人気のオオモンハタ、アカハタ、キジハタの御三家を中心に盛り上がるハタゲーム。オーソリティの折本隆由さんは、ジグヘッドリグのスイミングで見事に釣り分ける。その勘どころを解説してもらった。
人気のオオモンハタ、アカハタ、キジハタの御三家を中心に盛り上がるハタゲーム。オーソリティの折本隆由さんは、ジグヘッドリグのスイミングで見事に釣り分ける。その勘どころを解説してもらった。
写真と文◎編集部
小魚を追いかけて中層に浮き上がる
エコギアを立ち上げる1993年ごろから30年にわたって私はハタやアイナメをターゲットにしたロックフィッシュゲームの魅力を発信しています。当時を振り返るとハタ族の認知度は低く、ロックフィッシュといえばアイナメやソイ類が主軸でしたが、15年ほど前から徐々に人気が高まり、数年前にブレイクしました。
私は当時からアイナメが小魚を追いかけて浮くことに注目していました。主に北海道のアイナメが、カタクチイワシやチカといった回遊性の強い細身のベイトフィッシュを好み、群れが回遊してくると根から浮き上がって捕食するので、意識的に中層を釣っていました。同じように回遊性のあるベイトを捕食するならばハタも浮くに違いないと中層の釣りを試したところ、読み通りにオオモンハタをはじめあらゆるハタがジグヘッドリグに食ってきました。アイナメの経験がハタゲームの確立につながったわけです。ベイトの回遊がなければ浮く必要もなく根に身を寄せて甲殻類を捕食しているので、テキサスリグとジグヘッドリグの2本軸で釣りを組み立てていました。
現在人気の高いハタは「オオモンハタ」「アカハタ」「キジハタ」の3魚種。
ハタ御三家と呼ばれています。ここに地域によってスジアラやアオハタ、マハタが加わります。御三家の魅力は、ショアからでも比較的釣りやすいことに加え、それぞれ行動パターンが違うので釣り分けられることです。とりわけオオモンハタは大きくなると、カタクチイワシなど回遊性の強いベイトフィッシュに依存する度合いが高まり、ときには岩礁帯から離れて砂地にまで群れを追いかけて入ってきます。一方、キジハタは大きくなってもボトムで甲殻類を捕食したり中層で小魚を追いかけるなどパターンが読みづらく、甲殻類を好むアカハタは積極的に浮くことは滅多にありません。このように個性豊かなハタ類は、非常にゲーム性に富んだ好ターゲットです。
今回は乗合船やボートからの釣り方を解説していきたいと思います。
ビギナーの人は乗合船を利用してよく釣る人の手順を見たり、船長のアドバイスを聞くなどして釣りに慣れることが上達の近道。どんなポイントを釣っていくのかも覚えれば、マイボートの釣りにも応用できる。自分の手で最初からハタを探すのは実に楽しい
テンヤ乗合船でハタゲーム入門
現在全国的に盛り上がっているハタゲームですが、遊漁船は全国的に見ても多くはありません。乗合船の北限は、今のところ千葉県の勝浦あたりでしょうか。勝浦のメインターゲットはアカハタです。ちなみにルアー専門ではなくアカハタテンヤというスタイルでお客さんを募っている乗合船に同船するスタイルで、テンヤ釣りの人たちと並んでサオをだします。
船釣りといっても、岸から沖に向かって投げるのか、沖から岸に向かって釣るのかという程度の違いしかないので、難しく考える必要はありません。ビギナーの人でもストレスなく楽しめ、かつ上手な釣り人を見たり船長からアドバイスをもらえるので、いち早く上達できます。
私はゲーム性を重視して積極的にハタを探していく浅場での釣りが好きです。ハタは浅ければ浅いほどルアーに対する反応もアグレッシブになります。ファイトも浅いほうがパワフルでスリリングです。五目釣りにならないので釣趣を重視する人には、断然浅場での釣りをおすすめします。アカハタテンヤの乗合船は浅い場所に入るので、ハタゲームとの相性は抜群です。
私が好む水深に入ってくる最大のターゲットはスジアラです。10㎏クラスでも水深5mほどの浅場に入ってくることがあります。スジアラは南方系の魚ですが、最近では高知や和歌山でも釣れるようになりました。伊豆半島でも神子元島ではその姿を確認できるそうなので、今後さらにエリアが広がり、好ターゲットとして御三家に加わってくるかも知れません。
九州・沖縄のスジアラに対して、北陸はキジハタといった具合に、地域ごとに主役は異なるものの、各ハタ族が全国各地で盛り上がりを見せています。海水温の上昇や黒潮の影響など、要因はいろいろ考えられますが、年々ハタ族の生息域は押し上げられています。すでにキジハタは津軽海峡を越え、函館でも釣れるようになりました。遠からず北海道でもハタゲームが盛り上がるかもしれません。
熱狂的なファンが多いスジアラ。現在は伊豆半島まで生息域を広げている。若魚時代は甲殻類を就餌するが、オオモンハタ同様大きくなるにつれて魚食性が高まる
スイミングのキモはラインの立ち具合
ソフトルアーの釣りとひと言でまとめてもジグヘッドリグやテキサスリグ、ジカリグなど、釣り方に応じてリグのレイアウトは様々です。私がボートからの釣りでおすすめしたいのが「ジグヘッドリグのスイミング」です。ジグヘッドは根掛かりやすいイメージが強いですが、中層をスイミングさせるので、ボトムを探るスタイルより根掛かりしません。
スイミングの魅力は、良型との遭遇率が高いことです。いずれのハタも30㎝を切る小型は外敵が多いのかリスクを冒してまで浮くことはなく、底付近で甲殻類を捕食して過ごします。これが成長とともに行動範囲が広がり、ベイトフィッシュを追いかけて中層へ浮き上がるようになります。つまり、スイミングで釣れるのは30cmを超える良型ばかり。しかもレンジが上になるほど良型化する傾向にあります。
