都心を流れる荒川は平日の昼でもポイントが空いてないほどの人気河川。ここをホームにしているのは上州屋東陽町店のスタッフの佐藤宏憲さんだ。秋はセイゴが多く釣れるが、サッパの群れ次第でより大型がねらえるという。
都心を流れる荒川は平日の昼でもポイントが空いてないほどの人気河川。ここをホームにしているのは上州屋東陽町店のスタッフの佐藤宏憲さんだ。秋はセイゴが多く釣れるが、サッパの群れ次第でより大型がねらえるという。
写真と文◎編集部
荒川シーバスの主食はサッパ?
東京湾奥に流れこむ荒川は中川や旧江戸と並んで首都圏のシーバスアングラーが集うメジャー河川だ。小誌発売の頃にはシーズンインしているはずだが、10月上旬はまだ本格的に釣れ始めるかどうかといった瀬戸際のタイミング。荒川を知り尽くすロコアングラーで上州屋東陽町店のスタッフでもある佐藤宏憲さんいわく、この時期は一日違うだけで状況がガラッと変わることも多く、ポイントを外すと全然釣れないということもありえるほどシビアだそうだ。
この日はシーバスの鉄板ポイントである明暗にねらいを絞ってサオをだすことになったが、平日にもかかわらずどの橋の下でもアングラーが昼間から待機している。佐藤さんは本命ポイントの平井大橋に15時前には到着したものの入れる場所はなく、第二候補としていた下流の船堀橋へエントリーすることになった。
釣果のカギとなるのは荒川でのメインベイトであるサッパ。群れを見つけることが大切なのだが、群れの規模やサッパのサイズで釣れるシーバスのサイズも変わる傾向があるという。
「サッパは荒川の河口から20kmくらい上流までの区間を群れで泳いでいて、大きな群れもあれば小さな群れもあります。大きな群れは10月上旬でも7~8cm程度の個体で構成されていて、着いているシーバスも60cmクラスがアベレージで80cmに迫るサイズも混じりますが、小さい群れは5cm程度のサッパでシーバスも40cm程度の比較的小型が多く着いている場合が多いです」
荒川では3~5月頃を除いてほぼ周年サッパが川にいるそうで、シーバスも常食しているようだ。ちなみにサッパのいない春はイナッコが主食になるという。
今年の荒川はセイゴが多い
今年の荒川は例年に比べてセイゴクラスの個体数がとても多いと佐藤さんは言う。近年のビッグベイトブームで釣れた大型をキープする人が増え、産卵を控えたシーバスが減ったのか、年々数もサイズも落ちてきているそうだ。しかし、今年のようすを見る限り、遊漁船のキープ数制限など努力の成果が形になってきているのかもしれないとのこと。このセイゴたちが成長してくれれば来年以降はもっと楽しめるはずなので掛かった時は優しく扱ってほしいところだ。
セイゴは小さい分遊泳力が弱いため流れの緩い場所に多く、橋脚周りであれば橋桁の下流にできる流れのヨレに溜まりやすい。反対に流れが強いポイントには遊泳力のある良型が付きやすいので橋の上流側や流心寄りの明暗がねらいめとなる。さらなる大型をねらいたいのならあえて明暗のポイントを避けるというのも手だ。明暗は一級ポイントではあるが、大型のシーバスは警戒心が強く、明かりを避けるようになるそうで、暗がりの中でカケアガリなどの地形変化をねらっていくと釣れやすいとのこと。サッパの群れを頼りにエリアを絞り、どのポイントでねらうか組み立てていくのも面白いだろう。
以前、葛西橋で釣れたシーバスから出てきた5cmほどの小さいサッパ
2023年秋の釣行記
この日は15時台には釣り場へ着いていたものの、実際に釣り始めるのは下げ潮が利き始める19時頃から。釣り始める前に足もとを照らすとサッパやサヨリが見えた。
「サッパのサイズも群れの規模も小さいですね。おそらくもっと上流に大きな群れがいるんだと思いますが、下げ潮に乗って下ってくることを期待して明暗を釣りましょう」
ベイトが少ないと明暗に着くシーバスは少なくなり、下げ潮に乗って入ってきた個体も明暗に長く留まらないそうだ。その分キャストを続けないとヒットには結びつかない。
