身近な都市河川に泳ぐコイ、ヤマベ、カワムツ。 身近な魚もアプローチを変えると、異なる釣趣に目覚めるもの。 ここで紹介するのはフライフィッシング。 毛バリを巻いたり、キャスティングを覚えたりと、専門的な技術が必要な一面もあるが、都市河川を泳ぐコイ科の魚は難しいことを覚えずとも釣果が出やすい。 お手軽に水面に飛び出る魚たちの興奮が味わえてしまうのだ。
おすすめ時期:1~3月
つり人編集部=写真と文
ライズがある時に当たればワンキャストワンヒットということも。それでいてなかなか乗らないから余計に熱くなってしまう
身近な都市河川に泳ぐコイ、ヤマベ、カワムツ。
身近な魚もアプローチを変えると、異なる釣趣に目覚めるもの。
ここで紹介するのはフライフィッシング。
毛バリを巻いたり、キャスティングを覚えたりと、専門的な技術が必要な一面もあるが、都市河川を泳ぐコイ科の魚は難しいことを覚えずとも釣果が出やすい。
お手軽に水面に飛び出る魚たちの興奮が味わえてしまうのだ。
中根淳一◎講師
この記事は『つり人』2016年3月号に掲載したものを再編集しています。
目次
ライズフィッシングを身近な川で
「〝新年こと初め”ということで普段あまり取り上げない釣りにも挑戦してみようか」という話が編集会議で持ち上がった。そこで、編集長がヘラブナ釣り、S副編と編集部員Oがフライフィッシングに挑戦することになった。
おりしも、姉妹紙『Fly Fisher 』が年明けに都市河川のヤマベ取材に行くというから、同行しない手はない。フライフィッシングでは渓流オフシーズンにヤマベ釣りを楽しむ人が多いとか。「渓流解禁前の練習相手にしておくにはもったいない!」とFly Fisher 編集部員も太鼓判を押すほど。
本誌でもヤマベの蚊バリ釣りは何度も紹介している。同じ毛バリ釣りということで興味を持ってもらえる方も多いのではなかろうか。もちろん、フライフィッシングに挑戦してみたいという人にもおすすめのターゲットだ。
釣り方をおおまかに説明すると、ライズ(魚が羽化した虫を捕食するために水面に出ること)を見つけて、そこ目がけてフライを流して釣る。水面を〝パシャッ”と割った時の興奮は何ともいえない。
ヤマベやカワムツは人間の生活場に近い都市河川に生息している。そんな川へは電車を使って簡単にアクセスできるし、ウエーダーも不要な場所が多い。川原を散歩するような気分で楽しめる手軽さがある。魚は小さいのでランティングネットも不要だ。
軽装かつ身近な河川でライズねらいの釣りを楽しめるのが大きな魅力。一度挑戦してみればその面白さがが分かるはずだ。実釣に入る前にまずは道具を確認してみよう。
ロッド、リール、ラインは番号で合わせる
フライラインには♯2や♯3といった番号が書いてある。数字が大きくなるほどラインが太く重くなる。おおまかにいうと、小さなフライを使って繊細に釣る時は低番手(小さい数字)のラインを使い、飛距離を出して大ものをねらいたい時には高番手のラインを使用する。
3番ラインを投げるのに適したロッドが♯3ロッドであり、♯3のフライラインを収納するのに適したサイズが♯3のリールとなる。ラインの太さに合わせて、ロッド、リールがシステマチックに決まる。
ヤマベやカワムツといった小ものをターゲットにするので、可能な限り軟らかい低番手のロッドを使ったほうが面白い。具体的には♯0や♯1ロッドが該当する。メーカーからヤマベ専用ロッドも発売されている。これから渓流で使うことも視野に入れて♯2~3ロッドを用意してもよいだろう。ただ、硬すぎるロッドはアワセと同時に魚が飛んできてしまうので注意。
リーダー、ティペットの太さはXで表記
フライラインの先端にはテーパードリーダーとティペットを接続する。太さを表わすのにフライフィッシングではX(エックス)が使われる。6Xが0・6号の太さに相当する。7Xはおよそ0・4号であり、数字が大きくなると直径が細くなる。
なお、太さが均一ではないテーパードリーダーの場合は先端の細い部分の太さを表記している。小ものねらいではリーダーは7Xの9フィート、ティペットは7~9Xを2~3フィート取って接続する。
