コノシロが回遊する秋の河口は、ウエーディングのアプローチが面白い!オープンエリアに浸かって縦横無尽にシーバスを探るのが大好きという久田智司さんの多摩川コノシロパターン攻略を追った。
コノシロが回遊する秋の河口は、ウエーディングのアプローチが面白い
文◎久田智司
写真◎編集部
自然との一体感が魅力のウエーディングゲーム
私がシーバスフィッシングを始めたのは2016年頃。幼少期には祖父の教え でエサ釣りは多少なりと経験したが、大学時代に友人から「東京湾にはスズキが たくさんいるらしいぞ!エサではなくルアーで釣れるらしいぞ!」という話を 聞き、興味を持ったのがきっかけである。季節・気温・水温・潮・ベイト・ルアー ……さまざまな複合要素をジグソーパズルのように組み合わせて魚を釣りあげた 時の快感に魅せられ、現在に至るまでの8年間、港湾、河川、干潟まで、さまざ まなフィールドに毎日のように通い込み、経験を積んできた。ウエーディング ゲームは大好きで自分の足で魚との距離を縮められ攻略の幅が広がることが何よ りの魅力。水中に身を置くことで流れや水温の変化を直に感じながら釣りがで き、オカッパリからのアプローチでは得られない自然との一体感を味わえる。
久田智司(ひさだ・さとし)
1998 年生まれの26 歳。東京都墨田区在住。シーバスゲームとタナゴ釣りを愛する年間釣行300 日の理論派アングラー
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ウエーディングを安全に楽しむために
海辺や汽水域では潮位変動による干満差が必ず発生する。私がホームとする東京湾の各釣り場は満潮と干潮で最大1・5mほどの干満差が生じる日もあり、この変動を考慮せずに入水すると岸に戻れなくなり最悪の場合は命に関わる事故を招く。安全に釣りを楽しむためには、装備を整え現地の情報をしっかり精査することが重要だ。
●地形を把握する
ウエーディングで最も重要なのは地形の把握だ。雨、風、工事の影響で日々変わる水中の地形を把握して歩みを進める。場所によっては1歩進むと1mほどの深さがあるスリットが存在する。大潮の干潮時に地形を確認するのがベストだが時間の都合がつかない人も多いはず。基本はすり足を心がけ慎重に歩みを進めれば転倒やエイを踏むリスクを避けることができる。おすすめは登山アプリなどを使ってGPSログを残すこと。帰路も考慮しデータとしてルートを記録することがおすすめである。
便利なアプリはたくさんある。スマホを使いこなそう
●潮位と天気は常に注意
多摩川河口部をウエーディングで探るなら潮位120cm以下にならないと沖には出にくい。潮位はタイドグラフで確認するがあくまで目安。雨や風、気圧、流水量、ウネリの入り方によっても潮位の変動がある。各省庁が提供するリアルタイムの潮位情報が見られるサイトをブックマークしておくと便利。
ウエーディングビギナーは単独釣行ではなく複数人で始めてみよう
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多摩川、秋のコノシロパターン
私が秋に通い込む多摩川河口部は石が絡む瀬や広大なシャローエリア、アシや牡蠣瀬が形成する豊かな自然環境が残る。一見すると水中の地形やスリットが分かりづらいが、歩みを進めて地形要素や流れを解釈できれば大型のスズキが次々にヒットすることは珍しくない。ただし初めての訪問では1尾を釣りあげるのも難易度は高い。できれば経験者と一緒に入水することをおすすめしたい。
10月から12月にかけては「コノシロパターン」がハマる。産卵前の大型は体力を蓄えるためシャローエリアに入ってくるコノシロを積極的に捕食する。90cm超、さらにはメーターオーバーも夢ではない。
スズキに限らずフィッシュイーターは常時エサを食べてはいない。食い気の高まるタイミングが必ずあり「いかに楽に捕食できるか」を考えて回遊し、付き場を決め、捕食しやすいタイミングを待っている。スズキの付き場を探し出すには「目に見える変化」と「目に見えない変化」を意識することだ。
①目に見える変化
一般的に目に見える変化として挙げられるのは、流れの変化であろう。基本的に川の流れは高低差によって生じ、浅場から深場に向かって水は流れる。深い部分は水量が増えて流速も速くベイトフィッシュやフィッシュイーターのスズキも居づらい環境だ。そこで注目したいのが潮目である。潮目は地形によって発生する流速差や塩分濃度、その他の複合的要素によって現われ、水面が鏡のように静かになるため目で見て分かりやすい。さらに「鏡のような水面」と「ザワザワした水面」の境目はブレイク(深浅の境目)となっておりスズキが効率よくエサを捕食できる待機場所となっている。
②目に見えない変化
目に見えない変化として挙げられるのが水温の変化である。水温計を持っていれば把握しやすいが、ナイロンウエーダーでウエーディングをしていると直感的に温度変化が分かる。立つ位置によって水温が異なることもあれば、同じ場所でも冷たかった水が突然暖かくなることや逆に冷たくなることもある。また足もとの水は暖かいのに腰あたりの水が冷たいといったぐあいに表層と低層で温度差があるケースも多い。
