TBCでは2022年度よりデジタルウエイインを導入しています(レギュラー部門では5年前より導入)。なぜこの決断に踏み切ったのか。それはひとえに、「この先もずっと利根川でみんなにバスフィッシングを楽しんでほしい」という思いからでした。
持続可能なバスフィッシングを目指して。
Basser編集部◎まとめ
Basserオールスタークラシックがデジタルウエイインを導入したキッカケ
昨年2022年度より、Basserオールスタークラシックでは釣ったバスを湖上で計測・リリースするデジタルウエイイン制を導入しました。最も大きな理由は、貴重な資源であるバスへのダメージを軽減したいから。真夏での開催ではないにせよ、長時間のライブウェルの使用はバスへストレスを与えますし、なにより釣った場所とリリースする場所の水質差によるショック死のリスクがあるからです。
バストーナメントにおいてハイライトと言ってもいいバスを持ちこんでのウエイインを取りやめるのには勇気も必要でした。実は、その決断に際して背中を押してくれたのが、利根川でトーナメント団体TBC(利根川バスクラブ)を主宰する、北総マリンの新海広美さんでした。
TBCを主宰する北総マリンのボス・新海広美さん。利根川のバスフィッシングをこよなく愛する
TBCでは2022年度よりデジタルウエイインを導入しています(レギュラー部門では5年前より導入)。それに対して、「試合としての盛り上がりに欠ける」、「プレスアングラーが同船していない試合では競技の公平性が担保しづらい」など、さまざまな意見があったそうです。
ではなぜ新海さんはこの決断に踏み切ったのか。それはひとえに、「この先もずっと利根川でみんなにバスフィッシングを楽しんでほしい」という思いからでした。
新海「実は、デジタルウエイインの構想は10年くらい前からありました。僕らはトレイルじゃなくてローカルの団体だから、試合のあとも会場やスロープのようすを日々見ているんですよ。そしたらね、やっぱり大会から数日するとたくさんのバスがスロープ周り(リリース場所)に浮いて、死んでしまっているんですよ。本当に毎回胸が痛んでいました。
選手は試合が終わったら帰っちゃうし、リリースの瞬間は一見バスが元気そうに泳いでいくから、こんなにたくさんのバスがそのあと死んでることに気づきづらいんですよ。
もちろん、バスが減っているのはライブウェルの使用だけが原因だとは思いません。全国的な農薬の影響もあるでしょうし、利根川では少ないですが、必要以上に細いラインを使ってバスの口にルアーを残してしまったりしているケースも多いと思います。
私だって主催者として大会を盛り上げたい。でも、このままじゃバスが減っていってしまう一方ですから、何かしなきゃいけない。バスフィッシングは釣れてナンボ。私はみんなに末永く利根川でバスフィッシングを楽しんでほしいんです。であれば、誰かが矢面に立ってでもバスを守らないといけない。であれば、TBCがやろうと」
そうして大きな決断を下したTBC。はじめのうちは否定的な意見もありましたが、徐々に風向きが変わってきました。最近では全国各地のトーナメントでデジタルウエイインを導入する団体が増えつつあり、新海さんの想いは徐々に広がりつつあります。
最後に、デジタルウエイインはバス保護のための実例のひとつに過ぎません。ほかにも禁漁区の設定や浮き産卵床の設置、ベイトフィッシュの積極的な放流など、バスを守るための手段はたくさんあり、この記事も決してライブウェルの使用を否定するものではありません。重要なのは、我々アングラーひとりひとりがバスを減らさない・必要以上に痛めつけないために何ができるのかを考え、実行することではないでしょうか。
2023年度TBCトーナメント優勝者(第3戦まで)
TBCでは、釣ったバスを湖上で計測しリリースするデジタルウエイイン制を導入している。選手はオフシャルスケールにバスを乗せて撮影し、その画像を本部に送信。順位は3尾の合計長寸で競われる。
第1戦を制した渡部記史選手(写真中央)。テトラをネコリグで攻略し、47㎝、42㎝、41.5㎝の合計130.5㎝で圧勝を決めた
第2戦の勝者は小村幸輝選手(写真中央)。3尾の合計は140.5㎝で、最大魚の47.5㎝は大会ビッグフィッシュとなった
第3戦は大久保仁尊選手(写真中央)が優勝。ただ一人リミットメイクを達成し、マイナス50㎝のペナルティがあったものの、それでも優勝。49㎝、40㎝、39㎝という内訳だった(記録上は合計78㎝)