つり人編集部が使ったロッドがティムコ『ユーフレックス インファンテ フライロッド オイカワSP』の0番と1番
ティペットは7~9Xを用意したい
リーダーは7Xの9フィート
フライは完成品でOK
使用するフライは♯18ほどのドライフライ。このサイズでは魚の口に入らないこともあるので、♯20~♯22のさらに小さいフライも用意しておくと安心だ。こうした極小サイズのフライをミッジと呼び、オレンジや白などのハックルが巻かれているものだと視認性に優れていて目で追いやすい。これらのフライはフライ専門店や釣具店で購入できる。最初は引っ掛けてロストしてしまうので、多めに用意したいところ。
講師を務めてくれた中根さんのフライボックスにはフックサイズ20~23 番のミッジと呼ばれる小さなフライが入っていた
ドライフライにはフロータントを塗って浮力を出す。よく乾かしてから付けること
タックルセッティングのワンポイントアドバイス ラインをガイドに通す時はティペットを持つのではなくフライライン2つ折りにして持つ。誤ってラインを放してしまった時でもガイドからするすると抜けにくい
リールシートはスピニングなどでよく見られるスクリュー式のほか、リングタイプもある。これは2つのリングでリールシートを挟んで固定するタイプ
タックルをセッティング終えたり、移動する時は写真のようにフライラインを第一ガイドから出すようにしておくと、ラインがするするとガイドを落ちていくことがない。ティペットとリーダーをリールに掛けて折り返すようにしてフライをガイドに掛けるとよい
リールシートはスピニングなどでよく見られるスクリュー式のほか、リングタイプもある。これは2つのリングでリールシートを挟んで固定するタイプ
タックルをセッティング終えたり、移動する時は写真のようにフライラインを第一ガイドから出すようにしておくと、ラインがするするとガイドを落ちていくことがない。ティペットとリーダーをリールに掛けて折り返すようにしてフライをガイドに掛けるとよい
ライズ捜し
当日、東京都・東久留米駅でFlyFisher 編集部員Мと中根淳一さんと合流した。中根さんは渓流からソルトフライフィッシングまで幅広くこなすエキスパート。
東久留米駅を囲むように黒目川と落合川が流れている。これらの河川は湧水が豊富なため冬期でも水温が安定し、今の時期でも釣果が期待できるのでは……ということでこの河川をチョイスした。まずは、黒目川へ向かった。黒目川は住宅地の間を流れる都市河川。両岸には遊歩道が設けられていて、散歩、ジョギング、サイクリングなど地域住民の憩いの場になっている。
橋の上など高いところから水面に目を凝らしてライズを見つける
「川に着いたら、まずは比較的流れの緩い水面を高い位置から覗き込んでみるとよいでしょう。基本的にライズを見つけて釣っていきます。まずは上流に向かいながらようすを探っていきましょう」
ヤマベらしき魚の群れを見つけたが、人の影を見るだけで逃げていった。この日は警戒心がかなり高かったようだ
時おり歩みを止めて、ざわついたような生命感濃厚なプールや緩い瀬をチェック。魚がライズしないか少し待ってみる。
「ライズが見られるいいポイントが見つかれば、次々にフライにアタックしてきます。水面を割った瞬間のドキドキ感もたまりませんが、アタックの半分近くはフッキングしない。『次の1投こそは……』と思い、ついつい熱くなってしまいますね」とМ。
また、群れに当たれば同じポイントで何尾もアタックしてくるので、アプローチに対してそれほど神経質になることはないという。まずはトラブルなく釣りができることが優先であり、メンディングなどテクニックについてはあまりナーバスになることはない。おおらかに楽しめるのも魅力だ。とはいえ、場が荒れて群れが移動してしまえば全く反応がなくなることも珍しくない。必要以上に接近したり、ラインで水面を叩いたりするようなことは避けたい。
時おり、ヤマベらしき魚が見えたが、群れではなく単独。しかもかなり小さい。
キャスティング まずはこの4つを意識!
