状況が読めず、カレントも期待できない利根川。小森選手は試合中にプラクティスを行なう心構えで、少しでも水が動きやすい本流の沖に面した杭や立ち木をラン&ガンしていきます。カレントを求めて川幅の狭い尾羽根川へ。すると河口近くのブッシュで値千金の920gにたどり着いたのでした。
オカッパリ&レンタルボートでも真似できる出場選手のメインパターン
2022年10月29~30日にかけて利根川・霞ヶ浦水系で行われたBasser Allstar Classic2022。トーナメントの釣りには、オカッパリやレンタルボートの釣りに生かせるヒントが詰まっています。今回は小森嗣彦選手の釣りを紹介します。
◎まとめ:編集部 写真とフットステップレポート:会一太郎
小森嗣彦選手のプロフィール
小森嗣彦(こもり・つぐひこ)
1974年生まれ
主な戦歴:
2012・2018年Basser Allstar Classic 優勝
2009・2010・2012・2022年 JB TOP50 ワールドチャンピオン(年間優勝)
JB TOP50 通算6勝
2008年ジャパンスーパーバスクラシック優勝
競技中のプラン立て直しで試すべき釣りとは?
小森嗣彦選手のメインルアー
■3inファットヤマセンコー(ゲーリーインターナショナル)
+プロトフック
■レッグワーム2.5in(ゲーリーインターナショナル)
+スーペリオLOフック #3(エンジン)
+ダウンショットリグ用シンカー 3/32oz
JB TOP50で4度の年間優勝、オールスターでも2度の優勝を経験している小森選手は、今まで出場してきたすべての試合とプラを「小森ノート」に記録し次の試合に活かしています。とくに利根川ではタイドグラフと河口の水門操作の情報から、エリアごとに水が動く時刻を正確に導き出して試合に臨んでいることがBasser2022年2月号「KING OF KINGS」のレポートで明らかにされました。
しかし、今回のオールスターでは、初日は閘門をくぐって霞ヶ浦方面へ。予測では2日間とも利根川にカレントがあまり発生しない見通しだったことと、強風によって利根川でのプラが思うようにできなかったことが理由です。その結果、北利根川の得意のスポットで2尾を連発したものの、ウエイトが伸ばせず2日目は利根川で勝負をかけることを決めます。
状況が読めず、カレントも期待できない利根川。小森選手は試合中にプラクティスを行なう心構えで、少しでも水が動きやすい本流の沖に面した杭や立ち木をラン&ガンしていきます。その途上でワンバイトを得られたことから、カレントを求めて川幅の狭い尾羽根川へ。すると河口近くのブッシュで値千金の920gにたどり着いたのでした。
この日の小森選手のように、事前のプランをリセットしてイチから釣りを立て直さなければならない場合、どんな釣りを試せば短い時間のなかで結果を出せるのでしょうか?
小森「まったく経験のないことをやっても結果にはつながりませんから、まずは自分の引き出しにある釣りのなかで正解に近づいていくのがいいでしょう。私の場合、自分の経験をもとに場所ではなく釣り方の思い出巡りをやってみることが多いです。そして、本流で釣れないなら思い切ってインレットの奥を釣ってみるというように、短時間でなるべく多くのシチュエーションをチェックできるようにエリアを回っていくべきです。カバーの奥か手前かというような細かい違いに固執するよりも結果につながりやすいはずです」
これはトーナメントアングラーだけでなく、むしろ釣行日数が限られるサンデーアングラーにも有用なアドバイスなのでぜひ参考にしたい。
話は変わりますが、霞ヶ浦方面を釣った初日はエリアのバッティングに悩まされたと言います。
小森「このときは釣りの正解が見えていない中でのバッティングだったので、無理に他選手と同じエリアを巡ろうとしてストレスを溜めるくらいなら別の場所で別の釣りを試そうと気持ちを切り替えて対応しました。その選手も釣れていなさそうだったし、同じ釣りをして釣れるならすでに自分も釣れているはずなので」
では他の選手も自分と同じ魚をねらっていることがわかっている状況で、エリアがバッティングしてしまったとき、小森選手ならどうする?
