ドーム釣り人気をけん引しているのが山中湖だ。山中湖のドーム船に合う仕掛けとは? 山中湖のドーム船で釣果をアップさせる秘訣は? ワカサギに本気の相模屋スタッフに教わった。
山中湖のドーム船で釣果をアップさせる秘訣は? ワカサギに本気の相模屋スタッフに教わった
写真と文◎編集部
ワカサギ作法は整理整頓
10月の第2週はとにかく天候が不安定で連日の雨に見舞われた。取材当日も朝から本降りでテンションは低くなりそうなところだったが、山中湖にある『魚安ボート』のドーム船に足を踏み入れた途端、「来てよかった!」と気持ちが明るくなった。
24人乗りの魚安のドーム船は天井が高く椅子も高い。あぐらをかくのが苦手な人に最適だ。レンジ、ポットもありインスタントコーヒーやお茶も無料。レンタル備品も充実している
秋が深まれば富士五湖は寒さも厳しくなる。雨の日もあれば北風が吹きすさぶ日もある。さらに雪でもちらつこうものならボートからの釣りは修行と化すこともあるが、ドーム船は違う。
特にここ魚安ボートのドーム船はまるでオフィスにいるみたいな清潔で明るい空間だからなおさらだ。
「ここは相模屋でもワカサギイベントなどでよく利用させてもらっていますが好評ですよね。かくいう私も腰痛持ちでして、この椅子に座って釣るスタイルがとっても楽チンです」
とは、相模原市の老舗釣具店、フィッシング相模屋でワカサギコーナーを担当している、かおりんこと齋藤かおりさん。さらに、昨年の本誌にもご登場いただき、オフィス・ユーカリメンバーと津久井湖のボートワカサギ釣りで見事な釣果を披露してくれた吉田輝彦副店長も駆けつけた。
「自分はボート専門で、ドーム船の電動リールの釣りは全部ワカサギ担当の齋藤に聞いてください(笑)」
と吉田さん。実際、朝から齋藤さんにいろいろ教わりながら釣り座のレイアウト作りをしていた。
齋藤さんの釣り座レイアウト。左右に叩き台を起き、その間にトレーを置く。トレーにはエサ、エサを摘まんだりラインの絡みをほどくためのピンセット、エサをカットするための握りバサミ、握りバサミの汚れを落とす水入れを配置。その横にカウンター。スリットにぴったり収まるライブウェルは無料貸し出しでハリ外しも付いている。その奥の壁に魚探(ホンデックスPC610)とバッテリーをセットすれば完成
「ドーム船に乗り込んだら、まずは快適に釣りができるレイアウト作りをしましょう。そして荷物も他の方たちの迷惑にならないところに整理しつつ、必要な際にはすぐ手が届くところに配置します。ちなみに魚安さんはハリ外し付きのライブウェル、叩き台、仕掛けを掛けるS字フック、バケツや水切りまで船内にあるので、荷物は最小限で済みます。エサと仕掛けも付いた貸しザオ(手巻きは1500円、電動は2000円)もありますので、本当に手ぶらでも楽しめちゃいます」
と齋藤さんは、てきぱきと二刀流用のレイアウトを完成させる。一方の吉田さんは1本ザオでの挑戦。
「初めての人はもちろん、慣れていない人は1本ザオをおすすめします。ワカサギは魚のサイズも小さいですし仕掛けも繊細です、最初は誰でも手前マツリを何度もするトラブルが付きモノです。釣れた魚を外すのも、エサ交換をするのも、やってみると意外にうまくいかないものです。それは仕掛けをいかに張った状態にしておくかとか、どこまで巻き上げたら仕掛けを手繰るかといった細かなコツをつかめばすぐに上達します。ですがいきなり2本ザオで始めるとトラブルばかりで楽しめません」
槌屋順一船長も「慣れないうちは絶対に1本ザオ。うちは初心者の方が多いから大半が手巻きザオを選びます。電動タックルの購入を考えていて、どんなものか使ってみたいという人は電動を選びますね」とアドバイス。
使う頻度が高い小物は正面に置き、トレーの中に配置すると整理しやすい。
「自分で揃えるならピンセットと握りバサミはマストですね。ピンセットはアカムシやサシを摘まむ際にも使いますが、一番役に立つのは仕掛けのパーマやキンクの初期段階のトラブルをほぐすのに重宝します。これを指だけでやろうとするとすぐに結びコブや余計な輪ができて仕掛けをダメにしちゃいます。あと、握りバサミは山中湖でメインで使用するサシエサのカットに使います。基本はサシの両端を上バリと下バリでチョン掛けにして、真ん中からハサミでカットするんですが、スライド式よりも握り式のほうが切れやすいです。体液が付着したままだと切れなくなるので、ハサミ洗い用の小さなコップも用意しましょう」
オモリは魚探に映りやすく転がりにくいワカサギ時短オモリ(オーナーばり)の7g。下バリには時短ワカサギ1.5号をセット
サシエサは両端に上下2本のハリを刺してから真ん中をハサミでカットする。小バリのときはさらにエサを小さくカットするのも有効