スイミングの手順は次のとおりです。
1、できる限り遠くにリグをキャスト
2、着水したらロッドを下げてラインを海面に浮かべ、フリーフォールでリグを送り込む
3、ラインの動きが止まったら素早くスラックを巻き取り、穂先にリグの重みが乗ってきたところでスロー~ミディアムリトリーブを開始
4、ラインが立っているのでリグは上へと浮き上がって根掛かりを回避。ねらったレンジでスイミングさせてハタを誘う
5、アカハタねらいで5~10回、キジハタで10回前後、オモンハタで15~20回ほどリーリングして反応が得られなければ、ベイルを起こして再びフリーフォールで底取り。(3)に戻る
6、(3)~(5)を繰り返すと徐々にラインが潮になじんで角度が浅くなってくるので、根掛かりする前にピックアップして打ち返す
以上、釣り方はシンプルなのですが、スイミングに徹し切れない人が多いようです。特にビギナーの方は反応が得られないと不安にかられ、底取りの回数が増えて根掛かるという悪循環に陥りがちです。スイミング自体は難しくないので、ヒットを信じて最後までやり切ることが肝要です。
スイミングのキモはラインの角度です。最初こそラインが立っているのでリグは上へと引き上げられて根掛かりませんが、スイミングとフォールを繰り返すうちにラインがなじんで寝てきます。そうなるとリグが充分に跳ね上がらずに横へと泳ぎだすので根掛かりやすくなります。角度が浅くなる前に回収しましょう。フォールは必ずベイルを起こして真下にリグを沈め、少しでもラインを立たせること。テンションをかけながらのフォールは厳禁です。
また、リグを遠くに投げるほど広範囲を効率よく探ることができるのでバイトチャンスが増えます。そこで重要になるのがジグヘッドの重さです。リグを重くすると遠投性が増すだけでなく不要な浮き上がりも抑えられます。ロングキャストするために、私は水深が5mほどしかない浅場でも30gや40gといったジグヘッドを多用します。
底の取り方は、ティップランエギングと同じようにラインを素早く海面の上に浮かせると分かりやすくなります。ロッドを寝かせて、穂先を海面に近づけるとラインの放出がスムーズです。ラインがリグに引っ張られて海面を滑る際に小さな波紋が生じるので注視しましょう。着定するとピタリと止まります。
オオモンハタをねらう場合、リグはかなり上まで巻き上げてスイミングさせます。中層に浮いたオオモンハタは上を意識しているので、底近くをスイミングさせても釣れません。リトリーブ速度はスイミング中にリグが浮き上がったり沈まないミディアムリトリーブです。一方アカハタはネンブツダイやベラ、メジナといった底近くで泳ぐ小魚を捕食し、遊泳力のあるカタクチイワシは積極的に追いかけません。したがってアカハタはスローリトリーブでレンジを下げた釣りが基本となります。
ハタを呼び集めるブレードの威力
スイミングに威力を発揮するジグヘッドが、アームを介してウイローリーフタイプのブレードをセットした「スイミングテンヤキラキラ」と「コールアップヘッド」です。
メタルジグやプラグに比べて大きく劣るソフトルアーのフラッシングをブレードでフォローします。ブレードの集魚効果は絶大で、離れた場所のハタも引き寄せることができます。また、食い気の薄いニュートラルなハタにスイッチが入ります。
コールアップヘッドとスイミングテンヤキラキラの大きな違いはブレードの枚数です。ボートから釣る場合はリグの浮き上がりを抑えたいので、スイミングテンヤキラキラを多用します。上層はもちろん深いレンジでも浮き上がることなくスイミングさせられます。コールアップヘッドより1ランク軽いウエイトで同じレンジを泳がせることができます。2枚のブレードが付いたコールアップヘッドは、その名のとおりコールアップパワーに長けており、数尾の群れを演出して広範囲のハタに存在をアピールします。浮き上がりが早くて根掛かりをかわしやすいので、私はショアからの釣りで多用します。よりスローに巻けるのでアカハタねらいにも有効です。
ソフトルアーはテールの形状がポイントです。巻くだけでテールがアクションしてベイトフィッシュの泳ぎを演出するシャッドテールがスイミングにマッチします。リトリーブ中に姿勢を崩さない点は大きな魅力です。
シャッドテールはエコギアでも定番の「グラスミノー」をはじめ「パワーシャッド」や「バルト」、そして今秋発売予定の「ケルト」と、多くのアイテムがラインナップしています。
これはハタが食べているベイトフィッシュの種類が多いからです。同じシャッドテールでもボディーの形状が変わればハタの反応も大きく変わります。カタクチイワシのような小魚を捕食しているときはケルトやパワーシャッドといった細身のシルエット、ボトム近くでベラやネンブツダイを捕食している場面ではバルトのような体高のあるシャッドテールが有効です。つまりオオモンハタはケルト、アカハタはバルトに好反応します。このようにソフトルアーの形状の違いでもある程度の釣り分けができるのです。
以上、簡単にソフトルアーのスイミングについて解説しました。ハタは浅場で釣ると強烈なパワーで根に潜ろうとします。あのダイナミックかつスリリングなファイトは一度味わったら病みつきになること請け合いです。ぜひ皆さんも浅場でのハタゲームにチャレンジしてください。最後にハタをはじめとするロックフィッシュは成長に時間を要するので、必要以上のキープは慎み、節度を持って楽しみましょう。
※このページは『つり人 2024年9月号』を再編集したものです。