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編集部2022年6月16日

アニサキスアレルギーの経験談を釣り人が語る! 原因は? 症状は?

魚種別釣りガイド

生きたアニサキスがいなくても、その成分がアレルゲンとなってアレルギーを発症した事例もある。この記事では、書籍『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談6』から、貴重な経験談をシェアする。

アナフィラキシーショックで意識喪失、緊急処置

体験者 佐藤剛(サトウタケシ)

  アニサキス症が急増しているとの報道が注目されている。アニサキスはサバ、カツオ、イカなど釣り人にも身近な魚介類を宿主とする寄生虫で、生きたまま口に入れてしまうことで胃壁や腸壁に潜り込み激しい痛みや嘔吐を引き起こすアニサキス症の原因になることで有名だ。

 一方、生きたアニサキスがいなくても、その成分がアレルゲンとなってアレルギーを発症した事例もある。この記事では、書籍『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談6』から、貴重な経験談をシェアする。

この記事は書籍『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談6』に掲載したものを再編集しています

◆生きたアニサキスによるアニサキス症の情報はこちら
アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚生労働省サイト)

※ご自身の体調に異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください

佐藤剛(サトウタケシ)
1969年生まれ、群馬県在住。海無し県に住みながら新潟県柏崎港の遊漁船アシストクラブの秋山キャプテンを師と仰ぎスキッディングという新しいジギングスタイルのインストラクターとして活動中。JGFAラインクラス日本記録、IGFA オールタックル世界記録保持者。

新鮮な魚を食べた後にアナフィラキシーショック

 アニサキスアレルギーをご存知だろうか。「あ~、生の魚を食べて、虫が胃に噛みつくやつね」と思った人が大半だろう。それはよく知られたアニサキス症であり、今回、僕が経験したのはその認知度の高いアニサキス症ではなく、まだあまり知られていないアニサキスアレルギーだ。先に述べておくが、僕は花粉症どころかアレルギーに対して全く無縁であった。

 2020年7月26日深夜、僕はアナフィラキシーショックを起こし意識喪失状態に陥った。原因は夕食の中にアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因物質)があり、それによる食物アレルギー反応によるものらしい。

anisakis

医師からは「あと5 分遅かったら恐らく死んでいた」と言われた。同じ症状になったら迷わず救急車を呼んでほしい

 

 その夕食はいつものように自身で釣った魚を捌き、その他の料理も作った。お品書きはアラ、ウッカリカサゴ、キジハタ、ケンサキイカの刺身に〆サバ。サバといえばアニサキスの寄生主として知られるが、釣りあげた直後の活きている状態でエラと内臓を取り、サバ折りをして血抜きを行ない、臭みとアニサキス症対策をしっかりと行なったうえで、釣った当日に仕込んだ新鮮極まりない〆サバである。ちなみにアラ以外は前日に釣った魚だ。そのほかベーコンとエビとインゲン豆のアヒージョ。新潟県栃尾地区特産の油揚げ。今思えば、アレルゲンのオンパレードを肴にウィスキーとレモンサワーを呑んでいた。

 料理を作り終えた僕は、息子たちと19時頃から釣りの話をしながら1時間半ほど夕飯を食べながらグラスを傾け、食後はソファーに横になってテレビ鑑賞をしていた。

 食後30分ほど経った頃、突然頭が痒くなってきた。汗と整髪剤とほろ酔いが原因で頭が痒くなったのだろうと気にも留めずにいたが、徐々に頭の痒みは我慢できないほど酷くなり、腕には蕁麻疹が浮かび上がっている。

 しかし、数十年前にも一度蕁麻疹を経験したが、寝たら治ったので今回も風呂に入って寝てしまおうと入浴してみる。が、あまりの痒さに頭と顔だけ洗って早々に風呂から上がると保冷剤で痒い部分を冷やして対処してみる。

 頭が痒くなりだしてから、かれこれ1時間ほど経った頃、今度は急激な吐き気に襲われ、トイレに駆け込んだ。数回嘔吐を繰り返していると、追い打ちをかけるように下痢が始まった。

「夕食の何かにあたったのか?」

 この時はそのくらいにしか思っていなかった。実際、嘔吐を繰り返すと胃の中身がなくなったのか吐き気はだいぶ落ち着いた。しかし、下痢は相変わらず止まらない。

 その後、なんとか下痢も落ち着いたので、水分補給をして寝ようとベッドに入るが、蕁麻疹がさらに酷くなり手のひらが痒い。それも手のひらの中が痒いので保冷剤で手を冷やしてはみても焼け石に水。そのうちにまた吐き気が襲う。トイレに行こうと起き上がると今度は貧血状態のように目の前が真っ暗になりまともに歩けない。同時に今度は唇に痛みを覚え、唇を触ると口の周りが硬くなり腫れぼったい。