佐藤さんはひとつめの橋脚より手前の明暗を探っていくが、船堀橋のポイントは流れが強く、この日は雨が降っていたことも相まって軽いシンキングペンシルでは滑ってしまいうまく泳がない。リップレスミノーやバイブレーションなど流れを噛んで泳いでくれるルアーを探していく。
河川でシーバスをねらう場合、特に明暗部ではルアーをドリフトさせていくのが基本的な釣り方だ。ドリフトにはライン先行やルアー先行などさまざまな方法があるが、船堀橋周辺のように流れが強い場合はライン先行でドリフトさせようとするとルアーがすぐにポイントを通り過ぎてしまって反応が得られにくいそうだ。そのため、佐藤さんはルアー先行をイメージしながら流れを横切るようにルアーを見せていく。
明暗の境目というよりは暗部を通していくとさっそくアタリがあったようだがセイゴなのかなかなか掛からない。同じ場所へ繰り返し投げると何度かバイトがあった末についにヒット。元気のいいシーバスは強い流れも相まってなかなか弱らない。エラ洗いをさせないようにロッドを寝かせたままじわじわ寄せてネットインしたのは52cm。ヒットルアーはジグヘッドリグで、BR ヘッド5gとBRフィッシュ3.3の組み合わせだった(どちらもデュオ)。
「アタリは頻繁にありましたが掛からないということは小さいのばかりかもしれません」
短い時合を逃さずワームで立て続けにキャッチ!
ヘビーウエイトで急流に対応
船堀橋の流れは強く、平井大橋を想定して用意してきた軽めのバイブレーションでは流れに太刀打ちできない。さらに流れが強くなったのでジグヘッドを12gに変更。50cmクラスを一尾追加したところでルアーチェンジ。
「橋脚の際は流れが当たって弱まるのでそこにシーバスも付いているはずです。特に側面はねらいにくいので良型が残っているかもしれません」
そういって取り出したのはシーク85HW(デュオ)。一定にリトリーブしていてもシークスライドと呼ばれる不規則なスライドアクションが混じるため、食わせのきっかけを勝手に作ってくれるのが特徴だ。同サイズでウエイトが軽いシーク85Sもあるが、強い流れに負けないようヘビーウエイトタイプをチョイスした。ラインを橋脚に当てながらも橋脚際にルアーを通していく。するとすぐにヒットしたものの40cm程度のセイゴ。
その後もルアーを替えつつ徐々に沖へとキャスト範囲を広げて探っていったが、時おりショートバイトがあるのみだった。
気付けば0時を過ぎ、潮位もだいぶ下がった。
「2時に下げ止まりですが、この時間まで待ってサッパの群れが下ってこないということは近くに大きな群れはいないんだと思います。つまり、これからこの場所で連発する可能性は低いですが、少なからず通りがかるシーバスはいるはずなので下げ切るまでにまた時合は来ると思います」
そう言いながら佐藤さんはキャストを繰り返し、丁寧に明暗を探り続ける。潮がやや緩んできたタイミングでシーク85HW を食ってきたのは56cm。予想通りの一尾で今釣行をきれいに締めくくったのだった。
下げ止まり前のワンチャンスをモノにしたのはヘビーウエイトのシーク85 HW(デュオ)
この日のタックル
ロッド:エクスセンスS903ML/MH(シマノ)
リール:ステラ3000MHG(シマノ)
ライン:シーバスPE Si-X 1 号(バリバス)
リーダー:フロロカーボン22lb(バリバス)
上から、シーク108 S、シーク85 HW、シーク68S、テリフDC-7 バレット、タイドバイブ70 S、BR ヘッド5g+BR フィッシュ3.3(すべてデュオ)
コノシロが入っていれば大型ルアーを使って明暗から離れたところでカケアガリ沿いに回遊してくる魚を探りたい。上からテリフDC-15、シーク128 S、タイドミノースプラット140SF、マキフラット155F、コノフラット160F(すべてデュオ)
※このページは『つり人 2023年12月号』を再編集したものです。