湖西の堅田からレインボーロード(琵琶湖大橋)を渡り湖岸道路を北上。近江八幡市に入り長命寺川右岸を川上に向けてしばらく進むと釣り人の姿が増えてくる。
のんびりウキ釣りで楽しむ春の風物詩
レポート◎高崎冬樹
フィッシングエイト・スタッフの藤本裕之さんはホンモロコ釣り歴、なんと半世紀!少年時代、京都市山科の自宅から浜大津まで通っていたというこの記事は『つり人』2017年6月号に掲載したものを再編集しています。
多くの釣り人が琵琶湖の春を求めて
湖西の堅田からレインボーロード(琵琶湖大橋)を渡り湖岸道路を北上。近江八幡市に入り長命寺川右岸を川上に向けてしばらく進むと釣り人の姿が増えてくる。北津田大橋上下流の左岸側、足場のよい護岸にサオを振る人がびっしりと並んでいる。今日は4月5日の水曜日。平日にもかかわらず大変な人出。このすべてがホンモロコ釣りというから驚きだ。
平日だというのにこの人出。ホンモロコ釣りの人気のほどがうかがえる。長命寺川左岸のポイント
これが琵琶湖の固有亜種であるホンモロコ。春が産卵の時期でお腹がぽってり。この子持ちが美味しい
10㎝そこそこの小魚に人気が集まる秘密は、ホンモロコは琵琶湖を代表する味覚のひとつで、それも春にしか味わえない旬の味だからだ。聞けば素焼きにして頭から骨まですべてそのまま食べることができるという。地元滋賀では酢ミソで、お隣の京都では酢醤油でいただくのが定番だそう。まったくクセのない上品な味で、京都や大阪の料亭だと3尾ほどで1000円もの上代が付くらしい。なるほど、そういうことか!
大賑わいの長命寺川をあとに車を進め、西の湖を右手に見ながら伊庭内湖のインレットのひとつである須田川へ。ここで合流したのがフィッシングエイト・スタッフの藤本裕之さんと釣友で「なにわ淡検隊」という釣りクラブの水廣昭次さんのお2人。すでにサオをだしておられたが、まだ数尾ずつの釣果だという。長命寺川ほどの人出ではないが、ここも結構な人数が川面にウキを浮かべている。
京都市出身の藤本さんは、ホンモロコ釣りは子どものころから経験があるという大ベテラン。古くから人気がある釣りで、藤本さんの小学生時代の記憶によれば、シーズンになると浜大津の釣具店には毎朝、エサのアカムシを買い求める釣り人で行列ができたという。「当時は1日に10尾も釣れればよいほうだったですね」と少年時代を懐かしそうに振り返る。
藤本さんと釣友の水廣さん。水廣さんは「なにわ淡検隊」というタナゴやモロコをねらう釣りクラブのメンバー
放流で資源量が回復 今年は禁漁区も
ホンモロコはコイ科タモロコ属の淡水魚で各地に移植されているが、琵琶湖の固有亜種だ。琵琶湖では重要な漁獲対象魚のひとつになっており1995年までは年間漁獲量が数百トンで推移していたが、2004年には数トンに激減。そのため漁業者が種苗生産放流などに取り組み西の湖や伊庭内湖ではホンモロコの産卵が回復。この両湖で生まれ育ったホンモロコは琵琶湖全体の資源量の5割近くにもなるという。
近江八幡市や東近江市付近は干拓地が広がる。そのため水路や内湖、浅い干潟が多い。さまざまな淡水魚の宝庫だ
また、これら内湖に流入する河川が重要な産卵場所であることが分かったため、滋賀県内水面漁場管理委員会と県水産課では資源保護のため、今年は一部流入河川に禁漁区域と期間を定め、すべての水産動物の採捕を禁止している。4月1日から5月31日までの2ヵ月間、3ヵ所(瓜生川、躰光寺川、山本川の指定区間)で採捕禁止となっているので注意。現場には「すべての魚採捕禁止」と書かれた赤いノボリが立っているのでルールは絶対守ってほしい。
2017年から、ホンモロコの産卵保護のため禁漁期間と区間が設けられている。このノボリのある場所では、すべての水産動物の採捕禁止。詳しくは http://www.pref.shiga.lg.jp/g/suisan/files/honmoroko.pdf を参照
そういった背景もあり「ホンモロコは昔より数釣れる魚になりました」と藤本さんはいう。半日の釣りで平均20~30尾、多い時で60尾もの釣果があるそうだ。平均サイズは12~13㎝で、15㎝を超えれば大ものだ。調子がよい日には、そんな大ものが7、8尾まじるという。
