全国的に浸透してきた感のある乗合船でのバチコンアジング。東京湾ではビシ釣りファンが楽しむLT アジ船を利用するのが一般的で、周囲に寄せエサを撒く釣り人がいるからこそ生まれるゲーム性がある。アジの活性に合わせた仕掛けのセッティング方法や誘い、釣果アップのための基礎と応用を吉岡進さんに聞いた。
釣果アップのための基礎と応用を聞いた
写真と文◎塚田智
バチコンファンで大賑わいの栄宝丸!
東京湾をホームにガイドサービス「F&F TOKYO BAY」を開業し、オフショアのルアーフィッシング全般に熱い吉岡進さんは、バチコンアジングはビギナーでも手軽にアジをゲットできて、小さなアタリを掛け取る釣趣にどハマりする人が急増していると話す。
「年中楽しめるバチコンですが、10~12月いっぱいがハイシーズンと言っていいでしょう。この季節、東京湾では水深20~30mという浅場で型も数も望める釣果が期待でき、初心者にもおすすめです。アジの乗合船は釣果情報がしっかりと出ています。渋い時期はビシでも半日で10尾くらいの釣果になります。50~100尾と情報が出ていれば迷わず行くべきです(笑)」
さて、東京湾における乗合船のバチコンは主にビシ釣りファン向けの「LT(ライトタックル)アジ船」に便乗して楽しむケースがほとんど。
乗合船はオマツリを軽減するためオモリの重さを指定するのが普通で、東京湾のLTアジ船では40号のビシ仕掛け(約150g+カゴの重さ)が一般的。それよりも軽い仕掛けを使うバチコンアジングを同じ船内で成立させるには船宿からすれば気を遣うところである。
今回吉岡さんが訪れた木更津港・栄宝丸のLTアジ船は、連日バチコンファンの乗船が半分以上という人気っぷり。船長の内田市郎さんが豊富な経験をもとに、魚探の反応を見ながら細かくポイントに当てていくスタイルで、どちらの客もストレスを感じることなく流してくれるのが人気の一因だ。吉岡さんもお気に入りで、前回訪れた際はお客さんがすべてバチコンファンのみだったというから驚く。
「ここまでバチコンファンが多い船宿も東京湾では珍しいです。アジの群れの真上に着けてくれるのがオフショアの最大のメリットですが、船の向きまで細かく当ててくれるので、釣り座による釣果差が出にくいのがいいところですね」
この日はビシ釣り3名、そのほかバチコン12 名で出船した
“ムズオモロイ”日中のバチコンゲーム
エサとルアー。〝ふたつの釣り方が同船する〟という大前提が、乗合船におけるバチコンのゲーム性を高める一因にもなっている。
イワシのミンチを寄せエサに使うビシ釣りでは、仕掛けが着底してからビシを振り、寄せエサが効いてくるまでに多少時間が必要だ。着底直後こそアタリは出づらいが、アジがエサに固執しはじめてからは、断続的にアタリが続くようになる。
一方バチコンはジグヘッドワームでリアクションバイトを誘発する釣り。つまり、仕掛けを落とした直後からチャンスがある。しかし、ビシ釣りのように寄せエサに固執するわけではないので、アタリが続きにくいという難しさがある。
「船中がバチコンのお客さんだけなら船長が次々にポイントを移して常にフレッシュな反応を楽しめますが、ビシのほうが釣れていればその場でステイすることも多いわけです。とくに昼間はアジの回遊性が高いので、アタリを連続させることが難しい。でもそこが“ムズオモロイ”ところなんですよね」
なお、吉岡さんのタックルはロッドがジャッカルGSWシリーズの「68XSUL‒ST」。バチコンの専用ロッドはまだ市場に少ないが、15号オモリを背負っても負けないソリッドティップ搭載でアジのじゃれつきを感知する繊細さがある。6フィート8インチの長さは船内での取り回しもよく扱いやすい。
ワームは主にジャッカルの「メロウリング」3inを使用。全身リブ構造だが、前部・中央部・後部とリブの深さが異なる設計になっている。後部にいくにつれて深リブになっており、シンプルな形状ながらわずかな潮流でも軟らかくアクションする設計だ。
ジグヘッドは同じくジャッカルのLGヘッド Type SWIMをセット。吉岡さんは0.4~1gを常備しており、重くしてキビキビとしたワームの動きを演出するか、軽くしてよりナチュラルなアピールに振るかをアタリの出方に応じて試していく。
「真下」と「チョイ沖」の釣り分け
この日は平日の午後にも関わらず15名が乗船。うち3名がビシ釣りで、あとはバチコンファンという内訳だ。吉岡さんはトモのビシ釣りファンから最も遠いミヨシに乗船。寄せエサの恩恵を受けにくい釣り座でアタリを連続させるためのキモは、「真下」と「チョイ沖」の釣り分け方にあった。