「キャスティングは奥が深いし、これを話しだすと1冊、本ができますからね(笑) まずは4つのポイントに絞って練習して下さい。また、キャストしていてどこか痛くなったら、余計な力が入っている証拠。キャストはロッドの反発を使うので、力は不要です。肩の力を抜いて、再キャスト!」と中根さん。
1
手首だけで投げない
手首だけで投げようとするとロッドが後ろに倒れやすくなり、後ろにフライを引っ掛けてしまう。そして何より疲れる。手首は固定するイメージで腕の上下動も使ってキャストを行なうようにする。
2
ロッドの動きは面で
キャストの際は、前から見て、腕の動きが左右にブレないようにしたい。特に後ろに持って行った手(バックキャスト)を、前に戻す時に、無意識に手首をねじる動きをしてしまいがち。すると「キャスティングの面」が崩れてしまう。腕とロッドを一平面上で動かすイメージでロッドを振ってみよう。
3
フォワードキャストとバックキャストのリズムを合わせる
フォワードキャスト(前方への振り込み)とバックキャスト(後方への振り上げ)のリズムがズレると空中でティペットやリーダーが絡まってしまう。バックキャストの間がとれず、すぐにフォワードキャストに移ってしまうビギナーが多い。「イチ、ニ」と声に出して、フォワードとバックのタイミングを合わせるとよい。一定のリズムをつかむのが重要なので、スマホアプリのメトロノームを使うのも一手。
4
ロッドをしっかり止める
フォワードキャスト、バックキャストの終わりで、しっかりとロッドを止めることを意識するのもコツ。曲げたロッドを止める動きをすることで、ロッドの反発力を引き出し、ラインに力を伝える。特に先端の細いティペットがヘナヘナと落下してしまう場合は、止める動きが不足していないか確認してみよう。
ロッドの持ち方はいくつかあるが、親指を乗せる“サムオントップ”がおすすめ。手首が後ろに倒れにくくなるのと、高番手のロッドでも使える持ち方なので発展性が高い
いきなり4つの課題をクリアするのは難しい。1つずつ取り込んでいこう
「キャスティングは奥が深いし、これを話しだすと1冊、本ができますからね(笑) まずは4つのポイントに絞って練習して下さい。また、キャストしていてどこか痛くなったら、余計な力が入っている証拠。キャストはロッドの反発を使うので、力は不要です。肩の力を抜いて、再キャスト!」と中根さん。
1
手首だけで投げない
手首だけで投げようとするとロッドが後ろに倒れやすくなり、後ろにフライを引っ掛けてしまう。そして何より疲れる。手首は固定するイメージで腕の上下動も使ってキャストを行なうようにする。
2
ロッドの動きは面で
キャストの際は、前から見て、腕の動きが左右にブレないようにしたい。特に後ろに持って行った手(バックキャスト)を、前に戻す時に、無意識に手首をねじる動きをしてしまいがち。すると「キャスティングの面」が崩れてしまう。腕とロッドを一平面上で動かすイメージでロッドを振ってみよう。
3
フォワードキャストとバックキャストのリズムを合わせる
フォワードキャスト(前方への振り込み)とバックキャスト(後方への振り上げ)のリズムがズレると空中でティペットやリーダーが絡まってしまう。バックキャストの間がとれず、すぐにフォワードキャストに移ってしまうビギナーが多い。「イチ、ニ」と声に出して、フォワードとバックのタイミングを合わせるとよい。一定のリズムをつかむのが重要なので、スマホアプリのメトロノームを使うのも一手。
4
ロッドをしっかり止める
フォワードキャスト、バックキャストの終わりで、しっかりとロッドを止めることを意識するのもコツ。曲げたロッドを止める動きをすることで、ロッドの反発力を引き出し、ラインに力を伝える。特に先端の細いティペットがヘナヘナと落下してしまう場合は、止める動きが不足していないか確認してみよう。
