老若男女にチャンスのある大らかなターゲット、それが戻りガレイである。遠投の必要なし。湾内や潮裏がねらいめで、基本は投げて待つのみだ。時合は潮変わりの前後。明るくなった日差しの下で、のんびりアタリを待とう。
おすすめ時期:3-4月
神崎洋輔◎文
産後のカレイはお腹がべっこりしているものだが、この魚は肉厚。まさに戻りの魚体である
老若男女にチャンスのある大らかなターゲット、それが戻りガレイである。遠投の必要なし。湾内や潮裏がねらいめで、基本は投げて待つのみだ。時合は潮変わりの前後。明るくなった日差しの下で、のんびりアタリを待とう。
この記事は『つり人』2016年5月号に掲載したものを再編集しています。
「戻りガレイ」とは
3月下旬は1年で海水温が最も低い時期といえエサ取りの活性が低い。ゆえに当たればカレイの可能性が高いのである。というのもカレイはエサを取るのが遅い。目の前にエサがあったとしても先にほかの魚に食べられてしまう。カレイの乗っ込み期となる秋~初冬は水温が高く、エサ取りも高活性。エサが届かず、頻繁な打ち返しを強いられ、仕掛け回収のタイミングがとても難しい。それに比べ春の釣りは簡単である。遠投も必要なくビギナーやファミリーも手軽にカレイをねらいやすい。
春は産卵を終えたカレイが体力を回復すべく荒食いをする。産後のカレイはしばらく口を使わない。いわゆる産後の一服だ。エサが前にあっても積極的には食べない。やがて食い気が戻って釣れるようになると、釣り人はカレイが同じ場所にいたのに戻ってきたと錯覚する。春の好機を「戻りガレイ」と称するのはこのためだ。サクラの季節に釣れるのは「花見ガレイ」とも称されるが、こちらはさらに季節が進み、より食い気が活発になる盛期をいう。
東京湾で投げ釣りでねらえるのは大方、マコガレイである。千葉県の魚屋やスーパーの鮮魚コーナーに行くと富津産のイシガレイが売っていることもある。が、投げ釣りで釣れたという話は稀だ。マコガレイは非常に美味で身に甘みがある。
エサの動きと匂いでアピールせよ
基本的なタックルはオモリ負荷30号程度の投げザオ。小磯から釣る場合は手前に根が張り出しており、4m強の長さがあると取り回しがよい。リールはドラッグ付きの投げ専用が好ましい。サメやエイなどの大型魚が掛かると、一気に仕掛けを引っ張る。この際ドラッグを緩めておけばサオごと持っていかれなくて済む。またドラッグはエサを充分に食い込ませるのにも一役買う。カレイはアタリが出てもとことん食い込ませるのが定石なのだ。
テンビンは食い込みを重視した遊動式がおすすめ。工房浦安『スーパーシグナル天秤』や『改良名古屋天秤』がよい。オモリは海底の地形によって使い分けており、特に障害物がなく、大きなカケアガリもない砂地底は小田原型などの無垢のオモリ25~30号。急傾斜のカケアガリや根周りをねらう時はフロートタイプのシンカーを使用する。これは巻き上げ時に浮き上がり早く、回収時にカケアガリや根をかわすことが容易だ。
筆者の愛用タックル テンビンは『スーパーシグナル天秤』。フロート(発泡)シンカーの30 号があると磯周りでも根掛かりが軽減される
上バリはがまかつ『丸海津』14号、下バリは『管付チヌ』4~6号が私のベーシックである
ハリスはフロロカーボンの4~5号、元スは5号で30㎝ほど取る
カレイはチモトにパール玉やフロートビーズを付けてアピール度を高めるのも効果がある。しかしフグが多い時は逆効果
リールはダイワ『キャスティズム25QD』PE2~3号が200mほど巻ければ問題ない。特に潮流の速い釣り場ではミチイトは細めがおすすめだ
愛竿はダイワ『スカイサーフT』27号- 405。遠投を重視しないので高反発なロッドでなくとも問題ないが、小磯でねらう場合は4m以上の長さがあるとハエ根をかわしやすい