意識喪失を繰り返すアレルギー反応

 この時点でようやく僕は「もしかしてこれヤバイかも?」と思い、妻に頼んで病院に電話してもらい、その間にトイレに駆け込む。本来ならこの時点で救急車を呼ぶべきだったが、僕にはその選択肢がなかった。理由は、救急車とは、命の危機に瀕して一分一秒を争う人が使う物だと思っていたからである。まさか、その命の危機が自分に忍び寄っていることなど知るよしもなく、のちに、担当医師に怒られることとなったのは言うまでもない。

 ヨロヨロとトイレから出ると、「今から診察してもらえる」とのことで妻に病院まで車に乗せて行って貰うわけだが、玄関から車に向かう間も意識が朦朧とし、ヨロヨロとあらぬ方向に歩きながらやっとの思いで車に乗り込んだ。病院までの所要時間は15~20分。その間の記憶はほとんどない。

 妻の話によると病院に付いた時刻は23時前とのことだったので、発症から約2時間弱ということになる。救急外来の受付前の椅子に座っていたが、それすら辛いので廊下に座って壁に寄りかかっていると「血圧測定をセルフで」とのことで、呼吸が苦しい状態で正しく測れたかどうかもわからないまま数回やり直していたような記憶がある。また廊下に戻り、壁に寄りかかりながら床に座った時点で僕の記憶は途絶えた。

 次の記憶は廊下に横たわった僕の頭に妻が枕代わりにとタオルを敷いてくれたときのこと。今思えば全身に蕁麻疹が出ていたはずなのに病院に向かうところから痒かった記憶はない。

 ふたたび記憶は飛び、次はストレッチャーに乗せられている。その次は処置室で自分の名前を呼ばれている。と言う感じで、この時の時間経過は全く分かっていない。あとで聞いた話だが、血圧測定の後、別の方の救急搬送により僕の診察の時間がさらに遅くなるという説明を受付職員から妻が聞いている時、廊下で座っていた僕が完全に意識を失い床に倒れて頭を打ったとのこと。これで緊急性が高まり診察が優先になったらしい。次の日、「俺、おでこ痛いのだけど何処かぶつけた?」と聞いたら妻と娘が笑いながらそう説明してくれた。

医師「あと5分遅かったら恐らく死んでいたよ」

 話は逸れてしまったが、処置室で名前を呼ばれて意識がなんとなく戻り返事はできるがとにかく苦しく横向きの状態で呼吸をするのがやっとで体を動かすどころか仰向けにすらなれない。そんな状態ではあったが医師と看護師の会話はしっかりと聞こえていた。その時の会話である。

医師「バイタルは?」
看護師「バイタル取れません」
医師「アドレナリン用意して!それと点滴ね」

 アドレナリン注射を打ち、点滴処置後の会話が聞こえてくる。バイタルとは脈拍・心拍数・呼吸・血圧・体温の4つを指すらしい。

医師「バイタルは?」
看護師「バイタル戻りません」
医師「アドレナリンもうひとつ用意して!あと点滴を反対の手からも入れて」

 処置をされていると体温が上昇してくるのを感じ、相変わらず動けないものの意識がはっきりとしてくる。この時は一番呼吸が苦しく、初めて「このまま死んじゃうのかな?」と思っていたが、血圧が上がって来て、「血中酸素濃度も上がってきた」という声が聞こえてきた。

 が、不整脈も出ていたため処置室にてようすを見ることになり、その間に医師や看護師から直近に食べたものを聞かれたので前述の食材を答えたが、アニサキス症特有の腹痛がないのでアニサキス症は除外された。さらに症状がアナフィラキシーショックと一致するとのことで、劇症性があるアレルゲンとしてこれまでのアレルギー症状の有無と食生活の問診により、その時点での見解でエビがアレルゲンである可能性が高いと診断された。

 さらに医師がひと言。「あと5分遅かったら恐らく死んでいたよ」と。次にこうも言った。「こういう時はね、迷わず救急車呼んでください。助かる命も助からなくなっちゃうから」と怒られてしまった。

 そして人生初の入院が決定した。とは言っても一晩の入院ではあるが。不思議なもので病室に移動する時には呼吸の苦しさや蕁麻疹はすでに皆無となっていた。正直、家に帰れるのではと思うくらい普通の状態にまで回復していた。しかし、アナフィラキシー症状は24時間、ショック状態になった場合は70時間以内に再発する可能性があるとのことで体力回復とモニタリングも含めてのお泊りらしい。

