道具に情熱を注ぎ、技術を極めることで新たな世界が広がるアジング。なぜこれほどまでにタックルにこだわるのか。軽量のリグを操り、潮の変化を手もとで探る奥深さとは?
潮の変化を手もとで探る奥深さとは?
写真と文◎編集部
なぜタックルにこだわるのか
近場の漁港で手軽に楽しめるのもアジングなら、道具にとことんこだわって釣技に磨きをかける楽しさもあるのがアジングだ。そんなニーズに応えるように、感度を追求するタックルの進歩はとどまるところを知らない。
門外漢が気になるのは、なぜそこまでタックルにこだわるのか、というところ。アユやバスなど競技が盛んな釣りなら他人より少しでもいい道具を使いたいのは想像しやすい。しかし誰かと競うわけではないアジングで、先鋭化したタックルを手にするのはなぜだろう。
「それは、水中の情報をどれだけ多く感じられるかがアジングの楽しさに直結しているからです」
そう話すのはクリアブルー代表の本岡利將さんだ。手先に伝わる感触から水中をイメージし、微細なアタリを掛けていくアジングの楽しさに魅了され、自身のブランドからロッド「クリスター」シリーズをはじめ、ジグヘッド、ワーム、ハードルアーとこだわりの道具をリリースしている。感度へのこだわりは自身のSNSの投稿にはいつも「#感度バカ」というハッシュタグをつけるほど。
「感度は高すぎてもよくないという人もいますが、私はそうは思いません。情報量が多ければ多いほどアジングは楽しくなります。私はリグを操作しながら、その感触がわずかに重くなる場所を探して釣りをしています。そこは潮の流れの変化点で、アジはそういう場所にいることが多いです。以前、釣り仲間5人で集まって釣りをしたときに、4人はボコボコ釣れているのに、1人だけ全くアジに触れなかったことがありました。このときの差は潮の重みを感じられたかどうかでした。4人はトップ径が0.5㎜、シャープペンの芯と同じ細さのソリッドティップのロッドを使っていたんです。釣れない彼も釣りが下手なわけではないのに『あの辺りに重く感じるところがあるでしょう?』と伝えてもわからない。それで私たちのロッドを使ってもらったら、彼もアジを次々釣ることができました。それくらい道具によって差がつく釣りなんです」
これは極端な例としても、水中をイメージできずに釣れてしまうのと、イメージ通りに操作してここぞというところでアタリを掛けていくのとでは、後者のほうが楽しいに決まっている。だから本岡さんのタックルはロッドだけでなく、トータルで感度を底上げするセッティングで組まれている。
ジグヘッドはサイコロ状の各面が水を受け引き抵抗を伝えてくれるサイコロヘッド。ラインにエステルを合わせるのはもちろん、超軽量機種のリールに、アジングに必要充分な強度を確保したまま極限まで軽量化されたカスタムハンドルを装着している。
本岡さんは3尾ほどアジをキャッチするたびにリーダーを結び変えていた
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潮の重みがアジを呼ぶ
そんな本岡さんが今回釣行したのは、瀬戸内海に浮かぶ阿多田島。厳島の南3㎞に位置し、広島県大竹市の小方港からフェリーで35分。阿多田島周辺の海域は広島市から距離があるぶん水質がきれいで、ここで養殖されるカキは洗練された味で知る人ぞ知る名産である。
ほぼ全周が自然の海岸で磯釣りでも魅力的な島だが、アジングを楽しむとなればフェリー発着場近隣の堤防がフィールドとなる。急激な冷え込みでアジの活性低下が予想されたこの日、本岡さんが入ったのは常夜灯のある堤防の外側で、沖の一文字の端に正対する場所。潮通しに変化が生じてアジの回遊ルートになることを期待してのポイント選定だ。
「水深は15mくらいかな。ボトムまでリグを沈めてねらいます」
ロッドはジグ単用にクリスター59ギフテッド、スプリットショット用にクリスター72ファインダーを準備。結果的にこの2本が活躍することになった。
