ノイジーと言われるこのタイプのプラグの何がここまでバスという魚を惹きつけるのか。それは文字どおりそのノイズと、ぐいぐい水を押すその波動が要因と見てまず間違いないと思う。それがどうにもバスをいらいらさせて、そして遂には襲いかからせる。
名作の誕生に共通する「偶然」のチカラ
元木正実=文
あらゆるブラックバス用ルアーのなかで、形状がもっともバラエティーに富んでいるジャンルと言えばトップウォータープラグであろう。日々、新たな工夫や機能が凝らされたパーツや形状の製品が考案され、津々浦々のバスの本能を刺激している。この記事では、オリジナリティー溢れるトップウォータールアーの開発者に、機能に込めたねらいや開発秘話を明かしてもらった。今回は津波ルアーズ・元木正実さんによるパーツ進化論です。
この記事はBasser2016年10月号に掲載したものを再編集しています。
元木正実(もとき・まさみ)
1963年4月生まれ。ユーモアが際立つ釣り業界の異端ブランド「津波ルアーズ」代表
津波ルアーズ
1998年、木片をカッターで削ることからスタートした、俗にインディーズ・トップウォーターと呼ばれるシーンをリードするブランドのひとつ。釣りにとどまることなく、音楽、ファッション、グラフィック、映像、旅……さまざまなカテゴリーでそのコンセプト「LoveFishing,Music & Peace」を発信中
https://tsunami-lures.com/
ネオ・ビーツ・シリーズもまた偶然が生んだ産物
ジルバというダンスがあって、これは英語で書くと「Jitterbug」となる。びくびくする(jitter)虫(bug)のような動きのダンスというようなことだろうか。そんなダンスの名前を冠された、フレッド・アーボガスト社の「ジッターバグ」というプラグが名作であるということに異論はないと思う。このプラグのフロントに付いた大きなカップがあの何とも言えないアクションを生む。ところがあのカップ、もともとは水中へとプラグを潜らせるために開発されたものだったとか。それをたまたま逆に使用したところ、ジルバのように踊った、ということらしい。
この秀逸なシステムのフォロワーとも言えるルアーは数知れず、津波ルアーズのネオ・ビーツ・シリーズもその例に漏れない。もちろん開発当初、そのままではいけないと考えて、いろいろと工夫を凝らしたものだ。
ネオ・ビーツ・シリーズには特徴が異なるさまざまなモデルがラインナップされている
うちらしい形をいろいろと考えてみたり、波の刻印を考えてみたり……、そうこうしているうちの出来事である。本来こういうカップは固定するために3本のビスを打つ。それにカップのRにいくらかはボディーのシェイプを添わせたり、その逆にカップのシェイプにボディーのほうを添わせたりもするだろう。ところがプロトタイプは無精して2点で止めていたうえに、ボディーのフロントのシェイプは切りっぱなし。そんなわけだったから、テストするうち、ビスが弛みカタカタと動くまでになってしまった。
これが、カップが水を受けてカポカポ、さらにアルミリベットと触れ合ってカタカタカショカショ、超ノイジーなサウンドを発するネオ・ビーツ・シリーズの発端である。ネオ・ビーツ・シリーズもまた偶然が生んだ産物なのだ。
このシステムも十数年前のリリース以来、数々のフォロワーを生んだ。ただ、これは紛れもなく津波ルアーズと、それから今は亡き大橋という男が主宰していたフルサイズがオリジネーターである。それもまたジッターバグのフォロワーということにはなるのだけれど、パーツ自体が金属音を発するという点で進化系と言える。
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