ロッドの持ち方はいくつかあるが、親指を乗せる“サムオントップ”がおすすめ。手首が後ろに倒れにくくなるのと、高番手のロッドでも使える持ち方なので発展性が高い
いきなり4つの課題をクリアするのは難しい。1つずつ取り込んでいこう
都市河川のグッドファイター
正午になってもライズが見られないため、落合川へ移動することになった。下流に向かって歩いていると水面をパクパクしているコイの姿を発見。
「ちょっとやってみたら?(笑) でも、このロッドで掛けたら大変だよ!」と中根さんが言う。
小ものよりもずっとコイが気になっていたカープフィッシング担当のOはティペットの先にパンフライを結んだ。パンフライは白いヤーン(化繊)を使って巻いた簡単なものだ。1投目は見向きもされず、2投目もスルーされ、ドラッグが掛かったためピックアップしようとしたら「まだ、上げちゃだめ!」の中根さんの声。ズルズルとラインは流れに引っ張られ、パンフライは明らかに不自然な動きをしている。だが、1尾のコイがフラフラとパンフライに近付き、大きな口を開けてフライを吸い込んだ。1番ロッドは満月を描き、魚はなかなか寄ってこない。10分を超えるファイトの末なんとかランディングに成功した。
「このサイズですが、フライロッドで掛けるとすごい引きですね! 普段はブッコミ釣りでねらっていますが、フライは捕食の瞬間が見えて興奮します。カープロッドでメータークラスを掛けた時以上にスリリングでした!」
と満足そうなOであった。人に慣れている場所のコイは多少ドラッグが掛かっても食ってくることが多いという。そのため、最初の数投はすぐにピックアップせずにしっかり流しきったほうがヒットする確率は上がる。とはいえ、0番や1番といった超軽量ロッドでコイを掛けると破損の可能性もある。コイ釣りを楽しむなら、基本的には3番以上、5~6番ロッドが最適だ。
都内にもあったスプリングクリーク
落合川は、水面まで水草が漂い、まるで山梨県の忍野のようであった。忍野は富士山の伏流水を水源にする湧水地であり、日光の湯川などと並ぶ日本有数のフライフィッシングのメッカ。そんな雰囲気を東京都内で味わえるのだから環境は申し分ない。午後になり、虫もだいぶ出始めたので、もうそろそろライズがあってもいい頃だ。
午後になると虫がたくさん出始めた。チャンスタイムの到来だ
オーバーハングした木の下で単発ではあるが、ポツン、ポツンとライズが見られ始めた。中根さんはライズに忍び寄り、♯23サイズのミッジフライを流した。すぐに〝パシャ”と静かに水面が音を立てた。アワセも決まり、まず1尾釣りあげた。よく見るとヤマベではなくカワムツのようだ。カワムツは一見ヤマベに似ているが、背ビレの色を見ると分かる。ヤマベの背ビレには黒い筋が入り、カワムツの背ビレの前方は赤くなっている。
「ヤマベ……と思ったらカワムツでした」と中根さん
続いてFly Fisher 編集部のМもカワムツを釣りあげた。つり人チームはキャストに難儀しなかなかねらった流れにフライを置けない。粘ること数十キャスト、いい流れにフライが決まり、「お、食いそう」とМが言うと水面がパシャ。遅いびっくりアワセで飛んできたのはカワムツ。Oもなんとか魚を手にできた。
Oもなんとかカワムツをヒットさせた
この日はライズが少なく苦戦。つり人チームにとっては厳しいデビュー戦となってしまった。「ライズが多い日だと、雨が降っているように水面がポツン、ポツンと。もっと楽に釣れますよ!」と中根さんから慰めの言葉をいただき、納竿となった。
とはいえ、都内にもかかわらず、忍野のようなきれいな川でおおらかにライズフィッシングを楽しめたのは大きな収穫であった。皆さんも寒の釣りにコイ科のフライフィッシングを加えてみてはいかがだろうか。
こちらは別の日に中根さんが釣ったヤマベ
これからデビューする人に!初歩からのフライフィッシング
定価:本体1500円+税 著者:白川 元
A5並製判160ページ
2017/1/25