エントリーしやすく老若男女が手堅い釣果を得られるのがイシモチ釣りだ。 春の金沢八景沖はまるでイシモチの絨毯というくらいにアタリが頻発する最盛期。 のんびりと置きザオで楽しむのもよし、多点掛けをねらってガンガン釣るのもあり。 ポカポカと温かい穏やかな沖に繰り出そう!
おすすめ時期:5月いっぱい
つり人編集部=写真と文
「沖釣りをとりあえずやってみたいと思う人にも、イシモチ釣りはかなりオススメで~す」と三石さんエントリーしやすく老若男女が手堅い釣果を得られるのがイシモチ釣りだ。
春の金沢八景沖はまるでイシモチの絨毯というくらいにアタリが頻発する最盛期。
のんびりと置きザオで楽しむのもよし、多点掛けをねらってガンガン釣るのもあり。
ポカポカと温かい穏やかな沖に繰り出そう!
この記事は『つり人』2017年6月号に掲載したものを再編集しています。
最盛期の金沢八景
「イシモチ釣りは道具を選びません。スピニングでもベイトでも、ムーチングロッドでも、多少軟らかいサオであれば何だって使えます」
春の柔らかな日差しを浴びてイシモチが浮上
そう話す三石さんは手巻きと電動の2本ザオを用意。この日は三石さんのほか女性限定の釣りサークル「TLC」のメンバー3名が合流した。会長の金子マミさんと吉田まこさん、星野靖枝さんでそれぞれ旬の沖釣りを楽しんでいる。TLCの会員は約60名。幅広い世代の女性釣りファンが所属し、発会から12年を数える。三石さんは同会を盛り上げるリーダー的存在だ。
三石さんの愛竿がまかつ「ライブラ」。汎用性の高い7:3調子のサオでこの日はL-180を用意。手巻きリールはシマノ「オシアコンクエスト200HG」、電動リールは「フォースマスター800」。手巻きでも電動でもどちらでも楽しめる
イシモチはスズキ目・ニベ科の魚で標準和名はシログチ。耳石が大きいことから「石持」と呼ばれるが、和名のシログチは「グーグー」と鳴くことに由来する。腹壁を動かしウキブクロが振動して出るこの音が、まるで愚痴を言っているように聞こえるためだ。余談だが無愛想なこと、愛嬌のないことを意味する「にべもない態度」という表現がある。これもニベ科の魚が語源である。イシモチ(ニベ科)のウキブクロはその昔、粘着力の強いニベニカワという接着剤の原料だった。この粘着力の強さから「にべ」は他人との親密な関係を意味し「取り付きようのないこと」、「愛嬌のないこと」を「にべもない」と言うようになった。さて、沖で釣れるイシモチのアベレージは20~30㎝。まれに40㎝クラスも掛かる。水深20~70mの砂泥底に生息し周年釣れる。
「水が温むと群れが浅場に散りますから1ヵ所では釣れにくくなります。釣り方はオモリが底をトントンと叩くくらいのタナをキープするだけ。アタリが出ても充分に待って向こうアワセでOKです」
とは鴨下丸の高山将彦船長だ。多くの船宿が軒を連ねイシモチ乗合の看板を掲げる金沢港にあって懇切丁寧なスタッフが切り盛りするのが鴨下丸。4月上旬、7時30分の出船である。
金沢八景鴨下丸の船は大型で安定感よし。この日は平日にもかかわらず満船の大盛況
出船前には船長がレクチャーしてくれる。個性的スタイルの高山船長は温厚で親切。分からないことがあれば何でも聞いてみよう
アオイソメの付け方 アオイソメの頭の付け根を押すように口を開ける
口の中にハリ先を入れ込み頭の付け根までフトコロに通す
タラシを切る。目安としては10~15㎝
完成
口の中にハリ先を入れ込み頭の付け根までフトコロに通す
タラシを切る。目安としては10~15㎝
完成
多点掛けには誘い下げ
イシモチ釣りの仕掛けはドウヅキ3本バリ。鴨下丸では専用仕掛けを販売している。幹イト2号に枝ス2号を30㎝と長めに取る。ハリはネムリが特徴のムツバリ。オモリは30号。エサはアオイソメで付け方は口にハリ先を入れてチョン掛け。タラシは長め、アピール度を高め、ゆらゆらとアオイソメを漂わせる。
基本は底トントンでイソメを躍らせ、時にタタキ誘い上げて落とすアクションも効果的だ。多点掛けをねらう駆け引きもまたイシモチ釣りの面白さ
水深は30m。仕掛けを下ろして間もなく「きたあ!」と金子さんがいきなりのヒット。続けざま船中各所でガンガンと穂先を引き込む明確なアタリが出る。三石さん、星野さん、吉田さんも多点掛け。いとも簡単に連発である。「追い食いを誘うなら、聞き上げちゃダメね。むしろ穂先を下げて送り込む感じのほうがいいです。多点掛けの駆け引きは結構ハマります」
「癒されますね~」と良型をゲットした金子さん。バス釣りにはじまり、渓流、ヘラ、沖釣りは何でもというマルチな女性アングラー
そうして三石さんはイシモチ2尾とシロギスの3点掛けを達成するが、全部が成功するわけではなく「あ~外れた!」と言って悔しがる場面も目立つ。