今シーズンは3月に入ると長命寺川や須田川周辺で釣れ始め、その後は毎週のように通っているという。ただ、このエリアは水温の上昇が早く、ゴールデンウイークごろまでが釣期。以後は釣れても骨が硬くなり、味も落ちるのだそうだ。しかし琵琶湖ではエリアごとの水温がまるで違い、5月頃からは湖北の彦根、長浜周辺、さらに6月に入ると湖西の真野方面が順次シーズン入りするので、心配はいらない。
2本バリのウキ釣りタナは底から少し切る
釣り方はウキ釣りが一般的だ。下オモリ式のワカサギ仕掛けをリールザオを使い、ブッ込んでねらう人もいるが、釣り味を楽しむならノベザオのウキ釣りが一番。アタリが繊細なため藤本さんや水廣さんはハエザオと高感度のハエ用のウキを使用する。サオの長さは5.4mが標準だが、川幅が狭い場所もあるので、余裕があれば短めのサオも準備しておけば万全だ。
ホンモロコ用のイト付きバリをサルカン下に2本、大きめのチチワで結んで段差を付けた2本バリにし、手尻の長さはそのハリス分。サルカンがちょうどサオ尻にくる位置に調整する。
イチオシギア
がまかつ『糸付がまモロコ』 フィッシングエイトの藤本裕之さん、なにわ淡検隊の水廣昭次さんはじめホンモロコ釣りを楽しむお2人の釣り仲間、ほとんどの人が使用しているのが『糸付がまモロコ』。とにかく掛かりがよく釣果に差が出るという。ハリサイズ2.5号、ハリス0.4号45cmで8本入りのワンアイテム。ハリスが黄色と赤に4本ずつ色分けされているので2本バリ仕掛けの場合に区別しやすく便利
がまかつ『糸付がまモロコ』 フィッシングエイトの藤本裕之さん、なにわ淡検隊の水廣昭次さんはじめホンモロコ釣りを楽しむお2人の釣り仲間、ほとんどの人が使用しているのが『糸付がまモロコ』。とにかく掛かりがよく釣果に差が出るという。ハリサイズ2.5号、ハリス0.4号45cmで8本入りのワンアイテム。ハリスが黄色と赤に4本ずつ色分けされているので2本バリ仕掛けの場合に区別しやすく便利
重要なのはウキの浮力調整と底取りだ。ウキは浮力の違うものを何種か用意し、ポイントの水深、流れの速さ、風の強さなどを考慮して選ぶ。ウキのトップだけが水面上に出るようにサルカン上に小さいジンタンを段打ちして浮力調整する。
ウキはハエ釣り用、発泡ウキが高感度でアタリがよく出る。ただ小型のものが多いので、色合いによっては見えにくい場合もある
藤本さんが底取り用に使っていのは、中通しオモリにウレタンチューブを通して結んだだけの簡単なもの。ウレタンには弾力があるのでハリは外れない
ホンモロコを食わせるタナは底を少し切った位置なので、ウキ下の調整が重要だ。専用の底取りオモリを使ってもよいし、藤本さんは中通しの丸玉オモリにウレタンチューブを通して結んだものにハリを掛けて使用している。この状態でポイントに投入し、ウキトップが水面下ギリギリになるようウキの位置を調整。これで底取りオモリを外せば、ウキの浮力で下バリが底から少し離れた状態になる。この底取りがきっちりできていないと釣果に大きく響くので、ポイント移動の際はめんどうでも必ず底取りをすること。
エサは市販のアカムシ。くりんと丸まるのが元気な証拠。だらんと伸びたものは使わない。この元気なアカムシの真ん中にハリ先をチョン掛けする。アカムシは食い込みがよく、ホンモロコが数釣れるエサだが、小型ばかりの時はキヂも試してみるとよい。2、3㎝の長さにカットして、これも真ん中にチョン掛け。思わぬ大ものが食ってくる場合がある。
仕掛けを振り込んだらウキに現われるアタリを待つわけだが、なかなかアタリが出ない場合は誘いも必要。時々、ちょこんとウキを動かしてやる。流れがある場合はウキの流れにブレーキをかけてエサを浮かせてやるのもよい。その途端にアタリが出ることもしばしばだ。ただ、かえって逆効果の場合もあるので、その日のパターンを早めに見極めよう。
ホンモロコのメインエサはアカムシだが、大型ねらいに効くのがキヂ。アカムシはチョン掛けでOK
水深がある長命寺川キヂエサに14㎝!
