毛バリに反応する魚の姿が目で見えるのが、渓流のドライフライ・フィッシング。他の釣りと大きく違うのは道具立てとキャストの難しさ。でもちょっとややこしいからこそ、一尾との出会いに深い満足感がある。
毛鉤を浮かせて釣るドライフライのはじめかた
毛バリに反応する魚の姿が目で見えるのが、渓流のドライフライ・フィッシング。他の釣りと大きく違うのは道具立てとキャストの難しさ。でもちょっとややこしいからこそ、一尾との出会いに深い満足感がある。
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目次
フライデビューならまずは〝管釣り〟へ
キャスティングへの慣れも必要なフライフィッシングを始めるなら、おすすめは「管理釣り場(以下、管釣り)」に行くこと。その際は、自然の川を利用した渓流タイプの管釣りを選ぶ。
魚が豊富なので、キャストミスを繰り返しても必ずチャンスがある。また、魚の姿がよく見える場合がほとんどなので、どんなふうにフライ(毛バリ)を流せると魚が反応し、逆に引き返してしまうのかが理解しやすい。
人気のドライフライ・フィッシングは「魚の定位している流れのレーンに」「イトに若干のたるみが入った状態でフライを着水させ」「なるべく長く自然にフライを流せると魚が食いつく」というのが大基本。この感覚を得るには、いきなり自然の川に行くよりも、魚がたくさんいる場所で練習するのが近道だ。
タックルと装備について
①フライロッドとリール:8 フィート6 インチ# 4 クラスがおすすめ
②偏光グラス:水中の魚や水面のフライを見るのに必要
③長靴:管理釣り場はスポーツシューズでも大丈夫だが水際に入れる長靴がベター
④帽子:日よけ、頭部保護の意味も含め
⑤チェストパック:釣り用のフィッシングベストやショルダー バックでもOK
⑥フライパッチ:使い終わったドライフライを一時的に乾かしておく場所
⑦クリッパー:ティペットなどのラインをカットする。コードが伸縮するピンオンリールに付けるのが便利
⑧フォーセップ:魚の口からフライを外すのに必要
⑨吸水シート:濡れたドライフライから水分を拭き取る。ポケットティシュでもよい
⑩フライボックス:予備のフライを入れておくケース
⑪フロータント:ドライフライに塗布する浮力剤。おすすめはパウダーやスプレータイプ
⑫リーダー:予備も数個用意
⑬ティペット:まずは6X があればOK。0.6号のナイロンラインでよい
ロッドを継いでリールをセットし、フライラインにリーダーを接続
フライタックルは他の釣りとセッティングがやや異なる。とはいえ入門セットを購入すれば接続法が書かれているのでそれに従えばいい。基本は「ロッドを継ぎ」「リールをセットし」「リールから出したフライラインをガイドに通し」「フライラインの先にリーダー(テーパーリーダー)を接続」「さらにティペットを継ぎ足してフライを結ぶ」で準備完了だ。
フライフィッシングは太さのあるフライライン(組糸のコアを軟らかいゴムでコーティングした構造になっている)を使うため、ネイルノットのような他の釣りではあまり使わない結びが必要になる。
リーダーとティペットの長さは全体でロッド1.5本分が目安。特に先端の細い部分が短すぎるとスラックが入れられず、ドライフライを自然に流しにくくなる。リーダーを付けたばかりで先端の細い部分が長い状態なら、そのままドライフライを結んでもよい。ただし、 通常はフライを交換するうちにリーダーの先を切り詰めて行くことになるので、あらかじめ細いティペットを足してそこにフライを結ぶ。ティペット部は1mを目安にするとよいだろう。リーダーとティペットの接続は他の釣りでも使う8の字結びやサージャンズノットでOK。ティペットとフライはこれも一般的なクリンチノットやユニノットで結ぶ。
ロッド、リール、ラインのセッティング
①フライロッドは2~ 4ピースの継ぎザオ。ガイドが一直線上に並ぶように確認しながら、細い先端から順に継いでいく
