ドリームフィッシュと呼べるメーターシーバスを2本も釣っている藤田さん。今年は9月初旬に釣り、その前の1尾目は秋だった。この秋、夢を叶えたい人にサクセスストーリーをお届けしよう
メーターシーバスに届く
写真と文◎松本賢治
ベイトフィッシュはどう逃げるのか
シーバスアングラーにとって憧れのサイズは、やはりランカーと呼ばれる80cmオーバーの大型個体。それを目指してポイントへ通ってスキルを上げる。そして、次のステップである90cmオーバーを目指す。しかし、そのサイズに出会えるチャンスもそう多くない。さらに、その上のメータークラスともなると人生で1度出会えるかの低確率といわれるほど難易度は高い。そんなメーターオーバーを二度もキャッチしているのが山口県錦川水系をホームにする藤田知洋さんだ。
「シーバスの釣りを真剣に始めて10年くらいですけど、メーターはいろんな偶然が重なって釣れただけ。ラッキーだっただけですって」
そう謙遜するが、仕事帰りにポイントを回ってベイトやシーバスを確認するマメな作業を行なった結果なのは言うまでもない。年ごとシーズンごとにベイトの種類やポジションは変化する。それに伴ってシーバスのサイズ、数、付き場も変化する。
「ほんとベイトの動きは日替わりです。やっと入ってきたと思って期待したら、抜けたあとなんてしょっちゅうです」
ベイトが移動すればシーバスもポジションを替える。この変化に対応するためにできる限りフィールドへ立つようにしている。変化に対応するという意味は、たとえば、Aに入っていたコノシロが消えればBに移動しているかもと仮定してBを探ってみたり、明暗ではなく地形を意識するなど、常にプランB、プランCを組み立てるようにしている。つまり、常に数ヵ所の状況を観察して比べてこそ釣果を得る確率を上げることができる。
「釣れても釣れなくてもポイントを観察し続けていると『メーターが入ってきたな』って感じることがある」
藤田さんは夜、橋の上から川を覗き込んでベイトの動きやシーバスの有無を確認する。見てテンションを上げるのが目的ではなく、見たいのはベイトの動きだ。
「シーバスがどこに定位して、どのベイトをどう捕食しているのかを見たい。水面でボイルしているのか、水中で食っているのか。それと、追い回して食っているのか食い上げているのか。明暗ならシェードのどこなのか。その時の食い方を見たいんです」
藤田さんが重要視しているのが、シーバスのその時のベイトの捕食の仕方。水面に派手に出て捕食しているならシーバスは水面を意識していることになるためトップで対応する。あるいは、一枚下の水中でベイトが慌てて逃げ惑っているのなら、ミノーを使ってそのレンジをそのアクションで通してやる。このように、その時に食われているベイトの状態をルアーで模すやり方でメーターを含む大型シーバスをキャッチしている。
タックルと並べるとそのデカさが尋常ではないとわかるだろう
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
本命は満潮からの下げ始め
「ボイルしていたり流れてくるベイトを待っているような高活性なシーバスは結構浮いています。見た感じ水面下30cmくらいかな。ルアーを泳がせたら当たります。橋の上から見えるのがそういう個体で、上流から明暗の暗部に入ろうとするベイトを待っているシーバスです」
暗部でより黒々としたシルエットがシーバスだ。そんなシーンを見た方も多いはず。藤田さんはこういった個体の動きを観察している。今回の取材の直前に釣った、自身2尾目のメーター超えである109cmは、暗部の1枚下のレンジ、つまり見えない水中だが、ベイトを捕食して反転した魚体が見えたという。
「水中にギラっと見えたのと水面がモワッとなったのが見えただけで魚自体は見えませんでした。その時、10cm強のイナッコが逃げるのも見えました」
シーバスがベイトを捕食している、つまり活性を上げているのを確認し、これはチャンスだと瞬時に思った。
目視できないことから、ちょっとレンジを入れたほうがいいと判断。ベイトはイナッコで、シーバスに襲われフラフラっとした感じに見えた。それにマッチさせられそうなルアーとしてショアラインシャイナーZバーティスR125Fをチョイス。ロッドを立て潜りすぎないようにその見えたレンジをトレースした。