1尾目をキャッチしたのは2.5gのシンカーに0.6gのジグヘッドを組み合わせたスプリットショットで、ワームはセクシービー2in。ボトムからふわっと持ち上げてテンションフォール中にコツっとアタリが出た。だが、この後に2尾連続でバラしてしまう。横風が強くラインが膨らんでいる。
「これでもアタリは手もとまでコンと来るんですが、フッキングが甘くなってしまっているかもしれません。よりダイレクトに操作できるジグ単に変えてみます」
そういってチェンジした2gのサイコロヘッドエースのジグ単で2尾目3尾目の追加に成功。
この後、サバの猛攻に苦慮していたところ、潮どまりを迎えアジの気配が消えてしまう。休憩をはさんで釣りを再開すると、潮が沖へ払い出す流れに変化している。
「底のほうに流れの重みを感じる場所ができています。さっきまでなかった。チャンスですよ」
その言葉を証明するように、スプリットショットで4尾目をキャッチ。
釣りを続けていると、タイミングによってその重みを感じる場所が消えたり、移動したりしているのがわかるのだという。記者もロッドを借りてキャストしてみると、ジグ単を底まで沈めて引いてくる途中で、サオ先にかかるテンションがわずかに重くなる場所があるのがわかった。
しかし、本岡さんをもってしてもその重みを感じなくなったタイミングでは釣果が止まってしまうのだから面白い。
夜も深まり気温もぐんぐん下がっていくなか、潮の重みを感じるたびに1尾、また1尾と釣果を重ね、阿多田島の夜は更けていくのであった。
「やっぱり、いい流れがあればそこにアジはついています」
こだわりのタックルを通じて手もとに感じる潮の重みをぜひ味わってみてはいかがだろう。
【ジグ単用】メーカー表記なしはクリアブルー
●ロッド:クリスター59GIFTED
●リール:イグジストLT2000S-P(ダイワ)+シングルハンド
ルエアーステア33mm(DLIVE)
●ライン:鰺の糸エステルラッシュアワー0.3 号(サンライン)
●リーダー:シーガープレミアムマックスショックリーダー0.8
号(クレハ合繊)
●ジグヘッド:サイコロヘッドACE-EX 1.6 ~ 3g
●ワーム:セクシービー2in
【スプリットショット用】
●ロッド:クリスター72FINDER
●リール:エアリティLT2000S-H(ダイワ)+シングルハンド
ルエアーステア40mm(DLIVE)
●ライン:鯵ing ディテクターエステル0.3 号(ラインシステム)
●リーダー:シーガープレミアムマックスショックリーダー0.8号(クレハ合繊)
●シンカー:TG パラソルシンカー2.5 ~3g
●ジグヘッド:サイコロヘッドACE-EX 0.6 ~ 0.8g
●ワーム:セクシービー2in
この日最も反応がよかったのがセクシービー2in(クリアブルー)。日によってグローの有無や強さでアタリカラーが違うといい、異なるカラー(シラウオ、クールオレンジ、あからめシークレット、ホタテの塩辛)を頻繁にチェンジしていた
ジグヘッドはサイコロヘッドが活躍した。サイコロ状のヘッドは面で水を受け操作感が得やすい。また、スパイラルではなく直線的にフォールするため、アジのスイッチを入れやすい。新作のサイコロヘッドACE は太めの軸線系でありながらフックポイントが従来よりも鋭角で刺さりがよく伸ばされにくい
シンカーはまもなく発売予定のTGパラソルシンカー。こちらも多面体形状で水を受けやすい
ジグ単をボトムまで沈めて探っていくとクリスター59GIFTED が強烈に絞り込まれた。上がってきたのは45cm のチヌ。アジングロッドでのファイトは時間がかかるかと思いきや、2分もかからずにネットイン。厚巻きカーボン+バットから急激にテーパーがかかる「ハイテーパーブランクスルー」構造のパワーがなせる業
※このページは『つり人 2024年1月号』を再編集したものです。