②ロッドを継いだら、フライラインが前に出る方向でリールをリールシートに固定。リールシートはスクリュータイプや2 つのリングで上下から挟むだけのリングタイプがあるが、いずれにしてもシンプルな構造のものが多い
③ガイドにフライラインを通す時は、ラインの先端を2 つ折りにして作業する。すると途中で手を放してしまった時も全部が抜けおちにくい。また、ロッドを芝生の上などリールに傷が付かない地面に置いて作業するとやりやすい
④トップガイドまでフライラインを通したら、その先にリーダーを接続する。リーダーは輪になった状態でパッケージされている
⑤リーダーをほどく時は全体が絡まないよう、まず輪の中に片方の手の指を複数入れて外側に張りテンションを掛ける。この状態から、フライラインに繋ぐ太いほうの先端をつまんでほどいていくのがコツ
⑥リーダー全体を絡ませずにほどいたら、全体を少しずつ両手で引き伸ばし巻きグセを取る
⑦リーダーの太い側の端をネイルノットでフライラインの先端に結ぶ。ここでは「黄色のラインをフライライン」、「緑色のラインをリーダー」に見立てて表示。ネイルノットには細い木の棒、釘、ボールペンの芯などを使うが、フライショップで販売しているネイルノット専用ツールを使ってもよい
リーダーの太い側の端を、写真のように3~ 5回転フライラインの端に巻き付けたら、輪の中に通しながら折り返す
リーダーが通ったら結び目がほどけないように指でしっかり押さえつつ、棒を抜いてリーダーを左右からしっかり引き締める。リーダーが滑って抜けないことを確認したら余りをカット
⑧リーダーの先にティペットを結び足しフライを結べば準備完了。フライはロッドに付いているフックキーパーに掛けて余分なラインをリールに巻いておく。フックキーパーがなければ他のガイドやコルクグリップに引っかけてもよい
タックルをセットし終えて移動する時は、写真のようにロッドの先を後ろに立てた状態で歩くとトラブルが少ない
キャスティングのコツ
上手く投げられるようになれば、それだけでも楽しいフライキャスティング。最初は以下の流れを意識してやってみよう。
①フライラインはトップガイドから最低でロッド2本分出す
②正しいグリップでロッドを握り、前後にまっすぐ動かす(振る)ことを心がける
③ロッドを後ろに倒しすぎずないようにしつつ、ある程度勢いを付けてバックキャストする
④フライラインとリーダーが後ろにまっすぐ伸びるのを待つイメージで一呼吸置いたら、ラインの重さを感じながらフォワードキャスト
⑤ねらった場所にラインの先端が伸びていくようにフォロースルー
フライキャスティングは、軽いフライ自体を投げようとするのではなく、重さのあるラインを前後にまっすぐに伸ばすことで、結果的にフライをねらった場所に運ぶのが特徴だ。
グリップはリールを真下にした状態で、人差し指を伸ばして真上に乗せて握る。ロッドを左右にねじらず、前後にまっすぐ動かしやすい
トップガイドからフライラインを出したあとは、まずグリップしている手の指に軽くラインを掛け、さらにそこから少し離れた部分を反対の手の指でつまむ。これがいろいろな動作をするうえでの基本姿勢。キャストを始める際も、魚が釣れてラインを手繰る際も、この状態だとラインをスムーズに扱える。ただし、キャストの際は、最初にラインを後ろに振り上げたあとは、グリップしている手の指のラインは離す
ねらい方からリリースまで
ドライフライは乾いて水面に安定した状態で浮いている時と、濡れて半沈みになった時とで、渓流魚の反応が大きく異なる。水面の流れにしっかり乗って、ふらふらと自然な上下動で流下する時が最も魚の反応がいい。
そこでまず一尾を釣りあげるには、以下のポイントを意識してねらってみよう。
①ドライフライは乾いた状態でしっかりフロータントを付ける。おすすめは使いやすいパウダーやスプレータイプ
②使っているうちに濡れてしまったら、専用のクロスやティッシュペーパーで拭いてしっかり水分を取ってから、またフロータントを付ける
③流れがはっきりとしていて、着水したフライが自然に動きやすい場所を重点的にねらう。鏡のような水面にただ浮かべておくのは魚の反応を得にくい