「デカいのって速い動きのルアーには反応が悪い。1投目のミディアムなスピードには無反応だったんで、2投目はかなりスローに巻いた。それに食ってきました。明部から暗部へ入りそうなぎりぎりの明部側に下から出てきて食ってきた。やっぱりレンジは1枚下でした」
人生初のメーター超えもベイトを捕食しているシーンを目撃して、それに合わせるようにアプローチして食わせたという。レンジとベイトの泳がせ方を合わせていく藤田さんのスタイル。これは、メーターに限った話ではなく常に行なっている食わせメソッド。だから観察することを重視している。
「2尾目のメーターは夏のイナッコパターンでした。僕のイメージなんですが、錦川水系は決してベイトが多い河川ではなく、デイゲームが成立しにくい河川だと思っています。夜になると明暗ができて、暗部にシーバスが足止めする。だから、ベイトは暗部に入れずに明部に溜まる。メータークラスにもなると老成魚なんで、より楽にエサを食える明暗を利用する」
事実、藤田さんが釣った2尾のメーターに共通するポイントは若いシーバスが捕食しそうな1級の筋(ヨレ)から外れた2級の筋だという。ステイしやすい流れの弱い筋が形成する2級のヨレには、1級のヨレで追われ逃げてきたベイトが入ってくるというイメージ。おこぼれを捕食するかのように楽に捕食しているのではと藤田さんは推測する。そして、そのタイミングは満潮からの下げに訪れる。
「2尾ともそのタイミングでした。あくまでも地元での話ですけど、シーバスが釣れるタイミングは干潮までずっとあるけど、大型となると下げ始めの実績が高いですね」
ここまで話を聞いて、ある程度シーバスをされている方なら疑問を持つかもしれない。強い大型は1級のポイントにいて2級には弱い個体が入るのではと。藤田さんは橋の上から見た、ベイトを捕食してギラっと反転したのは2級のヨレでの出来事だった。そこをウエーディングしてねらったのだ。
橋の上から明暗部をじっくりと観察するのはいつものルーティン
ADVERTISEMENT
ADVERTISEMENT
他とは行動が違うメーターオーバー
錦川は門前川と今津川へと分かれ瀬戸内海へと注ぐ。錦川、そして門前川、今津川のどれがいいというのはなく、どこもベイトが入るタイミングで盛り上がる。たとえば、門前でサイズがよければ、今津では数が出るなど少しのズレもあるようだ。そして、どちらでもメーターが出ている。両者に共通しているのはメーターが出るタイミングはコノシロが絡むということだ。
「海からコノシロが入ってくるときにシーバスもその群れについて入ってくる。メーターも一緒に入ってくるんだと思うんですが、行動は単体。80〜90cmクラスは60〜70cmと一緒にいるんですが、90cmオーバーやメーターは単体で浮いている。シーバスって常夜灯の真下の暗部に一番多く着くんですが、メーターは少し離れた、より暗いところに浮いてます」
2級のヨレや、より暗い暗部など、メーターは80cmクラスとは違った行動をとるようだ。より警戒心が強いのか、より楽に捕食しようとするポジショニングなのか。これら記者が過去にメーターを釣ってきた数名のアングラーから聞いた意見と一致する。
今回、藤田さんが109cmを釣ったタイミングは9月という時期的にもまだ秋というには早くイナッコパターンでの釣果。総合的にこれまで実際にメーターが釣りあげられているのは圧倒的に10月以降、コノシロが入ってから。そして、ナイトゲームに偏っているというデータがある。
今回、改めて取材をしたのは9月下旬。取材2日前の下見では、コノシロやサッパが入ってきてボイルが何発もあったという。だが、当日は単発ボイルは見られたが、どうやらベイトが抜けた感があり静けさが漂っていた。
1級も2級のヨレもすべて通す。満潮からの下げという期待のタイミングに反応したのは元気な小型ばかりだったが、状況はベイトによって日替わりだから、足しげく通って観察を続ければまたチャンスは近づいてくる。ましてや今からランカー最盛期へ突入する。藤田さんにとって眠れない夜が続きそうだ。
2年前に錦川水系で釣った自身初のメータージャスト。秋のコノシロパターンの荒食い的な高活性時。ショアラインシャイナーZ バーティスR98F のレッドヘッドで
※このページは『つり人 2024年12月号』を再編集したものです。