青い大海原にウキが突き刺さり、一度体験すればトリコになるウキフカセ釣り。 雑魚が大人しくなり本命に当たりやすくなる冬は基本を学ぶのによいシーズンだ。初めてのメジナを手にするのに役に立つ、基本のエッセンスを釣りの流れと合わせて解説。
入門するなら雑魚に邪魔されにくい冬場が◎
久保野孝太郎 解説
久保野孝太郎
1969 年生まれ。千葉県鎌ケ谷市出身。ヘラブナ釣り、キスの投げ釣りなどを経て、27歳でメジナ釣りに出会い没頭。2003年にG 杯グレで関東勢初の優勝を果たし、2005年も準優勝する。伊豆半島の入り口で、ビギナーを含めた磯釣りファンをサポートする小田原マリンターミナル店主
青い大海原にウキが突き刺さり、一度体験すればトリコになるウキフカセ釣り。
雑魚が大人しくなり本命に当たりやすくなる冬は基本を学ぶのによいシーズンだ。初めてのメジナを手にするのに役に立つ、基本のエッセンスを釣りの流れと合わせて解説。
この記事は『つり人』2016年2月号に掲載したものを再編集しています。
目次
ウキフカセ釣りとはどんな釣り?
今の季節、雑誌はもちろんテレビの釣り番組でも目にする機会が増えるウキフカセ釣り。
代表的な対象魚はメジナとクロダイで、競技会も盛んだが、堤防から気軽にサオをだす人も少なくないように、元々はとてもシンプルな釣りだ。
5m前後のリールザオにウキとハリスとハリをセットし、付けエサのオキアミに魚が食いつけば、ズンと気持ちよくウキが沈む。真っ青な海に想像以上にシャープにウキが引き込まれるアタリに、初めてならきっと驚くだろう。
ウキは円錐ウキと呼ばれる、ミチイトが中を通るタイプを使う。ウキ止メを使用してウキ下を一定にする場合と、遊動状態で使う場合の両方があり、理論はさまざまだが、ウキフカセ釣りではウキが大きな役割を果たす。
ウキがあることで、軽い仕掛けを飛ばすことができ、さらに流れ(潮)に乗せてエサをねらった場所まで届けたり、ねらいたい一定の深さにエサを留めることができる。もちろん、アタリを知らせるインジケーターの役割も果たす。軽いエサと仕掛けを自然に漂わせる(フカせる)釣りを、ウキを使うことでより自在に行なうというのがこの釣りだ。
ウキフカセ釣りのもうひとつの特徴は寄せエサを使うこと。寄せエサを作る釣りに慣れていない人には、この部分が「大変」と思われがちだが、上手に寄せエサを作ったり、投入を工夫することで、ウキフカセ釣りは何倍にも面白みが増す。寄せエサと付けエサを同調させて流すことがこの釣りのカギであり、それができると寄せエサに寄った魚が付けエサに食いつきアタリが出る。一度でもメジナにサオを絞り込まれてしまうと、寄せエサ作りはむしろ楽しみに変わってしまう。
ここでは、他の何らかの釣りはやったことがあるが、ウキフカセ釣り(なかでも磯でのメジナ釣り)は未経験という人に、これさえ押さえれば初めての一尾はけっして難しくないという、基本の所作を解説したい。

まずは安全確保で
ウキフカセ釣りの釣り場は、大きく「沖磯(渡船を利用して渡る磯)」「地磯(陸から歩いて行ける磯)」「堤防(港まわり)」の3つがある。より軽装で楽しめるのは堤防だが、磯にもぜひチャンレジしたい。
滑りやすく突起物も多い磯の釣り場では安全を確保できることが第一。磯釣り用のシューズ、フローティングベスト(膨張式でなく浮力体が入ったもの)、グローブは必需品だ。あとはサオ、リール、小物類のほかに、手を拭くタオル、偏光グラス、ロッドケース、バッカン、水汲みバケツ、マゼラー(寄せエサを混ぜるもの)、ヒシャク、そして特に沖磯に渡る場合はクーラーボックスも必需品になる。沖磯では海が荒れると渡船が来られなくなる場合もあるので、飲み物と食糧の携帯も大切なポイント。クーラーボックスは食べて美味しい魚を持ち帰るのにも役立つ。
タックルを知る







エサの購入
お店を上手に使う
ウキフカセ釣りは、オキアミの冷凍ブロックを購入することから1日の釣りが始まる。おすすめは釣行日を決めたら、前日までに予約の電話を入れたうえで、当日に釣り場近くにある販売店(釣具店やエサ販売店)に立ち寄って購入していく方法。事前予約により、オキアミブロックをあらかじめ冷凍庫から出しておいてもらい、使用時には解凍されているようにするのだ。特に冬場は解凍をすませておかないと、海を目の前にしてしばらく釣りにならないこともある。こうしたお店は夜間や早朝の受け渡しにも対応してくれ、磯釣りの情報も当然集まっているので、分からないことがあれば相談できるのもメリットだ。





