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編集部2019年9月26日

20歳の大学生がアメリカでバストーナメントに出て入賞するまで

Basser バス釣り 米国バストーナメント

 伊藤巧選手のエリート昇格や木村建太選手の優勝争いなど、数々のドラマを生んだB.A.S.S.セントラルオープン最終戦。この試合にコアングラーとして出場し、決勝進出を決めた20歳の大学生がいたことをご存知でしょうか? その名は渡邊和哉選手。初のアメリカの試合で、初日に組んだのは青木大介選手、最終日のペアはウイナーでした。波乱に満ちたオープン参戦記をお届けします

伊藤巧と渡米 初日ペアは青木大介だった

渡邊和哉=写真と文

 伊藤巧選手のエリート昇格や木村建太選手の優勝争いなど、数々のドラマを生んだB.A.S.S.セントラルオープン最終戦。この試合にコアングラーとして出場し、決勝進出を決めた20歳の大学生がいたことをご存知でしょうか? その名は渡邊和哉選手。初のアメリカの試合で、初日に組んだのは青木大介選手、最終日のペアはウイナーでした。波乱に満ちたオープン参戦記をお届けします。

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自己紹介
 ノリーズプロスタッフの渡邊和哉(わたなべかずや)です。現在は20歳で、大学に通いながら遠賀川を中心に釣りをしています。バス歴は8年目で、人生初バスルアーはRTO1.5(たしか)のシルバーギル系でした。好きなルアーはメガバスのドッグXです。


コアングラーとして出場することになったキッカケ


 まずはバスマスターのコアングラーとして出ることになったきっかけからお話しさせてください。今年から多くの日本人選手がオープンに挑戦するということを2~3年ほど前から耳にするようになり、アメリカのバスフィッシングに興味を持ちました。もともとアメリカという国自体はすごく好きで、かっこいい車や、映画などでの人柄の雰囲気に憧れていました。

 いざアメリカでコアングラーとして出るにあたって、まずしなければいけないのがパスポートとESTAの取得です。僕は5年パスポートの期限が切れていたので10年パスポートを取り直しました。次にバスマスターの登録、釣りをする州のライセンスの取得、W-8BENと言う英語の書類。そして飛行機とホテルの予約です。

 バスマスターの登録、ライセンスの取得、W-8BENの提出はすべて英語で書かれています。僕は巧さんに教えて貰いながらなんとかできましたが、それでも難しかったのを覚えています。これを1人で全てこなすのは非常に大変なことだなと思いました。

 さらに僕は運転もしたかったので、国際免許も取得しました。国際免許は免許センターに行けば簡単に取得することができます。しかし、僕は日本の免許証も持っていかなければいけないことを知らず、国際免許をとったにも関わらず運転をすることができませんでした。

プロの姿勢を間近で見たプラクティス


 渡米し、巧さんのボートに同船させてもらい、長い間プラクティスを一緒にさせてもらいました。今回はオクラホマ州にあるグランドレイクというフィールドで、初めて浮いて最初に感じたことは、とにかく広いということです。そんな広いフィールドで1人のアングラーがどのようにして魚を探していくのかという面で非常に勉強になりました。

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 しかし、グランドレイクより広いフィールドはまだまだ多くあると聞き、驚きました。そして多くのボートドックがあったり、大きな木が丸ごと水中に入っていたりと、日本では見たことのない景色が広がっていました。

 プラクティス中は、誰もが知っている華やかなバスマスターの裏側を垣間見ることになりました。試合当日を見据え、今いる魚がどこに移動するのか、ストームが来たときどうなるか。パターンが機能しなくなったときのバックアップはどうするのかなど、一日の半分近くを魚探掛けに費やしたり、トラブルに対処したり(今回はハミンバード360が映らなくなったのと、エンジンのペラを水中の鉄パイプのようなものにヒットしたこと)と、釣り以外の部分での苦労も多くあることを知りました。そんなハードで地道なプラクティスのなか、ほとんど休憩をとらず黙々と練習を続けている巧さんを見て、これがプロか…と思いました。

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 そして、アメリカで1週間ほどたったころ、最初は「まあ、アメリカだから」と楽しめていた言葉の壁や食事などがだんだんストレスになってくるようになりました。僕は高校までの英語は嫌いではなかったけど、そこまでいい成績ではなかったのでコミュニケーションを取るのに苦労しました。また、食事ではほとんど毎日ファーストフードだったので、胃が負ける日もありました。

 さらに、日本の製品が買えないため、物不足にもなりました。フック、シンカー、ワーム。フックとシンカーは多めに持ってきたつもりでしたが、プラクティス前半ですでに底をつきはじめました。アメリカでは鉛シンカーばかりだし、フックも自分の好きな日本のメーカーのものは当然ありません。なのでプラクティス中はタングステンを温存して鉛シンカーを使いましたし、巧さんに分けてもらったりもしました。

