東京湾奥をホームとするシーバスフリーク、高橋優介さんは使うルアーによってPE ラインを使い分けている。ラインの硬さで飛距離やドリフトの精度が向上し、タフコンディションであるほど威力を発揮するからだ。
ラインの硬さで使い分けるというが……。
写真と文◎編集部
釣果に繋がる「飛ばす」と「流す」
東京湾奥はシーバスのストック量が豊富で都市部からのアクセスもよいため、シーバス釣りの激戦区でもある。入れ代わり立ち代わり訪れるアングラーによって、シーバスには強いプレッシャーがかかっており、一筋縄ではいかないことも多い。
東京湾奥をホームとしつつ、全国各地を釣り歩くシーバスフリークの高橋優介さんは、シーバス釣りで重要なのは「飛ばすこと」と「流すこと」だと語る。「飛ばすこと」とは、飛距離と精度を指す。東京湾奥の中規模河川では流れが効く場所が岸から遠いことも多く、届かなければシーバスの反応は一切ないということも往々にしてあるため飛距離は欠かせない。また、ねらった場所にルアーを投げ込む精度も重要だ。たとえ好ポイントまで投げられても、着水地点をコントロールできなければ思い通りのコースでルアーを泳がせることができなくなってしまう。特にストラクチャーや明暗の周りでは、小さなズレでも釣果が変わってくる。
一方、「流すこと」とは、シーバス釣りで多用されるドリフトというテクニックのことである。シーバスは流れの中で流されてくるベイトフィッシュを待ち構えて捕食することが多いため、この動きを再現することが有効になる。ラインを強く張ってルアーを泳がせるのではなく、ラインの配置やテンションを調整してルアーを動かしすぎないようにしつつ、シーバスの付いているポイントに送り込むことが大切になる。
どちらもシーバスアングラーにとっては基本中の基本ではあるが、釣果を伸ばすのであれば避けられない。高橋さんをはじめ、エキスパートはこれらをテクニックでコントロールしているのだが、アイテムでも改善することができる。その筆頭がメインラインであるPE だ。高橋さんは釣り方や使うルアーに応じてラインを変えているという。
アバニシーバスマックスパワーPE(バリバス)のX8(左)とX9(右)。X8 はしなやかさが特徴でトラブルレスな8 本撚りPE。流れに馴染みやすいためドリフトもしやすい。今夏から発売しているX9 は強い張りが特徴の9 本撚りPE。大型プラグは飛行姿勢がブレて飛ばしにくいものもあるが、ラインの張りがルアーのブレを抑えて飛距離が安定する。低伸度なので遠投先でのバイトもよく伝わりアワセも決まりやすい
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張りのあるX9か、しなやかなX8か
高橋さんが主に使うラインは二つ。アバニシーバスマックスパワーPE(バリバス)のX8とX9だ。X8は8本撚りでしなやか、X9は中心に一本の芯が入った9本撚りで張りがあり、低伸度なのが特徴となっている。「X9は14㎝以上の大型プラグや、引き抵抗が大きいバイブレーションを投げる時に使います。X8は小型だったり引き抵抗の小さいルアーを多用する場合に使いやすいですね。ミノーでいえば12㎝以下が目安になります」
X9の張りは強めで、キャスト時にはその張りがルアーを少し引っ張っているのが分かるそうだ。軽量ルアーにとってはデメリットになるが、大型のプラグになるとその引っ張る力がルアーの飛行姿勢を安定させてかえって飛距離が伸びるのだ。また、低伸度であることから遠投先でもフッキング率がかなり高く、高橋さんも重宝しているという。
対して、ラインが硬くなると難しくなるのがドリフトだ。ラインが突っ張ってしまうと不自然にルアーが引っ張られてしまい、シーバスに見切られる原因となる。ヨレをねらう時など、流れが複雑になるほど難しいのがドリフトであり、魚の活性が低い時はきれいに流せるかどうかで釣果は大きく変わってくる。シビアな状況こそ、しなやかなX8が活躍してくれる。
カラーはX8 が水中で目立ちにくいステルスグレー、X9 は視認性を高めたホワイトパープルのマーキングとなっている●規格(号):0.8、1、1.2、1.5●価格:オープン
遠投で制した旧江戸
10月上旬、高橋さんは旧江戸の左岸側、舞浜大橋の上流に足を運んだ。数日前の情報ではベイトが入り、数がよく出たという。しかし、あいにくこの日は南風が強く吹いていた。旧江戸の河口は南向きで、流れと逆向きのためドリフトが難しくなる厄介な状況である。舞浜大橋周辺は流れの利きやすい流心が右岸側に寄っているため、左岸側から釣る場合は遠投が欠かせない。高橋さんはX9を選択した。「ポイントに届く範囲で一番軽いルアーが強いのがシーバス釣りの基本です。風が吹くと流すのが難しくなりがちなので、まずは飛距離を稼いでシーバスの泳ぐところまでルアーを届けることを優先しましょう」
下げ始めから釣りを開始。最初に投げたのは自重のあるシンペンで、飛距離を稼ぎながら表層を探るが、反応はない。結び変えたのは30gのジグヘッドリグ。ベイトが入っていないようでシーバスも少ないようだ。さらに遠投してボトムを探ると待望のヒット。サイズは40㎝強と小ぶりながらも、50m以上先のボトムでアタリを感知しアワセが決まったのは、まさに低伸度PEであるX9のおかげだろう。同じ釣り方でもう一尾をキャッチして移動することになった。
沖のボトムで待望のヒット。遠投先でのバイトはアワセが決まらないことが多いが低伸度のPE なら確率は上がる
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精度で引き出した都市河川・中川
下げ潮も後半に差し掛かったタイミングで次に入ったのは中川の船堀橋。ここではサッパらしきベイトがたくさん見られ、ボイルも時折起きている。遠投が不要な小規模な都市河川であり、先行者がいた可能性が高いと判断した高橋さんは、X8を選択する。活性が高い魚は表層にいることが多いため、上からサーチするのが基本だが、反応しやすい魚はすでに釣られていると考え、バイブレーションを投入。「ベイトが多いのでルアーを見つけられないみたいです。こういう時はあえて流れを横切るようにリトリーブしてベイトを散らします」
するとすぐにヒット。旧江戸でもそうだったが、この日釣れる魚は元気がよく、サイズ以上に楽しませてくれる。反応がなくなったので橋の下流側へ移動し、橋脚によってできるヨレをねらう。「ヨレは皆さんねらうと思うので、釣りやすい場所は釣り切られているはずです。投げにくい橋脚ギリギリのピンポイントにはまだ魚が残っていると思うので、そこをねらい撃ちします……ほら来ました!」
橋脚から50㎝も離れていない場所にキャストが決まり、ヨレの流れにルアーが入った途端に即ヒット。渋い状況では、キャストとトレースコースの精度が重要だと納得する一尾だった。その後も数尾を追加し納竿。ラインの使い分けで見事に釣果を引き寄せた釣行であった。
移動してすぐにサイズアップの一尾をキャッチ
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。