「釣りって、どれくらいの予算で始められますか?」
興味のある友人や職場の仲間に、そんな質問を受けたことはないだろうか?
「ずばり、2万円が1つの区切りになると感じています」というのは、海川とわず、日頃からライトルアーの釣りを愛好し、トラウトの管理釣り場のスタッフ経験もある井上尚之さん。
実際に都内在住のOLお二人のトラウトデビューをサポートした体験記をお届け。
2万円で始められる本格魚釣り解説! 管理釣り場のトラウト編
写真・文◎井上尚之
「釣りって、どれくらいの予算で始められますか?」
興味のある友人や職場の仲間に、そんな質問を受けたことはないだろうか?
「ずばり、2万円が1つの区切りになると感じています」というのは、海川とわず、日頃からライトルアーの釣りを愛好し、トラウトの管理釣り場のスタッフ経験もある井上尚之さん。
実際に都内在住のOLお二人のトラウトデビューをサポートした体験記をお届け。
◆こちらの動画も要チェック!
「2万円」に含まれるのは?
山梨県の桂川のほとりに生まれ育ち、もともと世話好きな性格なこともあって、これまで多くの人の「釣り初体験」に同行してきた自分。そこでまず感じたのは、道具の大切さだ。「釣りは道具じゃない」とも言われるけれど、初心者にとっては話が別。特に最近の人が「やってみたい」というルアーフィッシングは、投げて巻いての繰り返しだから、道具立てに助けられる要素が大きい。その分、最低限の道具がないと、楽しい釣り自体が成り立たなくなってしまう。
どんな遊びでもそうだが、道具選びには押さえるべきポイントがやはりあるはず。まずは最低限に安くそろえるのも正解だけれど、あとから買い足したり、余分に買ってしまったり、そういった「遠回り」をすることなく、すぐにその遊びそのものの楽しさに触れてほしい。そういった思いから落ち着いたのが、「(目安として)2万円」での釣りスタートだ。
今回、釣りデビューをサポートしたのは、私が勤めていたことのある管理釣り場(山梨県の奈良子釣りセンター)に遊びに来たことのある、都内のOLのかなこさんとふーこさん。その時は、「とにかく〝釣り〟をしてみたい」ということでの来場だったが、「およそ2万円あればマイタックルで週末に釣りが楽しめるようになる」と伝えたところ、「そんなもので大丈夫なの? それならぜひやってみたい!」とのことで、モデルになってもらうことに。
都内の企業に勤めるかなこさん(右)とふーこさん(左)は幼なじみ。友人に連れられて船釣りに行ったのがきっかけで、ニジマス釣りにも興味を持った
トラウトのルアーフィッシングに必要な道具は「ロッド」「リール」「ライン」「ルアー数個」。釣具店に行くと、リーズナブルな道具だけを組み合わせれば、1万円以下でも一式をそろえることができる。ピンからキリまで、さまざまな価格帯で商品が売られているのだが、この道具の価格差をリールでたとえると、1台3万円~7万円の中~上位機種は値段が上がるほど軽くなったり、回転が滑らかになったり、見ための高級感が増したり、リールとしてしっかり使える前提で、そこに価格に見合う「快適さ」や「所有感」が付加されると考えてよい。対して数千円~1万円の廉価版リール。
この価格帯には「リールとしてしっかり使えるか否か」の境界線があり、それが5000円以上というように私は考える。ちなみに、このような「実際に楽しく釣りができる道具がそろう価格帯」はどんなジャンルにもあって、その「最低限」を満たすラインがどんな釣りであっても、最近はだいたい2万円になる、ということなのである。
釣りを始めてはみたが、とりあえずの正解が分からず、闇雲に道具を買ってしまっている人というのは思いのほか多い。最初にぶつかりがちなことこそ「道具立て」の壁であって、この壁を最初に乗り越えられるだけで、多くの人は「釣りって楽しい!」と思えるようになる。
