東京湾の船のアジ釣りといえば、コマセを使うLTアジが一般的だが、最近はアジングの流れをくむルアーフィッシング「バチコン」のファンを受け入れる船宿も増えてきて人気を博している。今回は金沢八景の太田屋に通う赤石かずみさんと今泉拓哉さんの釣行に密着した。
今回は金沢八景の太田屋に通う赤石かずみさんと今泉拓哉さんの釣行に密着した。
写真と文◎編集部
アジングの楽しみを広げるバチコン
遊漁船で沖に出て、オカッパリとはまた違った楽しさと奥深さを味わえるのがバチコンだ。
身近なアジングと比べて敷居が高くイメージされがちな船釣りだが、そのメリットはなんといっても船長がアジのいるポイントまで連れて行ってくれることだろう。アジの群れを求めて堤防をラン&ガンするのももちろん楽しいが、駐車場所に気を遣ったり、たどり着いたスポットで先客の多さに辟易したりといった煩わしさから解放され、眼下のアジに集中できるのだ。
そういった意味ではルアーフィッシングならではのエキサイティングな醍醐味により手軽にアクセスできる釣りともいえる。しかも、オカッパリより総じてサイズもいいからアツくなる人が急増中。
そんなバチコンは東京湾エリアではエサ釣りの船(LTアジ船)に同乗させてもらうのが一般的だ。神奈川県・金沢八景にある太田屋は早くからバチコンアングラーを受け入れてきた船宿のひとつ。10月下旬の平日、その太田屋にやってきたのは、かずみちゃんこと赤石かずみさんと今泉拓哉さん。いずれもバチコンの面白さに魅入られ足しげく通っている。
「今日は午前船で楽しみます。なんとか釣果が出せるといいなぁ」とかずみちゃん。
実は釣行の前日、かずみちゃんは家族とテーマパークへ、釣り具メーカー勤務の今泉さんはショップのイベントへ、それぞれハードワークをこなしてきたところだという。LTアジの乗合船は午前・午後と半日船があるから、仕事や家族サービスで忙しい現役世代も利用しやすいのだ。
船宿の釣果情報を見ると、直近のLTアジ午前船の釣果は3~17尾。数こそ少ないものの40㎝クラスも出ているという。
さて、この日はどうか。準備を整えて7時に出船となった。
今回お世話になった太田屋。ねらうはアジ!
操作性とバラしにくさを両立したロッドが釣果を左右
この日、ふたりはエクリプスから発売予定のバチコン専用ロッド「アクシアトラック・バチコンモデル」を持ち込んだ。スピニングとベイトが各1モデルずつあり、いずれも6ft9inの長さで4ピースに分割できる仕様だ。
「乗合船は電車釣行できる船宿も多くてその手軽さから通っている人も多いですから、携行性が高いロッドはやはり魅力です」とこのロッドを手掛けた今泉さん。
アクシアトラック・バチコンモデル(エクリプス)のスピニングロッド「ATVS-69UL/L-S」とベイトロッド「ATVC-69L-S」をそれぞれ持ち込んだ。スピニングはバットが軟らかめでよりバラシが少なく初心者にオススメ。ベイトはバットにハリを持たせており軽快な操作感が楽しく深場ねらいにも対応できる
バチコンのリグは変則的なドウヅキ仕掛けともいえるが、ルアーフィッシングであればこそ、その操作によって釣果に大きく差がつく。そんなバチコンロッドに求められるのは操作性とバラしにくさを両立するテーパーのデザインだと今泉さんは力説する。
「東京湾エリアでは、リフト&フォールよりも、シンカーを着底させたままシェイクする誘い方が効きます。その誘いのためにはシンカーを底から離さずに張らず緩めずのラインテンションで操作できるティップの入り方をするロッドが必要です。ティップが硬すぎると底から離れてしまいますし、逆に軟らかすぎても操作性が悪いです。
さらにアジは口が柔らかくて身切れしやすいので、バラシを防ぐための全体のテーパー設計にもこだわっていて、ベリーからバットは操作性を確保しつつ適度に曲がり込んでくれる絶妙な柔らかさに仕上げています」
PE0.4号のメインラインにフロロカーボンのリーダーを接続して、これに0.2gのジグヘッドを直結する。シンカーを結ぶ捨てイトはフロロカーボンの4Lbで、ジグヘッドから20~30㎝ほど離した部分のリーダーに、ハーフヒッチを7~8回繰り返して編みつける。この日の捨てイトは2mほどの長さからスタート。アジが群れているレンジについて船長からアナウンスがあれば、それに合わせて調整するとよい。
