淡水のファミリーフィッシングといえばワカサギ釣り。東海のメジャースポットである入鹿池は昔からボート釣りが盛んで、シーズンを迎えると湖面が大いに賑わう。
名古屋からのアクセス良好。東海屈指の公魚フィールド
伊藤 巧 写真と文
淡水のファミリーフィッシングといえばワカサギ釣り。東海のメジャースポットである入鹿池は昔からボート釣りが盛んで、シーズンを迎えると湖面が大いに賑わう。
ただし、常に数が釣れるわけではない。
時には急激な水温低下で食いが渋ることもある。
繊細なアタリをいかに取るか。それまた熱いワカサギの魅力である。
この記事は『つり人』2016年2月号に掲載した釣行レポートを再編集しています。
目次
晩秋から数釣りに沸く中水温が低下して食い渋り束釣りすら危うい状況に
ビギナーからベテランまで熱くなれるワカサギ釣りが本格的なシーズンを迎えた。愛知県犬山市の入鹿池は連日ファンで大にぎわい。外周16㎞、農業用の人工溜め池としては国内でも指折りの規模を誇る。農林水産省の「ため池百選」に選定され、今年は「かんがい施設遺産」にも登録された。そんな由緒ある入鹿池にワカサギやブラックバス、ヘラブナねらいの釣り人が県内外から訪れている。
入鹿池は東海地方を代表するワカサギスポット。名古屋中心部からのアクセスが抜群とあって週末は釣り人で賑わう。入鹿池はボートを借りてワカサギ釣りを楽しむ。景色を愛でながら趣くままにポイントを目指す
入鹿池のワカサギシーズンは、例年10月上旬から3月いっぱい。中でも初冬は2歳魚がまじって釣れる好期。今シーズンは序盤から好調で、11月中旬にはポイントに精通する常連組は5㎝ほどの当歳魚を500尾ほど釣っていた。飛び交う朗報にたまらず繰り出したのが、イシグロ西春店の池谷貴之店長とスタッフの杉本麻緒さん。「たとえ数的にエキスパートの5分の1としても束釣りは堅い!」と、張り切って貸しボートの見晴茶屋に予約を入れた。
イシグロ西春店のワカサギコーナー。その充実ぶりはマニアも納得
仕掛けに取り付ける集魚アイテムも豊富。側線や視覚にアピールして、ワカサギを足止めする
静岡に勤務していた当時は伊豆半島に通ってダイナミックな磯釣りを楽しんでいた池谷さんだが、西春店に異動した今はワカサギ釣りに魅了されて入鹿池に足しげく通っている。
「職場から富士五湖が近かったので以前からワカサギ釣りは好きでしたが、ここ数年で一般に普及した電動リールの釣りは抜群に面白いですね。手軽に入門できるのに奥が深い。サオの調子や仕掛けのバリエーションは豊富でパズル的な要素が強く、テクニックもいろいろ。一度ハマッたら抜け出せません。まさにワカサギ沼ですね(笑)」と、釣行を前にテンションは上がる一方。
ところが、釣行の5日前から大規模な寒波が東海エリアに到来。気温が急激に低下して池はターンオーバー。ワカサギが食い渋った。ベテランも束釣りできるかどうかという渋い釣果になっていた。見晴茶屋店主の奥村健一さんによると、水温が不意に低下すると一週間ほどポイントがボヤけるので、ボートをこまめに移動させながら群れを捜す釣りがおすすめとのこと。池谷さんはボートに魚群探知機とエレキモーターをセット。桟橋からポイントを目指した。
入鹿池では待望のワカサギが本格化。5㎝ほどの当歳魚に10㎝前後の2歳魚がポツポツまじって数釣りに沸いている
今井川河口に群れを見つけ魚探でタナを絞り積極的に探ると一荷連発