上バリはがまかつ『丸海津』14号、下バリは『管付チヌ』4~6号が私のベーシックである
ハリスはフロロカーボンの4~5号、元スは5号で30㎝ほど取る
カレイはチモトにパール玉やフロートビーズを付けてアピール度を高めるのも効果がある。しかしフグが多い時は逆効果
リールはダイワ『キャスティズム25QD』PE2~3号が200mほど巻ければ問題ない。特に潮流の速い釣り場ではミチイトは細めがおすすめだ
愛竿はダイワ『スカイサーフT』27号- 405。遠投を重視しないので高反発なロッドでなくとも問題ないが、小磯でねらう場合は4m以上の長さがあるとハエ根をかわしやすい
用意するエサはアオイソメが一般的。さらにイワイソメもあれば有利な釣りを展開できる。イワイソメは臭いが強く集魚効果が高い。またアオイソメに比べて身が硬いのでエサ持ちもよい。アオイソメは動きでカレイにアピールして食わす。何匹かを房掛けにしてボリューミーに付けると、クネクネ動いてアピール度が高い。購入の目安としては1日釣りをしてサオを2本だすのであれば、アオイソメが6パック、イワイソメが2パック程度でよいだろう。
仕掛けはテンビンから1m以内と短くてよい。元スは8号。ヨリモドシを介してハリス5号を段差仕掛けにする。上バリは細軸で長い『丸海津』。これにイワイソメを付ける。下バリは『管付チヌ』4号でアオイソメを付ける。アオイソメの房掛けが上バリにあるとキャスティング時に仕掛けのバランスが崩れ、手前マツリの原因にもなる。2種類のエサをいかに状況に応じて使い分けるかが釣果を伸ばすコツだ。
動きのアオイソメと匂いのイワイソメ このように上バリはイワイソメ、下バリはアオイソメと段差にすると効果的
イワイソメの装餌方法はハリスまでこき上げる
アオイソメの装餌方法は3~4匹を房掛けにする
イワイソメの装餌方法はハリスまでこき上げる
アオイソメの装餌方法は3~4匹を房掛けにする
春のカレイが好む潮下・潮裏
小磯・堤防の主なポイントの目安について。春のカレイは潮の通さない、淀んだ湾内に付きやすく、潮下の潮裏がねらいめ。おそらく体力が回復したばかりで流れが弱い所のほうが居心地はよいのだ。
さらに付き場を絞ると、カケアガリ、岩礁帯に混じる砂地の海溝部である。カケアガリは海底の斜面、つまり変化があるところだ。プランクトンなどのエサが集まりやすく、カレイの寄りもよい。捜し方は仕掛けを手前にサビいて抵抗を感じるところ。そこに仕掛けを留めておく。
岩礁周りを探る場合は、根掛かりはもちろん、この時期繁茂する海藻に注意したい。必需品は偏光グラス。海底が白く見える位置が砂地なので、そこを目がけて投げること。キャストはやや強めに、サミングで投入位置をコントロールする。根の上に乗りそうな位置に入った場合はすぐに回収して打ち返そう。
戻りガレイは思いのほか手前にいるもの。前述のように緩い流れに付くからで、遠投して潮通しのよいエリアに投げ込むよりも好釣果につながりやすい。このようにチョイ投げで釣れる。それもビギナーに優しい理由だ。
観音崎海水浴場の脇にある堤防。こんなワンドに戻りガレイは入っている
岩礁帯の間に白く見える溝は砂地帯。こうした海溝を探るのが小磯の基本だ
観音崎沖はタチウオの好釣り場。この日も沖合いにはズラリと船が密集していた
潮の動き出しを逃すべからず
釣り方はサオ2~3本を遠近に投げ分けてアタリを待つ。サオ数を多くすれば出会いが増えるかといえばそうでもなく、集中して仕掛けをさばききれない。基本は2本である。関東は釣り場が狭いわりに、釣り人口は多い。1人でも多くの釣り人が入れるようにするのも大事な心遣いである。
大らかにアタリを待つ。投げてサビいてを繰り返すシロギス釣りに比べるとカレイ釣りのリズムはのんびりとしている
