

外来種問題をさまざまな角度から掘り下げる1冊

 


定価:本体1,000円+税
四六判並製128P




2019/5/21

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