ハリ外しは慣れれば片手で次々にハリを外せるようになり便利だ。このときに動作がしやすい仕掛けの張りぐあいや角度を身体で覚える
エサの付け替えは頭上のレールに架かっているS字フックに幹イトを通して行なうと手前マツリしにくい
まるで仕事場にいるような佇まいで釣り座のレイアウト作りをする齋藤さん
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高水温で浮いたワカサギには……
相模屋さんでは店舗オリジナルのワカサギ仕掛けが非常にたくさんある。その中から山中湖のドーム船ではどれを選んだらいいだろうか。
「うちからはいろいろな工夫を凝らした完成ワカサギ仕掛けを15種類発売しています。中でも私のおすすめは『渋りワカサギかおりん5本狐』と『渋りワカサギかおりん夜光6本袖』ですね。今年の山中湖のワカサギは当歳魚がメインですから、とにかく数を釣らないとウエイトも稼げません。そうなると小バリが有利になり、枝スも2.7㎝とほんのちょっと長めなので吸い込みやすい。通常は5本狐で、今日のように水中が暗い日は夜光6本袖のほうがアピールします」エサに関しては通常はベニサシかシロサシがあればよく、一番上にエキスで寄せるためのブドウムシをセットすると群れの足止め効果が期待できるという。さらなる食い渋り時には年内いっぱいはアカムシが効くそうだ。
「ただ、なんのエサが効くとかよりも、常に新鮮なエサの付いた仕掛けを下ろすことが一番のテクニックです。アタリが遠いなと思ったらエサのエキスが抜けていることを疑ってこまめに新鮮なエサに付け替える。多点掛けして時合が来たと焦ってしまいがちなときも慌てずしっかりと新鮮なエサを付ける。これが好釣果を上げる一番の秘訣です」
と、斎藤さんは常に丁寧なエサ付けを実践していた。
しかしその横で、まったくエサ付けをしないで連掛けをしている人が……そう、吉田さんだ。
実は数ある相模屋オリジナルのワカサギ仕掛けのなかでも新発売になったばかりのものが吉田さん考案の『ヨッシーパニック』という12本バリ仕掛けだった。もちろん、釣り場として想定していたのは津久井湖や芦ノ湖などの空バリによるシューティングのボート釣りが盛んな湖だった。
ルアー担当である吉田さんは津久井湖をホームグラウンドにするバスアングラーで、ライブスコープという最新魚探を活用してワカサギの群れがどの方角からやって来るかを予測してワカサギを追いかけたり待ち構えたりして数を釣ることを得意にしている。
今回はドーム船での取材のためこの仕掛けの出番はないものと思いきや、周囲が5~6本バリに2~3尾を掛けていくなか、ひとり12本バリに7~8尾掛けて悦に入っていたのだ。
これには槌屋船長もびっくり。
「まず山中湖で空バリを使う人自体がほとんどいませんから。ましてや12本バリ仕掛けは誰も使いません(笑)。ドーム船は電動リールに短い穂先で釣るので5~6本仕掛けが大半。魚探を持ち込む人はかなり増えましたけど、ライブスコープを持ち込んだ人も初めて(笑)」
この日はシーズン初期の平日とあってお客さんも少ないことから、船長の許可を得て、本来ボート釣り用であるライブスコープのモニターや専用バッテリーなどを積み込んで、12本バリのヨッシーパニックを試したところ、なんとこれが連掛けに次ぐ連掛け。
今年は10月になっても水温が22℃もあり、ワカサギが表層付近から底までまんべんなく浮いている状態だったことも影響しているだろう。というのも空バリは浅い水深ほど効果があり、それは太陽光が届くためと言われる。芦ノ湖でもワカサギの群れが20mより深くに落ちると食いも落ちることから、今後、山中湖でも水温が下がるにつれてワカサギも底中心の釣りになるはずで、基本的にはエサ付けは必要であり、そうなると5~6本バリ仕掛けに落ち着くのは間違いない。
ただし、ワカサギの群れが底に固まらずまだ中層に浮いている状態なら、試してみるのもありかもしれない。
6 本バリ+下バリで5尾掛けを達成したのは相模屋でワカサギコーナーを担当する齋藤かおりさん。3尾掛けの吉田副店長は何かを企んでいる、もとい、閃いているようす
このワカサギが中層に浮いた状態で非常に効果的だったのが空バリ仕掛けで、吉田さんは『ヨッシーパニック』を駆使して10点掛けまで達成! 真ん中あたりのハリに1本だけアカムシを刺しておくと1尾の掛かりが早く、あとは連鎖的に掛かっていた
船長も常連さんも吉田さんのライブスコープに釘付け。「通常の魚探と違って真下の反応だけじゃなくて沖から来るワカサギの動きが予測できるのがすごいね」と興味津々だった
齋藤さんの魚探の反応を見ても分かるとおり、ワカサギは水深12mのタナ3~6mに浮いていることが多かった。ハイシーズンの山中湖は逆に基本的に底が中心になる