検査結果は「アニサキスアレルギー」

 翌朝になり、配られた朝食のメニューには「エビ・カニアレルギー」と書かれていた。大好きなカニが今後食べられなくなるのかと改めて寂しい気持ちを持ちつつ、朝食のメインである赤魚の塩焼きを食す。その後、回診があり、通常であれば一晩で退院となるのだが、僕の場合は重篤症状だったのでモニタリングを継続とのことでもう一日入院することとなった。

 そして、翌朝はサバの文化干しを食べて元気に退院となり、一週間後にアレルゲン特定のために血液検査を受け、そのまた一週間後に検査結果を聞きに行くと驚愕の結果を聞くこととなった。

『アニサキスアレルギー』

 クラス4。6段階のうちの4である。たまたま3ヵ月ほど前にアニサキスアレルギーの存在は知っていたのだが、それでもアニサキス症の酷いものぐらいにしか思っていなかった。活きたアニサキスがいなければ問題ないでしょ?と、完全に他人事であった。

 しかしアニサキス症は胃に活きているアニサキスが入らない限りは発症しないが、アニサキスアレルギーはアニサキスが活きていようがいまいが、さらには現存しようがしまいが関係なく、かつて存在した痕跡があるだけで、つまりアニサキスの蛋白質だけで発症してしまうとのこと。アニサキスが移動した際に残った粘液や糞や卵でも発症する可能性があるのだ。

 しかし入院中の食事を思い出して欲しい。「赤魚」「サバ」と食しているが再発はしていない。熱処理をしたことにより蛋白質が分解されたのか、またはアニサキスが存在していなかった魚のどちらかであるわけだが、そもそも加工食品では調べようがない。

 いろいろと調べてみるとアニサキスには14種類もの蛋白質があるとされ、どの蛋白質が発生源になるかは解明されていない。発症についても、生魚そのものだけで発症する人もいれば、加工品を含め魚介全般で発症している人もいる。つまり熱処理しても分解されない蛋白質があるということで、それこそアニサキスの中間宿主となるアミやオキアミを捕食する魚全般に可能性があるのだ。

 そのことを踏まえ、ほんの一部の例を挙げると、魚のすり身を使ったかまぼこやちくわ、シラスのふりかけ、キムチ、削り節、煮干し、鰹だしのめんつゆ、さらには川魚でも降海型の淡水魚、アユ、ウナギなどもアウトとなる。

 しかし、中間宿主とならない大型のエビやカニ、貝類、タコなど、アニサキスの蛋白質がないものや明らかに生息していない部位であれば、魚そのものを食べても大丈夫ということになる。けれども、大好きな魚ではあるが命を懸けて食べる勇気は僕にはない……。

退院後に気を付けていること

 食べる以外に気を付けなければならないのが魚釣りや魚を捌くときである。幸い僕はルアーフィッシングをメインとしているのでエサは基本的に使わないが、オキアミやアミコマセ、イワシミンチなどのエサや魚の内臓などを素手で触ると蕁麻疹が出る可能性がある。さらに、手に傷があると、そこから体内にアレルゲンが入りアナフィラキシーショックを起こす可能性もあり、それらのことを踏まえ常に意識して行動しないとまた病院送りになる可能性があるのだ。魚体表面は何とも言えないが、下アゴに親指を入れるバス持ちや尻尾あたりを持って撮影をしているが今のところ大丈夫である。

 アナフィラキシーショックを一度起こすと二度目は死に至るまでの時間が早くなると言われている。今現在、僕はエピペンを処方され不測の事態に備えてはいるが、それを使うことがないように魚類断ちを始めた。でも、ラーメン屋や食堂に行った際に出汁は何を使っているかを聞けない小心者なので外食もままならない。が、死なないための努力と思い自分自身を納得させている。家族の協力もあり、とても感謝している。

 アニサキスアレルギーを発症し、その後、治る見込みがあるかどうかは、魚介の完全断ちを数年することで陰性になりふたたび魚介を食べている方もいる。その逆で抗体が減らない人もいる。それでも私は魚類断ちをすることによって半年ごとに血液検査をして陰性になっていくことを期待している。

 このアニサキスアレルギーは認知度が低く情報もとても少ない。ある大学病院でも今現在研究はされているが、まだまだ解明されていることが少ないのが現状である。

 予防することはほぼ不可能だが、もしあなたが魚介を食べて数十分、数時間後、蕁麻疹、嘔吐が起きたとしたら迷わず病院に行くことを勧めるし、重症であれば迷わず救急車を呼ぶべきだ。

 最後になるが、僕はアニサキスアレルギーが発覚してからもオフショアで釣りをしているが、美味しい魚や高級魚をキャッチすると心が揺れてしまう。しかし、食べられないからこそ、資源保護に努めリリースを大前提として今までどおり楽しんでいる。そしていつの日か、また美味しい刺身や大好きなお寿司を食べることを想像しながら釣りを続けていこうと思っている。

 

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