湖面にボートを滑らせると、冷え込みによって霧が発生。幻想的な世界が広がった。まるで冬の日本海で目にする〝けあらし〟のよう。先に出て行ったボートが博物館明治村の教会前に集まっていたので、とりあえず向かってみる。ここで太陽が顔を出し、紅葉に染まった山々を照らした。霧と相まって絶景の一言。こうした景色を愛でながらサオをだせるのも、湖で楽しむワカサギ釣りの魅力であろう。
エレキモーターを使うと移動が楽。紅葉を眺めつつ、ちょっとしたクルージング気分が味わえる
さっそくアンカーを下ろしてタックルの準備に取り掛かる。2人は電動リールに軟らかめの扁平穂先を差し込んだ。仕掛けの上部にアトラクターをセットして寄せエサのブドウムシを刺し、掛けバリにアカムシを付けていく。現在のワカサギ釣りの最先端ともいうべきセッティングだ。古くはイカダザオと小型の両軸リールというスタイルから、最近のワカサギ釣りは様変わりした。より繊細で釣趣に優れる電動リールの釣りが主流になった。愛らしい道具で快適な操作感、スピーディーな釣りが可能になった。
さっそく仕掛けを下ろして誘いを入れようすをうかがう。魚探の反応は薄くアタリは散発的。ペースは遅い。手練な二刀流の釣り人をはじめ、ベテラン勢が見切って早々に仕掛けを上げたことに気づいた池谷さんは「やっぱり今日の教会前はダメなんですよ」と同じように切り上げ、すぐに今井川の河口に移動した。ワカサギ釣りは手もとばかりに集中しがち。だが周囲の動きも見ながらサオをだすことが大切だ。特に釣りに慣れていない人は、上級者の行動を参考にすると時間を有効に使うことができる。
今井川河口の水深10・5mにボートを架けてサオをだしたところ、先ほどよりも魚が多いようで、魚探にもコンスタントに反応が出た。底べったりが多いながらも、頻繁に水面から6~8mのタナを小さな群れが通過していく。こうしたタナが広い場面では、特に魚探が威力を発揮する。反応が出た時点で素早く電動リールでタナまで仕掛けを移動させれば、通過する前に食わせることが可能だ。この日は納竿までタナが安定していなかったので、魚探はとても重要な役割を担った。ちなみに電動リールは巻き上げ速度も速いが、仕掛けを落とす速度も手巻きリールに比べて圧倒的に速い。魚探との組み合わせで、攻撃的な釣りを展開できる。
魚探を見ながら仕掛けをタナに合わせると、小気味よく穂先が震えた。朝は活性が低く1尾ずつ掛けていく展開だったが、太陽が顔を出して気温が上昇すると一荷で掛かり始めた。小さなワカサギが宙を舞うたびに歓喜の声が上がるのだった。
ワカサギの連掛けを披露してくれた池谷さん。水温が低下する前は、3連、4連で掛かってきた
食い渋りに対応するため電動リールを駆使して釣り方に工夫を凝らす
順調に釣果を重ねているように見えたが、2人は手を替え品を替えて打ち返していた。この日は最後までワカサギの食いが渋く、仕掛けを垂らして待っているだけでは、タナが合っていても素通りしてしまう状況だった。
仕掛けを張ったままではアタリが出なかったので、池谷さんは2~3gのオモリを使ってフカセ気味にアプローチ。仕掛けをシェイクさせてからピタリと止めたり、張ったり弛めたりを繰り返して執拗に誘った。一番効果的だった釣り方が、大きくシャクり上げてラインが張ったところから、テンションを一気に抜いて仕掛けを落とすというもの。サオを止めて再びラインを張ってくると穂先がプルプルと震えていた。
ワカサギ釣りをやり込んでいる杉本さんは、船が風に流されても仕掛けが斜めにならないように4gのシンカーを使用。最初は胴調子の柔軟な穂先に小バリ仕掛けを使っていたが、ここ数年の中では当歳魚のサイズがよいこともあってハリ外れが頻発。ロングハリスの大バリ仕掛けに穂先も硬めの先調子に交換。少ないアタリを逃さずしっかり掛け合わせて数を重ねた。
