今、水面に毛バリを流してイワナやヤマメをねらうドライフライテンカラが人気です。『月刊つり人』2019年7月号でも特集されているように、水面に落ちて魚のエサになる昆虫が増えるこれからの季節はまさに好機。
キャスティングとアプローチの基本
つり人編集部=写真と文
今、水面に毛バリを流してイワナやヤマメをねらうドライフライテンカラが人気です。水面に落ちて魚のエサになる昆虫が増える夏はまさに好機。今回はこれからドライフライテンカラを始めてみたいという人向けのハウツー記事をお届けします。
水面を割って飛び出す渓流魚を見るのは、テンカラの醍醐味。今シーズンは、エキサイティングなテンカラゲームを満喫しましょう!
◆前編「用意する毛バリは3種類でOK」
投げられないと、始まらない。キャスティングのコツ
毛バリを浮かせる、沈めるに関係なく、重要なのがキャスティングである。これができないと、そもそも釣りにならない。
軽い毛バリを使うテンカラでは、ラインの重さを利用してキャスティングを行なう。いってみればムチのようなイメージだ。そのために重要なのは、まずラインとサオのチョイス。
ラインは、大きく分けると重さのあるテーパーラインと、軽いレベルラインに分けられる。ほかにもいろいろあるが、とりあえずこれさえ覚えておけば問題ない。そして毛バリを浮かせる場合は、軽いレベルラインのほうがなにかと有利だ。なかには軽いテーパーラインもあるが、それでもまったく問題ない。
近年のテンカラザオは、主にこのテーパーライン用、レベルライン用、両方に対応したものに分けられる。レベルラインを使う場合は、それに合ったタイプを選べばよい。
あとはサオの振り方だが、まず前後に大きく振り過ぎないことが大切。時計の針でいえば、右向きで投げる場合は前振り(フォワードキャスト)が2時の位置まで。後ろ振り(バックキャスト)は12時の位置までというのがセオリー。
キャスティングのコツ 後方に振り上げる際には、後ろにラインを飛ばすというよりは上に跳ね上げるイメージ。あまり後ろに倒しすぎないこと
ラインが後方に伸び切るまで、わずかにタメを作る。これはラインの種類や長さによって、タイミングが異なる
しっかりと後方に伸び切ってから、前方にサオを振る。そうすることで、力がしっかりとラインの先まで伝わる
振り切った状態。ラインが真っ直ぐに伸び、しかも水面(写真では地面)を叩いていないことが分かる。これが理想的なキャスティングだ
ラインが後方に伸び切るまで、わずかにタメを作る。これはラインの種類や長さによって、タイミングが異なる
しっかりと後方に伸び切ってから、前方にサオを振る。そうすることで、力がしっかりとラインの先まで伝わる
振り切った状態。ラインが真っ直ぐに伸び、しかも水面(写真では地面)を叩いていないことが分かる。これが理想的なキャスティングだ
実際にはサオは曲がるので、サオ先はそれよりも倒れてしまうが、とにかく振り過ぎないことを心掛ける。特に遠くに飛ばそうとすると、どうしても大振りになるので注意したい。
次に大切なのは、サオを振るスピード。重いテーパーラインの場合は、軽く振っても飛んでくれるが、軽いレベルラインだとそうもいかない。ある程度スピードを付ける必要があるのだ。名手・石垣尚男さんはよく「体操のリボンのように、頭上でラインが円を描くように振ってみましょう。そのスピードで、前後に振るイメージです」と教えている。
そしてもうひとつ、前後に振るタイミングにも注意したい。柔軟なラインに力を伝えるためには、ラインが伸びていることが大切。まず強めにバックキャストを行ない、ラインをしっかり後ろに伸ばす。これが伸び切る前にフォワードキャストに移ると、ラインに力が伝わらない。毛バリはすぐ手前に、力なく落ちてしまうことになる。それを防ぐには、特に確認しにくいバックキャストの後は、若干テンポを遅らせてから前に振るとよい。
キャスティングは、実際にやらないと上達しない。まずは練習してみることだ。
渓流では、頭上に木が被っている場所が多い。そのため、できればサイドキャストなども習得したほうがよい。基本的には、通常のキャストと変わらず、やはり振り幅は小さめを心掛ける
なお練習でも釣り場でもそうだが、先端にハリが付いた状態で振り回すのだから、周囲には気を配ること。特に後方に人がいないかは、必ず確認してほしい。
距離を詰めるのが魚への第一歩。アプローチは慎重に
テンカラはラインの長さが限られるので、必然的に魚に近づく必要がある。これがルアー・フライフィッシングとは異なる点だ。当たり前だが、ポイントへは極力静かに近寄ること。
姿勢を低くして静かにアプローチする。ポイントに毛バリが届く場所まで近寄れないと、釣りにならない
落ち込みが連続する場所では、下の段から上の段をねらいやすいので、近寄るのが容易だ
テンカラは、どちらかといえば落ち込みの連続する渓流や源流のほうが釣りやすい。大場所では毛バリが届かないし、近づく間に魚が逃げてしまうからだ。落ち込みが続くと、たとえば下の段に立ったまま、上の段の肩や落ち込みを釣ることができる。また流心を挟んだ対岸側などは、多少近づいても魚が出ることがある。
自然に流す? 誘いをかける? 毛バリの流し方
まずは魚の居場所を読むこと。ケース・バイ・ケースなので場数を踏むしかないが、基本的にはヤマメは流心付近、イワナは緩流帯に多い。流れが速すぎない流心、流心脇の緩流帯、巻き返し、落ち込みの脇、ヒラキ、肩……とさまざまな場所に魚が付くが、とりあえずはすべて探る気持ちで釣るとよい。テンカラの場合、意外なほど浅場で釣れることもあるので、小場所もていねいに流すこと。
流し方のコツだが、まずはできるだけ自然に流してみる。つまり毛バリがイトに引っ張られて、不自然な動きをしないように注意する。そのためのコツは7月号18ページからの記事で解説されている。とりあえずサオを高く保持して、ラインをあまり水に付けないのが手っ取り早い。
サオを高く保持することで、あまりラインを水につけないようにする。そのほうが、ラインが流れに引かれて毛バリが動いてしまうのを防ぎやすい
それでも自然に流せない時には、いくつか対処法がある。ひとつは、ハリスを長くすること。ハリスが長くなり、その部分がたるんでいると、ラインが多少引っ張られても毛バリが動くまでにはタイムラグが生じる。その間に魚が食ってくれればもうけもの、というわけだ。またハリスは細いほうが有利だが、当然切れやすくなる。細くても0.6号くらいを目安にしよう。
もうひとつ、自然に流すための工夫は、そもそも自然に流せるだけの時間しか、魚に毛バリを見せないということ。そのためには、魚の付き場を正確に把握する必要がある。名手たちは「ここへ打って、このあたりで食わせる」などという読みができるのだ。そのためには、やはりフィールドへ足を運んで魚から教えてもらうしかない。
自然に流しても魚が出ない場合は、誘いをかけてみるのも悪くない。あまり大きな動きではなく、水面を少し動く程度でよい。動かしすぎると、魚が出ても食い損ねてしまう。ただしパラシュートフライでは、誘いをかけてもあまり効果がないことが多い。
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2019/5/24