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 そしてオフィシャルプラクティスの3日間を終えると、3日目の午後からのレジストレーションがあります。その後に僕のボーターが携帯のメールで発表されるシステムなのですが、そこに書いてあったのはまさかの青木さんでした。釣りを始めたばかりのころは青木さんに憧れていて釣りをしていたのを思い出してジーンときました。

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初日のボーターは青木大介選手


 試合当日、青木さんとは同じホテルだったので、会場まで車に乗せてもらいました。向かう途中に今日どんな釣りをするかや、プラクティスの内容などを話しました。笑顔で話してくれるシーンもありましたが、確実に試合モードに入っているのがわかりました。

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 まだ薄暗い中ライトを付けてフィールドに浮かぶ150艇ほどのバスボート。国歌斉唱後に、洋楽が流れながら順番にスタートする光景は美しく、かっこよく、憧れるものでした。

 僕は、試合中の本気の青木さんが、どんなことを考えながら今釣りをしているのか?など考えていました。動作はもちろん、操船や思考まで、吸収できるものはすべて吸収したいという思いで乗っていました。

 例えば、青木さんが4ポンドクラスを釣ったときにはこんなやり取りをしました。

僕「毎回いいサイズが釣れるのって岬の先端のカバーですね」
青木さん「そう。これプラからのパターンなんだよ。ただ、日に日に減水してるのが気がかりで、他の釣り見つけないと結構きついな。」

 巧さんと青木さん。日本を代表するアングラー2人の釣りを見て、比べることができたのはとても贅沢なことでした。

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 僕も岬の先端でキャッチした4ポンドクラスを含む3尾で8ポンドちょいをウエイイン。初日は6位でスタートでした。使ったワームはストラクチャーバグとチガークロー4インチのリーダーレスダウンショット。アメリカって、カバーがハードなうえ、水も色が付いているので、ワーム自体が硬く、水を押すものが根がかりも少なく、バスにもアピールできるため結果的によく釣れます。
 
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 日本のようにスレたバスに対してナチュラルな波動で艶めかしくシェイク…というような誘い方は基本的にしないので、いかにトラブルなくバスに気付かせるか、に重点を置いたルアーセレクトをし、フッキング率向上のためいつもよりワンランク大きなフックを使いました。

2日目のボーターは19歳


 2日目のボーターは、初日が終わったタイミングで発表される仕組みなのですが、その通知に相手の電話番号が書いてあり、コアングラーはその番号に電話、もしくはメールしなければなりません。僕はジェスチャーなどで最低限伝えることはできても、相手の顔が見えず会話のみで話すことはできないので、「私は英語を話せません。メールでもいいですか?」と英語でメールをし、朝の集合時間を打ち合わせしました。

 2日目の相手は19歳のコルビー・ミラー選手でした。僕より若い年齢で、すでにバスボートと車を持ってオープンに出ている環境がとても羨ましかったです。試合中でも結構話してくれたので、いつからオープンに出てるの?と聞くと、去年からと答えが返ってきたので驚きました。

 試合のプランとしては、流れの当たる張り出しの沖をメインに、その周辺の流れの巻くブラッシュパイルなどを目で見て撃っていきました。ボーターは沖をやるときは僕に撃たせないように、スポットに対して正面にボートポジションをとり、自分だけがいいコースを取れるようにしていましたが、ブラッシュパイルに対してチャターを通していたボーターの後ろで、エスケープツインのビフテキと、コンツアージグ+エスケープツインでなんとか3尾釣れて、この日は5ポンドちょいの成績でした。

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 予選を6位で通過でき、トップ12以内に残り決勝に進むことができました。

優勝選手が最終日のパートナー


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 3日目はグランドレイク戦予選を暫定2位で通過し、結果的にこの試合を優勝することになる31歳のボブ・ダウニー選手でした。オープン参戦は今年からと言っていましたが、カバー撃ちをメインにプランを立てていて、日々減水が進むフィールドの中で魚が残るカバーを見つけていました。驚いたのは、この方、最終日はカバー用のタックル2本しかデッキに乗せていませんでした。しかも2本とも同じロッド、同じリール。キャストがすごく上手でキャストミスが全くなく、撃つべきカバーを効率よく回って行くようすはとても勉強になりました。

 決勝の競技時間が終わったあとは、車で1時間半のバスプロショップスでウェイインする流れなのですが、この選手は僕をバスプロショップスまで快く連れて行ってくれました。道中、試合中2本の同じタックルをどう使い分けていたのかずっと疑問だったので聞いてみると、1本は3/8オンスのテキサスリグ、フックはストレートフックでラインは20ポンド。もう1本は同じく3/8オンスのテキサスリグでフックはオフセットフック、ラインは16ポンドのセッティングで、ワームはどちらもスイートビーバーでカラーはグリーンパンプキンとパープルのツートンでした。ボブは僕が英語を話せないのをよく理解してくれて、簡単な英語で伝えてくれました。