小森「その場合も無理に先手を取ろうとして慌てて動くのは良い策ではないですね。私なら相手をよく観察して、自分は別の動き方をします。例えば前回優勝した2018年のオールスター。このときは伊藤巧選手と完全にねらいが被っていて、下流に向けてスポットを移動しながら釣りをしていくと、行く先々で伊藤選手とバッティングしました。そこで私は思い切って釣り進む向きを変えたんです。伊藤選手は焦ったはずです。自分が正解だと思っているのと同じ釣りをしていた人が釣り方を変えたわけですから。それと同時に、伊藤選手は心理的にプランを変えられなくなるので、私は自由にその後の展開を組み立てられるようになりました。これとは別にTOP50の試合などでは、自分が釣りたいスポットに他の選手がいてどいてほしいときに、その選手が次に釣りそうなスポットを敢えて空けて釣ってみせる、というようなこともやったりしますよ。こうやって他の選手の心理面も考えて動くのが私は得意ですね」
対バスの技術が試合でも最も重要なのは言うまでもないですが、トップクラスのトーナメントシーンではこのような駆け引きも行なわれているのです。一般のアングラーの役に立つ場面はなかなかないかもしれませんが、このことを知ってもらえたらスポーツとしてのバストーナメントをさらに面白く観戦してもらえるのでは? と思った次第です。
[タックル]
■3inファットヤマセンコー(ゲーリーインターナショナル)ノーシンカー用
ロッド:KOMC-65Mプロト(コンクルージョン)
リール:レボLTX(アブ・ガルシア) BFC 930 PRO ZPIチューン
ライン:フロロカーボン10Lb
■レッグワーム2.5in(ゲーリーインターナショナル)ダウンショットリグ用
ロッド:KOMS-60ULS(コンクルージョン)
リール:ヴァンキッシュ 2500 SHG(シマノ)
ライン:フロロカーボン4Lb
小森嗣彦選手のフットステップ
DAY1
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▼出発前
「メインは利根川。ただ人数が多すぎる……。1か所アテはあるが、そこ以外は絞り出す釣りになるだろう……。朝イチは閘門をくぐります」
「ちょっと集中タイムとりますね!」とノートを読み始める。
目標は?
「2日間で6本とにかく揃える、これ」
利根川はカバー撃ちとシャッド。霞ヶ浦はビッグベイトの釣りを想定。
スタート待ち時間はにこやかに他選手と交流。
小森「今江さん! 帰ってきてくれてありがとうございます!」
今江「いやいや、噛ませ犬や(笑)」
怖い会話ですね……。
______
▼スタート
ファーストキャストは小見川閘門手前の杭。
閘門が閉まってるので、開くまでの待ち時間でキャスト。
「1手でも多くね!」
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▼掘割川
川に入ると劇的に水が良い。
シャッドをキャスト。ここで1~2尾キャッチしたいようす。
「シャッドはある程度ファジーでも食ってくるから」
なぜシャッドを?
「掘割は岸際が深いし、その1mくらいに浮いてる魚を気づかせて追わせて食わせたい。それがテンポよくできるのがシャッドだったということ。だから釣れるのは川の真ん中。岸際で食ったことはない。イナッコがいるならビッグベイトを使います」
要所要所の杭やカバーはノーシンカーで撃つ。
7:32
ショートバイトあり。水門の際。シャッド。
「水温が落ちちゃえばシャッドで腹を括れるのに、下がり調子のなかで上がっているから、いろいろなパターンがある。釣れないとやる事が多すぎて困る。最初の1本が釣れさえすれば……。でもフィーディングは絶対外せない」
「できれば水温は下がって欲しい。そういうエリアを選んでるから。上がったらカバーやフィーディングをねらうけども……。とはいえこのシャッドならどっちも拾えるから!」
7:45
ミズヒマワリの内側にモコリークローのテキサスを撃ってノンキーパー340gをキャッチ。
「もーちょっとエサ食べろ(太れ)よぉ!!」
トンネル手前。
「ちょっと撃ちます」
事あるごとに「しんどいなーーー」といいながら毎キャストはキレキレである。
掘割川最奥。
釣れない。
「まずいねー。でも11時までノーフィッシュでもこの水系では何度も勝ってるんでね」
と言い聞かせるようにコメント。
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▼北利根川
9:30
堀割川を出て北利根川東関道北の西岸へ。
「フィーディング場を軽くやります」
護岸の変化する場所の水中変化。
レッグワームの2.6gダウンショットリグにてヒット!
