日中にサイトでアジが釣れるなら、どんな動きに反応するかを観察すると勉強になる。注目すべきは「フォールのテンション」。愛媛県宇和島市に住む石川仁希さんのデイ攻略に密着。
日中にサイトでアジが釣れるなら、どんな動きに反応するかを観察すると勉強になる。注目すべきは「フォールのテンション」。愛媛県宇和島市に住む石川仁希さんのデイ攻略に密着
写真と文◎編集部
アジング好きが高じて宇和島に移住
「アジングはシンプルな道具で季節を通じて気軽に楽しめ、豆からギガまでサイズ感の違う魚が釣れるのが面白いんです」
そう話す石川仁希さん(26)は大阪府松原市に生まれ育ち、高校生のころからアジングを始めた。大阪南港、泉南、淡路島と関西のアジング釣り場に通い込み、そのうちアジの宝庫ともいえる愛媛県宇和島市に足を延ばすと豊かな海に惚れ込んだ。2年前には宇和島への移住を決意し、当地の名物産業である養殖真珠の販売に関わりながら、週に3~5回はアジを釣り込む日々を送る。
「関西はアジングのフィールドが少なくて、パターンのバリエーションも乏しい。もっとアジングを知りたくて、思い切って愛媛に引っ越したんです。ゼロからスタートする仕事の人間関係も含め一日一日が新鮮です。あっという間に2年が過ぎました(笑)。愛媛はアジのポイントは多いですが、いつでもイージーに釣れるかといえば当然そんなことはなく、やるほどに奥深いと感じます」
宇和島のアジは周年ねらえるもののサイズがよくなるハイシーズンは11月から翌年6月にかけて。今回は日中の釣り方に的を絞って石川さんに同行した。目指したのは石川さんが「アジの楽園」と呼ぶ宇和島湾の沖合に浮かぶ戸島である。
宇和島港から高速艇「ゆきかぜ」でアクセスした
港の外側よりも内側がねらいめだ
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ひなびた港内がアジの楽園
宇和海は佐田岬半島と由良半島に囲まれ、日振島や御五神島など有人無人の大小さまざまな島々が浮かぶ。戸島は豊後水道に面する沖合の島で宇和島港から1日3便出航している高速艇「ゆきかぜ」でアクセスする。11時35分発の戸島・嘉島・蒋淵方面行に乗船し16時32分の便で宇和島に帰港。昼下がりの4時間ほどをメインに釣りを組み立てるプランだ。石川さんのお気に入りは島の南面にある小内浦。高速艇が発着する鄙びた港は猫が闊歩し、沖には養殖筏が浮かぶ。のどかすぎるほどの島景色が心を癒す。アジが濃密なのは船が停泊する港の内側である。
「デイでもアジが溜まるのは、地形が掘れている所です。基本的には船道周辺のカケアガリや深みにつながる地形変化がねらいめです。サビキやカゴ釣りが盛んな場所も日中にアジが釣れる所は多いですが、僕はサビキやカゴ釣りが盛んではない所でアジの付き場を見付けたい。そういうポイントはルアーへの反応もよいですからね」
さっそく港内を探索するとスロープ付近の奥地には40cmクラスのカマスがわんさと群れをなしていた。先端に向かって歩くと堤防の中間地点までは20cm前後のアジが散見でき、所々に群れが濃いスポットもある。このほかにもベラやスズメダイ、愛媛名物の「ジャコ天」の原料となるネンブツダイというぐあいに小魚たちのパラダイスであることが見て取れる。さらに先端付近の深場にいくと小魚の魚影は途端に少なくなった。港の外側ではカゴ釣りやウキフカセを楽しむ人がいて、時おりイナダがサオを絞っている。こうした青物に脅えた魚たちが港内の奥部に入り込んでいると推測できる。
石川さんのアジングリグは大半の釣り場でジグ単がメインである。ロッドはジャッカル「スキャッドウォールSWS-56JH-ST」。港内のジグ単攻略など近距離戦に適した5フィート6インチである。ラインはエステル0.3号(1.5ポンド)にリーダーはフロロカーボン0.8号(3ポンド)の組み合わせ。愛用ジグヘッドはジャッカル「LGヘッド」のスイム、ダート、TGの3タイプ。日中は0.8~1.5gが主軸の重さとなる。
「ジグヘッドで重視しているのは、フォール姿勢とフックの角度と鋭さです。アジがヒットするのはフォール中です。日中のアジの食べ方を観察すると、吸い込みやすいのは水平姿勢のフォールです。LGヘッドはワームの抵抗とのバランスで水平姿勢になりやすく、フリーに落とせば回転せず真下を向いて素早く沈みます。オープンゲイブでマイクロバーブのフックなので格別に刺さりがいいと感じています」