水を汲み寄せエサを作る
寄せエサの準備
釣り座を決めたら始めるのがエサの準備。特に寄せエサをしっかりと作る。ブロックを崩したオキアミと配合エサをよく混ぜ合わせ、ねらった場所にしっかり投げられる、ヒシャクですくった時にほどよくまとまる状態に作る。水分が足りず粉状でパサパサ、水分が多すぎてベチャベチャのどちらもよくない。そうならないために、「全体をしっかり混ぜ合わせてから水を入れる」「水は少しずつ入れる」をまずは心がける。


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サオを伸ばしウキをセット








※ウキ止メの位置である程度ウキが移動するようにしておく
※BのウキならBのガン玉まで使えるのが理屈だが、仕掛けを馴染ませることができればガン玉を使わなくてもよい。ガン玉を使う場合はハリスの中央に打つのが基本。実際はウキのすぐ下に浮力調整の目的で打つ場合や、ハリの近くにごく軽いガン玉を補助的に打つ場合などオモリワークには多くの種類がある
ウキの号数とは?




仕掛けを馴染ませ、寄せエサを同調させて送り込む

②サミングでイトを張らず緩めずの状態で送り出しつつ、仕掛けを潮に馴染ませていく
③仕掛けがきちんと馴染むとストッパーが徐々にウキから離れて沈んでいく。ストッパーでアタリを取れることもある
④寄せエサの煙幕の中に付けエサを入れて(=同調させて)食わせるのが釣り方の基本
⑤ストッパーがウキから離れない時はキャストで仕掛けが絡んでいる場合がある
ガン玉を打って仕掛けの馴染みを補助する時は、小さなものを等間隔に分散して打つほうがハリスの形がいち早くよくなりアタリも出やすい(b)。ハリスが屈折している間はアタリが出ない(a)
なるほど結び

②指で広げたループをミチイト2本に上から掛け、下でループを閉じるとイラストの状態になる(ぶしょう付けの要領)。出来た輪の中にウキ止メイトを2回通す
③ミチイトとウキ止メイトをそれぞれ締め込むと2本のヒゲが出た状態でウキ止メイトがミチイトに付く
余りは長めに残してカット

ハリスとハリを結ぶ









寄せエサの撒き方
ヒシャクは超重要アイテム
エサの準備とタックルのセットが済めばいよいよ釣り開始。寄せエサを撒き、仕掛けを投入し、さらに追加の寄せエサを撒いたら、固唾を飲んで(?)アタリを待つ。実際はエサとりを本命から離すための寄せエサも打つことが多い。
そのため、実はとても重要なアイテムがヒシャクだ。ヒシャクは安価なプラスチック製のものだと数百円で手に入るため、入門者ほどそちらを選んでしまいがち。だが、この使い勝手ひとつで釣りが大きく変わるのがウキフカセ釣り。メーカーの最上位モデルまでは行かなくとも、短すぎない70㎝ほどの柄で、一定の柔軟性(しなり)があるものを使いたい。また、海に落としてしまうなど、釣り場でヒシャクをなくしてしまうと全く釣りにならない。一軍でなくとも予備のヒシャクも必ず用意しておきたい。
寄せエサはヒシャクですくってからバッカンの壁に押し当ててすり切り状態にする。短すぎるヒシャクはこの時に腰を屈める必要があるので疲れやすく、また、しならないと飛距離やコントロール性が得られず思ったとおりの場所に投げられない。すると寄せエサと付けエサを同調させるという、この釣りの基本が上手くできなくなり、釣果も落ちてしまう。
そして、これからウキフカセ釣りを始めるなら、寄せエサはぜひロッドハンドと反対の手で投げられるように練習してみたい。ヒシャクの操作とサオの操作にタイムラグがなくなることで、よりスムーズに釣りを楽しめるようになるからだ。


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仕掛けの回収法



付けエサのセット


安全なキャスト法


魚を取り込む





今が始め時
12月上旬、久保野さんがウキフカセ釣りで必要な一連の所作を実践してくれたのは、小田原のお店のすぐ裏にある江之浦港。釣りのできる手軽な堤防だが、冬場は40㎝クラスのクチブトメジナも毎年釣れている。「いろいろな釣り人が毎日来ている分、メジナもスレていて、かわいいサイズも多いですが、ウキフカセ釣りの楽しさをまず知るなら充分面白い。また、磯ほど複雑な潮の流れがない堤防で丁寧に釣りをしていると、むしろ磯に出た時には楽に釣りができます」と言うとおり、おすすめの入門釣り場の1つだ。
足場のよい堤防で投じたエサやウキの動きをよく観察しながら釣りをしておくと、魚が積極的にエサを食いにくる沖磯や地磯ではよりスムーズに魚が釣れる。まずは手近な堤防で、さらに磯場へと、ぜひこの釣りにチャレンジしてみてほしい。
なお、磯釣りは片付けも大切な釣りの一部。バッカンなどの汚れは最初に釣り場で水を汲んでしっかり洗い流し、帰宅後もかるく水洗いしてしっかり乾かすのがベスト。また、サオやリールをサビさせないように気を配りたい。久保野さんは真水で濡らしたタオルをジップロックに入れてロッドケースにしまっており、サオを畳む時にブランクとガイドを拭いてから収納している。そして、堤防でも磯でも、足もとにちらばった寄せエサなどは海水で忘れずに洗い流して釣りを終えるのがこの釣りのマナーだ。