④水面直下で左右にウロウロしていたり、ライズしている〝やる気のある魚〟を捜しながらその鼻先をねらう
ドライフライに魚が出れば、目で見えるのでアワセを迷うことはない。魚がヒットしたらラインを手繰って手もとに寄せ(リールを巻く必要はない)、ハリを外してリリースしたら、魚のヌメリも付いたフライを水ですすいでからしっかり水分を拭き取り、フロータント処理をしてまたキャストから始める、というのが一連の流れだ。
一度味わったら、魚が飛び出す光景が忘れられないドライフライ・フィッシングに、ぜひ挑戦してみよう。
魚がヒットしたらロッドを立てて合わせる。この時にラインがたるんでいるとテンションが掛からないので、ロッドを持つ手の指でラインを押さえておくことが大切。その後、フッキングを確認したら反対の手でラインを手繰って魚を寄せる
上の図のように操作して魚を寄せる
ランディングネットですくう
濡らした手で魚の頭をしっかり保持し、フォーセップ(針外を外す道具)で口からフライを外す。手で無理に外そうとすると魚にダメージを与えやすいほか、せっかく魚が釣れたフライを壊しやすい。そのまま魚を流れに戻せばリリース完了だ
フライフィッシングの用語集
ドライフライ
水面に浮かべて流すタイプのフライの総称。このほかに沈めるタイプのニンフやウエットフライもあるが、渓流のフライフィッシングをするならまずはこれを使う
フィートとインチ
フライフィッシングではロッドやラインの長さをフィートで表示する。1フィートは12インチでおよそ30.5cm(1インチはおよそ2.5cm)。9フィートロッドなら全長2.745mとなる
リーダー・ティペット
フライラインの先に結ぶナイロンイト。リーダーには通常テーパーが付いており、さらにその先に結ぶ先端部分のイトをティペットと呼ぶ
X(エックス)
リーダーやティペットの太さは「X」で表記される。6Xで0.6 号相当。数字が小さいほど太く5Xは0.8号相当となる。なおテーパーリーダーは一般的に全体の長さと先端部分の細さで「9フィート6X」のように表記される
DT(ダブルテーパー)
フライラインのタイプ。全体が均一な太さのデザインのものがDT。ただし先端30cmほどはリーダーに段差なく接続できるよう若干細くなっている。DTに対してより遠投がしやすいよう、先端9mほどより後ろを細くデザインしたものはFW(ウエイトフォワード)と呼ばれる
トップガイド
フライロッドの一番先端にあるガイドのこと
バックキャスト/フォワードキャスト
ロッドを後ろに動かしラインを後方に伸ばすのがバックキャスト。前に動かすのがフォワードキャスト。キャスティングはまずバックキャストから始める
ライズ
水面に浮いている虫、あるいは羽化途中の水生昆虫などを追って魚が浮上すること
リリース
釣りあげた魚の再放流。義務ではないが釣り場によってルール化されていることもある
おすすめドライフライ3選
※フライの大きさはフックの大きさ(#)で表示される。その際は数字が大きいほど小さくなることを覚えておこう
エルクヘア・カディス
おすすめサイズ:# 10~ 14。ボディーにはハックルを巻き、ウイングにエルク(鹿)の毛を留めた スタイルのドライフライ。流れの強い場所でも比較的使いやすい
パラシュート
おすすめサイズ:# 12~ 16。目印にもなる化繊のポストに傘状にハックルを巻いたドライフライ。水生 昆虫の尾を模したテイルとの相乗効果でバランスよく水面に浮く
CDC(シーディーシー)ダン
おすすめサイズ:# 12~ 14。油分を多く含むカモの尻下(CDC)をウイングに使ったドライフライ。ハックルやエルクヘアに比べて繊細に水に接するためスレた魚に強いが濡れると沈みやすい
ドライフライ以外のパターン
フェザントテイル・ニンフ
水生昆虫の幼虫を模した沈めて使うパターン
エッグフライ
管理釣り場で効果のあるイクラを模したフライ。管理釣り場の魚からはペレットに見えているかもしれない
ビーズヘッドマラブー
沈めてからリトリーブして使うルアー的なフライ