7ft6inのロングロッド。これを今の牛久沼で使ってみたらどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。製品を使ったインプレッションをお届けします。
現代のフリッピンスティックか? はたまたオカッパリバーサタイルか?
siteB担当アライ=写真と文
みなさんこんにちは。最近、牛久沼たまやボートの常連さんに「アライくんはいまでも昔ながらのフリッピングで釣ってくるよね~」って言われて嬉しくなっているsiteB担当アライです。
牛久沼は、日本にフリッピングを最初に紹介したパイオニア・林圭一さんがその技術を磨いたフリッピング伝来の地であり、私にとっては学生時代にレンタルボートデビューしてから現在に至るまで通いこんでいるホームフィールドです。
その沼でローカルの人たちにフリッパーとして認めてもらえたみたいで嬉しくなっちゃいました。ちなみにたまやボートで年に9回開催されるオープントーナメントでは2回優勝したことがあります。(褒めて(´,,・ω・,,`)。
そんな私がどうしても使ってみたいと思っていたロッドがありました。
ケイテックからこの春発売された76シリーズと呼ばれるカスタムロッド。名前が表わすとおり、伝統的なフリッピンスティックと同じ7ft6inのレングスで統一されたシリーズのロッドです。
林さんの直弟子でありケイテック社長を務める馬路久史さんが送り出した、7ft6inのロングロッド。これを今の牛久沼で使ってみたらどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。製品を使ったインプレッションをお届けします。
ケイテック76シリーズの概要・スペック
インプレに入る前にまずはケイテックカスタムロッド・76シリーズについておさらいしておきます。
ブランク特性やパーツなどの詳細なスペックはケイテックのウェブサイトで確認できるので、ここでは特徴的な部分を箇条書きで紹介します。
・レングスは全機種7ft6inで統一
・アクションも全機種ファストで統一
・パワーはML、M、MH、H、Ex-Hのラインナップ
・それぞれのパワーにノーマルガイド仕様とスパイラルガイド仕様がある(全10機種展開)
・チタンフレームSiCリングのマイクロガイドセッティング。トップガイドのみフランジタイプのトルザイトリング
・リールシートはFujiのPTSMシート(滑り止めコーティング仕様)
今回使ったのはMLパワーの「KTC764」とMパワーの「KTC765」です。
バーサタイルオカッパリロッドとしてのケイテック76シリーズ
さて、ここまで牛久沼!フリッピング!と連呼してきましたが、ケイテックのウェブサイトではとくにフリッピング用途について記述されていません。
牛久沼ロコとしては、7ft6inという長さにどうしても特別な意味(フリッピング用)を見出してしまいますが、まずはそれは脇に置いておいて、オカッパリで使ってみた感想を書きます。
結論から言うと、オカッパリでもかなり使い勝手がいいです。ケイテックさんが「オカッパリにGOOD!」っていうPRをなぜ積極的にしていないのか疑問に感じたレベル。
オカッパリでスピナーベイトを使ってみました
最初に手にしたときに印象的だったのが軽さです。今回使ったのがMパワーだったということもありますが、私が普段使っている7ftクラスのロッドと比べても全く遜色ないほど軽快に扱えました。
オカッパリにおけるロングロッドの有効性は、優れた遠投性能、ラインメンディングのしやすさ、足場の高さへの対応力など、いまさらここで解説するまでもなく多くの人が感じていることだと思います。
オカッパリでよくあるちょっと高い足場+水面にせり出した雑草のストレッチ。岸ギリギリにキャスト→ラインが草に乗らないようメンディング→ティップを水面に近づけてリトリーブのやりやすさはロングロッドならでは
ただし、ロッドを長くすればするほど当然重さも増してアングラーへの負担になります。7ft6inを7ft感覚で使えるケイテック76シリーズの軽さは大きなアドバンテージでしょう。
無塗装のブランクやガイドの小口径化など設計上の工夫で充分なパワーを維持したまま軽量化に成功しているとのことで、パワーを犠牲にしている感じはまったくありませんでした。ただし、軽さを追求した結果、重量増になるグリップジョイントやテレスコピック機構は採用されていません。つまり少しも短くならないので、車やボートの広さと相談してから購入するのがオススメです。
ちなみに、上記のオカッパリ写真を撮っていたポイントで50cmオーバーのキャットがヒットしたのですが、これを1mほど高い足場に抜き上げることができました(写真撮るの忘れちゃいましたが……汗)。
ルアーへの適性についても、オカッパリロッドに求められるバーサタイル性を備えていると感じました。「MLやMはスピナーベイトやクランクベイトにもいいですよ」と馬路さん。そこでスピナーベイトを使ってみたのですが、マイルドな味付けのファストテーパーのおかげだと思いますが、これだけの長さがあってもティップのしなりを利用して精度の高いキャストを決めやすかったです。
それから、250mmに設定された長すぎないリアグリップもオカッパリでの取り回しのよさに寄与している感じがしました。
沼のフリッピングロッドとしてのケイテック76シリーズ
さて、ここからはフリッピングロッドとしてどうかなという視点でのインプレになります。
