レンタルボートには、誰にも邪魔されない船上で、のんびりマイペースに釣りができる空間をひとり占めできるメリットがある。群馬県有数の観光地である榛名湖では9月1日から11月下旬までレンタルボートのワカサギ釣りが楽しめる。高崎市で釣具店「つりピット!」を経営する松田克久さんの、シーズン初頭の榛名湖釣行に同船!
高崎市で釣具店「つりピット!」を経営する松田克久さんの、シーズン初頭の榛名湖釣行に同船!
写真と文◎編集部
北関東の老舗レイクはレンタルボートがアツい
近年、関東近郊のワカサギ釣りシーンは、とくに初心者にとって手軽なドーム船の釣りが人気を博している。神奈川県の相模湖・津久井湖や山梨県の富士五湖のドーム船はシーズンともなれば多くの人でにぎわう。
ではそれ以外の湖がつまらないかと言えば否である。レンタルボートはドーム船に比べると敷居が高い印象があるが、一度使ってみればかなりの手軽さで湖上に出られるのがわかる。そしてなにより、小さいとはいえ一艘をまるまる自分の釣り座にでき、他人を気にせず眼下のワカサギに集中できるのが魅力だろう。
都内からもアクセスのよい群馬県のほぼ中央、高崎市から至近の榛名湖もそんなレンタルボートのワカサギ釣りが楽しめる湖だ。榛名湖は古くから県内有数の観光地であり、それだけにボート店も多い。かつては氷上のワカサギ釣りも人気だったが、ここ数年は暖冬の影響で氷が薄く、ローカルのワカサギファンの間でもボートでの釣りの比重が高まっている。
今回は10月初旬、シマノインストラクターで釣具店「つりピット!」を営む松田克久さんの釣行を取材した。
「今日はピーカン無風で30℃近くまで気温が上がる予報だよ。風が吹かないと日中は厳しいはず。目標は200尾。朝のうちにどれくらい釣れるかが勝負」となかなか厳しい予想をしている松田さん。
ただ、榛名湖漁業協同組合・組合長の野口正博さんによると「解禁当初こそサイズが小さくてイマイチのスタートだったものの、ちょうど1週間前くらいから好調に釣れ始めており、前日はゆうすげ前のポイントで500~550尾の釣果が出ている」とのことで、決して魚がいないわけではない。
松田さんがこの日の状況にどのように対応して見せてくれるのかに期待して出船となった。お世話になったボート店は榛名観光ボート。平日にもかかわらず10艘ほどのワカサギ艇が出船時間の朝7時になると一斉に桟橋を離れた。
松田さんも釣果情報をもとにゆうすげ前のポイントへ向かう。ボート店からはちょうど湖の長辺の対岸に位置するエリアで、直線距離にして1500mほど。エレキ(電動船外機・レンタル可)があれば楽チンだが、手漕ぎでも向かえる距離。実際、出船した半分ほどが手漕ぎボートだ。
榛名富士を間近に望む榛名湖温泉「ゆうすげ」前。ポイントに到着して魚探が群れを捉えてからも、松田さんは釣果情報の出ていた水深8mのラインにボートが乗るように細かく船の位置を調整してからアンカリングしていた
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風が吹けば露骨に食いが立つ
9月の解禁直後は水深6mほどのエリアから釣れ始め、季節が進むにつれて群れは徐々に深いところへ移動していき、11月には11mくらいまで落ちるのが例年の榛名湖。取材日に反応があったのは水深8mのラインだ。アンカリングして7本バリ+下バリの仕掛けで釣りを開始。
魚探に映る反応はかなりよく、水深3mからボトム直上まで群れの存在が真っ赤に表示されるタイミングもあった。しかし松田さんは「食わない……」とポツリ。
それでも朝は反応があるほうで、少ないながらもサオ先に出るアタリを確実に取り込んでいく。エサはシロサシ、ベニサシ、アカムシ、ラビット、モロコシムシと複数用意。基本はシロサシがメインで、8つのハリの7つにつける。残りの1つのハリにワンポイントでほかのエサをセットする。これはアカムシが多かった。
エサ箱にはこのような形でエサをいれた。アカムシ、シロサシ&ベニサシ、ラビットウォーム。木箱にはモロコシムシを準備
「ワカサギの目先を変えるのがねらいです。エサを食いたいけど警戒して口を使わないときに、ひとつだけ違うものに見えているエサに食ってくるイメージで使っています」
陽が高くなるといよいよアタリが出にくくなり、ハリに掛かっても取り込み時に外れてしまうことが増えてきた。
「普通、この時期なら置きザオにしていても釣れ続ける映り方をしているのに、誘いを入れたときに1~2回ポンとアタるだけ。アタっても乗らない。口を使うけどアタリが出ないだけならリズムを作って空アワセで掛けていけるけど、それを超えた難しさ」
そんな状況も、時折そよそよと風が吹いてくるタイミングではあからさまに食いが立つから面白い。そよ風で水面がわずかでも波立ってくるとベタ凪時がウソのようにアタリが出始め、食いも深くなり、立て続けに多点掛けも。時合というものの存在をこれほど実感できる釣りも珍しい。松田さんによれば、氷上のワカサギ釣りでも風が吹くと反応が上向くのは同じだという。
では無風時は手も足もでないかというと、そこは百戦錬磨の松田さんである。パターンに気づいたのはボート店帰着1時間前の午後3時。ワンポイントでアカムシをセットしたハリに掛かってくることが多かったことから、すべてのハリをアカムシに変更。実は普段の松田さんはワンポイントでセットされたエサにヒットしたからといって、その他のハリをそのエサに変えることはしていないという。前述のとおり、ワカサギの目先を変えるねらいがブレてしまうからだ。しかし今日ばかりはそのルールを大胆に変更。そして穂先にアタリを出すために聞き上げで誘ったところ、良型が多点掛けで掛かるようになったのだ。
試行錯誤の末にこの日有効なパターンを探り出せたので松田さんも最高に楽しそうだ。終わってみれば4~10cmまで混ざる320尾の釣果。当初の目標を大幅に上回り大満足な釣行になった。
「この時期は当歳魚でサイズが小さいのは想定していたけど、なかなか口を使ってくれず攻略のし甲斐があった。意外と良いサイズも混ざりさらに楽しめた。今日はまだ気温が高すぎて群れの移動が速すぎたけど、雑誌が発売されるころには気温が下がって群れも安定するから釣れる時間も長くなり、より簡単に数釣りが楽しめるようになると思う」
松田さんはそう話して釣行を締めくくった。
帰着1時間前の15:00、ついにパターンを発見。エサをすべてアカムシに付け替えて、聞き上げでアタリをとるようにしたところ、これまでがウソのように良型が多点掛けで釣れるようになった。これには松田さんも「恐れ入りました」と言いつつ最高に楽しそうだ
320尾の釣果だった
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。