「簡単だけど奥も深い。数を本気でねらう人とそうでない人で釣果に雲泥の差が出ます。多点掛けをねらって真剣に数を釣ってもいいし、置きザオでのんびりと釣るのもいい。楽しみ方はアナタしだいという釣りです」
吉田さんはこの日の女性メンバーで唯一のトリプルヒットを達成。キンメにムツといった高級魚やコマセマダイも好き
良型のダブルヒットでニッコリ顔の星野さんはスミイカ、カワハギ、マゴチといったテクニカルな沖釣りを楽しむ
イシモチは口が大きくイソメを一気に吸い込みそうだがついばむようにして食べる。このため早アワセは禁物だ。穂持ちまで引き込むハッキリとしたアタリが出たところで合わせる。多点掛けをねらうなら1尾がしっかりとフッキングしたところでしばし待ち、さらにアタリが出たところで穂先を送り、追加の引き込みを感じた時にサオをリフトするかリーリングに移る。手返しを早めるならリールを置きザオで巻くのもよい。注意点は放置しすぎるとサメが食ってしまうこと。またせっかくフッキングしても外れてしまうこともある。追い食いを誘う間合いはほどほどがよい。同じ海域に歯の鋭いカマスが回遊していることもあり、イソメが引きちぎられていることもしばしば。アタリが遠いと思ったなら、一度回収してエサを確認する。イソメのタラシは短いほどフッキングしやすいが、アタリは遠くなってしまうのである。
「のんびりして春の遠足みたいよね」
と吉田さん。この日はすっきりと晴れたポカポカ陽気で海はベタナギ。潮回りは大潮で正午に干潮を迎える。下げ潮が利く午前が時合と船長はいう。
必ずといってよいくらいに入れ食いになる時合はある。ぜひイシモチ釣りを堪能あれ
潮止まりの時間はアタリが少なくなったもののそれ以外はアタリっぱなし。三石さんは開始から2時間も経たないうちに30尾超を数え、35Lのクーラーは瞬く間にいっぱいになった。「イシモチって食感が独特でナメロウが美味しいですよ。新鮮なうちはユッケ、カルパッチョ。潰した身でさつま揚げを作ってもいいし、小型は丸揚げがおすすめです。私の田舎の長野ではイシモチのお腹に酒粕を入れて保存食にしていました」
穏やかな海域で多くのアタリを感じられるイシモチ釣り。数が出るのでアフターフィッシングも長期に渡って楽しめる美味魚。沖釣り入門者にイチオシのターゲットだ。
金沢漁港鴨下丸特製のイシモチ仕掛けを使えば間違いなし。向こうアワセのこの釣りではムツバリのようなネムリ型のハリが好適だ
クーラーには潮氷を入れる。イシモチは身が傷みやすい魚なので、早めにクーラーに入れておこう
血抜きをしたほうがイシモチは断然美味しい。エラの付け根をハサミでカットするだけでよく、深く刃先を突っ込んでカットするのがミソ
●問合先:金沢八景鴨下丸(℡045・781・8410)
●料金:7000円(女性・中学生以下4000円)
●出船時間:7時30分(沖上がり13時30分)
●交通:横浜横須賀道路・並木ICもしくは首都高速湾岸線・幸浦ICで下り、県道357号で金沢柴町の交差点を右折。金沢漁港の交差点を左折して金沢港。看板に従い鴨下丸の駐車場へ
三石さんのおすすめレシピ
カルパッチョ 3枚におろして皮をひき中骨を取る。5枚におろしてもよい。イタリアンソルト(ハーブソルト)を軽くまぶして10~30分浸透させる。薄くスライスしてバルサミコ(オリーブオイルでもOK)をかけて、ガーリックパウダーを振りかければ完成
炙りユッケ 3枚もしくは5枚におろして皮をバーナーで炙る。焼き肉のたれ(甘口、辛口は好みで)に漬けて味付けしてから、皿に移してラー油またはごま油をかける。最後に卵黄を落とせば完成
丸揚げ 頭を縦に割って目玉を取ると熱が通りやすい。また耳石も取り除くと食べやすい。下味は日本酒に塩を溶かして塩水をつくりすり下ろしニンニクを混ぜる。水分をキッチンペーパーで拭き取ってから片栗粉をまぶして中火でじっくりと約20分揚げる
カルパッチョ 3枚におろして皮をひき中骨を取る。5枚におろしてもよい。イタリアンソルト(ハーブソルト)を軽くまぶして10~30分浸透させる。薄くスライスしてバルサミコ(オリーブオイルでもOK)をかけて、ガーリックパウダーを振りかければ完成
炙りユッケ 3枚もしくは5枚におろして皮をバーナーで炙る。焼き肉のたれ(甘口、辛口は好みで)に漬けて味付けしてから、皿に移してラー油またはごま油をかける。最後に卵黄を落とせば完成
丸揚げ 頭を縦に割って目玉を取ると熱が通りやすい。また耳石も取り除くと食べやすい。下味は日本酒に塩を溶かして塩水をつくりすり下ろしニンニクを混ぜる。水分をキッチンペーパーで拭き取ってから片栗粉をまぶして中火でじっくりと約20分揚げる
2018/5/8