「バチコン(=バーチカルコンタクト)というその名のとおり、真下に落とすのが基本ではありますが、状況によっては少し沖にキャストして、少し広めに探ってみるのも有効なテクニックです」
大まかな流れはこう。ポイント到着直後、船長の合図があったら真下にフリーフォールで落とす。着底したらゆっくりサオを持ち上げて1回誘いを入れる。そこからサオを下げていくが、着底前にアタリが出ることが多い。その後もう2、3投してもよいが、アジの活性によってはアタリが続かないこともある。そうなったら「チョイ沖」の出番。アンダーハンドで10mほど沖にキャストして、ゆっくりリフト&フォールを繰り返して今度は横方向の動きで誘うのだ。
「要は、ポイント到着直後はまだアジがビシの寄せエサに着いていないので、釣り座の真下で釣れることが多いということです。ただ、少し時間が経つと明らかにショートバイトになってきます。アジって小さいエサばかり食べているとだんだんそういう口になってくるんですよね。そうなったらチョイ沖に投げます。そもそもエサに着いていないアジをねらえるというのももちろんですが、ワームの動き方が縦から横に変わりますよね。こうすることで、またフレッシュな反応が得られるんです。ひとつ注意なのが、船は常に潮に流されているので、沖から手前に引いてくるとだんだん真正面からズレていきます。リグが真下に来るころには隣のお客さんと被ってしまうので、少し沖めで回収するようにしましょう」
イラストでも解説しているが、チョイ沖の誘いでは、オモリが先に着底して、ワームが「フワッ」となった瞬間のバイトが多い。水中での動きをイメージしてアクションを伝えることがコツだ。
リフト&フォールは秒数とサオの角度をいろいろと試しながら反応を見よう。船長が随時「底から1m50㎝で反応あります」など細かくタナを指示してくれるので、リールを数回転巻き上げ、底を切って誘うのももちろんアリだ。
船長の内田市郎さん、幸子さんご夫妻。常連客だけでなく、分け隔てなくすべてのお客さんとていねいに接する様子は好印象でしかなかった。口下手だが操船技術はピカイチの市郎さんに、船上の元気印である幸子さんのコンビネーションはばっちりで、ふたりのファンも多い。バチコン以外には木更津沖提への渡船も人気だ
枝スの微調整が釣果のカギに
こうして真下とチョイ沖のローテで探っていくのを基本にしつつ、吉岡さんが逐一調整していたのが、枝スの長さである。イラストでも解説しているが、バチコンで用いる逆ダン仕掛けは、この釣りのゲーム性をさらに引き上げる要素のひとつなので、必ずマスターしておきたい。
「枝スを長く取ればよりワームの動きが柔らかくなって、食い込みはよくなるけど、アタリが取りにくい。逆に枝スを短くすればアタリはダイレクトに伝わってくるけど、ワームの動きがちょっと硬くなって、ショートバイトが多くなります。その日その時の、ちょうどいい枝スの長さがあるのが面白いですよね」
この日はどうもワームが跳ね上がるなどのリアクションで食ってくることが少なく、ゆっくりした動きでバイトに至ることが多かった。
「真下の釣りでも、ゆ~っくり落としてゆ~っくりリフトする感じですね。イトは常に張って5秒くらいかけてリフト&フォールさせると、よくアタリが出ました。ただ、ワームがゆっくり動いているので、アジもゆっくり吸い込んでその場で居食いするんですよ。これを掛けないといけないので、枝スも気持ち長め(20㎝くらい)にして、食わせを重視しました。リフトorフォールのどちらかで微妙な重みを感じたらちょっと聞いて、スイープに合わせていくというのが今日のヒットパターンでしたね」
一方、チョイ沖にキャストしたときはワームがフリーになった瞬間のバイトが多かった。これを掛けるためには、枝スは少し短め(15㎝以下)にして、瞬間的なバイトができるだけ手もとに伝わりやすいセッティングにするべき。
「ほかにもジグヘッドの重さやオモリの重さなど、仕掛けのいろんな要素がアジの食い方に影響してくる釣りです。その正解を探しながら釣っていくのが面白いですよね」
こうして吉岡さんは30尾ほどの良型を釣りあげて大満足の半日となった。
半日船でアベレージ25cm ほどのアジが30 尾という釣果に大満足。それでも釣る人はバチコンで3 ケタを超えており、「同じ船中でもやっぱり差が出るんですよね~。そこが面白いところです」と吉岡さん
ワームを真っ直ぐ装着するのは基礎にして超重要。仕掛けを下ろす前に必ず確認しよう
※このページは『つり人 2024年1月号』を再編集したものです。