特に河口部はこの温度変化が釣果に直結する要素になる。私は温かい(または冷たい)水が流れ込んでくるタイミングで連発ヒットした経験を何度もしており、多摩川の場合は9~10月中旬までは冷たい水を探し、10月後半~12月は暖かい水を意識して場所を選ぶと好釣果に恵まれる印象がある。
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オープンエリア攻略術
多摩川におけるコノシロパターンは六郷橋を上限とし、その下流域であればどこでも成立する。分かりやすいのは橋下の明暗部だが、慣れてきたらオープンエリアへ移動すると技術をさらに向上させることができる。なお河口周辺は川崎側でないとエントリーしにくい。
入水のタイミングはずばり下げ潮がよい。下げ潮の流れが利くとコノシロは大きく動き回り、河口部各所で回遊するコノシロとそれを追うスズキに出会える確率は高まる。私の大好きな多摩川河口のオープンエリアに話を絞ると、スズキの行動パターンは大きく2つに分かれる印象がある。
①シャロー(浅場)でコノシロを待ち伏せするスズキ② 流心が絡むブレイク沿いでコノシロを待ち伏せするか追いかけ回すスズキ
私の実績では90cmオーバーの超大型は①のシャロー帯で釣れることが多く、②の流心付近のブレイクは60~80cmクラスが連発しやすい。コノシロの群れがいるスポットは河口各所に存在し、それらが潮位変動に伴ってさまざまな方向に移動する。この移動の際にスズキが近くにいるとコノシロは散開するような動きを見せる。こういった状況を目にした場合は、その周囲を重点的に攻めることで釣果に恵まれる可能性が高まる。
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10月初旬の釣行記
10月6日、後中潮の2日目。最高潮位は205cm、最低潮位は30cm。下げ潮時間の潮位110cmとなる22時頃から多摩川河口部に入水した。数日前から大雨が降り続き、河川の水温は徐々に下がっている。状況としては秋のコノシロパターンが最盛期に向かいつつあるが安定しきっていないタイミング。数日前に訪れた時と比べ水温は2℃ほど下がっていた。目当てのポイントへの移動中は、イナッコやコノシロが小さな群れを形成し動き回る姿が確認でき、期待がで高まった。
まずは前述①の『シャローでコノシロを待ち伏せするスズキ』をねらう。水温が下がっている状況だが自分の体感では水温19℃までなら急激な水温低下も影響は少なく、むしろ好転することが多い。特に水深1m以下のシャロー帯ではその傾向が顕著だと感じる。
先発ルアーは多摩川のコノシロパターンで実績の高いウエイク系ルアー「ライコ132F」。このルアーが高実績な理由は開発のメインフィールドが多摩川であったから。この川に最適化しつつ全国の河川でも使いこなせる性能に調整されている。時に激流、時に緩やかな流れが混在する河川でも、スピニングロッドで軽快に扱える操作性と巻き抵抗の軽さを兼備。ストレスなく釣りを楽しめ、私にとっては不可欠なアイテムだ。
ルアーに内蔵されたラトル音が「コトコトコト」と耳で聞こえる程度の巻き速度を意識してリトリーブ。さっそく「コツン」と小さなバイトがあったもののフッキングまで至らず。バイトの地点はシャローに形成された小さなブレイク付近である。水深が30cm→50cmにわずかに落ちるポイントで、そこに沿って流れが利いている場所だった。「今日はこのパターンか」と信じてキャストを続けたものの魚からの反応はない。そのうち、東風の影響でウネリが入り始めた。流れが利きづらくなったため作戦を立て直す。
前述②の『流心が絡むブレイク沿いで、コノシロを待ち伏せするか追いかけ回すスズキ』をねらう。立ち位置を変更し、シャローに滞在できなくなったベイトが深場に落ちていくことを見越して「ライコ132F」や「ハグレ96F」で水面から水面直下を攻めたが反応は得られない。そこでコノシロの遊泳層よりも下層を引くことをイメージして「ジナリ65」を選択。秋の多摩川序盤戦ではこの釣り方が稀にハマる。
潮位は下げ8分。川の流れが収束して最も深い部分に水が集まるタイミングだ。「ジナリ65」は低速度でもしっかり動く性能を持っている。スズキやコノシロなどの水中生物に過度なプレッシャーをかけず、ゆったりと流すことのできるバイブレーションだ。投げ始めてしばらくすると、コノシロが中層に溜まりラインに触れるエリアを発見。プレッシャーをかけないようにアップクロスにキャスト。川の流れに合わせてふわふわと漂わせるイメージで溜まったコノシロの群れの下層へ流し込むと「ゴン!」とヒット。 秋らしいパワフルな魚が引きを楽しませてくれた。今後はひと潮毎にコノシロパターンが本格化する。楽しみだ。
水温低下により浮いたシーバスが少なくコノシロの下層をイメージして「ジナリ65」をゆっくり通すとヒット
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。