サオは3本までと決めている。遠近投げ分けてポイントを探る
時合はなんといっても潮止まりの前後。カレイは時合に敏感で、潮の動き出しで口を使いやすい。釣れるのは潮止まりの1時間前後が多く、朝と正午前後に満潮と干潮が来る潮回りを選ぶと効率がよい。また朝夕のマヅメ時も時合だ。
マヅメ時も時合である。さらに潮止まりが重なれば大チャンス
カレイ釣りにヒトデは税金と考えていい。全国的に見てカレイが釣れるところはヒトデもよく釣れるのだ。対処法はこまめに仕掛けを動かしヒトデが掛からないようにするか、ハリスのチモトにフロートタイプのシモリ玉などをつけてエサを浮かすのも手だ。
厄介なのがフグで光物の装飾品や臭いのあるイワイソメに寄りやすい。対策は装飾品を外し、アオイソメのみでねらうか、フグが湧いた時は仕掛けを回収し釣り場を休ませるのもよい。また両隣に人がいなければフグが好む装飾品とイワイソメを付けた仕掛けを投げ、どちらかに寄せてしまうのもひとつの手だ。釣り場でヒトデやフグが堤防や磯に放置され見るも無残な形になっていることが多いが、同じ命ある生きものとして釣れたら海に帰してほしい。
とにかく待って、遅アワセ!
カレイのアタリはさまざま。全くアタリがないまま釣れていることも珍しくない。中でも多いのは細かくサオを叩くアタリの後でイトがフケる。またはジーッとドラッグの逆転音を高鳴らせ一気にイトを出すアタリだ。
充分食い込ませたところで、アタリを聞く。イトを絶えず出すようであれば掛かっている。合わせた時のズンという手応えがたまらない
問題はアワセ時だ。イトを出すカレイに、慌てて早アワセをしたくなるが、エサがしっかりと口の中に入っていないことは多々ある。気持ちとしてはもう1本のサオを回収し、打ち返しからでも充分。それぐらい遅アワセでも問題はない。カレイ釣りの醍醐味はアワセを入れるまでのドキドキ感にある。アワセが決まった時にカレイの重みで「ズシッ」と手応えがあると、思わずニンマリしてしまう。
釣れない時の次の一手としては、仕掛けやオモリを変えること。仕掛けはビーズや発光玉などを付け加える。また仕掛けの全長を極端に短くするのも有効だ。カレイは砂煙に敏感だ。オモリを動かすと砂煙が上り、その近くにエサがあるとカレイも見つけやすい。極端にいえばテンビンの針金部分にハリがあっても問題ない。
取り込みで大切なのはタモ入れである。抜き上げてしまう方も目立つが、必ずタモ入れをするように心掛けたい。カレイの口は大きくなるほど内側が硬くなる。そして大きなハリにたくさんのエサを付けるのでハリ立ちも悪い。すっぽ抜けもある。タモ入れの注意点は必ず頭からすくい、必ず柄を縮めながら網を垂直に引き上げるとよい。柄を伸ばしたまま上げると折れてしまうことも珍しくない。
この日は千葉サーフのメンバー5人で観音崎の堤防と磯を楽しんだ。3月下旬からが最盛期だ
満潮1時間前、釣友の大山俊明さんに戻りマコ。我がことのように喜ぶワタシ(右)
千葉サーフの会長、坂井勇二郎さんも本命をゲット。こちらは昼の干潮時に潮裏の岩礁周りをねらった
坂井会長の管付き遊動バリ この日釣果を出した坂井会長は一風変わった仕掛けだった。下バリは普通に結びつけた丸海津。上バリは管付きだがハリスを管に通しているのみ。結ばず、遊動式にしているのだ。このほかアピール度を高めるため、生きエサのほかにピンクのワームを付けているのも特徴的だ
坂井会長が釣ったカレイは、2本のハリがいっぺんに掛かっていた。こうした現象は珍しくないという。容易に口を使わないが、時合になると貪欲にエサを食べる。それもカレイの性質といえる
ゆらゆらと海底から浮上する茶色く丸い存在感。カレイを釣っていて最も胸がときめく瞬間
2017/3/25