ネオ・ビーツ・シリーズの場合は、カップを本来固定するべきラインアイのヒートンと、その下側のビスが少し余裕をもって取り付けられている。さらにはカップ側のそれらを通す穴も少々大きめ。アクションすることでこれらはお互いに触れ合って、さらにはボディー側に取り付けてあるアルミのリベットとカップが触れ合って干渉音を放つ
名作の誕生に共通する「偶然」のチカラ
元木正実=文
あらゆるブラックバス用ルアーのなかで、形状がもっともバラエティーに富んでいるジャンルと言えばトップウォータープラグであろう。日々、新たな工夫や機能が凝らされたパーツや形状の製品が考案され、津々浦々のバスの本能を刺激している。この記事では、オリジナリティー溢れるトップウォータールアーの開発者に、機能に込めたねらいや開発秘話を明かしてもらった。今回は津波ルアーズ・元木正実さんによるパーツ進化論です。
この記事はBasser2016年10月号に掲載したものを再編集しています。
食性というよりも、どちらかと言えばバスの縄張り意識に訴えるもの
さて、ノイジーと言われるこのタイプのプラグの何がここまでバスという魚を惹きつけるのか。それは文字どおりそのノイズと、ぐいぐい水を押すその波動が要因と見てまず間違いないと思う。それがどうにもバスをいらいらさせて、そして遂には襲いかからせる。
そう、それは食性というよりも、どちらかと言えば彼らの縄張り意識に訴えるものだという気がしてならない。ことネオ・ビーツ・シリーズに関しては、バイトは決まって激しくて、勢い余ってフックアップしないこともままある。バイトというよりもアタックというに相応しいのだ。これはそのせいにほかならないと思うのだけれどいかがだろう?
Beat Stick J
100mm / 1oz クラス
衝撃的ノイズ、ガチャガチャッという金属音とポップ音をともなった移動距離の少ないターン、ジョイントならではのボディー同士が干渉する音、速いビート、艶かしいうごめきが持ち味。オリジナルモデルがバスウッド製であるのに対し、ジョイント・バージョンは浮力を稼ぐためアユース材を採用している
リトリーブするとウォブル&ロールをともなって左右にボディーを振りながら、連続してパコパコあるいはポンポンというようなポップ音を発する、これがこのタイプのプラグの大きな特徴。
ポップ音はカップのRが空気をはらんで発せられる。つまりはこのRがひとつの味噌である。それにも増して特性を左右するのはカップの角度。これが立ち気味であるとボディーのローリングが大きくなり、水平に近くなると水平方向にターンする動きが大きくなる。これの落としどころでプラグの特性が決まると言っていい。
また、ローリングにしろウォブルにしろ、それから水平方向の動きにしろ、ほかのプラグとは明らかに性格が違う。それもこれもフロントで存在感を放つ、ボディーに対して少々大きめとも思える特徴的なカップがあるからこそだ。それがほかのプラグとは動きの支点を異にし、あのユニークなアクションを生む。
津波ルアーズのフラッグシップでもあるネオ・ビーツ・シリーズにはいろいろと種類があるが、そんなわけで機種によってはカップの角度を意識して変えていたりもする。ただし、ネオ・ビーツ・シリーズは概してカップの角度は立ち気味かもしれない。こうすることで、アルミ製のカップとアルミリベットが当たって金属音を発しやすくなる。余談だけれど、同じ理由から、ロッドを立ち気味で操作すると金属音が大きくなり、反対に寝かせるとポップ音が強調される。
金属音を生じさせるにはパーツ自体に可動域があって、ほかと接触することが条件。ネオ・ビーツ・シリーズの場合は、カップを本来固定するべきラインアイのヒートンと、その下側のビスが少し余裕をもって取り付けられている。さらにはカップ側のそれらを通す穴も少々大きめ。アクションすることでこれらはお互いに触れ合って、さらにはボディー側に取り付けてあるアルミのリベットとカップが触れ合って干渉音を放つ。
ちなみに、金属音にも種類があって、アルミとアルミ、アルミとステンレス、ステンレスとステンレス…… ではそれぞれ音質が違う。どのようなノイズがどのような状況で、あるいはどのようなフィールドで効くのかに言及するのは避けるけれど、明らかにある種の音だけが特別に効いている状況に遭遇したのは一度や二度ではないから、これにバリエーションを持っていて損はないはず。
ネオ・ビーツ・シリーズはアルミカップとアルミリベット、あるいはステンレスのシャフトが同時に放つカショカショという金属音、加えてカップが空気をはらむパコパコというポップ音が、リトリーブするだけであのうねうねとしたポリリズム的ビートを生む。たとえば、そのちょっと引きずるようで泥臭く、少し跳ねた、ファンクのような規則的複合的ビートが、魚をあんなに夢中にしてしまう不思議は、我々アングラーを釣りに夢中にさせる理由のひとつだと思っている。
さらに、金属パーツに可動域があると、リトリーブのみならず着水時やターン時にも独特の音を奏でることができる。だからなのか着水と同時、あるいはポーズ後にバイトということも少なくない。また、ガチャガチャっという金属音とポップ音、さらにはスプラッシュをともなった移動距離の少ないターンは時に威力絶大で、ちょっとしたシークレット的メソッド。ガチャパコバシュっと2度ほどターンをさせたあとのバイトは、決まって大げさで、これがなかなかの快感なのである。
ノイズにこだわったダブルスウィッシャー
そんなノイズに執拗なまでに固執する津波ルアーズが、ダブルスウィッシャーのプロップが発するノイズにこだわったのがマイティー・アロウジーニョ・デル・プラスティコのニューヴァージョンである。
マイティー・アロウのオリジナルは、ゆっくりリトリーブするとアルミのプロップ本体とシャフトが擦れて起こるヒュルヒュルというようなノイズが効くプラグで、これがすこぶるよく釣れて一世を風靡したもの。これを踏襲しスニップ・トーンと名付けられた新システムは、シャフトにギア状の突起があり、これが新たな種類のノイズを生む仕組み。
取るに足らないノイズではあるものの、そのプロトタイプにおいて、すでに充分な実績がある。使っていただいてぜひそのサウンドと効果の不思議を実感していただきたい。
Mighty Arrowzinho del Plastico / Snip Tone
150mm / 23.5 ~ 24.5 g
シャフトにギア状の突起を設けた新システム「スニップ・トーン」採用のダブルスイッシャー。新感覚のノイズがバスのいらいらバイトを誘発する
元木正実(もとき・まさみ)
1963年4月生まれ。ユーモアが際立つ釣り業界の異端ブランド「津波ルアーズ」代表
津波ルアーズ
1998年、木片をカッターで削ることからスタートした、俗にインディーズ・トップウォーターと呼ばれるシーンをリードするブランドのひとつ。釣りにとどまることなく、音楽、ファッション、グラフィック、映像、旅……さまざまなカテゴリーでそのコンセプト「LoveFishing,Music & Peace」を発信中
https://tsunami-lures.com/
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