マイタックルでニジマス! 初日のメニュー
今回は買い物から釣り場に出掛けて自分の手で魚を釣るまでの一連をガイド。時期は年末年始を挟んだ。寒いこの季節に、道具を買って、1日でいきなり遠くの釣り場にも行くというのは初心者にはつらい。
タックルを購入前にまず気になるお店で腹ごしらえ
午前中はのんびりと横浜に評判のプリンを食べに行き、その後、近くの大手釣具店へ。
トラウトコーナーに並ぶルアーの多さは驚き
「化粧品感覚で買っちゃいますね!」
偏光グラスなど小物も忘れずに調達する
ここで買うのはリール、ライン、ルアー、偏光サングラス。ロッドに関しては、「かわいい色のロッドがいい」「ピンクがいい!」という本人たちからの強い要望があったので、事前にインターネットで好みの色の4ピースのものを購入。そこから都内の練馬にあるプールを利用した管理釣り場へ。短時間の3時間券でマイタックルデビューをねらうというスケジュールだ。
リールはそれぞれダイワとシマノの2000番、ラインはナイロンの0.8号(3ポンド)、ルアーは1.8gのスプーン数個を用意した。あとは小物として首かけのルアーワレット、偏光サングラスを購入。2人とも約2万円で一式をそろえた。
事前にネットで買っておいたロッドと合わせ、これだけのアイテムをそろえた
二人の購入タックル
■かなこさん
●ロッド:ホッピンパック48UL(8950円)
●リール:レブロス2004(5740円)
●ライン:ナイロン3ポンド(1000円)
●ルアー:スプーン5個(2000円)
●その他:ルアーワレット(1500円)、ラインカッター(360円)、偏光グラス(2000円)
合計2万1550円
■ふーこさん
●ロッド:ホッピンパック48UL(8950円)
●リール:ナスキーC2000S(7630円)
●ライン:ナイロン3ポンド(1000円)
●ルアー:スプーン5個(2000円)
●その他:ルアーワレット(1500円)、ラインカッター(360円)、偏光グラス(2000円)
合計2万3440円
■かなこさん
●ロッド:ホッピンパック48UL(8950円)
●リール:レブロス2004(5740円)
●ライン:ナイロン3ポンド(1000円)
●ルアー:スプーン5個(2000円)
●その他:ルアーワレット(1500円)、ラインカッター(360円)、偏光グラス(2000円)
合計2万1550円
■ふーこさん
●ロッド:ホッピンパック48UL(8950円)
●リール:ナスキーC2000S(7630円)
●ライン:ナイロン3ポンド(1000円)
●ルアー:スプーン5個(2000円)
●その他:ルアーワレット(1500円)、ラインカッター(360円)、偏光グラス(2000円)
合計2万3440円
前述のとおり、ロッド、リール、ラインは重要だから、ある程度道具に対して理解のある人がセレクトに立ち会うのは必須。しかしながら、好きな道具で、好きに釣る自由度が高いのもトラウトルアーフィッシングの魅力。ルアー選びはあまり口出しせず、初心者の好みとセンスに任せても面白いかもしれない。
ピンクのロッドは気持ちが上がる!とまずは都内の「としまえんフィッシングエリア(現在は閉業)」へ
寒さも厳しかったこの日、都内のプール型管理釣り場も、魚はなかなか渋い状況。それでもふーこさんが見事に1尾を釣り、年が明けたら「かなこさんのファーストフィッシュも含めて奈良子へ行こう!」と約束。そして正月3日、自分のタックルですっかり意気軒高な2人は、それぞれヤマメ、アマゴ、40cmオーバーのニジマスまでキャッチし、自分の道具で魚を釣る喜びを噛み締めることができた。
としまえんフィッシングエリアは現在は閉業
ふーこさんのスプーンにニジマスが食いついた
上が筆者で今回の釣り入門の案内役の井上尚之さん。現在は川崎に住み、自身もトラウトにくわえて、アジ、クロダイと身近なルアーフィッシングを日々楽しんでいる。「自分が釣るよりも、釣りに興味を持った周囲の人に釣ってもらうほうが楽しいくらいです(笑)」