2015‐2016シーズンは例年に比べて型がよく、アタリ自体は明確に出る。しっかりハリを掛けるために2号や2.5号の仕掛けがおすすめ
群れごとに狭いタナを移動していたのかダブルは頻発したものの、当日はトリプル以上の多点掛けは目にできなかった。12月に入って復調してきたので1月には大いに期待したい
こうしてお昼までに2人合わせて90尾近い釣果を上げた。灯台沖や中央筏、今井川河口など、各実績ポイントにボートは散らばっていたが、どこも芳しくなかったようで、10尾も釣れなかった人もいたことを考えると上出来の釣果といえる。
「先週末まですごく釣れていたので安心していたのですが、直前に思わぬターンオーバー。上手い人で100尾程度まで釣果が落ちたので焦りましたね。常連と一見の釣り人では、だいたい釣果に5倍の差がつくので、下手すると一日粘って20尾……なんて事態も考えました。だから2人で80尾を超えたのは大成功です。難しい状況も技術の差が出るので面白いものですよ」
彼らの釣りで欠かせないのがブドウムシである。ハリ付けしたブドウムシに切れ目を入れると、エキスが漂い集魚効果に優れる。食い渋り時に効果てきめんなのだ。なお、1月以降は当歳魚の数釣りとなるので、付けエサはアカムシが鉄板。仕掛けも小バリが有効と思われる。
見晴茶屋の奥村さんいわく「入鹿池のワカサギ釣りは、これからが本番です。初心者の方にぜひ挑戦していただきたいです。今シーズンは当歳魚の型がよくてアタリも分かりやすいので入門にもってこい。中央筏の周りで6時間も頑張れば、50 尾ほどの釣果が見込めます。それを持ち帰って天ぷらにして食べたら最高ですよ! 手ぶらで遊びに来ても大丈夫です。犬山名物の田楽も味わってください」とのこと。なお、厳寒期の朝は霜が降りているので、防水性を備えたグローブなどがあると重宝する。
岬になっていて魚の通り道になっている灯台前にもボートが集まっていた。厳寒期は、この灯台前と湖の中央に浮かぶ筏をつないだ真ん中辺りが本命ポイントになる
お昼を前に納竿して80尾超え。この日の状況を考えるとうれしい釣果
イシグロ西春店
北名古屋市で大きな売り場面積を誇るイシグロ西春店。品揃えは抜群
2013年にオープンした大型店舗。ワカサギをはじめアユやヘラブナなど淡水の釣りに精通するほか、日本海の船事情にも詳しい。メガバスショップを店内に配置するなどルアーも充実。
● 営業時間
月~土、祝前日/10:00~23:00
日曜祝日/10:00~22:00
12月31日/10:00 ~18:00
1月1日~3日/10:00~19:00
● 問合先/℡ 0568-23-1496
見晴茶屋
入鹿池の畔で長くレンタルボートを営む見晴茶屋。途中で休憩して温かい食事もとれる
入鹿池の釣りを語るうえで欠かすことのできない老舗レンタルボート店。手漕ぎボートは2人乗りで一日2500円。免許不要のエレキモーターとバッテリーをセットした新型ボートは一日5000円。シーズン中の週末は混み合うので事前の予約が賢明。バッテリーのみのレンタルは500円。常備エサはアカムシ300円とベニサシ200円
問合先
● 営業時間:12~2月は6:30~16:30
● 定休日:なし
● 問合先:℡0568-67-0705
● 交通:中央道・小牧東ICを出て信号を右折。郷中新橋南交差点を左折して入鹿池沿いを走り、堰堤に入って奥に進むと店舗
店内には仕掛け付きの貸しザオにエサが常備されているので手ぶらで訪れても釣りが楽しめる
釣りから上がったら釣りを振り返りながら食事を楽しみたい。犬山名物の田楽は病み付きになる美味しさ
2016/12/8