アジが見えていればサイトフィッシングも楽しい。どんなアクションに反応するのか確かめながら釣っていくと発見も多く、アジングの面白さも増す。そしてこの日はサイトフィッシングが可能であった。
「水深10m未満の釣り場であれば1gから始めることが多いです。アジの群れが見えているなら群れに対してジグヘッドの通過速度を注視します。速すぎれば軽くしますが、遅すぎても見切られることがよくあります。アジが何を捕食しているかも判断材料です。プランクトンならゆっくり落とし、小魚を追っている時は重いジグヘッドでスピーディーに誘ったほうが当たります」
石川さんのワームカラーはデイであればクリア系。サイズは2~2.7インチまで用意し、デイの主力は2インチである。最初にセットしたのはジャッカル「ペケリング」2インチのクリアーホロフレークだ。
デイに効くワームカラーはクリア系やケイムラ。石川さんが愛用するのは「キビキビナーゴ」、「ペケリング」、「ペケリングタイドマックス」、「ペケテールタイドペッパー」
石川さん愛用のジャッカル「LGヘッド」。日中にメインで使う重さは0.8 ~ 1.5 g。体積が小さく沈みの速いTG を主体に使うが、スピーディーな誘いが効く時はダートにする。超低摩擦コートが施されたフックは刺さりが素晴らしく、強度と歪み耐性の高いオリジナル線材「プロスペックメタル」を採用している。TG は不意にくる大物にも対応する線径0.64㎜の# 6フックで太軸仕様。スイムとダートは吸い込み重視の線径0.57㎜の# 9 フック
ロッドは近距離戦が得意なジャッカル「スキャッドウォールSWS-56JH-ST」(下)を愛用している。やや沖を探りたい時は「BRS-64UL-LG」を使用
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釣れるテンションを意識せよ
アジが多いのは船や岸壁の陰である。陽光が降り注ぐオープンエリアの船道には底付近にアジと思しき群れも見えるが密度はさほど濃くはない。ルアーに興味をもっても食い込むまで至らず数投すると散ってしまう。石川さんは船際や岸壁際にできるシェードの明暗に集中して釣りを組み立てることにした。明部にワームを投入してフリーフォールで10〜15カウント。今度はベールを戻し、テンションフォールでシェードの暗部に入れていく。チョンチョンと軽く誘い上げてはフォール。この繰り返しで手前に探っていく。
「誘ってワームに気付かせ、アタリを取るのはフォール中です。テンションを抜くタイミングでいかに食わせるかが大切です。ジグヘッドの重さを感じるか感じないか、ラインを張らず緩めずの微妙なテンションで送り込んでいくとコンとかモゾッと感じるはずです。デイならばアジが食いやすいラインの張り加減も覚えやすい。後はアジの反応を見つつ、アワセのタイミングを計ってください。デイは勉強になりますよ」
数投でヒットさせたのは18cmクラスのアジである。アジが反応するゾーンはかなりピンスポット。足もとの岸壁際にルアーが寄りすぎるとベラの猛攻に遭う。1投目は食いが立つものの2尾、3尾と釣れ続けると魚が脅えるのか群れが消えることも多い。
「アジは思いのほか簡単にスレます。デイは特にスレるのも早いです。魚が興味を示しても食いきらなくなった時はジグヘッドをサイズダウンします。たとえば1gを0.8gにする。それでスローにワームを見せて反応が悪ければ、逆に1.5gと重くし、アクションを速くして誘ってみます。あとはワームの種類やカラーをローテし、スレを防ぎます。それでもアタリが遠くなった時は場所移動。数メートル離れただけでもフレッシュな魚がいますからね。反応は速いです」
そう話す石川さんは点々とポイントを変えて探り、ポンポンとアジを抜き上げる。ラインを張ったり緩めたり、その調整だけで食い気は変わる。4時間ほどの実釣ながらデイならではの「見えアジ」との駆け引きを存分に楽しんだ。
この日ハマったのは「LGヘッド『タイプ』TG」0.8g に「タイドペッパー2"」のクリアグロークラッシュの組み合わせ
※このページは『つり人2024年1月号』を再編集したものです。