「僕のために作られたロッドかな?」
これが1日使ってみての感想です。
私が牛久沼でフリッピングをするためのロッドを選ぶときにこだわりたいことがあるのですが、それがオカッパリで挙げたメリット(軽さ、マイルドなファストテーパー、長すぎないリアグリップ)とズバリ同じなのです。
まずは軽さについて。身長182㎝、体重60㎏のヒョロガリ虚弱体質の私にとって軽さは最重要事項であります。
ところで、私は着水後の最初のフォール(林圭一さんは「イニシャルフォール」と呼んでいらっしゃいました)こそがワームの釣りの最大にして最高の見せ場だと思っています。私が沼でフリッピングばかりしている理由は、イニシャルフォールを最も効率よく数多く作り出せるメソッドだからです。
この腕の細さを見て
何が言いたいかというと、虚弱体質でも1日中ロッドを振り続けられる軽さがないとフリッピングのメリットを生かしきれないということです。
ちなみに、2001年のフリッピング特集のBasserでも、林圭一さんがタックルに求める要素として軽さを挙げていらっしゃいました。
また、フリッピングのフォームにはリアグリップをヒジの内側に入れるスタイルと外側に出すスタイルがあるかと思いますが、私は疲れにくい前者です。そうなると内袖に干渉しない長すぎないリアグリップが絶対必要です。76シリーズのリアグリップ長は250㎜。私にとってちょうどよい長さでした。
ちなみに、リールシートがPTSタイプだったこともグッときたポイント。ヒジの内側スタイルはリールをパーミングした手の中指でルアーのウエイトを受け止めます。このリールシートは中指にあたる部分のアールが緩やかなため、ずっとフリップしていても痛くなりにくいです
リアグリップについているフックキーパーはハリ先を出さなくてもリグを固定できる優れもの
今回はMパワーの「KTC765」で3.5inクラスのワームの1/8ozテキサスリグをフリップしてみました。牛久沼でフリップが生きてくるのは、アシ壁やパラガマなどそれほどヘビーでないカバーなので、M~MHクラスで充分釣りになるのではないかと思います。
ガマとアシの間など、さらに密なスポットを撃つようなときはH~Ex-Hのパワーと長さが活躍してくれそうです。
この日、「KTC764」と「KTC765」でキャストしたルアーです。フリップ以外にクランクもスピナベも全部いけちゃう
次にマイルドなファストテーパーについて。
各社から発売されているソリッドティップを搭載した撃ち物ロッドに代表されるように、カバーロッドでも柔軟なティップが有利になってくることが多いようです。近頃はどこのフィールドもプレッシャーがすごいですから、食い込みがよかったり、カバーに引っ掛かり感を出して誘えたりするほうがバイトを得やすいケースが多いのだと思います。
ただ、沼系フィールドに限っては柔軟すぎるティップは少々ありがた迷惑だったりします。
たとえば、テキサスリグでパラガマを撃っているときに出くわすこんな状況。
横倒しになった茎を乗り越えたい
ピックアップのときガマにスタックしてしまうと、まわりのガマまで揺らしてしまいます。次のキャスト、釣れなくなっちゃいますよね。
「KTC765」のティップは、フリップのときにルアーのウエイトを乗せやすい柔軟さを持ちながら、ピックアップでは意図しないスタックを極力減らしてくれる絶妙さ!
好き。
フリップはラインの同じ部分がガイドに繰り返し擦れることになる上、ほかのキャストより鋭角でトップガイドに接するため、ラインにとってストレスの大きい釣り。それを軽減するためティップガイドはトルザイトリングがフレームの前まで覆っているフランジタイプが採用されています
さて、フリッピング大好きヒョロガリオタクと化した私アライ、今回の釣行でもフリップを堪能しようとアシ壁をウキウキで撃ったのですがバイトはなし……あれ汗。
リグがあってないのか、ポジションを外しているのか……。
そこで、ネコリグをロングシェイクしてみたところ無事にバイトを得ることができました。
動画に撮れたのでアップしちゃう(´,,・ω・,,`)。
「ガガンボより弱っちいアワセ」とフッキングパワーの虚弱さに定評のある私ですが、「KTC765」の長さとパワーでバスが吹っ飛んでくるアワセができました。フッキングストロークの長さによるメリットを体感。
沼のフレンズだけでなく、シャロー撃ちが好きな皆さんにオススメのロッドです!
表紙をクリックすると試し読みができます
今号の特集は「濁り」。バスの活性を著しく上げ、時に下げることもあるこの現象を掘り下げます。
過去に濁りに見舞われた取材でのケーススタディーに始まり、水温や流入量による濁りの立体的な捉え方、良い濁りと悪い濁りの違い、濁り始めから濁りが抜けるタイミングまでの釣りの切り替え方、ルアーローテーションの具体例、科学的見地から考える濁りへの対処など、注目トピックが満載です。
モデルとなるフィールドは八郎潟、桧原湖、霞ヶ浦、利根川、亀山湖、津久井湖、琵琶湖、七色貯水池、そしてアメリカなど多岐にわたります。
また、JBTOP50レポートでは最年長優勝記録を「59」に更新した沢村幸弘さんの強さの理由を詳報。試合後の追加取材では、フィジカルを維持するための日々のトレーニングや、メンタル強化に繋がるゴルフへの取り組み、ボートデバイス(魚探)の選定理由などを明かしてくれています。
2019/7/30