車で楽々エントリーできる閖上漁港はビギナーやファミリーの小物釣りにもおすすめ!
震災からの再生が加速し始めた伊達藩直轄の漁港
レポート◎道下 裕
車で楽々エントリーできる閖上漁港はビギナーやファミリーの小物釣りにもおすすめ!この記事は『つり人』2019年8月号に掲載したものを再編集しています。
潮の干満がカギを握る閖上のハゼ釣り
「河口やサーフでは、ワームやメタルジグでヒラメやマゴチが釣れ始めましたが、湾内もマイワシやサバ、イシモチ、アイナメがまずまずの調子。でも閖上といえば、やっぱりハゼですよね。シーズン序盤のいまはデキ(当歳魚)主体ですが、20㎝クラスも混じり始めました。7月頃には数、サイズとも期待できると思いますよ」閖上魚市場にほど近い区画で営業する、つりえさマリン・閖上店のスタッフ、針生秀一さんが饒舌に語る。

数日後のお昼すぎ、閖上魚市場裏の岸壁で氏と待ち合わせた。実はこの時間帯を選んだのには理由がある。
「昼過ぎにしたのは、上げ潮をねらいたいからです。下げ潮になると農作業による濁りを伴う冷たい水を広浦側から引き寄せやすい。夏場ならプラスに作用することもあるんですが、この時期の水温低下は食い渋りに繋がりかねません。また、潮が満ちてくるに従い、沖めにいた魚も接岸してくる可能性も高まります」
さらに針生さんは続けた。「ハゼはチョイ投げ、ウキ釣りいずれでも釣れるんですが、私はウキ釣り派。玉ウキに出る明確なアタリは視覚的にも楽しませてくれますからね。仕掛けと釣り方がシンプルなので、特にビギナーやファミリーにおすすめです」。


エサを付け終えた仕掛けが、ゆっくりと水に馴染んでいく。玉ウキが微かな重みを背負った瞬間からが勝負。アタリが遠ければサオ先でウキをズラすか、あるいは仕掛けを打ち直す。その作業を繰り返しながら岸壁を移動。魚の気配を探る。
仕掛けを何度か振り込むと「ピク、ピクッ」と玉ウキが揺れた。すかさず合わせるが乗らない。「デキか、あるいは小さなメバルか……」と呟く針生さん。 その魚が氏の掌中に収まったのは間もなくのこと。当歳魚ではあったが、レンズ越しにもサイズ以上の駆け引きを愉しませてくれた。


閖上の「まちびらき」と釣り人の立ち位置
実は、閖上は東日本大震災に伴う津波により、壊滅的ともいえる被害を被った地域である。この災禍で住民の20%が命を落とし、かつて仙台藩直轄の漁港に根ざした集落は流失した。それから8年。文字通り「ゼロからの再生」は「ゆりあげ港朝市」の復活、水産加工施設や小中一貫校の整備を経て今日に至る。
新たな街づくりが目に見えるかたちで進み始めたのは最近のこと。4月以降「かわまちてらす閖上」「トレイルセンター」「震災メモリアル公園」がオープンし、5月には「名取・閖上まちびらき」を開催。内外に地域の再始動をアピールした。
ハード面が整備される一方で、課題とされるのは「閖上」を拠り所にするコミュニティの構築であるという。居住者が増え、街並みに灯りが戻るまでには、まだ時間が掛かりそうだ。
個人的には、いましばらくはビジターによって活気を維持する必要があると感じる。その点では釣り人の存在も無意味ではない。



イチオシアイテム
ガン玉(タナ取り用)

ショップ
つりえさマリン 閖上店

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