相模屋オリジナルワカサギ仕掛け一挙公開
時短ワカサギ ピンピン時短かおりん6本魅惑Ver
「ネーミングですが、ビンビンは夜光留付き、ピンピンは夜光留が付いていません。留がないので動きもピンピンとなります。幹イトも枝スもナイロンを使用しているのでソフトでスローな動きになり、活性が低い時でも魚に違和感を与えにくくなっています」
時短ワカサギ ピンピン時短かおりん6本
「62㎝の全長は魚安さんのドーム船にマッチし、女性やお子さんでも使いやすい短めの設定です。枝スが2.5㎝で短めなのでアタリ即アワセで掛けられます。山中湖のワカサギは底べったりになるので、オモリから一番下のハリスまでを4㎝と短くしています」
時短ワカサギ ビンビン時短夜光かおりん6本
「これは、『ピンピン時短かおりん6 本』に夜光留が付いたものです。曇天などで薄暗くなった時に青白く光るのが特徴です。あと夜光留があることでハリが持ちやすくなり、エサ替えがしやすいというところも特徴です」
時短ワカサギ 夜光魅惑のふんわり店長
「こちらは当店店長の平賀が監修したナイロン仕掛け。基本的に枝スが長く、よりふんわりした誘いができ、張るのではなく漂わせる感じで魚に違和感なく食わせる感じ。これは店長の好みですね(笑)」
時短ワカサギ 夜光逆段々ふんわり店長
「一番下の枝スが4.5㎝で上に行くにつれてどんどん短くなっています。普通は上から下に行くにつれて枝スが長くなっていくけどその逆だから『逆段々』。上3 本にだけ夜光留が付いています。フロロラインを使っています」
渋りワカサギかおりん5本 狐
「これは時短シリーズとは違って渋りバリという狐型のハリを使っています。今日みたいにワカサギのサイズが小さいときや食い気がないときに有効な小バリを使っているのが特徴です。枝スも2.7㎝とほんのちょっと長めになっています」
渋りワカサギかおりん夜光6本 袖
「同じく小バリ仕様でこちらもフロロカーボンを採用しています。今日のように水中が暗いときは夜光留付のほうがアピールとなり、ワカサギがぽろぽろと落ちてしまうときは袖バリのほうがバレが少なくなります」
時短ワカサギライト ピンピンライトかおりん5本
「時短バリは、狐と袖のいいとこ取りで、吸い込みやすくて吐き出しにくい。時短バリはちょっと太軸で刺さりもいいんですけど、それを細軸にしたものが時短ライト。食いが渋かったり小さかったりして魚がぽろぽろ落ちちゃうときに時短ライトを使います」
時短ワカサギ ブラウンかおりん6本
「こちらは時短バリにフッ素をコーティングしていないのでちょっと茶色がかった色をしています。津久井湖に行く人の間で『茶色のハリは食いがいい』という意見があり、一度廃版になったんですけど復刻して作りました。全長はちょっと長めの82㎝です」
夜光逆段々のんびり店長6本
「これも下から4.5㎝、3.5㎝、3.5㎝、3㎝…といった感じで逆段々になっています。こちらは6 本すべてに夜光留が付いています。基本的にロングハリスは食いが渋い時に有効で、かつ夜光が効果的なときに活用してください」
ヨッシーボンバー
「こちらは吉田副店長の考案仕掛けです。銀バリ6 本は緑と赤のフラッシャー付きで空バリでも釣れますしエサを付けても使えます。枝スは2㎝。全長は79㎝なのでボートからルアーロッドでも扱いやすいし、電動リールにも使えるようになっています」
ヨッシーパニック
「新作のヨッシーパニックは長ザオにも対応の全長120㎝、12 本バリでフラッシャー付き。夜光留をなくし金バリがよく光るようにしています。枝スはさらに短い1.5㎝。津久井湖、芦ノ湖の空バリのイメージでしたが、山中湖のドーム船で本日大活躍しています(笑)」
時短ワカサギかおりんスパルタ
「こちらは初心者の方でも扱いやすい3 本バリ仕掛けで、お得な2セット入りです。慣れたら2 連結にして6 本バリに挑戦してもいいです。スパルタというのはビギナーでもこの仕掛けで頑張りましょう!という願いが込められています(笑)」
Mixビンビンかおりん仕掛け
「ピンピンかおりん、ビンビンかおりん仕掛けと同じような感じで使えますが、ピンクとブルーの夜光留をミックスに使っているのが特徴。これも枝スは短めの2.5㎝なので誘いの動きが結構速いです」
時短ワカサギかおりんナイン
「これは、河口湖や諏訪湖など連掛けができる湖でぜひ使ってほしい9本バリ仕掛けです。全長86㎝と長いので慣れないと扱いが難しいし、5~7本のほうが手返しもいいんですが、ハリ数が多くして連掛けしたい人にはぴったりです」
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。