案内役の心構え「基本はしっかり、でも教えすぎず」
ここでは、初心者に自力で魚を釣ってもらうために、ガイドする側も意識しておくとよい点をいくつかまとめてみたい。
まずは基本をしっかり覚えてもらうことだ。たとえば利き手でロッドを持って、反対の手でリールを巻くということ。そんなビギナーにとっての「どうすればいい?」を、経験のある人ほど伝え忘れてしまう場合がよくある。
ルアーフィッシングそのものが初心者という場合、最初は器用な利き手で投げて、リールも利き手で巻きたくなってしまう人がいる。すると、持ち替える時のタイムラグがのちのち渓流や海でも釣りをしようという時に必ずネックになる。持ち替えているうちにラインがたるんで根掛かりしたり、風に流されてしまうのだ。これは一度癖になってしまうとなかなか改善できなくなるので注意して見てあげたい。
あとは、管理釣り場のルアーフィッシングであれば、キャスティングさえできれば、釣り方はゆっくり一定のスピードでリールを巻くだけだ。その後のことは「釣れたらロッドを上にあげながら少し早く巻いてね」。これでよい。
どちらかというと、最初は投げる・巻く・釣りあげるの3つの動作だけ、基本に忠実かつシンプルに教えるほうがよい。親切心でいろいろなことを伝えてあげたくなってしまうが、ここはぐっと我慢して見守ってあげるほうがよい。
なお、道具の準備の際、リールのドラグ設定だけは、ロッドが限界間際まで曲がった際にジーッとラインが出るように調整してあげたい。大ものが掛かった時やルアーを引っ掛けた際、買ったばかりのロッドが折れてしまわないようにしておく。
山梨県大月市にある「奈良子釣りセンター」に挑戦。中央道大月ICから車で約20分。釣り入門者にはちょっとした水辺も新鮮
かなこさんはずっしりと重い大型ニジマスをキャッチ
ふーこさんもポンドでのヤマメを始めたくさんの魚の引きを味わった
釣りを終えた2人は、「自分の道具がなにより可愛くて気持ちが高まりました。最初の1ピキはなかなか時間がかかったけど、釣れた時は感動しました。そのあとに釣れた50cmのニジマスは、経験したことのない引き!重みが面白かった~。これからは自然の川でヤマメを釣ってみたい。海でイカやシマアジも釣ってみたいです(かなこ)」「やっぱり自分の道具は毎晩一緒に寝たくなるほど可愛いです。そしてロッドは魚を釣るとよくしなる! ルアーもかわいいものがたくさん売られていて、化粧品を買うようについたくさん選んでしまいました。今後は渓流釣りにも行ってみたいし、海でイカやクロダイを釣ってみたいです(ふーこ)」と大満足。今回のプランを参考に、ぜひ多くの釣り人に、誰かの釣り体験をサポートしてみてほしい。
釣った魚を塩焼きにしてもらえばさらに楽しい一日に
この記事はつり人2019年3月号でも読むことができます
◆関連記事
トラウトルアー釣り超思考法
ルアーメーカー勤務、トラウトルアー釣りの第一人者・飯田重祐が、まさに独自の「超思考」で凝り固まった思考を変え、行動パターンを変え、実技を向上させて、釣果UPにもつなげます。 「経験の積み重ねでしか得られないもの」がある一方で、「経験値がすべてではない」とも説く飯田重祐ならではの自由な超思考法。本書を読めば、トラウトルアー釣りがもっと深く楽しめるようになること間違いナシ!
ルアーメーカー勤務、トラウトルアー釣りの第一人者・飯田重祐が、まさに独自の「超思考」で凝り固まった思考を変え、行動パターンを変え、実技を向上させて、釣果UPにもつなげます。 「経験の積み重ねでしか得られないもの」がある一方で、「経験値がすべてではない」とも説く飯田重祐ならではの自由な超思考法。本書を読めば、トラウトルアー釣りがもっと深く楽しめるようになること間違いナシ!