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 使い分けとしては、20ポンドラインとストレートフックのタックルでは混み入ったヘビーカバーを。16ポンドラインのタックルではライトカバーや沖のブラッシュパイルなどを、それぞれ同じくらいの割合で使用していました。

 僕は、エスケープツインのテキサスリグをリグっていましたが、ボーターのキャスト精度が高すぎて後ろからは全く釣れる気がしませんでした。そこで、リグで差を付けるしかないと思い、速めのフォールで誘うボーターに対し、ファットイカのノーシンカーリグでスローに落として2尾をキャッチ。ラストは見えバスにエスケープツイン+フットボールヘッド7gをカーブフォールさせて釣りました。アメリカ人の選手は見えバスを釣る習慣がないのかわかりませんが、ちらほら見えるバスを見つけられていない印象でした。とはいえ、ストロングなパターンではないのでコアングラーならではの釣りではありますが。

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 最終日もなんとか3尾釣ることができ、ウエイトは5ポンドちょい。最終結果は1位と4ポンド以上差がついてしまいましたが、順位を1つ上げて5位フィニッシュできました。バスプロショップスでのトレーラーウェイインは多くの観客の中で非常にテンションの上がる光景でした。バスを見せると拍手が上がり、みんなが喜ぶシーンは気持ちいいと思うと同時に、最高の文化だなと思いました。余談ですが、司会者のクリスは僕の「かずや わたなべ」という名前を呼びづらいらしく、3日間ずっとカズゥーヤ ワタンビーと呼ばれていました(笑)。

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参戦費用について


 今回かかったお金ですが、40万円ほどでした。内訳は渡航費、ホテル代、食費。パスポートやライセンスなど日本でかかるお金など。アメリカ行きを実現するために、ずっと続けているバイトにプラスして、掛け持ちで2ヶ月間ほぼ毎日4時間睡眠で働いて稼ぎました。1日の労働時間は数字にすると16時間ほどです。

 この渡米では、僕の負担が少しでも軽くなるようにと、巧さんが同じ部屋に泊めてくださったり、食事やプラクティス中のガソリン代なども出していただいたりしたおかげで、費用を切り詰めることができました。巧さんと同行できていなければ飛行機すら満足に乗れていなかったと思いますし、現地にたどり着けたとしても、毎日レンタカーやバスボートのプラクティス中のレンタルなど、多くのお金がかさんでいたと思います。エリート昇格がかかっている最終戦にも関わらず、僕の面倒まで見てくれた巧さんには感謝しかありません。


 お金に関して言えば、試合で入賞できたおかげで、この中の渡航費分を稼ぐことができました。バスマスターは、コアングラーでも優勝すれば多額の賞金とバスボートがもらえる夢のある大会です。よりよい順位に入賞すれば、それだけかかったお金をペイできるのです。

次に目指すのはボーターでの出場!


 初挑戦で5位と、上出来な結果ではありますが、ボーターあってのコアングラーです。どんなに自分が行きたい場所があっても選ぶことはできません。

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 次、僕はコアングラーにはもうでません。僕がアメリカでやりたいのはボーターであり、コアングラーではないからです。正直に言うと、今回の渡米では、僕自身が本当にやるべきことは試合の結果を残すことよりも学ぶことだと考えていました。英語の書類の提出や登録、トレイルをしてプラクティスをして試合に出る。この一連の流れを自分の目で見て、なにをすればボーターとして出ることができるのかを学ぶためにコアングラーとして出場しました。

 試合の中でも、青木さんの釣り、僕より歳下のアメリカ人の釣り、優勝パターンの釣りを間近で見ることができました。自分がボーターの取りこぼしをどうやって釣るか、というのも大事ですが、何故このボーターはこの場所で釣りをしようと思ったのかなど、相手の考えていることを想像することで学べたことが多くありました。

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 巧さんからも渡米前、「その年齢で行けたことは、今の金額の何十倍もの価値になる。全てを決めるキッカケ、何が必要かが見えてくるはず。試合の結果なんてどうでもいいから、アメリカという地で戦うために必要なもの、必要なことを俺から吸い取ってください。」と言っていただきました。青木さんからも、試合後の朝、ホテルで偶然会った時に「この年でアメリカに行けたのは本当にいいことだと思う。若ければ若いほど活きてくるから。」と言ってくださいました。

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 自転車で長い時間をかけて遠賀川に通っていた高校生のころ、巧さんのロケに顔を出し、気に入っていただき、いまこうやってプロスタッフとして活動することができています。僕は今、非常に恵まれた環境です。この恵まれた環境は自分で作り上げることができるということを、僕より若い世代に少しでも伝わればいいなと思います。

 最後に、今回アメリカを経験するにあたって、巧さんを初め、ノリーズ、渡米するにあたって手伝ってくれた方々、応援してくれた全ての方に感謝します。本当にありがとうございました。



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2019/09/26

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