680g。
「11時までに3本揃えて利根川に戻りたい。利根川で1~2本入れ替え。そんなストーリーが一番気持ちいい。ま、そんな綺麗にはいかないけどね! とにかく3本釣って明日に繋げる。できれば1kgの魚を一本追加。そのためには利根川に11時に帰りたい。逆算からのゲームを組み立ててます」
10:06
護岸と小規模にアシが絡むエリア(最初のスポットの数百メート上流)ですぐにもう1尾をキャッチ。
同ルアーにて。
710g。
「ね? ストーリーができてきたでしょ?」
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▼潮来大橋
10:50
「ここで釣れてくれると利根川に戻れる。ここで釣れないと……上行ったり下行ったり迷いが増える」
11:00
北利根川のアシ撃ちを本格的に開始。
「この時間から撃ってるのは水温が上がってから機能するはずのアシなので」
「明日を見据えて手広く探って可能性を高めていく。でも時間がないので無駄に全てのポイントは回りません。今までもいくつか細かいポイントを実は飛ばしてるんです」
11:17
アシ撃ち。
「だめだ。揃わない。こんな事やってたら揃わんなぁ……。考え方変えないとダメか…? よし、下ろう」
11:34
1尾目のスポットへ再び入る。
「どーかもう1本!(柏手)」
早めの神頼み。
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▼常陸利根川荒沼川通管
12:00
「1~10まで思い入れがあることやってはだめ……。明日に繋げるために」
明日への繋がりがまだ薄いからなのか常にシンドそう。それでも可能性に繋がる事を諦めず探しているようす。
12:22
後ろを三原選手が通過。
「ことごとくさっきから被ってるでしょ? ここに来るまでも何度も被ってる。きっとここ(常陸利根川)でも被りそうだからいくつかポイント飛ばしてきた。やっぱ正解。でも釣れないけどね」
無の時間が続く。
______
▼利根川下流部
12:30
利根川に戻る。
「あはーはーはー! やっぱ利根川は広くていいすねー! 全開で走れるし!!」
陽気です。
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▼津宮
13:10
レイダウンでビッグサイズがヒット! 巻かれたのをなんとか引き離しキッカーか!? と思いきやキャットフィッシュ。
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▼水郷大橋と神崎大橋の間のブレイク
13:33
「そろそろ1発欲しい……。もーしんどい」と呪詛のように唱え続ける。
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▼帰着
「お疲れ様でした! いやぁ、辛かったですね。これは勝ちには絡めんわ……。うわ! ギャラリー多いなぁ!! 嫌だなぁ、嫌だなぁ……」
終わってみれば首位以外は団子な状態を見て……。
「最初の堀割川に時間をかけすぎましたね。最後も利根川に戻らずそのままキーパーを釣るのに奔走したほうが明日にはつながったかも知れない。とはいえ絶望的なほど離されてるわけではないので、少しでも上位を目指して明日はまくります!」
DAY2
前日は寝ながら答えを探すと言っていた小森選手。
「考えすぎてね、頭痛がしてきちゃいましたよ」
暫定1位の盛三選手には2525gのビハインド。
「とりあえず1500gと1000gが必要ですね、うーん」
いくぜ! という歯切れの良さは感じられず、まだ選択肢が絞り切れておらず迷いが生じている印象。
「今回は利根川を釣り込んでなくて迷ったけど、本来の利根川の知識でやるべきだった。昨日の迷いはそのせい。なので今日は最低でも9時ごろまでは利根川」
______
▼利根川・会場からすぐ下流の消波ブロック帯
6:11
消波ブロック帯をテキサスで撃つ。
「朝イチの流れがあるうちにここをやっておきたい。増水しちゃうと中に入っちゃうけど今ならアウトサイドでもいけるだろうと。ただし、ルアーはダウンショットがいいのかネコがいいのかわからない。そういう釣り込みが今回少ないのがねぇ……」
ダウンショットで根掛かりした後、即座にフックチェンジ。いつ来るかわからない魚に万全を期す。
大きなビハインドとはいえ、こういう所作をみると全く折れていない事もわかる。
6:49
釣れない。
「あれぇ俺ここどうやって釣ってたっけなぁ」
弱気の発言。早くも精神崩壊か……?