バチコンにおけるジグヘッドには、ワームの姿勢を安定させつつふわふわと漂わせる役割がある。素のフックではダメなのだ。ジグヘッドのウエイトは0.2gがあればよいと今泉さんは言う。
「0.4gなども試したのですが、東京湾に限って言えば、0.2gがいちばん釣れました」
バチコンは仕掛けつくりに少々手間が必要だが、エクリプスから完成仕掛けも近々リリースされる予定とのこと。入門のハードルはぐんぐん下がっている。
0.2g のジグヘッドにピンテール系のワームをセットする。ワームはカラーやサイズで食いが変わるので、クリア系、ピンク系、グロー系など系統の違うカラーをサイズごとに揃えるとよい
東京湾では繊細なシェイクが効果てきめん
この日は前日夜の強風の影響で東京湾内でもウネリが高かった。それでも横浜沖のポイントに到着すると、ものの数投でかずみちゃんのアクシアトラックがしぼり込まれた。船上も大きく揺れるなか、アジの抵抗にほどよく追従して曲がり込むブランクで引きをいなしつつ、水面まで巻き上げてくると、これが30㎝に近い良型!しかし、抜き上げにかかった瞬間、ハリが外れ海中へさようなら。
「あ~!もうなんで‼」
「今のはタモでしょう~」
ふたりとも悔しそうだが、仲間同士で歓声を上げながらワイワイ釣りをするのも楽しいものだ。見ればフックが細軸のもので伸ばされていたため、軸が太めのジグヘッドにチェンジ。
リベンジに燃えるかずみちゃんの横で今泉さんは着々とアタリを掛けていく。
今泉拓哉(いまいずみ・たくや)さんは国内のバスフィッシングトーナメントの最高峰「JB TOP50」に参戦するかたわら、釣り具メーカーに勤務。時間を見つけてはソルトの釣りものにも数多く通い込み、自身の釣りの引き出しを増やしている。得意とするのはバチコンのほかタチウオジギングやカワハギなど。
そのシェイクはかなり繊細だ。ラインテンションを張ったり緩めたりしているだけに見える。ジグヘッドはどのように動いているのだろうか。
「実際、あまり動いてはいないと思います。でも放置で漂わせていても食うので、それでOKなんです。それならなぜシェイクするかというと、放置中のバイトはアタリが小さくて今日みたいにウネリや風が強いときは気づけないことがあるから。少しでもリグが動いていれば、バイトしてきたアジが持っていこうとしてアタリが大きく出るし、食い込みもよくなります。アタリを出すためのシェイクなんです」
するとティップのテンションに集中してシェイクしていたかずみちゃんがフッキングに成功!さきほどの魚にサイズは及ばないものの、今度こそ抜き上げてキャッチ。上顎の真ん中、口の硬い部分に見事にハリ掛かりしている。
アジだ!! 赤石かずみ(かずみちゃん)は東京湾のルアーフィッシングチャーターボート「PLAYFUL FISHING」の船長補佐として働きながら、自身も精力的に船釣りに通う。バチコンのほかマルイカ釣りが大好き。今年は人生3日目のヒラメ釣りとなった「バリバスカップ2024 飯岡沖ヒラメ釣り大会」で総合2位をもぎ取るなど大暴れ中。
「やったー!次こそサイズアップですね」
しかし曇ってローライトだった朝から日が昇るにつれて晴れてくると、アタリが止まってしまう時間帯に突入した。コマセのお客さんが多いときはアジが底から離れるのでバチコンも釣れやすくなる。しかしこの日乗船していた5名のうちコマセはトモに座っていた一人だけで、その恩恵に預かりづらい状況。
こうなるとアレコレ試してみるのが楽しくなる。その要素のひとつがワームのカラーで、朝は反応がよかったクリア系からピンク系に変えてみると再び反応が出るようになってきた。
連発こそしないものの、ふたりのロッドは交互に曲がり続け、アベレージサイズ22~25㎝の手ごたえを充分楽しんだところで沖上がりを迎えた。
「楽しかったですけど、最初の大物をバラしちゃったのが悔しいー!またリベンジに来ますよ」と次回に向けて闘志を燃やすかずみちゃんなのであった。
前日はテーマパークに行って体力を消費していたかずみちゃん。シャインマスカットで糖分を補給するのだ
※このページは『つり人 2024年1月号』を再編集したものです。