北海道の漁業や海産のグルメと聞かれた時、本州の人はイカをイメージすることが多いだろう。
パラソルねらいのメッカ!
レポート◎小林亮
この記事は『つり人』2017年4月号に掲載したものを再編集しています。
高級なヤリイカを陸っぱりで
北海道の漁業や海産のグルメと聞かれた時、本州の人はイカをイメージすることが多いだろう。その対象となっているのは大抵がマイカ(スルメイカ)で、函館の朝市などでイカソーメンにして食べられているのもこれ。漁期や釣りの好期は初夏~晩秋。暖かい時期が旬だ。それとは逆に寒い時期に旬を迎えるのがヤリイカ。道内での漁期は主に晩秋~初夏なので、道南では「冬イカ」とも呼ばれる。マイカとヤリイカ、それぞれ持ち味があって美味しいが、漁獲量が圧倒的に多いマイカより、流通量が少ないヤリイカはやや高級な食材という感じ。
ヤリイカ漁が盛んなのは津軽海峡や日本海で、北海道最南端の町、松前町は特に水揚げ量が多い。釣りのポイントも豊富で、なかでも松前港は魚影、サイズともに実績充分。胴長40㎝クラスのパラソルサイズがねらえるフィールドとして昔から人気が高い。シーズンは早い年は年末から釣れることもあるが、おおむね1~3月。釣り方はエサ巻きテーラやブランコ仕掛けのウキ釣り、またはエギングが一般的。
大型ヤリイカ釣りのメッカ、松前港の外防波堤。冬~早春はファンがズラリと並ぶ。イカ以外ではソイ、ホッケ、カジカなどの根魚もよく釣れる
港内で操業するイカ漁船をバックにヤリイカ釣り。こんな光景は広い道内でも松前だけだろう
2017年2月上旬、函館市「さかい釣具店」スタッフの木下恒さんに状況をうかがうと「今年は1月が不調でしたが、ここにきてやっと釣れ始めました」とのこと。2月5日、木下さんの釣行に同行させていただいた。
ヤマセに苦戦
午後5時過ぎ、外防波堤先端付近に入る。一帯の水深は8~10mらしい。ちなみに木下さんは同町出身。幼少時から同港を遊び場に育ち、高校を卒業するまで毎日のようにサオをだしていたので、防波堤の隅々まで知っている。タックルはウキ釣りとエギングの両方を用意。「風の強さ、根の多さ、イカの活性とタナなどで使い分けています」。まずはウキ釣りで始める。仕掛けはテーラ。エサは塩で締めた鳥のムネ肉。ウキ下は4ヒロ。軽く投げて、潮に乗せて流す感じで探る。「テーラもエギングと同じように、時々誘いを入れることが大切です」。幸先よく反応があり、すぐに1パイ掛かった。次はエギングで挑む。すると、こちらもほどなくしてヒット。どちらも胴長30㎝未満だが、上々の滑り出しだ。
テーラ仕掛けのウキ釣りが人気。なおウキの色を赤、緑、白と複数色携帯しておくと、釣り場が混雑気味のときに自分のウキを見分けやすい
テーラに巻くエサは塩で締めた鳥のムネ肉。ササミが定番だが、より安いムネ肉でもOK
再びウキ釣りタックルに持ち替え、エサ箱を開ける木下さん。新しいエサに変えるのかと思ったら、置いてある餌木にムネ肉についていた鳥皮を巻き始める。「こうして皮の油分を染み込ませておくと、よく釣れる気がします」。イカは獲物の温度を察知して捕捉するのでは? という発想から、ヤマリアがウオームジャケット搭載の餌木を開発したのは広く知られているが、木下さんはそれ以前からカイロで餌木を温めて使っていたアイデアマンだけに信憑性は高そうだ。
この後、2ハイ追加するが、それくらいから風が強く吹き始める。「東風、ヤマセですね。道南ではヤマセが吹くと鍋の魚も逃げ出すといわれます。それほど歓迎されない風」と苦笑い。この言葉どおり、途端に反応がなくなった……。
ヤマセ対策として、エギングのラインはイトフケが出やすいPEではなく、フロロカーボン1号を巻いているが、それでも横風を受けて釣りにならない。ウキ釣りで続行し、なんとか2ハイ釣り、計6ハイで終了とした。「最高は一晩で70パイ程度。それ以上は持て余してしまうので釣りません(笑)」という話を聞く。今日は不調の日でパラソルクラスも出なかったが、今期は開幕が遅かったのでこれから期待できそうだ。
3月に爆発のXデーが訪れる可能性は充分ある。というのも基本的にこの時期の小さい個体はメスだからだ。「松前港周辺はヤリイカの産卵場になっていて、先にメスが接岸し、後からオスが来るのが例年の流れです」と木下さん。つまりはもう少しすれば魚影は倍になる。
北海道最南端の町は観光も楽しい。松前城は市街地に近く、気軽に行けるのでおすすめ。桜の時期が有名だが、雪景色も情緒がある
JR 木古内駅。北海道新幹線を利用の際は、ここからレンタカーなどで松前へ。写真は北口だが、南口は道の駅・みそぎの郷きこないのほか、宿泊施設もある
イチオシギア
フジワラ イカ活チャ器 漁師さんも使っているイカ締め道具。プラスティック製なので軽く、錆びないのがグッド。活締め処理の有無で、半日後のイカの身の旨味成分量は倍近く異なるというデータもあるので、美味しく食べるなら釣ってすぐ締めるのは必須。使い方は写真のとおり、イカの頭の上から胴体内部に沿って差し込むだけ。
フジワラ イカ活チャ器 漁師さんも使っているイカ締め道具。プラスティック製なので軽く、錆びないのがグッド。活締め処理の有無で、半日後のイカの身の旨味成分量は倍近く異なるというデータもあるので、美味しく食べるなら釣ってすぐ締めるのは必須。使い方は写真のとおり、イカの頭の上から胴体内部に沿って差し込むだけ。
さかい釣具店
さかい釣具店は津軽海峡の海釣り全般に明るい。スタッフの木下さんはエギングのキャリアも長いので、松前港のパラソル攻略に際して的確なアドバイスをもらえるだろう
住所=北海道函館市亀田本町50-22
営業時間=9~20時
問合先=℡0138・42・8044
レポート◎小林亮
昭和55年生まれ。北海道札幌市在住。好きな釣りはルアーフィッシング全般、アユの友釣り、氷上ワカサギ釣りなど。姉妹紙「ノースアングラーズ」で道内の釣り場紹介記事を担当。釣って食べて浸かって北海道の生活をどっぷり満喫中
2018/2/26