「焦らずに焦らずに、昨日のファーストキャストより早いし」
持ち直しも早い。
7:20
「いいリズムが作れない。際どい所に入れると根掛かったりゴミ拾ったり。甘い所入れると釣れないし」
確かに前日からリズムが悪い印象。
テンポよく巻こうとしたとたんに絡まったり、草にかかったり、ゴミを拾ったり。
明らかに腕ではない流れの悪さ、みたいなものがあった。
このスポットでもここぞという場所にしっかりネコリグを入れたところ、普通なら回収できそうな根がかりでガッチリロックしてしまう。
それでも上流へ上がりながら消波ブロックを撃っていく。
「中の詰まってるテトラはエッジ。三角形のテトラは岸際をねらいます。三角のテトラは真ん中が空いてて通り道があるからね」
消波ブロック帯は無数にポイントがあるように見えるが、こまやかなところで時短をしていくんだなと勉強になる。
8:55
長く続く水中垂直護岸にスピナーベイト。要所でネコリグを投入。
リトリーブ中に「んあー、こんな事してる場合じゃないよぉ……」。
答えが全く返ってこない時間がつづく。
9:20
「利根川で腹をくくるのか。北利根川で昨日のを釣るのか。それで面白いのか。でも利根川でゼロはもっと無意味か」
脳内大会議。
「利根川やります。今から40分はプラのつもりで!」
______
▼尾羽根川
10:00
「昨日もう1本でも釣れてれば守りもあるけど、もうこの時間でこのスコアなら攻めるしかないでしょ! その決断までにはだいぶ時間かかっちゃいましたけどね……」
10:20
3inファットヤマセンコーのノーシンカーで920gをキャッチ!
入り口のブッシュ!
よくみればブッシュ、ハードボトム、水の合流点と要素が複合しているスポット。
「悪い魚じゃないはず! みんな釣れてないはず。これは希望とかじゃなくて、経験でわかる」
あの選手はたぶん1尾、きっとこの人は釣れてない……と予想を語りだす。
プレスとしてはジャッジも兼ねているので、それに答えて話題とすることが難しいのが歯がゆい。
なぜなら9割当たっているから。見えない電波でも受信してるのかと思うレベル……。
途中途中のストラクチャーも「ここは沖田さんがもう撃ってるはずだしなぁ」などと、見えていない船の事まで。事実帰着した後に話していると、それも見事に当たっている。戦慄。
11:10
「よし、俄然やる気出てきた! まだ手はありますから! しかし今日は利根川でほぼバッティングなし。プラはできてたって事ですね」
あと1尾で楽々表彰台!
ここから長豊橋上流右岸、若草大橋周辺、栄橋下流左岸などラン&ガンを繰り返すが残念ながら追加はなく時間切れ。
帰着して「だめだー。でもみんな釣れてないでしょ?」。
正解です。周りの状況をことごとく当ててました、流石です。
周りを聞くと読みは全てあってるのに、プラで釣れていなかったことから利根川への自信が持てていなかったのが無念だったようです。
YouTube配信のアーカイブはこちらからご覧ください↓↓↓
Basser Allstar Classic2022 最終成績表