その後、数尾ずつの釣果を得て、同じ須田川の少し上流部に移動。ここではホンモロコらしい魚をくわえた野鳥のカイツブリを確認、魚がいるのは間違いないがアタリは遠く、同じ伊庭内湖に流れ込む大同川に再び移動。人気ポイントには釣り人が集中。ぽろぽろ釣れているようだが、そこから外れるとアタリがまるでない。昼食を挟んで、最後に藤本さんと水廣さんが選んだのは、朝イチに釣り人がズラリと並んでいた長命寺川のポイント。お昼になって多少はポイントに隙間ができている。
おだやかの春の日。須田川でサオをだす藤本裕之さんと水廣昭次さん。繊細なウキ釣りは風が大敵。この日のように川面が鏡になっていれば最高
大同川の人気ポイントにはホンモロコねらいの釣り人が何人も。ウキ釣りでねらう人がほとんどだ
長命寺川は西の湖と琵琶湖をつなぐ河川で水深もある。須田川や大同川のポイントは数十センチの水深だったが、ここは1.5m。サオも朝の5mから5.4mに持ち替えた。両岸がコンクリートで固められ水路のような場所で、ロケーション的にはイマイチだが、大型がねらえるという。
長命寺川のポイントでこの日一番の大ものが藤本さんにヒット。エサは大型の確率が高いというキヂ
スケールの上に乗せてみると14cm。これだけ大きくなっても素焼きにすれば春は頭から骨ごと食べられる
「アカムシでは小型が多いので、キヂでやってみます」という藤本さんの判断が的中。すぐにこの日の最大サイズである14㎝ジャストを釣りあげた。その後、時合が来たのかアカムシエサでも、型が揃い出し、水廣さんにも14㎝近い大型がヒット。午後3時頃までに2人合わせて30尾ほど。好調とはいえなかったが琵琶湖の春を堪能した1日だった。ただサクラが咲いていれば……。それだけが残念!
水廣さんにも14cm近い良型が。こちらはアカムシでの釣果
元気なホンモロコ。エアを効かせておくとずっと生きている。氷、お湿り程度のわずかな水だけ入ったクーラーで持ち帰って数時間、塩水で洗おうとしたら元気に跳ねたのには驚いた。すごい生命力だ
ホンモロコによく似ているがビワヒガイ。これも琵琶湖の固有亜種。繁殖期のオスは頬が橙色になり眼が赤くなる
須田川。アシがびっしりで水深はないが、いかにも釣れそうだった。しかし、ここでの釣果はわずか
ショップガイド
フィッシングエイト京都伏見店 住所=京都市伏見区竹田向代町川町24-4
営業時間=月~木曜10~22時、金曜・土曜10~23時、日曜・
祝日10~21時。年中無休
問合先=℡075・672・0080
フィッシングエイト京都伏見店 住所=京都市伏見区竹田向代町川町24-4
営業時間=月~木曜10~22時、金曜・土曜10~23時、日曜・
祝日10~21時。年中無休
問合先=℡075・672・0080
ホンモロコをいただく! ホンモロコは素焼きにして酢醤油か酢ミソでいただくのがポピュラー。持ち帰ったホンモロコは濃いめの塩水で汚れを落とし、真水ですすいでから頭も内臓もウロコも落とさずに焼くだけ。炭火で焼くのが一番だがガスコンロ、グリルでも問題なし。キツネ色になるまでこんがり焼けば頭も骨もそのまま丸かぶりOK。まったくクセのない淡泊な味で、これからの季節は冷酒にぴったり!?(写真提供=水廣昭次さん)
おすすめのお立ち寄り処
シャーレ水ヶ浜 今回のホンモロコ釣り取材で訪れた長命寺川の河口から琵琶湖岸沿いの道路を2kmほど進むと湖岸ギリギリの小高いところにログハウス風の建物が見えてくる。これが「シャーレ水ヶ浜」というカフェ。おすすめは何といってもシックな店内を通り抜けて出られるようになっているテラス席。琵琶湖が一望でき、お天気がよければ対岸の比良山もバッチリ。食事はカレーやパスタなど軽食のみ。ポイント移動の際に「ちょっとお茶でも」という場合にどうぞ
住所=滋賀県近江八幡市長命寺町184
問合先=℡0748・32・3959
シャーレ水ヶ浜 今回のホンモロコ釣り取材で訪れた長命寺川の河口から琵琶湖岸沿いの道路を2kmほど進むと湖岸ギリギリの小高いところにログハウス風の建物が見えてくる。これが「シャーレ水ヶ浜」というカフェ。おすすめは何といってもシックな店内を通り抜けて出られるようになっているテラス席。琵琶湖が一望でき、お天気がよければ対岸の比良山もバッチリ。食事はカレーやパスタなど軽食のみ。ポイント移動の際に「ちょっとお茶でも」という場合にどうぞ
住所=滋賀県近江八幡市長命寺町184
問合先=℡0748・32・3959
レポート◎高崎冬樹
昭和35年生まれ。神戸市北区在住。得意な釣りは磯のグレ釣り。友釣り歴は30年以上だが、ここ数年はご無沙汰……。フリーのライター・カメラマン・編集者
この記事は2018/5/4のものです。ホンモロコ産卵保護のための採捕の規制についてはこちら